May 01, 2025

『べらぼう』を雑に振り返る 4月編

☆第13回「お江戸揺るがす座頭金」

鳥山検校に身請けされた瀬川だったが、蔦重への思いを見抜かれ、次第に二人の関係はぎくしゃくしていく。その一方で盲人たちの組織による無法な高利貸しが問題となり、ついには幕府中枢にまでその影響が及ぶことに。

「べらぼう・闇金ウシジマくん編」。今回は蔦重の影が薄く、江戸時代における借金蟻地獄のえぐい様子が丹念に描かれます。別に贅沢してるわけでもないのにちょっとしたことがきっかけでいつの間にか膨大な返済を抱えてしまう… この辺この時代も現代もあまり変わりありませんね。あーやだやだ

「検校」という言葉、ちらちら時代もので耳にしてましたが、このドラマでやっと正確な意味を知りました。勝海舟の何代か前の人もそうだったとか。あと幕府が盲人を保護するようになったのは『どうする家康』の於愛の方につながると聞いて目が鱗。

 

☆第14回「蔦重瀬川夫婦道中」

座頭金が問題となり捕えられた鳥山検校と瀬川。だが瀬川はあっさりと釈放される。これで離縁がかなえば誰はばかることなく夫婦になれる。そんな夢を描く蔦重と瀬川だったが…

1回目から正ヒロインであった瀬川さん退場の回。借金が生んだ負の連鎖が語られる一方で、人を想う心の連鎖も描かれます。一億数千万払って身請けした女を、その幸せのためにあえて手放す検校。そして蔦重の夢のためにそっと姿を消す瀬川。ふううう… なんでこうなるの!!

何気にゲストのお奉行にベテラン声優井上和彦さんが登場。目をつぶってセリフを聞くと確かにSFヒーローの声でした。

 

☆第15回「死を呼ぶ手袋」

次代将軍と目されていた西の方・家基が狩りの最中突然の死を遂げる。田沼は陰謀の匂いを感じ源内にその真相を探らせるが…

タイトルからして横溝正史っぽい回。さすがは元金田一耕助だけあって源内より先に真相を見抜いた白眉毛様でしたが、まさか第二の被害者となってしまうとは… 反目してた田沼様とようやく和解できたかと思ったらこの展開。史実は非情です。

この回から名前だけは知ってた山東京伝が登場。こんなに軽い人だったの??

この回の『風雲児たち』ポイント:やっと出ましたの杉田玄白。前野良沢は出ないっぽい

 

☆第16回「さらば源内、見立は蓬莱」

田沼より捜査の打ち切りを命じられ、怒りをあらわにする源内。かねてより精神的に参っていたこともあり、源内はさらに常軌を逸した行動を取るようになる。それを陰謀の黒幕が見逃すはずはなかった。

唐丸の退場以来ベロベロ泣かされた回でございました。蔦重もこれまでにないくらい泣いてましたが、本当に彼は源内先生が大好きだったんですね… 先生の方は蔦重に対してはけっこう適当でしたが。須原屋市兵衛さんの「語り継いでいく。どこにも収まらねえ男がいたってことを」のセリフが胸を打ちます。源内先生こと安田顕さん、熱演お疲れ様でした。

この回の『風雲児たち』ポイント:源内が凶宅に移り住み、図面の件で腹を立て…というとこまでは一緒。その先が自分の罪ではなくハメられて、というのはドラマオリジナル。こんなドラマをつむげる森下先生はすごい。でも憎い。好き

 

ここで1週お休みを挟んで、「第1部完」的なムードが漂っておりました。全体の1/3が終わったわけで。第二部は田沼の没落に伴い寛政の改革に苦闘していく蔦重の姿が描かれていくと予想。引き続き期待しております。

 

 

 

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March 30, 2025

『べらぼう』を雑に振り返る 3月編

☆第9回 「玉菊燈籠恋の地獄」

瀬川の身請けが決まりそう、という話を聞いてようやく彼女への恋心を意識する蔦重(おせーよ)。年季明けまでお互いを待とう…と秘かに約束を交わすが、やり手の松葉屋夫妻がそれを見逃すはずがなかった。

『べらぼう』ロマンス編の前編と言うか吉原地獄変。第1回以来がっつりと吉原がいかに「苦界」であるかか描かれており、五社英雄とか宮尾登美子が関わってそうなエピソードでありました。そんなきっつ~い地獄の後だからか、夢をあきらめた二人が本の感想に紛らせて別れを語るシーンがとてもさわやか。

モニターチェックの時?に「誰この妖怪ババアと思ったら自分だった」とコメントしてた水野美紀さんがおちゃめ

・足抜け失敗した新さんが切腹しかけて「あっ いて」とつぶやくのは、今までにない切腹描写でした。

この回の『機動戦士ガンダムジークアクス』ポイント:「間違いない… ありゃマブだよ!」

 

☆第10回 「『青楼美人』の見る夢は」

瀬川の身請けが確定。その卒業パレードの際に蔦重は豪華な錦絵本を作って彼女の旅立ちに花を添えようと決意する。

『べらぼう』ロマンス編の後編というか吉原夢幻編。史実によりますとこの時代鳥山検校という人がいて、瀬川という花魁を1億4千万相当の金で身請けしたことは確かなようで。その瀬川が錦絵本では書物を読んでる姿で載っている…この要素だけでこれだけのドラマをつむげる脚本家森下先生の才能に脱帽です。三谷幸喜先生が「大河ドラマは史実の間に『ドラマ』を作らなきゃいけない」みたいなことをおっしゃってましたが、まさにその言葉の通りだなあと。

先回鬼のようだった松葉屋主人が「本なら自分で渡せよ」と粋なところを見せます。人間ってやつは奥が深いですね。ラスト付近、朝焼けの吉原大通りをバックに、豪勢な衣装と華麗な足取りで行進していく瀬川=小芝風花さんがファンタジックで美しゅうございました。ただ彼女の物語はまだ終わらないようで。

 

☆第11回 「富本、仁義の馬面」

せっかく気合を入れて作った『青楼美人』ではあったが、高額のため売れ行きは伸びず。次の一手として蔦重は親方衆の意見も取り入れ、浄瑠璃のスター馬面太夫を吉原の「俄祭り」に招くことを企画する

今回のメインゲストは『鎌倉殿』の公暁こと寛一郎君が演じる馬面太夫。浄瑠璃の名手と言うのはこの時代の歌謡スターみたいなものだったようで。でも吉原の女郎たちはそれらのスターたちを噂でしか知ることができない。彼女たちに実際にその姿を拝ませてやろう、そんで吉原嫌いの馬面太夫の心もゲットしちゃおう…という蔦重の情と策士ぶりがみごとにフュージョンしておりました。

「男なら」「男ってもんだ」「男のすることか」と男の意義が問われた『魁‼男塾』的な回でありました。メイン忘八衆に反旗を翻す「若木屋」を演じる本宮泰風氏と山路和弘氏がにらみ合ってる図を観て特撮オタクとしては「ピーコックアンデッドと烏丸所長の再戦だ…!」と一人盛り上がってました。

この回の『風雲児たち』ポイント(久々):やっと出ましたのエレキテル

 

☆第12回 「俄(にわか)なる『明月余情』

俄祭り開催に向けて盛り上がる吉原。蔦重はその準備に奔走する間に朋誠堂喜三二という戯作者と出会い、彼に自分のところでも本を書いてくれるよう頼み込む。

第2回から画面の端々をうろちょろしてた尾美としのり。その正体がようやく明かされます。「吉原あげて…」の言葉に目を輝かせるも、義理人情のためその誘いをあきらめる姿が笑えて泣けました。

この回のクライマックスはピーコックアンデッド若木屋対チビノリダー大文字屋の100日耐久ダンスバトル。最後の最後にエールを交換して仲良くなるあたりは激闘の果てに友情が芽生える少年漫画みたいでした。そのさなかにそっと二人で姿を消すうつせみと新さん。「祭りは神隠しにつきもの」とうつせみを送り出す松ノ井ねえさんにホロリとさせられました。

ちょうど一昨日「100カメ」でこちらのメイキングが放映。いつになくかっこいい次郎兵衛兄さんを盛り立てようと演出を提案する流星君や、カムロ役の女の子がメイクされながら小芝風花への熱い推し愛を語る映像にほっこりしまくりでした。

この回の『風雲児たち』にはなかったポイント:『金金先生』を楽し気に読む定信君。この人はカチコチ真面目な印象がありますが意外にエンタメ好きな一面もあったそうで

 

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March 01, 2025

『べらぼう』を雑に振り返る 2月編

☆第5回「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」

本屋たちへの仲間入りを拒否された蔦重は、なんとかして版元になる道をみつけようと奔走する。その裏で唐丸に近づく怪しい浪人の影があった。

蔦重のサイドキック…かと思われた唐丸が5話にしていったん退場。「何か隠してるだろ?」という蔦重の問いに何とも言えない表情をして「何もない」と答える唐丸。それを観ながら轟々と泣くワシ。なんだか大河ドラマというより山本周五郎の人情時代劇を観ているような気分でした。落ち込む蔦重を「楽しい想像をしようよ」と励ます花の井がまたよい。明らかに自分のせいじゃないのに「自分で高いもの買ったんでしょ」と言われて「うーん、オレなのかなあ」とつぶやいてる次郎兵衛兄さんがさらにまたよいです。

この回の『風雲児たち』ポイント:須原屋市兵衛来ました。『風雲児たち』ではぐるぐるメガネでしたが… 林子平も出るか?

 

☆第6回「鱗(うろこ)剥がれた『節用集』」

癪には触るが鱗形屋に頭を下げ、のれん分けをしてもらおうと企む蔦重。だが彼の下で働いているうちに犯罪の証拠を見つけてしまい…

この回は当時本の種類に「赤本」「青本」なるものがあったことを学びました。赤本は子供向けの絵本、青本は字主体だけど絵も入ってる物語。当時青本は人気がなく、面白いものをこさえようとストーリーを練る蔦重と鱗形屋のやり取りが、漫画雑誌の編集会議のようで本当に楽しそう。しかし鱗形屋は蔦重を食い物にすることしか考えてなく、因果応報的な顛末が彼を待っています。いやあ、この頃から海賊版ってあったんですね。

意外に早く再登場を果たした長谷川平蔵。カモ平から少しずつ鬼平にシフトしている様子がうかがえます。自分にとって良い結果になったにも関わらず、罪の意識を感じて浮かない蔦重。こういうこずるいところもあるけれど、人並みの良心も持ってる人物造形が身近で好感が持てます。

この回の『風雲児たち』ポイント:池に捨てられた佐野善左衛門の家系図。ああ…

 

☆第7回「好機到来『籬(まがき)の花』」

鱗形屋不在を幸いとばかりに、本屋連中に自分の仲間入りを認めさせようとする蔦重。その条件として、「倍売れる売れる細見を作る」と大見得を切るが、果たしてその勝算やいかに。

前回は面白い娯楽本を考える話でしたが、今回は使いやすいガイドブックを作ろうとする話。それには持ちやすく、薄い本を…をとアイデアを絞る様子が面白い。それに付き合わされるのが源内先生のお弟子さんの新之助さん。何度も作り直しをお願いされてしまいにゃ相当キレてましたが、恋人に会うお金を工面するために耐えておられました。

あとこの回で爆笑したのは最初断ってたのに吉原への宴会をエサにされたらパタッと手の平を返すダチョウ俱楽部肥後さんとか、『鎌倉殿』でもジェラシーに身を焦がしてた芹澤興人さんとか。いつもよりお笑い要素50%増し、みたいな回でした。

そして怖かったのが鶴屋喜右衛門を演じる風間俊介君。顔は笑ってるんだけど目が笑ってない。失礼ながらサイコパス役とかけっこうはまりそうな気がします。

 

☆第8回「逆襲の『金々先生』」

軽装版細見の評判は上々で、蔦重にもいよいよ本屋の仲間入りの道が開けてくる。だがその道の前に本屋のリーダーである鶴屋喜右衛門と、意外とあっさり帰ってきた鱗形屋がたちはだかる。

最初「絆の強い兄妹」みたいな関係なのかな…と思っていた蔦重と花の井(瀬川)ですけど、花の井の方はガッツリ蔦重のことが好きだったようで。そんな思いも知らずに「金持ちに身請けされるといいな」とのたまう蔦重に綾瀬はるかはじめ全国の視聴者が「馬鹿! ニブチン!!」とつっこんだ回でした。ただ花の井は蔦重のああいう博愛主義的なところに惹かれたんじゃないかな…とも。

1話では親方衆から階段落としを喰らっていた蔦重。ところがこの回では蔦重との約束を反故にした鶴屋が階段落としを喰らいます。いつの間にか忘八たちから一目置かれていた重三郎。そんな立場の変転が印象に残りました。もうひとつ印象深かったのは金貸しなのに気配だけで相手の感情を察する武闘家のような検校(演:市原隼人)。『鎌倉殿』からの共通キャストもこれで4人目くらいかな

鱗形屋が出した青本の進化系「金々先生」は、後に「黄表紙」と呼ばれるものの先駆けだそうで。「金八先生」ってここから名前取ったのかな?とも考えたのですが、さすがに関係ないようです。

 

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February 02, 2025

『べらぼう』を雑に振り返る 1月編

前から期待はしてましたが、始まってみると予想を越えてべらぼうに面白い大河ドラマ『べらぼう』。加えて『風雲児たち』ファンには見逃せないところも色々あり、3年ぶりに大河レビューを再開いたします。果たして完走できるでしょうか。

☆第1回 ありがた山の寒がらす

吉原大火から始まる第1回(吉原はよく燃えたらしい)。彼の地の案内所で働く青年蔦谷重三郎は、かつて世話になった元花魁が困窮の果てに亡くなったことに衝撃を受け、吉原に勢いを取り戻すために知恵を絞る。

恐らく登場時で22才ほどの蔦重。彼は決して長生きした方ではないんですが、さらに幼少時を回想3分で消化するというストロングスタイル。

この回のキーパーソンはやはり時の老中田沼意次。渡辺謙氏が演じているゆえイメージよりややかっこいい感じですが、賄賂も受け取りつつ私欲よりも国益を優先させているやり手の政治家として描かれていました。あと先走った蔦重が親分から喰らった「桶伏せ」の刑が面白かったです。

この回の『風雲児たち』ポイント:明和9年は「迷惑」に通じる

 

☆第2回 吉原細見『嗚呼 御江戸』

吉原に客を呼ぶにはガイドブック「細見」をいいものにすること、と思いついた蔦重は、人気作家平賀源内に序文を書いてもらおうと考える。だが平賀源内はなかなか見つからない。

平賀源内という人間の面白さがとりわけ印象に残る回。正体を隠して蔦重を翻弄するあたり時代劇の『暴れん坊将軍』か『水戸黄門』のよう。男色一筋だった、というのは知りませんでした。かつての恋人を思い目をうるませる姿にはホロリとさせられたり。

1回目から出てる鬼平は池波正太郎版よりちゃらい感じ。ひいきの花魁に気に入られるためにお金をばらまく姿は現代の配信者への「投げ銭」とよく似てます(スパチャって言うの?)

この回の『風雲児たち』ポイント:コマーシャルソングの先駆け「漱石香」の歌

 

☆第3回 千客万来『一目千本』

来客があったため冒頭12分ほど見逃し。江戸城内で権力をめぐる暗闘があったっぽい。

細見は良い出来だったが、いまひとつ吉原への客足が伸びない。文章だけでなく絵を載せたら…と蔦重は思いつく

人気の女郎たちをそれぞれ花に見立てるというアイデアはキャラに属性をあてはめるカードゲームのよう。苦労が多いのにみんなで理想の本を作るのがめちゃくちゃ楽しそうなあたりは同人誌作りのようでした。自分同人誌作ったことないけど。

今の蔦重が必死になってるのは、吉原に客を呼んで食うにもこと欠く女郎たちを食わせること。ただ彼が後世に名を馳せているのは吉原の大店の主としてではなく、写楽や八犬伝を世に送り出した本屋さんとして。自分のやり方に限界を感じ方向転換をすることになるのか?…は見続けてみないとわかりません。

鬼平はお金が尽きたのでいったん退場。名実共に「鬼平」となって再登場か。

 

☆第4回 『雛形若菜』の甘い罠

『一目千本』が大当たりし、ひとまず吉原に活気が戻る。親方衆は次なる一手として錦絵を載せた本を出せば勢いが続くのでは…と考え、その出版を蔦重に丸投げする。

冒頭で忘八の親方衆がなぜかみんな猫を抱えてニャアニャア言ってたりして、何を見せられてるんだ…とは思いましたがかわいかったからよし。そしてこの回では猫が大事な下絵を台無しにしてしまうという猫あるあるな現象も描かれます。ここで発揮されたのが蔦重のサイドキック唐丸のスーパー模写パワー。のちの写楽はこの子で確定でしょうか。

版元になる夢を抱くも組合の掟に阻まれ手柄を横取りされてしまう蔦重。西村まさ彦が西村屋をやってるのはスタッフのギャグでしょうか。

この回の『風雲児たち』ポイント:『放屁論』と『解体新書』。「田安家を絶やすけ」

 

老眼に鞭打ってまた一年がんばろうと思います。

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