2020年10月に観た映画を振り返る
10月は4本しか新作を観られなかったのですが、うち3本がアニメというちょっとアレな月間でした。
☆『マロナの幻想的な物語り』
ルーマニア・フランス・ベルギーの3カ国製作。家から車で1時間45分くらいかかる厚木の映画館まで観にいって来ました。マロナという1匹の犬の生涯を追ったアニメーション。限りなく優しく、切なく、無限の円環を感じさせる作品。
主人公のマロナがあまりかわいいデザインではないのですが、それがかえっていじらしさを引き立てます。『この世界の片隅で』で名演をみせていた「のん」さんの語り口がまたよかった。ストーリーは誰にでも共感できるシンプルなものですが、背景や人間はラリッたような大胆な画風で描かれており「幻想的な」というタイトルを裏切らないものとなっております。
☆『小さなバイキング ビッケ』
ドイツ・フランス・ベルギー合作。日本でも昔アニメ化された名作童話が、本国でCGアニメとなって帰ってきました。ただこちらの方が発祥が古いのにも関わらずCG化されるとことごとく『ヒックとドラゴン』とかぶってしまうのが辛いところです。伏線とか丁寧に張られてるあたりは感心したのですが。
あと何年か前やはりドイツで二部作で作られた実写版(!)はかなり旧アニメに忠実に作られている上にアクションも豪快でおすすめです。
☆劇場版『鬼滅の刃』無限列車編
いますごいブームですよね… 本日もあと少しで歴代一位の『千と千尋の神隠し』興収を越えそう、なんてニュースを目にしました。
わたしも『鬼滅』には年明けからはまっており、このエピソードも既に読んでいる状態で観賞したのですが、いやあ、まざまざと映画の力強さを見せ付けられました。というのは原作を読んだ時は「アラアラ切ないねえ」くらいの印象だったのに、スクリーンでド迫力のアクションを見せられたり、役者さんたちの肉声を聞いたりしますと押し寄せてくる感情の圧がまるで違うのですね。まんまとそれにあおられて大量の鼻水を噴出させられました。
あと夜の森をひた走る汽車のビジュアルも良かったです。『鬼滅』についてはそのうちじっくり一つの記事で書きたいところですが今の私には少々根性が必要です。
☆『マーティン・エデン』
米作家ジャック・ロンドンの自伝的小説をイタリアに置き換えて映画化。荒くれ水夫だった青年マーティンは、上流階級の令嬢と恋に落ちた影響で小説家になることを志すのだが… そいで実際に小説家として大成しちゃうからすごいのですが、そしたらそしたで新たな悩みに苛まれるのが文学的なところです。
原作ではまだあどけなさが残る少年だった主人公が、映画では堂々たる美丈夫が演じるので少々イメージが異なります。それ以外は概ねオリジナルに忠実でした。なぜわざわざ物語の舞台をアメリカからイタリアンに変えたのかはよくわかりませんが、こうした貧しい青年がかなわぬ恋をきっかけに徐々に憔悴していくというのは、どこの国にもいつの時代にもある普遍的なストーリーなんじゃないでしょうか。
わたしもそれなりに長いこと映画ファンとジャック・ロンドンファンをやってますが、彼の作品をスクリーンで観たのは今年が初めてでした。しかも2本も(もう1本は『野性の呼び声』)。そういう点でも今年は映画的に変わった年でした。これを機にさらに色々映画化されるといいなあ。
あとこの月はたまたま静岡県は草薙で開催されてた「富野由悠季の世界展」にも行って来ました。おびただしい展示品を目で追いながら、やっぱ御大のお仕事は
・草創期(海のトリトン~ダイターン3)
・成熟期(ガンダム~エルガイム)
・ガンダムに縛られ期(Zガンダム~Vガンダム)
・健康嗜好期(ブレンパワード~現在)
に分けられると思いました。展示で特に見入ってしまったのは劇場版『イデオン』のラストシーンや『ターンエーガンダム』の最終回など。
次回は11月に観た『ある画家の数奇な運命』『異端の鳥』『とんかつDJアゲ太郎』『ストレイ・ドッグ』などについて書きます。
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