June 22, 2022

シンは神学のシン 樋口真嗣 『シン・ウルトラマン』

謎の巨大生物「禍威獣」の頻出に悩まされる近未来の日本。政府はその脅威に対処するため、各方面のスペシャリストにより結成されたチーム「禍特対」を発足させる。禍特対が何度目かに出動した際、突如として上空より謎の巨人が飛来。禍威獣を圧倒的なパワーで退ける。「ウルトラマン」と名付けられた彼は人類の味方なのか、それとも…

庵野・樋口コンビが『ゴジラ』の次に挑んだリメイクは、やはり日本人なら誰でも知るあの巨大ヒーローでした。『シン・ウルトラマン』について今回はダラダラと書きます。以後完膚なきまでにネタバレしてしまうので、ご了承ください。まずは自分の最初の印象から。

最初に冒頭の超『ウルトラQ』オマージュには大興奮でした。続くネロンガ戦、ガボラ戦も大いに楽しませられました。しかしその後ザラブが宇宙人の格好のままコートを着て現れたのには、「これ、普通の人ひかないか?」と心配になったり。さらに追加で巨大な長澤まさみが登場した際には、元ネタ知ってる我々ならともかく、そうでない特撮慣れしてない方々はこのシュール表現の暴走に途中退場してしまうのでは…と(こちらの劇場ではいませんでしたが)。

そんな杞憂をよそに終盤へと進んでいくストーリー。結末がどうなるかハラハラしながら観てましたけど、この一風…というか十風くらい変わった作風に当惑を抑えきれないまま終わってしまった、というのが初見の感想です。

大抵はそこで「微妙に合わないところがあった」で終わってしまう話ですが、この映画にはなんか不思議な吸引力があって、鑑賞後1週間くらいずっとテーマや場面・セリフの意味などについて考えさせられてしまいました。そして自分の中で作品についてのあれやこれやを熟成させた後、もう1回観てみたら今度はしみじみと感動できたのですね。映画は毎週それなりに観てますけど、そんな風に味わえた作品というのはあまりありません。

 

で、最初すんなり入らなかったのが、なんでウルトラマンがそんなに地球人にひかれたのか、というところ。これに関しては彼自身も「色々考えたけどよくわからない」と述べています。思えば私たちも何かを好きになるとき、「なぜ好きになったのか」ということについてはあまり考えないし、よくわからないもの。「かっこよかったから」「綺麗だったから」とそれらしい理屈をつけることはできます。しかし「じゃあなぜかっこよい・美しいと感じたのか?」と問われたらこれはもう理屈では説明できないものです。そもそもあのウルトラマンの前衛的なデザインもヒーローにしては独特すぎる気がしますが、こんだけ世代を超えて絶大的な支持を得ているのですから不思議といえば不思議であります。

あと今回のウルトラマン、昨年エヴァンゲリオンがあったせいかやけに宗教的というかキリスト教的な話に感じられました。

・人間が超越的存在に生殺与奪の権を握られている構図は、旧約聖書で神が度々人々を災厄により滅ぼそうとした話を思い出させます。そのまま実行されたこともあれば、行いの良い僕のために思いとどまった例もあり

・ザラブやメフィラスはまんま悪魔。いかにもその人のため…みたいな風を装って、権力をエサにしたり欲望をあおって人間を堕落させようとします。アダムやエバは成功した例、ヨブやキリストは失敗した例

・超存在だったウルトラマンが人間と融合するところは神、もしくは神のようだったキリストが人間の形で地上に来たことを思わせます。で、キリストは人々に自己犠牲の精神を説き、最後は身を持ってそれを示しました(宇宙に展開されるゼットンのシルエットは十字架を連想させます)。その姿に心を打たれた人はキリストの弟子となるわけですが、本作品では禍特対の面々や迫害者の立場だったゾーフィがそれに当たるのかもしれません。

もう1点強く印象に残ったのは、アナログ的なもの…マーキング、匂い、情熱といったものがザラブ、メフィラス、ゾーフィら外星人のデジタル的な戦略に勝利するというもの。この映画もCGが多用されておりますが、樋口監督があるインタビューで言っていた「特撮は『諦め』の技術ではあるが、そこに実在するものには確かな力がある」という言葉を思い出させます。これからさらに徐々にこの「特撮」というスタイルは消えていくのかもしれませんが、情熱あるクリエイターが研鑽して用い続けるなら、将来も生き残っていくのでは…と希望を抱いてしまうわけです。この辺は図らずもいま同時期に公開されてる『トップガン マーヴェリック』と重なるところでもありますね。
わたしの好きなシーンをふたつ。ひとつはウルトラマンが時々山に行って神永の死体を眺めてるところ。「こいつなんであんなことしたんだろうな」とか考えてたんでしょうか。もうひとつはウルトラマンが犠牲になることに瞬発的に班長が反対する場面。人類のことを思えば土下座してでも「悪いけど頼む」と言うべきなのですけど、彼もまたウルトラマンが好きになっちゃったのでしょうね。
ラストで禍特対の面々は神永に「おかえり」と言いますが、そこにもう共に戦った銀色の巨人の魂はありません。そのことを知った時の彼らの気持ちを想像すると何とも切ないものがあるのでした。
ゴジラはともかく、ウルトラマンが一般の映画でやってどれくらいいくのだろう…と危惧しておりましたけれど、長澤まさみ・西島秀俊・米津玄師のネームバリューか、庵野・樋口のブランド力か、力の入った作りに往年の子どもたちが引き寄せられたのか、はたまたメフィラス山本耕史のキャラが強力すぎたのか…ともかく興行収入40億にはなんとか手が届きそうでホッとしております。
このあと樋口さんはまた西島氏と一緒に(監督ではないですが)『仮面ライダー Black Sun』に加わり、庵野氏は監督として『シン・仮面ライダー』を手がけるとのこと。引き続き注目して参ります。「デザインワークス」に書かれていた「その後の物語」もいつかぜひ観てみたい…



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June 20, 2022

2022年4月後半に観た映画諸々

6月終わる前に上半期観た映画の短評をまとめたかったんですが、なんか無理っぽいですね(諦めが早い)

悪あがき的に4月見た作品の感想だけでも仕上げておきます。

☆『アンネ・フランクと旅する日記』

製作国がベネルクス3国にフランス・イスラエルも加わった実に5か国共同製作アニメ。現代の少女がアンネの生涯を追いかけて旅をする…という内容かと予想していたら、なんと彼女が愛用していた日記が付喪神?となって21世紀に蘇るというなかなかファンタジックな作品でした。

監督は『戦場でワルツを』や『コングレス』のアリ・フォルマン。その2作と比べるとややメロウというか少女漫画チックな作風ではありましたが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

印象的だったのはアムステルダムのいたるところにアンネの名を冠した劇場やら図書館やら博物館やらが乱立してること。もしかしたらいまだに世界で最も著名なオランダ人は彼女なのかも。アンネさんは有名になることより、市井の女性として普通に生きることを望んだでしょうけどね。

 

☆『ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密』

ハリー・ポッター前日談第3弾。1作目はけっこう好きでしたが2作目でキャラが入り乱れてよくわからなくなり…というところでの最新作。また「つづく」で終わったらやだなあ、と思ってましたが、以外にも色々解決して幕となったのでよかったです。興行的に微妙なところらしく、全5作予定ということでしたが、さらに続くかどうかは五分五分のところらしいです。

正直言うと直前に昼飯をがっつり食べてしまったために序盤は割とウトウトしてましたが、ニュートさんとお兄さんが懸命にカニ歩きしてるところでシャキッと目が覚めました。あとタイトルにダンブルドアの名前が冠されてますけど、今回も一番光ってたのは太っちょのジェイコブ氏。彼に改めて惚れ直す約二時間でした。自分もあんなおっさんになりたい。体型だけは近いです。

 

☆『TITANE/チタン』

フランスの新鋭ジュリアーノ・デクルノーがメジャー2作目にしてパルムドールをもぎ取っていったという話題の作品。…なんだけど、生理的にじくじくと痛いシーンが多くちょっと苦手な作品でした。

あらすじは幼いころ事故で体に金属を埋め込まれた女の子が、成長して車に欲情するようになり、ついでになぜか殺人衝動まで抑えきれなくなってしまうというぶっとんだもの。うーん、カンヌよくわかんないね! さらには車とセックス(これが本当のカーセックスか)した結果謎の子どもまで宿してしまうという、罰当たりなマリア様のお話でもあります。

彼女を息子と勘違いして保護しようとするおっさんもよくわからない。少し前の『ロボコン』なみに「そうはならんやろ」のオンパレードで構成されています。これがデビュー作となる主演女優さんには「もっち自分を大事にしてください」という思いでいっぱいになりました。アート作品に造詣の深い評論家の解説が読みたいところであります。

 

☆『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』

昨年配信され絶賛されたアニメシリーズの劇場版。というかむしろアニメ本編の感想を。

小戸川は無愛想なタクシー運転手。彼の周りに引き寄せられるようにして集まってくるチンピラ、不良警官、ネット配信者、謎めいた看護師、仮面アイドル、拳銃魔といった不穏な者たち。そして彼らがすれ違うことで偶発的な事件が幾つか生じ、やがて大がかりな犯罪計画が持ち上がることに。

まるで『傷だらけの天使』か大沢在昌の小説のようなハードボイルドなストーリーですが、問題?はこれが全て動物キャラとなっていること。小戸川はセイウチでチンピラの「どぶ」はマンドリル、不良警官はミーアキャット…という具合に。これ何の意味があるのか? それとも意味なんてないのか?と思いながら観てましたが、その答えはというと(略)。

まあ動物になっているせいでどんな問題児もそれなりにかわいらしいというか、にくめなくなってる効果はありました。

特に評価したいのは最終話。それまでの伏線が見事に実を結んでいき、ラスト数分で最大の謎が明らかにされます。そして………な幕切れ。

劇場版ではその後も描かれるということで完全に釣られて観に行きました。非常にすっきりしました。これ、「映画からでも楽しめる」と宣伝されてましたが、やっぱりTVシリーズを愛した人たちへのご褒美みたいな映画だと思いましたよ。

 

次回は『ドクターストレンジMoM』『スパークス・ブラザーズ』『バブル』『犬王』などについて書くか、『シン・ウルトラマン』で1本書くか、というところです。

 

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May 31, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑤ 5月編

第17回「助命と宿命」

一の谷で平家を破り、勢いに乗る源氏の軍勢。だが鎌倉方には頭の痛い問題がひとつあった。それは今や賊軍の遺児となってしまった木曽義高の処遇。禍根を断とうとする頼朝に対し、義時らはなんとかして彼を救おうと奔る。

私は大体BSと地上波で二度この作品を観てるのですが、これまでで一番二度目を観るのが辛かった回。大体源平物では義経が義高を助けるべくいろいろがんばるのですけど、今回はその役割が義時に回ってきました。でも歴史的に見ても三谷さんの大河的にも助かるわけないんですよね…

義高君は恋というより大姫がなついてくれる妹のようでかわいくて仕方なかったんでしょうね(大姫の方はガチ恋)。泣けます。

この一件のせいで天下争いから脱落する武田信義。この先出番はありやなしや。

この回の重要なアイテム:義高の刀に絡んだ鞠の紐。鬼のような脚本だ…と思ったらこれは演出さんの発案だそうです。

 

第18回「壇ノ浦に舞った男」

明けて1985年。義経の快進撃が止まらない。屋島、そして壇ノ浦と平家を追い詰め、とうとう長きに渡る戦いに終止符が打たれる。戦無しでは生きられない彼を、この先待ちうける運命とは。

「義経転落編」前編。ぶつかればぶつかるほど息があっていく九郎と梶原景時にはついわくわくしてしまう少年漫画脳。漫画といえば20年以上愛読してる義経漫画『ますらお』はとうとうこの回で追い抜かれてしまいました。あとある方がツイッターで「今年は『平家物語』、『犬王』、本作と3回も平家の滅亡を見た」とおっしゃってました。ある意味グランドスラムですかね。お疲れ様でした。

後半はいわゆる「腰越状」のエピソード。専ら回想ではありましたが、源氏・平家・北条氏三つの兄弟の比較が見事でありました。死に際にあっても取り乱さない宗盛(小泉孝太郎)も印象に残ります。まあ彼の余計なアイデアのせいで頼朝義経はよけいこじれちゃうんですけど。

この回の重要なアイテム:草薙の剣とか腰越状とか里芋のにっころがしとか

この回のほっこりしたギャグ:八重さんのちょび髭

 

第19回「果たせぬ凱旋」

深まっていく頼朝と義経の対立。二人を和解させようとする義時・政子らの努力もむなしく、嫁の恨みも手伝って事態はどんどん悪化していく。

「義経転落編」中編。ことをこじれさせた原因の一人源義家殿はこの回でナレ死。「彼が味方につくと必ず負けた死神のような男」と痛烈に語る長澤まさみさん。まさみナレーションといえば法皇様の使った古典推理小説トリックに「まねをしてはいけない」と突っ込むところでも冴え渡っておられました。

あまりにも手のひらの返しっぷりがひどいゆえ、自分でも頼朝と義経がごっちゃになっていく法皇様。このドラマ海外の人にもぜひ見てほしいんですけど、ネックになりそうなのがこの「よ」で始まる人名が多すぎなところですね。向こうでは向こうで「ジョン多過ぎ」「アン多過ぎ」とかあるんでしょうけど。

この回の重要でもないアイテム:法皇の脈を止めてたピンポン球。この人いいとこひとつもなしだな

 

第20回「帰ってきた義経」

行方をくらませていた義経が、平泉に身を寄せているとの情報が鎌倉にもたらされる。最後の敵対勢力である奥州藤原氏を下すべく、頼朝と義時が企てた策とは。

1187年から1189年にかけてのストーリーで「義経転落編」の完結編。天才なんだけど人の心がわからぬ我儘坊やが色々経験して成長するも、その時もう彼の生涯は終わりに近づいていて…というあたりは『新選組!』の沖田総司を思い出させます。

帰ってきた首を前にして泣き崩れる鎌倉殿。どうしてもっと素直になれなかったのかねえ…と思いつつこのドラマで初めてもらい泣きさせられました。ちなみに他のドラマだと義経が死んだ時頼朝の反応は『義経』(中井貴一)では今回と大体一緒で、『武蔵坊弁慶』(菅原文太)ではのんきにあくびしてたり。

で、大抵の源平ものではここまでしかやらないんですよね。この後も描いたものというとそれこそ『草燃える』くらいかと。

義時はすっかり汚れ仕事を淡々とこなすようになり、『ゴッドファーザー』のマイケルぶりがだいぶ板についてきました。それもこれも愛する妻子のためなのですが…

この回の重要でもないアイテム:義経の畑を荒らしてたコオロギと弁慶の立ち往生アーマー

 

第21回「仏の眼差し」

義経が討たれるや否や奥州を平定する鎌倉軍。ここに頼朝は日本の覇者となった。戦も終わり久しぶりに人死にの出ない穏やかなエピソードになるかな…と思いきや幸せムードをまき散らせて死亡フラグを立てまくっていた方が約一名…

伝承ではもっぱら八重姫は子供を殺されて世をはかなみ、自らも湖に身を投げたという方が主流だったりするのですが、その話をこういう風にアレンジするか…と。キャスト発表で「義時の妻」役で他の女優さんが出てきた時、遠からず退場されるのだろうな、とは思ってましたが。ネットでは上総介、義経と同じくらい惜しむ声が大きかったです。『鎌倉殿』って個人的には「人の変化」を描くドラマだとも思ってるんですよね。八重さんも登場時のきつい感じからだいぶ変わられて、それこそ仏様のようになってしまわれました。文字通りの仏さまにもなってしまったのが辛くてなりません。

あとこの回でやっとこ13人最後の一人八田知家が登場。こんないかにもぽっと出みたいな人が、どうして合議制のメンバーになれたのか…

この回の重要でもないアイテム:天然ちゃんになってしまった大姫ちゃんが配ってたイワシの頭

 

先日ガイドブックpart2が出ました。32話まで粗筋が出てたんですけど、引き続き胃の痛くなる話が続きそうです。「亀の前事件」のあたりはあんなに楽しかったのにねー

 

 

 

 

 

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May 10, 2022

2022年4月の中頃に観た映画

ちょうど1ヶ月くらい前に観た作品群ですね。5本まとめてまいります。

 

☆『シャドウ・イン・クラウド』

クロエ・モレッツさんがグレムリンと戦うと聞いて「馬鹿かwww」と思いましたが、評判が良いうえに予告編見たら面白そうだったので行ってきました。

第二次大戦中の豪州の戦線。とある女性士官が密命を帯びて友軍の軍用機に乗り込むのだが、品も理解もないクルー、ゼロ戦の襲撃、さらに伝説の妖怪まで現れてクロエちゃんは大ピンチに。

前半は主に飛行機の下部銃座に萌えます。あの半球状のカプセルみたいな部分に機関砲がニョキッと突き出してるアレです。実際の戦争だったら狭い上に狙い撃ちされそうで、まず乗り込みたくない(というか戦争自体行きたくない)ポジションですが、映画で疑似体験してる分にはワクワクしてくるから不思議です。

そして本作品最大のウリであるグレムリン。正直「ストーリーにこれいるか!?」と思ってしまった自分がいます。ただこいつが出てこなけりゃ観に行かなかっただろうし、ぐっと地味な映画になってしまっただろうし、まあよしとしましょう。ギズモ君も出て来てくれたらもっとよかったです。

 

☆『ゴヤの名画と優しい泥棒』

一応本当にあったっぽいお話。1961年、ロンドンの美術館でゴヤの「ウェリントン公爵」が盗まれ、脅迫状が送られてくる。大胆不敵なその犯行に警察は国際的な犯罪組織によるものと推測するが、実際は田舎町に住む老人がNHK…じゃなくてBBCの料金徴収に腹を立てて行ったことだった…?

一応犯罪を題材にした作品ですけど、結末含めて誰も傷つかず、むしろほっこりとした気持ちにさせられる映画。なんというか良くも悪くもセキュリティや司法制度がガバガバだった時代だから成立する話だなあと。

で、事の真相に関して推理小説でいうところの「叙述トリック」みたいな技法が使われているのですが、映画でやるとあれはずるくないでしょうか。

先日の『ベルファスト』でも印象的な老夫婦が出てきましたが、あちらがベストカップルといっていいくらいアツアツだったのに対し、こちらの旦那さんは終始奥さんに怒られてて笑えました。

 

☆『アネット』

鬼才レオス・カラックス9年ぶりの新作にして初のミュージカル。コメディアン・ヘンリーとオペラ歌手のアンは熱烈な恋愛の末結ばれ、アネットという子供も授かるが、ヘンリーの人気が陰るに従い二人の間には暗い雲が立ち込めていく。

「アレックス三部作」や『ポーラX』など陰鬱で激しいロマンスで印象深いカラックスさん。こちらもまあ悲劇には悲劇なんですが主人公がコメディアンであったり、アネットちゃんがどう見ても人形だったり、次から次へ無茶な展開が続いたりとあまり悲しい気持ちにはなりません。最低な男がその行いにふさわしく転落していく話なので胸糞悪くもあるのですけど、エンディングでキャストたちが「気をつけて帰ってね~」と明るく見送ってくれるせいで、後味は妙にさわやかでした。

あとカラックスさんはやっぱり乗り物が大好きですね。今回も陸・海・空と色々乗りまくっておられました。

 

☆『コーダ あいのうた』

本年度アカデミー賞作品部門受賞作。ろうあ者の家族の中で、ただ一人耳が聞こえる娘の成長物語。おっさんなので女の子の青春ものとかあんましな~~~と食わず嫌い的にスルーしていたのですが、滅多に映画を褒めない友人が激賞していたので観ることにしました。

この映画の問題点?は予告編でほぼストーリーの8割を説明してしまっていて、そこまでは予想通りのことしか起きないこと。映画というより宣伝の問題でしょうか。ただいよいよクライマックスというところでこちらの想定を越える感動がやってきました。肝心要の歌唱シーンで無音になるという大胆な演出。「やっぱり聞こえないんだよね…」と悲しくなったところで、もう一度それを払拭するような歌の場面がありました。いや、よかったです。食わず嫌いはよくないですね。

あとお兄ちゃんが不器用ながらも妹に「家族の犠牲になっちゃいけない」と励ますくだり。ああいうの弱いのです。

これ、フランス映画『エール!』のリメイクで、こっちでは漁村だった舞台がオリジナルでは農村になってるとか。そちらの方も観たくなってきました(現金)。

 

☆『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』

日本ではネットフリックスのみでスルーされた『ヒットマンズ・ボディガード』の続編。続編だけが劇場公開ってちょっと珍しいケースであります。

内容はカリスマ的だったライアン・レイノルズ演じるボディーガードが、自分をその地位から引きずり下ろしたヒットマン(サミュエル・L・ジャクソン)と渋々手を組んでいやいや巨悪と戦うという話…だよな? 前作はまだボディーガードとしての矜持とか二人の奇妙な友情とか真面目な要素が3割くらいあったのですが、監督が続投してるのにも関わらず2作目は100%アホに振り切れてました。

『デッドプール』や『フリーガイ』などで何度も死んでるような役がよく回ってるレイノルズさん。この度も色々体当たりのアクションでがんばっておられました。ただ今回の彼はミュータントでもゲーキャラでもないのでひしひしと痛々しさが伝わってきました。もっと体を大事にしていただきたい。

タイトルにもなってる「ヒットマンの妻」サルマ・ハエックがまたはっちゃけてて最高でした。『エターナルズ』のインタビューで「情熱的なメキシコ女の役ばっかりでイヤだった」みたいなことを語ってましたが、ごめんなさい、やっぱりあなたは雄たけびをあげながら悪党の首をかっきるようなキャラがすごくよく似合ってます。

 

次回は『オッド・タクシー』を単品で書くか、『ファンタビ3』『アンネ・フランクと旅する日記』『TITANE』『スパークス・ブラザーズ』あたりをまとめて書きます。

 

 

 

 

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April 25, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る④4月編

第13回「幼なじみの絆」

痴話げんかもひと段落ついた時、鎌倉に不穏な知らせが入る。いま一人の源氏の棟梁・木曾義仲が平家と手を組んだ疑いがあるというのだ。頼朝はその真意を探るべく、義仲のもとに範頼と義時を向かわせる。それと並行しながら義時は諦めずに八重のもとに通い、けったいな土産を送り続けていた。

前回「亀の前事件」が1182年末。この回より1183年に突入です。第一話ラストで顔を見せたきりの義仲公が満を持しての登場となりました。「野蛮な田舎侍」と描かれがちな彼ですが、このドラマでは義を重んじるひとかどの英傑となっております。演じるは『西郷どん』で島津久光公をやってらした青木崇高氏。この方、中島哲也作品に出てくる時はすごい怖いんですよね… 余談ですが『武蔵坊弁慶』では佐藤浩市氏が義仲を、『義経』では巴御前を小池栄子さんが演じてました。

迷惑がっていたのにいつのまにか一途な思いに打たれて、とうとう八重さんは義時の思いを受け入れます。ちと強引な気もしましたが13回続いた八重さんのツンがようやくデレに転じて感激もひとしおでした。

その他、文覚と全成の呪術合戦、二人の元愛人を尋ねて散々な目にあう頼朝公など、前回に続きお笑いにおいても傑出した回でありました。

この回の重要でもないアイテム:範頼公のお腹を一発でクラッシュさせた川魚

この回の重要なアイテム:八重さんの氷の心を打ち砕いた義時の旬の贈り物一式

 

第14回「都の義仲」

子供同士の婚約を交わし友好ムードとなった頼朝と義仲だが、義仲がいち早く都を制圧し、平家を追放したことにより両者の間には再び緊張が走る。また鎌倉の御家人たちの間でも、先の不倫騒動や身内の争いなどで評判が落ちた頼朝を見限ろうとする動きが出始めていた。この危機を治めるべく義時は頭を悩ませる。

鎌倉への人質である源義高を演じるは現松本染五郎君17歳。前松本染五郎氏のお子さんで前松本幸四郎氏のお孫さんです。真に絵物語から出てきたような美少年で、鬼の政子さんも一発でメロメロになってしまいました。お父さんの義仲公とこれっぽっちも似てないんですけど、お母さん似だったのでしょうか。非の打ちどころのない御曹司でありながら「セミの抜け殻を集めるのが趣味」というところだけがちょっとひきます。

怒涛の勢いで時の権力者となったものの、京での作法まで学ぶ暇がなかったため、義仲はあっという間に立場が危うくなっていきます。前回での潔さなどからすっかり義仲びいきとなってる視聴者としては、意地悪そうな都の公家さんたちがどうにも頭に来ます。そもそもその統領である後白河陛下、生霊とはいえ「お前(頼朝)だけが頼りなの」とか言ってませんでしたっけ。それなのにあっちを頼ったりこっちを頼ったり、二股はよくないと思います。

そして裏で動き始める御家人たちの陰謀。歴史ドラマでは平家滅亡まで一枚岩のように描かれてる頼朝&坂東武者ですが、そうでもなかったのね…と思ったらこの謀反のくだりは三谷さんの創作なんだそうで。でもいかにもこんな話あったように思えます。次回の大いなる悲劇に向けての伏線なのでありますね。

この回の重要でもないアイテム:義高君が集めた200個以上のセミの抜け殻(うわあ)

この回の使える都作法:牛車(馬車だっけ?)に乗るのは後ろから・降りるのは前から

 

第15回「足固めの儀式」

一触即発の事態となってしまった頼朝と御家人たち。仲間同士で血が流れるのを防ぐため、義時は御家人の間で最も力を持つ上総広常に助力を仰ぐ。ひと騒動こそあったもののそれが功を奏し、無事事件は解決と思われた。だがそれは頼朝の参謀・大江広元が描いた策略の第一幕にすぎなかった。

放映されるやネットを阿鼻叫喚の地獄に叩き落した、本ドラマ始まって以来の衝撃回。わたしは上総さんが登場してすぐ検索してしまったので彼がどういう末路をたどるのか知ってましたが、それだけにクライマックスのシーンは胃がキリキリしました。まるでこの回だけ『鎌倉殿』というより『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいでした…というか、これからそうなっていくのかな?

上総殿も「老けたな」と言われただけで説得するはずの相手を切り殺してしまう凶状持ちではありましたが、三谷さんの脚本力と佐藤浩市氏の演技力で、すっかり「コワモテだけどかわいいところもあって憎めないおっさん」として認知されてしまいました。だから最後のあの「信じられない」という表情が本当に気の毒で。せめてもの救いはこれでマイナー人物だった上総広常の知名度がグーンとあがったことでしょうか。

で、これが数回前の義時だったら身を挺しても彼をかばったかもしれないのですよね。でももう彼にはやっとのことで結ばれた妻と、その妻の間に授かった子供もいる。だから心を鬼にしてでも広常を見捨てなければいけない。「お前はもうわかっている」「だんだん頼朝に似てきた」という義村のセリフがグサグサと突き刺さります。

この回の重要なアイテム:すごろくのサイコロと死後出てきた上総殿の計画表

 

第16回「伝説の幕開け」

明けて1184年。先に都に到着していた義経は、援軍が来るや否や破竹の勢いで義仲軍を撃退。その勢いを駆って休む間もなく一の谷に逃れていた平家追討に向かう。誰もが不可能と考えていた断崖絶壁からの奇襲を決行する義経。現代まで語り継がれる武神の伝説が始まろうとしていた。

先回に続いてお葬式ムードとなってしまった前半。これほど木曾義仲を清廉な人物として描いたのはこのドラマが初めてでは。そんな健気な義仲を「タイプじゃないし」と一蹴する後白河陛下。そんで代わりに来た義経がはかりごとをもちかけると「もうこの子めっちゃタイプ♪」とウキウキしてしまう。本当に困った法皇様でございます…

義経が駆け下ったと言われる鵯越は傾斜30度ほどで、たしかに騎乗したままでも走れないことはないんです。ですがこのドラマではさらなる急斜面から「馬を先に駆け下らせた」としていました。なるほど、こういう解釈もありかと。そのあまりの才能を嫉妬3割、感動7割で見つめてしまう梶原景時。これには『アマデウス』におけるサリエリを連想した人も多かったようです。

戦と次なる悲劇で息つく間もない中、わずかにほっとさせられたのが諸将の書いた報告書。和田義盛さんはさすがにかわいさアピールがくどくなってきました。

この回のそれなりに重要なアイテム:鹿のウンコ

 

気が付けば『鎌倉殿』も1/3。三谷さんに言わせると「頼朝が生きてる間はプロローグにすぎない」とのこと。プロローグ長くない??

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April 21, 2022

2022年3月に観たその他の映画と4月頭に観た映画

これまたなんつーなげやりな記事タイトル… まあ、そんな感じです。

 

☆『名付けようの無い踊り』

俳優としても知られる…というか、私たちのほとんどはむしろそっちの方で知ってる舞踏家・田中泯さんのドキュメンタリー。

泯さんのダンスは「場踊り」と呼ばれる一風変わったもので、路上や広場で突然即興のように始まるスタイルであります。時にはその場でゴロゴロねっころがったりしてしまう。背中が汚れますよ…と言いたくもなりますが、泯さんは一切お構いなしです。

そんな泯さんの幼少期の思い出がアニメで、若かりし頃の挑戦が記録映像・写真などで語られたりもします。血気盛んだったころにはチ〇コを布にくるんだだけのかっこうで踊り狂ったこともあったとか。しかしそれが世界のアートシーンに衝撃を与え、彼の名を一躍有名なものにしたというから驚きです。

正直言うとちょっとうとうとしたところもあったんですが、そんな夢うつつの状態がかえって映画への埋没感を深めてくれたような気もします。あと泯さんはたくさん猫を飼ってらしたので、猫に囲まれて踊る映像もちょっとほしかったです。

 

☆『SING/シング:ネクストステージ』

イルミネーションスタジオによる音楽アニメの傑作『SING』の6年ぶりの待望の続編。街のスターになったバスター・ムーンとその仲間たちは、今度はさらにその名を広めるべく、大都会のビッグステージへの出演を目論む。

そんなわけで序盤は華やかな巨大都市へ出た時の、地方者にしかわからない高揚感が存分に味わえます。また、ムーンさんたちがどんどんサクセスしていくその様子は、知る人ぞ知る作家だったガース・ジェニングスが前作で一躍世界的成功を収めた姿と重なります。

今回作品のカギを握るのは、はるか前に隠遁してしまった伝説のミュージシャン、クレイ・キャロウェイ。彼を表舞台に引っ張り出そうとするムーンですけど、キャロウェイは心を閉ざしてしまっていて、これが一筋縄では参りません。そのキャロウェイ、言語ではU2のボノ氏が、吹替ではB’zの稲葉浩志さんが声をあてておられます。お二人とも声優は初挑戦だそうなので、こちらでもオファーに際しいろいろ苦労があったのでは…と思っていたら、両名あっさり快諾されたとのこと。懐がお広い。自分は吹替で観ましたが、稲葉さん、なかなか自然に気難しいライオンの役をこなされていて、会話の場面では彼の顔は浮かんできませんでした。歌唱シーンになった途端「あ、B’zだw」となりますがw

そんな稲葉さん…じゃなくてキャロウェイをやさしく気遣うハリネズミのアッシュちゃんに泣かされました。『SING』のキャラではこの子がとりわけお気に入りです。

 

☆『ボブという名の猫2 幸せのギフト』

本当にあった猫と青年の奇跡的な物語『ボブという名の猫』の続編…というか前作で語られなかった知られざるエピソード、というとこでしょうか。街角で会ったかつての自分と似た青年に、「5分だけ」と言って主人公がジェームズさんがえんえん1時間半語るという構成。ジェームズさん、なかなか強引な方であります。クリスマスムービーでもあるのですが、こちらでは遅れて公開されたこともあり完全に時季外れでありました。まあ細かいことです。

最近のハートウォーミングな洋画には「幸せの~」という邦題がつくことが多いですけど、この映画はボブさんがアップになる度に本当に幸せな気持ちになれます。主人公が立派になった状態から始まってるので、前作のようなどん底には落ちまい、という安心感もあります。その分ハラハラすることはありませんが、そういうのはこの映画に求めてないのでそれでいいのです。

前作に引き続きお話のモデルであるボブさんがご自身を演じておられます。が、悲しいことにこの映画を撮ってほどなくして、ボブさん亡くなられたのだとか。なんとも切ない… これ、世界的な損失だと思うのですよね… ともあれ、ボブさんに感謝の気持ちを捧げると共に、うちの猫を大切にしていこうと誓うのでした。

 

☆『モービウス』

ソニー独自のアメコミユニバース「SSU」の第3作。持病を治そうと禁断の療法を自分に試した天才医師が吸血鬼になってしまうというストーリー。そんなもんで最初はヒーローものなのかホラーものなのかわからない独特の緊張感が漂っていました。とりあえずアメコミキャラは自分の体で軽率に人体実験しがちだと思います。他人の体でやるよりかはいいと思いますが。

そんなモービウスと対決することになるのが、同じ病気を患い、彼と同じルートで超人化した無二の親友のマイロという男。力を抑えきれず暴走してしまうのですが、境遇がかわいそうなことを思うとついつい同情したくなってしまいます。また序盤の二人で仲良く苦労しながら散歩してたシーンを思い出すとまた悲しくなってしまったり。このコンビ、『AKIRA』の金田と鉄雄を彷彿とさせるところがあります。もしかしてSSUは「男同士の面倒くさい友情」をテーマにシリーズを続けていこうとしてるのでしょうか。

ビジュアル面ではなんでそうなるのかよくわからんのですが、高速移動の際生じるカラフルな墨流しのような効果がお洒落でよかったです。

SSUはこの後『クレイブン・ザ・ハンター』『マダム・ウェブ』といったマイナーなスパイダーマンキャラの映画化を進めていくとのことですが、なんでそんな企画を!? 本当に売れると思ってるの!?とプロデューサー連を問い詰めたい気持ちでいっぱいです。なんとかスパイダーマンを上手にひっぱってこれたらいいんですけどね。

 

☆『仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル』

決定的なネタバレはしませんが、これから観ようという方は以下はスルーしてください。

 

 

 

TVシリーズ終了から10年。オリジナルキャストも全員集結した待望の続編… だったはずがどうしてこんなことに… まあ、なかなかに衝撃的な結末でした。そっちの方は観てないのですが『ゼロワン』といい『セイバー』といい、「ライダーの後日談は悲劇にしなければいけない」という呪いにでもかかっているのでしょうか。東Aさんは。こんなこと言いたくはないのですが、これならばTVシリーズの希望が持てる結末の方がずっとよかった。少なくとも映画をずっと覆ってる暗いムードは、オリジナルの『オーズ』のサンバのような明るいイメージとはだいぶかけ離れたものでした。

ただ、主演・渡部秀君のコメントなどを読むと、どうもこの結末は彼が望んでこうなったようなところがうかがえるのですよね。もしそうならば、私には何も言えません。彼の願いが果たされたことに「良かったね…」と思うのみです。

受け入れるのに少々苦労しましたが、自分としてはこの作品、「幾つかある世界線のひとつ」とすることで認めることにしました。大体日本が壊滅状態になってるのに歴代ライダーが誰も助けに来ないのはどう考えてもおかしい。だからこの作品は「オーズとバース以外ライダーのいない」パラレルな時空のお話なのですよ、きっと。

 

 

次回は『シャドウ・イン・クラウド』『ゴヤの名画と優しい泥棒』『アネット』『コーダ あいのうた』『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディーガード』などについて書きます。

 

 

 

 

 

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April 05, 2022

2022年3月に観た第94回アカデミー賞関連の作品

あの狂騒からはや一週間。先月はアカデミー賞作品部門にノミネートされた映画を5本観てたので、今回はそれらについて書きます。肝心の受賞作品『コーダ』を観てないわけですが… あと昨年公開された『ドライブ・マイ・カー』についてはこちらを、『DUNE』についてはこちらをごらんください。全然たいしたこと書いてませんが。

 

☆『ドリーム・プラン』

今年度の「実話を基にした」作品枠で主演男優部門受賞作。前人未到の業績を残したテニスのウィリアムズ姉妹を育てたお父さんの話です。

前半の舞台は『ストレイト・アウタ・コンプトン』で有名なコンプトン。ギャングとドラッグが溢れためちゃくちゃガラの悪い町です(とりあえず当時は)。そんな環境でヤンキーにからまれながら一生懸命娘をコーチするお父さんの姿には少々涙を誘われました。星一徹と違って子供たちをかわいがるときはめちゃくちゃかわいがりますし。よかったのはそんなお父さんの「我慢パート」があまり長くなかったことですね。サクセスの糸口をつかむと階段を軽快に駆け上がっていくように、一家の暮らしぶりもよくなっていきます。あと小さな女の子が弾丸のようなサーブをバチコーン!バチコーン!と放つアクションが小気味よかったです。

で、お父さん役のウィル・スミスはご存知の通り受賞の直前に司会のクリス・ロックに平手打ちを食らわせてしまい、現在苦境に立たされているようです。いまなお論議は絶えず、結局これが今年のアカデミー賞で最も印象に残った出来事になってしまったのはなんとも。

 

☆『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

今年度のネットフリックス枠その1にして、作品部門の最有力候補。ほかにも10部門にノミネートされてたのに結局監督部門のみの受賞に終わりました。しかしまあ、それを取ったのが久方ぶりにカムバックを果たしたジェーン・カンピオンというのはめでたいです。

一応西部劇の枠になるのかもしれませんが、銃撃戦とかは全くありません。だのに約二時間、なにかよくないことが起きるのでは…というヒリヒリした空気が漂い続けています。

いかにもカウボーイ然とした粗野な男・フィルが、自分のうちにある女性的な部分と葛藤するような話なのかな…と予想していたのですが、ちょっと違いました。中盤からは彼よりも、義妹の息子であるピーターの方が存在感を増していきます。このピーター君、線も細いしお花が好きだしとても強そうには見えないのですが、それがかえって異様な凄みというか迫力をかもし出すようなキャラクターでした。

シンプルながら雄大な山々の風景が美しく、やっぱりこれ配信よりスクリーン向けの映画では…と思いました。

 

☆『ナイトメア・アリー』

今年度のにぎやかし枠その1。我らがギレルモ・デル・トロ作品でいかにも異形のモンスターが出て来るような予告でありながら、今回は超自然的要素はにおわせ程度しかありません。善良な主人公が多いデルトロ作品にあって、ピカレスクな題材であったことも新機軸でありました。

前半のじめじめした南部っぽい風土はR・R・マキャモンの『少年時代』『遥か南へ』といった作品群を思い出させますが、後半では一転、雪の降る欲望にまみれた町でのノワール的な物語が展開されます。

ちょっと前だと『パッセンジャー』なんかもそうでしたが、「あー、この嘘絶対ばれるよな」というお話があります。こちらもその類の作品。ですので嘘がばれるその瞬間までひたすら悶々としながら画面を見続けることになります。

今年の作品部門にノミネートされたタイトルは、なんでか「親」が重要な要素となっているものが多かったですね。『ナイトメア・アリー』はそれが呪いっぽく描かれていたのが強烈でした。

 

☆『ベルファスト』

今年のモノクロ枠。7部門にノミネートされましたが脚本部門のみの受賞となりました。実は自分はこれが作品部門もっていくんじゃないかと予想してたのですが…

ケネス・ブラナー監督の自伝的作品。彼のキャリアって古典や名作のアレンジが目立つので、こういう一からオリジナルの映画はなんだか不思議な味わいでございました。1960年代、宗教・政治の問題が激化して暴動が茶飯事だったベルファストを舞台に、子供の目を通して当時の様子や悩む両親の姿が描かれます。

笑ったりひやひやしたり、はたまたしんみりさせられたりいい映画ではあるのですが、時間のコンパクトさと白黒画面のせいかちょっとインパクトに欠けるきらいはあります。ただブラナー少年が親しんだサブカル要素…恐竜百万年、チキチキバンバン、サンダーバードなどを目で追っていくのはオタク人として楽しゅうございました。あとシェイクスピアの第一人者であるブラナー氏も、別段上流階級の出ではなく、ごくごく普通の家庭で育ったというのは興味深いです。おばあちゃんと観にいってた『クリスマス・キャロル』が舞台へ感心を持つきっかけになったのかな…と想像したり。

 

☆『ドント・ルック・アップ』

にぎやかし枠にしてネットフリックス枠。ある天文学者が地球に向かって飛来する小惑星を発見。人類滅亡の危機を回避すべく主人公らは奔走するが、事態は『アルマゲドン』のようにはいかず…

せっかくネトフリ入ってるんだから授賞式の前に見とくか、くらいのモチベーションだったのですが、この馬鹿馬鹿しいムードが意外とツボにはまりました。世界が破滅にむかっていく話なのにねw でもこれうちで一応月額料のみで観たから楽しみましたが、映画館で観てたら虚無るか激怒してたかもしれません。

名だたる名優が(こんなアホらしい映画に)参加している中、とりわけ目を引いたのはいかにもスティーブ・ジョブズな社長を演じていたマーク・ライランスさん。この人も重厚な雰囲気あるのに役を全然選んでなくて素敵です。あとアリアナ・グランデが熱唱するコンサートのシーンが無駄に豪華でした。

 

観た作品を好きな順にあげると

①DUNE ②ドライブ・マイ・カー ③ドント・ルック・アップ ④ドリーム・プラン ⑤ナイトメア・アリー ⑥ベルファスト ⑦パワー・オブ・ザ・ドッグ

という感じでしょうか。次回は3月他に観た『名付けようのない踊り』『仮面ライダー000劇場版』『SING ネクストステージ』と、先週末観てきたばかりの『モービウス』『ボブという名の猫2』について書きます(予定) 

 

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April 02, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る③3月編

第9回「決戦前夜」

味方を増やし、石橋山の雪辱を晴らそうと盛り上がる頼朝軍。負けじと西からは清盛の孫・維盛を総大将に平家の軍が攻め上る。両者は駿河にて相対し、ここに世に名高い「富士川の戦い」が始まろうとしていた。

「決戦前夜」というタイトルでしたが、普通に戦の後までやり切った第9回。前半は頼朝を出し抜こうとする武田信義のこすからい策略が色々描かれてました。演じるは『新選組!』で武田観柳斎を演じた八島智仁人氏。今回もなかなかのうさん臭さです(失礼)。一説によるとこの戦い、頼朝が到着する前にほぼほぼ武田勢がカタをつけてしまった、なんて話もあるそうで。もしそうだとしたら武勲が現代にこれっぽっちも伝わってないのがいささか気の毒であります。

クライマックスにおける水鳥のはばたきの原因は、北条と三浦のおっさん同士のしょうもないケンカとアレンジされてました。このアホらしさに呆れた人が半分、大うけした人が半分というとこでしょうか。『修羅の刻』では陸奥鬼一が謎の拳法でもって驚かせた、ということになっています。

戦いに勝ったけど周りがついて来ず、落ち込む頼朝の前にやっとこ義経が到着。すぐさま感動の対面といかないのが三谷節。「顔そっくり!」のくだりは全国のお茶の間でツッコミの嵐が吹き荒れたことと思います。

この回の重要アイテム:平家を敗走に追いやった北条時政渾身のパンチと、安眠を妨げられた水鳥の皆さん

 

第10回「根拠なき自信」

平家の本軍を打ち破った鎌倉軍の前に、さらに多くの人材が集まってくる。切れ者、そうでもない者、うさん臭い者… そんな中義時は晴れてフリーとなった八重に果敢にアタックを試みるのだが。

ここにきてこの時点で生きていた頼朝の弟たちが勢ぞろい。少年漫画ならもうちょっとかっこいい絵面になるんでしょうけど、なんか当惑してる義経・怪しげな法力僧の全成・迷子でおろおろしてた範頼…といまひとつ締まりがありません。範頼さんはよく義経の話で引き立て役にさせられてますね。さらにいつに間にかいて勝手に場を取り仕切ってる足立遠元も登場。「一番得体が知れない」とか言われてましたが、一応十三人の一人で、平治の乱の頃からの歴戦の武将なんだそうです。

後半の山場は上総広常がメインとなった金砂城の戦い。直前に義経を「一人の勝手な振る舞いが」と諫めていたのにカっとなって話し合いを台無しにしちゃったのはわかりやすい特大ブーメランでした。このピンチを義経が解決する…のかと思いきやあっさり内通とかで勝ってしまう(笑) この辺の意表の突き具合というか予想を裏切るあたりが見事でした。

この回で激動の1180年が終了。第3回から8回もかけて扱ってたのですね。この次からもう少しまいていくペースとなります。

この回の重要でもないアイテム:三浦義村の腹をクラッシュさせた草餅と、和田義盛が捕まえてきた小鳥。なんつったっけアレ

 

第11回「許されざる嘘」

頼朝の今一人の弟である義円が鎌倉に到着。利発そうな義円がちはやほやされるのを見て、義経はどうも面白くない。一方京では巨星・平清盛が熱病により突然この世を去る。政子も再び懐妊し、いいことずくめの源さんご一家。しかしその裏で恐怖のアサシン・善児の影が再びちらつき始めていた。

『鎌倉殿』が始まって以来最もブラックな回。前半では義経が義円をだまくらかし、後半では頼朝がいったん許した伊東祐親親子を秘密裏に葬り去るという… このドラマの義経は天が二物(軍才・顔)を与えてしまったがゆえに、他が歪みまくりという大変困ったキャラになっております。ただ義円に関しては実際に頼朝と再会したという記録がなく、たぶん鎌倉には来てないんじゃないか…という説の方が有力のようです。それを思えばドラマに出られただけよかったのかもしれません。それくらい史劇で見かけない人物ですから。

そしてまたしても現れた『鎌倉殿』の死神・善児。彼が出てくる回は決まって誰かが血祭りにあげられるゆえ、オープニングでその名前が出てくるとTwitter上で悲鳴が沸き起こるようになってしまいました。鬼の監査役・梶原景時に拾われてしまったので、これからもいっぱい出番がありそうです(怖いなあ)。演じる梶原(笑)善さんは三谷さんの劇団時代からの盟友。『王様のレストラン』のひねたパティシエとか良かったんですが。

伊東の爺様が亡くなったのが1982年の初めとのこと。というわけで1981年はこの回だけで終わりとなりました。

この回のそこそこ重要なアイテム:梶原さんがセロテープで張り合わせた義円の別れのお手紙。

 

第12回「亀の前事件」

頼朝に待望の男児が誕生。政子がそちらにかかりきりなのをいいことに、鎌倉殿は愛妾・亀の前とますます懇ろになってしまう。このことを知った時政の妻・牧の方は、最近政子ばかりが目立っていることにいら立ちを覚えていたため、ストレス解消のため亀の前の「後妻打ち(うわなりうち=前妻が後妻の家を壊してもいいという京都の風習)」を決行しようとする。事態を収拾しようとするも右往左往するだけの義時は各方面にひたすら頭を下げ続ける。

ギャグ回(笑) 史実には確かに残ってる話ですが、要は頼朝の浮気がばれて政子が激怒した、という内容なので。その史実の合間を縫ってテンポのいい素っ頓狂なセリフの応酬が続きます。まさに三谷さんの脚本家としての真骨頂。これがあまりにも楽しかったせいか、ネット上では現時点の「ファンが選ぶベストエピソード」なんではないかという疑いすらあります。

で、台風の目たる亀さんが実にひょうひょうとしていて、自分を中心に周りがこじれまくっているのに、どこ吹く風とばかりにマイペースを貫く姿が痛快でした。家を燃やされて憔悴しちゃうのかと思いきや、意外と元気そうに上総殿の屋敷をふらついてたのでなんか安心いたしました。なんのかんの言いながら人死にの出ない回は平和でいいものです。

京都からさらにアドバイザーとして中原親能と大江広元が着任。苗字が違いますがこの二人はご兄弟で後の13人のメンバーであります。この回では大江さんが割と目立ってたのに対し、お兄さんの方は「いたの?」という感じでした。

この回のそこそこ重要なアイテム

見事に切断された牧宗親のモトドリ。この時代の社会人にとって髪を結ってる部分を切られるのは、公衆の面前でパンツを脱がされるようなものだったらしいですが… ホントか!?

 

次回からは木曾義仲が本格登場。いよいよ群雄割拠時代的に入り、平家との戦いも激化して参ります。がんばれ鎌倉殿とその一党。

 

 

 

 

 

 

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March 30, 2022

バットマン来るかとゴッサムの外れまで来てみたが マット・リーブス 『ザ・バットマン』

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世界有数の繁栄を誇りながら、犯罪や貧富の差など多くの闇を抱えた都市・ゴッサムシティ。選挙を目前に控えたその町で、市長がリドラーと名乗る愉快犯に惨殺されるという悲劇が起こる。2年ほど前から蝙蝠の装束に身を包み、自警団活動を続けていた富豪の青年ブルース・ウェインは、市警のゴードン警部と協力しながらリドラーを捕まえるべく奔走する。だが彼の捜査をあざ笑うかのように、リドラーは挑発めいたメッセージと共に第二、第三の犯行を繰り返すのだった。

1989年の『バットマン』から数えると、『バットマン・ビギンズ』(2005)、『バットマンVSスーパーマン』(2016)と来て、実写映画としては4度目の起点となる作品。今回の特色はまずバットマンであるブルース・ウェインが比較的「若い」ということ。『バットマン・ビギンズ』でも駆け出しのころは描かれてましたが、始めた時点で既にいい年だったのであまりヤングマンな印象はなく、むしろそれなりに落ち着いた感じでした。しかし今回のロバート・パティンソン演じるバットマンは自分の殻にこもりがちだったり、衝動のコントロールに苦労していたり…という面がこれまで以上に強調されていて、「大人」と呼ぶには未完成な若者として描かれております。自分を心配する執事のアルフレッドにまで心無い言葉を吐いたりして、まるで反抗期の中学二年生のよう。一方で子供や動物には気遣うそぶりを見せたりしていて、「根は悪くない子なんだな」と思わせられます。

もうひとつの特色はこれまでのシリーズの中で最も現実的である点。今回メインの悪役であるリドラーにせよ、町の顔役であるペンギンにしても実際に存在してそうなキャラであります。今回のリドラーのモデルは全米を震撼させた連続殺人鬼「ゾディアック」だそうですし、ペンギンにいたっては暗黒街の顔役にこんなタイプごろごろいそう。はっきり言っちゃうとバットマンが一番現実離れしております。…それはともかく、ブルースはリドラーとの戦いを通してゴッサムという町の抱える闇や社会問題とも対峙せざるを得なくなっていきます。この映画でいま一人バットマンの前に立ちふさがるのが、ペンギンのさらにボスであるファルコーネという男。コミックでは『イヤーワン』『ロング・ハロウィーン』などで重要人物として登場しますが、ぶっちゃけちゃうと名前の通りバットマン版ドン・コルレオーネ=ゴッドファーザーであります。警察内部も脅しと賄賂で掌握し、ブルースとゴードンを悩ませます。権力者の腐敗、それによりもたらされる不公正というのは、珍妙なヴィランよりよほどリアルで手ごわい相手であります。『ザ・バットマン』ではこれまで映画ではそんなに踏み込まれなかった、大都会のコンフィデンシャルに果敢に踏み込んでいきます。

いわゆるDCEUの作品ではスーパーマンと肩を並べ宇宙人と戦うバットマンが描かれました。自分はそういうのも嫌いじゃないですが、やはりバットマンって超自然や超科学の関わらない状況で、地道に町の問題に取り組んでいく姿が一番しっくり似合ってしまうんですよね… というわけでスーパーなヒーローとしてのバットマンはDCEUで、リアルな世界観で犯罪と戦うバットマンはこちらで…とユニバースを分けたのは賢明だと思いました。お子様たちに説明するのがちと難しいですけど。

「キャラクターが多くてストーリーがばらける」という批判もあるようです。しかし自分としては監督は「親を失ったブルース」「親に捨てられたセリーナ」「親のいないリドラー」の対比がやりたかったのかな…と思いました。家庭環境が恵まれなくても前向きに奮闘するものもいれば、ダークサイドに落ちてしまうものもいる。その狭間で揺れる者もいる…ということで。ただペンギンに関しては確かにいる意味そんなにあったかな?と思いました。この後スピンオフも作られるようですし、どうも監督のお気に入りキャラという疑いが晴れません。

ゴッサムについて調べていくうちに、父は本当に清廉だったのか信頼がゆらぎはじめるブルース。けれどもアルフレッドの言葉を信じて、父が目指していたものを自分なりに引き継ごうと成長していきます。バットマンといえば「取り締まる者」「制裁を加える者」というイメージがありますが、この映画では終盤「救出者」「奉仕者」としての面も描くことによってその成長を明らかにします。そういうバットマンってあまり観たことがなかったので、なんか新鮮でありました。

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さて、この時点でもう大概ネタバレですが、以下はさらにネタバレ大全開で好きな要素・ポイントを列挙してみます。

・夕焼け(朝焼け?)を背に浮かび上がるバットマンとセリーナの真っ黒なシルエット

・手持ちの武器が乏しくなった時、胸のシンボルをガチャッと取り外すバットマン。それ、着脱可能だったんだ…と

・警官たちに取り囲まれた際、「俺をなぐってカギを奪え」と小芝居でバットマンを逃がそうとするゴードン警部。自分の首が飛ぶかもわからんのに… おそらくこの前の2年間に色々あったんでしょうけど、そんな二人の絶対的な信頼関係が微笑ましゅうございました。

・その直後、ムササビスーツで滑空したものの、豪快に車両や地面にバウンドしてしまうバットマン。過去の映画でもそうでしたが、蝙蝠モチーフのくせに自由自在に飛べないんですよね。そんな不自由というか不器用なところが好きです。

・アルフレッドと言えばダークナイト三部作までは「じいや」、DCEUでは「叔父貴」という感じでしたが、今回は中二の青年を温かく包み込むようなオカンみに溢れていました。きつい言葉を言われてもじっと耐え、「ちゃんとバランスとってベリーも食べなさい」と健康の心配までする。演じるアンディ・サーキスはこれまでモーション・キャプチャーで怪獣・猛獣・妖怪を名演し、凶器と憤怒の権化みたいな方でしたが、人間体だとこんなに母性豊かになられるんだと…とその役者力に感服いたしました。あとこの人昨年『ヴェノム』続編の監督までやってましたよね。

・ラストシーン。バックミラーでつかの間セリーナの影を追い、きっとむきなおるブルース。こういう一抹の寂しさを感じながらも揺るがぬ決意を感じさせる描写がツボでありました。セリーナが口にしてた「ブルードヘイブン」は初代ロビン=ナイトウィングのホームグラウンドですが、ロビン登場の伏線でしょうか。

全米ではまたしても大ヒットを記録し、ほぼ続編も内定している『ザ・バットマン』。先に『猿の惑星』で神話を見事に完成に導いたマット・リーブスの手腕に期待してます。最後に映像作品を中心に各バットマンのキャラ付けをまとめた表をこしらえてみました。今回初めて闇の騎士に触れた方は今後の作品の鑑賞の参考になさってください。

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March 21, 2022

2022年2月に観た映画

☆『ゴーストバスターズ/アフターライフ』

これは早くも記憶が薄れつつあるな…w 数年前全員女性キャストでリブートした『ゴーストバスターズ』ですが、今回は80年代のオリジナル版と直結した続編となっています(ややこしい)

これまでは大都会でドタバタお化け退治をする話だったのに対し、今回はさびれ気味の地方の町で、時にしんみりしながら子供たちががんばる話になっています。ぶっちゃけちゃうと「ゴーストバスターズ」というよりスティーブン・キングっぽいんです。その辺は親子の間柄ながらエンターテインメント職人で1・2作目を手掛けたお父さん(アイヴァン・ライトマン)と、等身大の人間ドラマを得意とする息子さん(ジェイソン・ライトマン=今回の監督)の資質の違いからくるものでしょうか。

この作品にとって不幸だったのは、ここ2,3年くらいの間にシリーズ総決算的な作品が続いたもんで、それらに比べると微妙に影が薄くなってしまったこと。少し前にも『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』や『マトリックス レザレクションズ』がありましたし…

個人的にツボだったポイントは専用車両から銃座がガコーン!と飛び出してくるギミック。あれはいい。

 

☆『大怪獣のあとしまつ』

これはちょっと感想が書きづらいな…w 突然死してしまった大怪獣の処理をめぐり日本政府が右往左往するお話です。監督が三木聡氏という時点でふざけた作品になるだろうと予想していたのですが、その独特のお笑いセンスにいら立った方が続出し、公開するやいなやネットでは怒りのコメントが殺到することとなりました。

ただまあわたしは料金分くらいは楽しみました。やっぱり大怪獣は大スクリーンで観た方がいいので。たとえ登場時から死んでいたとしてもです。

以下結末までネタバレで。

 

 

恐らく監督さんは「きちんと後片付けするウルトラマン」を描きたかったのかと憶測します。ウルトラマンっていつも怪獣倒したら速攻で帰っちゃいますからね。ただ最初から変身してさっさと後片付けすりゃいいのに、ラストまでそうしない。これはたぶん「人間体であらゆる努力を尽くしてからでないと変身できない」、『帰ってきたウルトラマン』(通称「新マン」)オマージュなんだと思います。だから主人公の名前が「アラタ」なのでは。どうでしょう。

 

☆『鹿の王 ユナと約束の旅』

東洋的ファンタジーの名手、上橋菜穂子先生の小説のアニメ映画化。『もののけ姫』に関わったスタッフの作品ということで、なるほど背景や美術は目を見張るものがありましたが、この個性的な世界観に入り込むのにいささか努力を要しました。これはいい悪いというより、私個人の好みに負うところが大きいかも。あるいは先に原作を読んで作品世界になじんでおけば、もっとすんなり没入できたのかな? …と言いながら、最後の方ではヒロイン?のユナが泣きじゃくる様が下の姪っ子とよく似てたので、ちょぼちょぼ鼻水が垂れたりしました。あと主人公ヴァンの岩壁のような顔面と、ユナの歯の抜けたキャラデザは割と好きです。

 

☆『さがす』

新鋭の片山慎三監督作品。「凶悪犯を見つけた。捕まえて懸賞金をもらう」と言って、姿を消した父。残された娘は父を懸命に探し求めるが。

力作でございます。ストーリーテーリング、脚本の構成・伏線、キャストの鬼気迫る演技、ラストに残された余韻、全てに深いため息をつかされました。もちろんがっかりして、ということではなく、しみじみ感じ入って…ということです。特にいつも福田雄一作品なのですっとぼけた姿を見せている佐藤二郎氏が苦悩したり闇を見せたりする場面などは、失礼ながら「こんなことも出来るんだ」と感服させられました。

監督はポン・ジュノ氏の助監督をつとめてたこともあるそうで。そのせいか近年の韓国ノワールに近い空気を強く感じました。一方で非情になりきれない作風に慰められたりもしました。

偶然にも『ドライブ・マイ・カー』と共通するところも幾つかあり。妻に先立たれた男が、娘(あるいは娘に似た存在)に救われたり、血の匂いのするイケメンに振り回されたり…などなど。

趣味の悪いところもあるので、そういうのが苦手な人にはすすめられませんが、もしかしたら今年はこれを越える邦画には出会えないかも。

 

☆『アンチャーテッド』

人気ゲームの映画化。これまた記憶がぼちぼちおぼろげ。そんなのど越し爽やかな生ビールのような作品です。

財宝を追って姿を消した兄を追い、トレジャーハンターの青年が怪しげな美術商のおっさんとコンビを組んで、冒険したりバトルしたり…という内容。前半はあまりにも『インディ・ジョーンズ』のそっくりで「もう少しひねろうよ」と思いましたが、クライマックスのシーンでは今まで見たことがないようなビジュアルを披露してくれて興奮いたしました。

 

☆『シラノ』

これまで何度も映像化されたり翻案化されてきた『シラノ・ド・ベルジュラック』の最新バージョン。先に上演された戯曲が元になっていて、シラノと言えば「鼻がでかい」というのが特徴だったのに、今回は小人症という設定になっております。主演は舞台版も務めたピーター・ディンクレイジ氏。様々な作品で名バイプレイヤーとして活躍されてきましたが、メジャー映画で堂々たる主役というのは初めてでは。その点でなにやらほっこりとさせられました。あとあの体でチャンバラとかできるのかな…と思ってましたがこれまた見事にアクションをこなしており、これまた心配ご無用でありました。

ジョー・ライト監督お得意の静謐で美しい舞台背景も堪能。今年のアカデミー賞では衣装デザイン部門にノミネートされています。

 

☆『ナイル殺人事件』

2017年に公開されたアガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』の続編…というか同じシリーズ。冬景色の列車旅行から、今回はトロピカルなエジプトの船旅を楽しむことができます。もちろん連続殺人込みで…

「背景があまりにもCGっぽい」という意見もありますが、こちとら合成ラインが浮きまくってるような特撮で育った世代なので、そういうのは全く気になりませんでした。むしろ少し前にプレイした『アサシンクリード オリジンズ』を思い出してワクワクさせられました。

探偵というのは基本傍観者・観察者であり、こちらの名探偵ポアロも前作ではそうだったのですが、今回は親友が事件に深く関わってしまったこともあって強い葛藤に苦しめられたりします。また、容疑者らの愛の情念を見せつけられて自身のつらい過去を思い出してしまったり。自分はそういう人間味の濃いポアロの方が好きですけど、そのために今回は色々傷ついてしまったようで何やら気の毒でありました。

ちなみに犯人ですが、見事に意表をつかれました。前作『オリエント~』の犯人はあまりにも有名なのでサプライズがありませんでしたが、今回は普通に驚かされました。ただひとつ犯人につっこませてもらえるならば、どうしてポアロを同じ船に乗せちゃったのかと言いたい。自分たちの計画に相当自信があったのかもしれませんが、「世界最高の探偵」を同行させちゃったらどうやったって真相を暴かれちゃうでしょうよ…

 

3月は『名付けようのない踊り』『ドリームプラン』『ザ・バットマン』『仮面ライダーオーズ』『SING ネクストステージ』と観ました。あと『ナイトメア・アリー』『ベルファスト』を鑑賞予定なので。次はその辺の感想を。

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