October 02, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑨9月編

第34回「理想の結婚」

後味の悪い頼家暗殺の後、鎌倉は実朝を中心とした体制を一層強いものとしていく。さすがに自分の罪の重さに落ち込んでいた義時だったが、影の薄さナンバー1だった13人の一人二階堂行政から孫娘を嫁にとすすめられ、年甲斐もなく(地味に)浮かれ出す。

タイトル元は『最高の離婚』でしょうか。たぶんまだ1204年ごろのお話。陰残な内ゲバがず――――――っと続いていて疲れ切った視聴者たちに、オアシスのように訪れた息抜き回。「義時最後の妻」である「のえ」さん、清純派であまり菊地凛子っぽくないなあと思っていたら終了間際にやらかしてくれたというか笑わせてくれたというか。これをもって義時の「おなごはキノコが好き」説は完全に誤りであったことが証明された感。

この回は実朝を鍛えるべく各御家人たちが各々得意分野を代わる代わる教授するシーンも楽しかったですね。義村の「おなごとのあとくされの無い別れ方」講座はいらない、というか無い方がいいと思います。

この回の重要なアイテム:何度目かの山盛りキノコ ナベになった鹿之助

 

第35回「苦い盃」

実朝がまだ若いため、実質鎌倉のトップに立っているのは執権・北条時政。だが基本は田舎のおっさんなので、その治めっぷりは情に流されやすくいい加減な采配も多い。そこへ来て妻のりくに煽られて、さらなる領地拡大を狙い始める。そのことが発端で、婿であり同胞である畠山重忠との間柄に亀裂が入っていく。

前回に引き続き笑える場面も多いのですけど、それと並行して畠山さん退場の前奏曲が奏でられていくのがつらい回。引き続き、といえばいまひとつ掴みどころのなかった実朝君はアットホームな和田邸で鹿鍋をいただいてから、どんどん彼と奥さんになついていきます。その様子が大変微笑ましいのですけど、不在の間に御所は大騒ぎになってしまい、こいつら絶対あとですげえ怒られるぞ…とハラハラしました。

そして抜き打ち的に出てきた謎の老婆=大竹しのぶ。悩める実朝君に「お前の悩みはお前だけのものではない」と、見かけとは裏腹にとてもいいアドバイスを送ります。それを聞いてさめざめと泣く実朝君。なんていい子なんでしょう。前二代がアレすぎたというのもありますが、この子は一体誰に似たのでしょう。

この回の重要な教訓:よくわからない書類にハンコは押さない 雪の日は出歩かない たまには風呂に入る

 

第36回「武士の鑑」

悪妻に煽られまくった時政パパはとうとう重忠を陥れることに成功。ここに「畠山重忠の乱」が勃発。ただ重忠は軍勢を集めることはせず、恭順もせず、少数の兵で武士の誇りを守ることで歴史に名を残そうとする。

1205年の出来事。この回はもう畠山重忠&中川大志君の独壇場でありました。顔もいい、頭も切れる、武芸も達者となればちょっと嫌味なキャラになりそうですが、おごるところは少しもなく、質実剛健を地で行く畠山殿にただただ感服し、泣かされた回でありました。まだ若いのに貫禄たっぷりにそれを演じきった中川君がまたすごい。

また、悲痛なエピソードに笑いを添えてくれた和田さんとのあれこれも印象深かったです。「あいつとは同じものを感じるのです」とか「なんでわかったんだ!」とか「腕相撲で決めよう」とか。この「美男と野獣」コンビも見納めと思うと寂しい限りでした。クライマックスにおける小四郎との『クローズ ZERO』みたいなヤンキーバトルも迫力ありましたね。

結局なんでいるのかわからないままに足立遠元氏もこの回でフェードアウト。「13人」も残り7人となりました。

この回の重要なアイテム:重忠と和田さんの別れの水杯

 

第37回「オンベレブンンビンバ」

時政の悪政により無実の罪で討たれた重忠。鎌倉でさらなる悲劇が起こらないようにするため、政子と義時は父と戦う決意を固める。両者の激突は必至…かと思われたが、なぜか時政は酒と魚持参で一人政子たちの元を訪れる。そして北条親子の最後の宴が始まる。

突然の謎タイトル。ネットでは「イタリア語で『子供のための影』の意味では」という考察が流れてましたが、単に大姫の呪文「オンタラクソワカ」を適当に覚えていた、ということでした。誰もちゃんと覚えていなくて放送禁止すれすれのワードまで飛び出して来ましたが、そのあまりの和やかさに「毎回こういうのでいいんだよ! もう史実も無視していいから!!(駄目です)」と思わずにはいられませんでした。

時政さんも色々ひどいことやってんですけど、「もうこここまでかな」と悟ったような笑顔を見せられると坂東彌十郎さんの人柄もあってか、速攻で許したくなってしまうのがずるいですね。和田さんが結果的に上総広常の思い出話をしてたのにも和みました。

この回の重要でもないアイテム。トキューサがモチモチモチモチしてた餅

 

先ごろ「全48回」という発表がありましたので、『鎌倉殿』もあと残り11回。早くも寂しくなってきました…

 

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September 04, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑧8月編

第30回「全成の確率」

この題は『寄生獣 セイの格率』からでしょうか… 頼家をプチ呪いしていた証拠が見つかってしまった全成は、死罪こそ免れるが常陸の国に流される。事態は収拾したかに見えたが、比企と頼家の軋轢が原因で彼はさらに追い込まれることに。

1203年のお話。数ある頼朝ブラザーズの中でも最もうさんくさく、そして最後の一人となってしまった全成の退場回。「大した能力はない」と自ら認めていた彼ですが、今わの際の大一番で見事な暴風雨を呼び起こしてくれました。これ、日蓮上人が処刑されそうになった時、異様な光がひらめいたとかいう伝説を意識してたのかな。ともかく貴重なお笑い要員がまた一人減ってしまいました。『七人の侍』の「笑わせてくれるやつがいなくなるといよいよ厳しい」みたいな言葉が思い出されます。実際の全成さんはもっと豪放磊落な人物で、頼家に睨まれたのも呪ったからではなく堂々と逆らったから…ということのようですが。

比企能員を追い詰めるべく謀略を巡らすものの、いるべき場所に頼家はおらず豪快に空振りしてしまう義時。思わずテレビの前で「かっこわり~~~」とつぶやいてしまいました。

この回の重要な教訓:見つかったらまずいものを回収する時はしっかり数を確認するべき

この回の久しぶりに聞いたフレーズ:臨兵闘者開陣列在前

 

第31回「諦めの悪い男」

突如として病に倒れ、重篤となってしまった頼家。息を吹き返す見込みは乏しく、その死後鎌倉を動かしていくのは北条か比企か。二つの一族はとうとう全面対決に突入する。

引き続き1203年のお話。まあこの回は佐藤二朗さんのほぼ独断場でですね。彼は「僕はこの前の回で見せ場は終わったと思ったんだけど、小栗君や坂東さんがさらなる高みにひきあげてくれた」というようなことをおっしゃってました。そう、時政演じる坂東彌十郎氏との「これから殺し合うことがわかってるのに、和みながら語り合う」シーンは『鎌倉殿』屈指の名場面でした。 正直数回前から「はよ〇ね」と思っていた比企殿ですが、亡くなってしまうとそれはそれで寂しくなってしまうのがこのドラマの不思議なところです。あの独特な「こしろう~」という口調をついつい真似して寂しさを紛らわせています。

この回はお盆でこっちに来ていた姪っ子と観ていたのですが、クライマックスの鬼気迫る暗殺シーンで姪ちゃんはひたすら無言で顔をひきつらせてました。NHK&三谷さん、もっと子供の情操のこともかんが…いや、いいです。

この回の使ってみたいフレーズ:「手段を選ばねえのが坂東武者よ! 名前に傷がつくくらい屁でもねえ!」

 

 

第32回「災いの種」

九死に一生を得て息を吹き返してしまった頼家。彼の妻や舅を殺してしまった北条の面々は頭を抱える。なんとかごまかそうと悪あがきを試みるが、結局母の政子が真相を伝えることに。

いや、世の中こういうこともあるのですね… 一時は「ダメだこいつ」と思ってた頼家君ですが、この回は気の毒で気の毒で気の毒でなりませんでした。他にもしみじみと悲しいエピソードがバンバン連発された回。義時のためを思い自ら離れていく比奈、息子に拒絶される政子、将軍職を追われ泣き崩れる頼家、そして意外や意外、一幡を殺せと言われ動揺する善児… 本当に大河の主人公が「後々禍根になるから」と子供を殺そうとするってどんだけ容赦ないんですか。視聴者にわずかな逃げ場所すら用意してくれません。

この回の重要なアイテム:兄の形見のヒスイ玉だったかなんだか。時房くんが「兄上~」と必死に語り掛けてたのに義時は自分の兄のことを考えてたのは貴重なお笑いシーン

 

 

第33回「修善寺」

修善寺追われた頼家に代わり、鎌倉では頼朝の次男・実朝が新たなる将軍となった。しかし当然頼家がそれで納得するわけはなく、流された地で現政権への陰謀を練り続ける。一時は静観していた義時だが、とうとうそのままにはしておけない事態となり…

1204年のお話。悲運の将軍・頼家の末路が粛々と描かれていきます。が、びっくりしたのは超絶アサシン・善児もこの回で最期を迎えたこと。それも弟子であったトウの手によって。三谷さんはトウ役の女優さんに「『火の鳥』って読んだことある?」と尋ねたそうですが、このコンビ「黎明編」のナギと猿田彦を意識してたのかなあ。あちらはラストは親子の絆で結ばれたのですが。

頂点を極めた男と、時代の影に隠れ続けた者の壮絶な死。この回の放送が終わった時はしばし呆然としてしまいました。本当にわたしはなんでこんなしんどいドラマをしんどい思いして夢中で観てるんでしょうね。自分で自分がよくわからなくなってきました。

悲劇の地として記憶に刻まれてしまった修善寺ですが、現在は自転車競技が盛んでサイクルスポーツセンターという遊園地もあります。

この回の重要なアイテム:猿楽のお面とか哀しみの干しアワビとか

 

『鎌倉殿』も残り1/3。なんとか耐えてラストまで見届けたいです。

 

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August 28, 2022

2022年7月後半に観た映画

☆『炎のデス・ポリス』

『THE GREY』『コンティニュー』などのジョー・カーナハン監督作品。彼の映画が好きなのでただそれだけの理由で観ました。砂漠の孤立した刑務所にサイコ犯罪者が集結。モブの警官たちはサクサクやられてしまい、血の気の多い女子ポリスのみがほとんど独力で彼らと戦うことになります。サイコさんたちは比較的信用できそうな詐欺師(フランク・グリロ)、絶対信用できなさそうな殺し屋(ジェラルド・バトラー)、会話が成立しないサイコ中のサイコ(トビー・ハス←知らない人)の3名様。最後の一人は完璧に無理として、便宜上詐欺師と殺し屋のどちらかとは手を組まなきゃならない。だけど基本的にどっちにも勝ってもらっては困る… そんな『エイリアンVSプレデター』のようなジレンマが面白かったです。どっちかというと前作『コンティニュー』の方が好きだけど

 

☆『ミニオンズ・フィーバー』

ご存じ大人気シリーズ『怪盗グルー』スピンオフの第二弾。グルーと出会ったばかりのミニオンたちの活躍が描かれます。正直言うとスピンオフの方はグルーは切り離してミニオンだけのお話にしてほしかったような。前作『ミニオンズ』がそんな感じで滅法面白かったので。でもまあこれはこれで水準の面白さは保っておりました。どう見てもイーストウッドのような老ギャングとグルーの世代を越えた友情は微笑ましかったですし。

あとは70年代的なミュージックシーンとか、カトリックに怒られそうなエクソシスト・シスターとか、唐突に始まる燃えよドラゴンオマージュとか… 私は世代的にちょっと後ですけど、大人たちは当時を懐かしみながら観てもよいかも。最後のはっちゃけぶりも楽しませてもらいましたが、色々後発の『ソニック2』や『スーパーペット』とかぶってしまったのはなぜなんだろう。

 

☆『キングダムⅡ 遥かなる大地へ』

大ヒットコミックの映画版『キングダム』の続編。王宮の陰謀を阻止した奴隷の少年・信は、いよいよ大将軍への夢をかなえるため、初陣となる戦場へ赴くことになります。今回は原作の6~8巻あたりでしょうか。最初から最後まで秦と魏の合戦のみが描かれます。だから話としてはすごくわかりやすい。自分前作は年間2位にしたくらい好きな映画なんですが、それでも邦画にありがちな欠点…とにかくキャラが絶叫する等…が多かったことは否めません。ただ今度は広い平原で殺し合ってる話なので、むしろ絶叫してる方が自然だったり。そんなわけでややくどさが抑えられたような印象があります。あとやっぱり古代の戦車戦って滅多に見られないだけに燃えますね。『マッドマックス 怒りのデスロード』のオマージュ的なものも感じました。

特に好きなのは予告でも使われてた信とキョウカイの別れのシーン。かっこよく拳を突き出し合って決めるのかと思ったら…w そのあとキョウカイの笑顔がまたよかったです。

早くも来年第3作が公開予定。全編映画化するのは確実に無理なので、ドラマ化するか『ちはやふる』のように映画で独自に上手に終わらせるしかないと思います。

 

☆『神々の山嶺』

夢枕獏の小説を谷口ジロー氏が劇画化し、それをさらにフランスのスタッフがアニメ化した…というややこしい経緯のアニメ。小説の方は『エヴェレスト』の題で実写映画化されたこともありますね。伝説のアルピニストを追う雑誌ライターが、彼の足跡をたどるうちに共にエベレストを登ることになる…というストーリー。日本の70~80年代くらいの懐かしい街の景色がフランス風のお洒落なタッチで再現されていたのは、なにやら不思議な感覚でした。懐かしいのにどこが違う…みたいな印象。実際の70年代日本の映像にある、雑然として垢抜けないような空気が抜けちゃってるんですよね。それはそれでひとつの映像美として楽しみました。雄大な山々の風景に関してはただただ圧倒されるばかりでした。

で、この映画時々ホラー的な演出もチラチラ入るんですよね。それくらい登山には怖い一面もあるわけです。なぜそんな怖かったりしんどい思いをしてまである人たちは山に登りたがるのか。その結論を「わかんない」で〆ていたのは大変すがすがしかったです。

友を死なせた悔い」「極限へ挑戦」「次世代へ継承」そして「こういう生き方しかできない」という愚直な主人公像などは今大ヒット公開中の『トップガン マーヴェリック』にかなり近かったです。

 

☆『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者

1993年から続く『ジュラシック・パーク』シリーズの完結編(前にも1回終わってたけど)。恐竜が人間社会に出現するようになってしまった世界で、新旧三部作の登場人物たちが新たな陰謀に挑みます。以後、完全ネタバレなのでご了承ください。

このシリーズをきれいに終わりにするとしたら、「人類が恐竜に淘汰される」「恐竜がまた世界から姿を消す」「今度こそ完全に安全なジュラシックパークが建造される…」というあたりかと思うんですが、そのどれでもありませんでした(笑)新三部作の主人公たちが家族として結ばれた…というとこだけなんとなく完結編っぽかったです。

今回の作品に期待したのは我々の身近な都市部でいろんな恐竜が暴れる映像。前半のヴェロキラプトルとのチェイスシーンは見事にその期待に応えてくれましたが、後半に入ったらまたいつもの研究施設内で右往左往する流れになってしまい… ただ恐竜の活躍が見られる映画ってほぼほぼこのシリーズしかないので、それでも貴重といえば貴重なのです。

新三部作の製作も務めたコリン・トレボロウ監督は「これで僕の役割は終わり」と言ってますが、ジュラシックパークでも他の映画でもいいので数年に一度は恐竜をスクリーンで拝みたいところです。

 

次回は『劇場版 Gのレコンギスタ』『三谷かぶき 風雲児たち』『ソニック・ザ・ムービー2』『バッドマン』『がんばれ! スーパーペット』などについて書きます。

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August 21, 2022

2022年7月前半に観た映画

7月はがんばって?10本も観たので2回に分けます

☆『ザ・ロストシティ』

サンドラ姉さんがディスコダンサーが着るようなキラキラした服でジャングルをさまよってて「大変そうだなあ」と思ったのと、突然お腹がアレになってトイレに行ったら不在の間にキャラが一人死んでたのが特に印象に残っております。

どなたかが「こういう毒にも薬にもならないような映画もこの世には必要」と評しておられました。本当にその通りだと思います。観ている間はとても楽しゅうございました。

チャニング・テイタムが沼の中でヒルに食いつかれるシーンは『スタンド・バイ・ミー』のオマージュですかね。

 

☆『エルヴィス』

言わずと知れたエルヴィス・プレスリーの一代記…であると同時に、矢吹丈の手綱を手放すまいと必死になる極悪な丹下段平の話でもありました。

こういうロックスター映画というのはサクセスすると大抵ホテルや邸宅で乱交にふけってたりするシーンがあるのですが、エルヴィスさんはストイックなタイプだったのかこの作品にはそういうのはありませんでした。お薬はガバガバ服用してたようですが、楽しみのためではなく不安を紛らわすためだったようですし。

そんな風に命を削ってステージで熱唱するシーンは圧巻でございました。主演のオースティン・バトラー君に脱帽です。あとB・B・キングとの友情のエピソードにほっこりしました。

☆『バズ・ライトイヤー』

あの『トイ・ストーリー』の名玩具「バズ・ライトイヤー」は、一体どんな映画を元にして作られたのか…という話。ユーモラスなメカ群、ウラシマ効果の悲哀、『トイ・ストーリー』ファンへのサービス、ピクサーお得意のお笑い要素など、全体的にソツなく上手に作られてるんですが、後発の『ミニオンズ・フィーバー』などと比べるとちょっと地味な印象がぬぐえません。基本的に未開の荒れ果てた惑星の周辺だけで収まっちゃってる話なので… まあたまにはこんな渋いSFアニメもいいかな、とは思いますが、日米ともに興行がイマイチ振るわなかったのが気の毒。

 

☆『モガディシュ 脱出までの14日間』

ようやく今年初の韓国映画。1990年、お互いの国際的を地位を高めるべく、北朝鮮と韓国の大使たちはソマリアで競争のようにロビー活動にいそしんでいた。しかしクーデターが勃発。彼らは武装ゲリラの攻撃かいくぐり、命からがら国外へ逃げ出さねばならなくなる。

『タクシー運転手』同様実在の事件に材を取った話…にしてはかなりエンターテインメント色が強く、恐らくそれなりに脚色がなされているものとは思いますが、それにしてもよくこんな面白い話を見つけてきたなあと。あと異国の地で現地の人を大量にエキストラをやとい、派手にドンパチを撮影できる韓国映画のパワーには圧倒されました。

最初角突き合ってた2グループが呉越同舟するうちにうとちけあってく…というのも定番といえば定番ですが、自分やっぱりそういうのに弱いのでアリです。あと最近観てなかったけど、この「南北分断」という問題、韓国ならではのテーマですよね。この3年後の話が『ブラックホーク・ダウン』になるようです。

 

☆『ソー ラブ&サンダー』

映画のMCU最新作。4作目にしてタイトルから「マイティ」の冠が外されました。シリーズの途中でさくっといなくなってたソーの元カノ・ジェーンが、元ハンマーのムジョルニアを携えて「新ソー」として復帰するというストーリー。お茶らけた作風のタイカ・ワイティティ監督だけあって隙あらばお笑いがねじ込まれてくるんですが、同時進行でヴィランやジェーンの悲しい背景も語られて観終わるとなんだかしんみりした気分になっちゃいました。

MCUのヒーローたちは大抵なにかしら大切なものを映画で失っていくのですが、特にそれが顕著なのがソー。シリーズが続くうちに故郷も友人も家族も最初のトンカチもことごとく失っていきます。それでもあんまり悲しみを引きずらず、ニコニコしながら次の冒険に向かうソーさんを観ていると元気をわけてもらったような気分になります。アベンジャーズのBIG3のうち二人が去り、もはやBIG1となってしまいましたが、役者さんもいやがってないようですし、いけるところまで出来る限りスクリーンに姿を見せてほしいものです。

今回特に印象に残ったキャラ?はマサカリのストームブレイカーさん。なかなか嫉妬深いということが判明。モノがモノだけにソーにズズズ…と詰め寄るシーンは迫力がありました。ギリシャその他多神教の適当な神様たちへのイジリにも笑わせてもらいました。

 

次は『ミニオンズ・フィーバー』『炎のデス・ポリス』『キングダムⅡ』『神々の山嶺』『ジュラシックワールド 新たなる支配者』について書きます。

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August 07, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑦7月編

第26回 「悲しむ前に」

突如意識を失い重体となってしまった頼朝。医師の見立てではもう数日の命とのこと。悲嘆にくれる政子をよそに、御家人たちは次の「鎌倉殿」が誰になるのか思慮をめぐらせていた。

お茶らけ回だった前回とは打って変わり、沈痛なムードが続く26話。ネットでは「まだ死んでなかったの?」という反応がたくさん見受けられましたが…

周囲がさっさと見切りをつけてる中で、最後まで諦めようとしない政子様がつろうございました。あんなに浮気したり子を苦しめたりした男でしたが、それでも彼女は純粋に頼朝を愛してたのだなあと。そしてずっと「元グラビアアイドル」というイメージが抜けなかった小池栄子さん、このドラマが始まってからはその演技力に唸らせられっぱなしでしたけど、この回でそれがひとつの頂点に達した感があります。

あともう一人彼の死を悲しんでた義時。頼朝はもしかして彼に暗殺されたのでは…なんて予想もしてたのですが、それが外れてほっとしました。伊豆に引きこもろうとする彼を「ふざけんな」とばかりに引き留める政子様。いよいよこのドラマの「本編」が開幕いたします。

この回の重要なアイテム:政子が最後に頼朝にもっていった料理。結局あれって正体明らかになったんだっけ

 

第27回 「鎌倉殿と十三人」

母にはっぱをかけられて、二代目鎌倉殿となる決意をした頼家。しかしその一方で北条家と比企家は自分たちの勢力をより強くすべく、将軍の相談役の選出を競い合っていた。最終的に出そろったのは十三名。「十三人の合議制」の時代がいま、始まる…のか?

西暦1199年くらいの内容でようやくタイトルが回収?された27話。番組が始まる前はさぞかし頼もしい豪傑たちが一堂に会しババーン!と見栄を切るのかと思いましたが、実際見てみると小ずるそうだったり幸も影も薄そうなおじさんたちが大半であったり… 三谷さんが脚本である時点で予想すべきでした。

ちなみにわたしの13人の印象は次の通り

北条義時…主人公。ゴッドファーザーのマイケル
北条時政…主人公の父。いい加減
三浦義澄…時政の親友。佐藤B作
比企能員…権力大好きおじさん。佐藤二郎
和田義盛…脳筋。可愛いもの好き
梶原景時…義経のサリエリ

安達盛長…頼朝の爺や
八田知家…突然出てきたワイルド大工
足立遠元…得体が知れない人畜無害の人
大江広元…腹黒・讒言大将。一番怖いかも
三善康信…『古畑任三郎』の向島巡査
中原親能・二階堂行政…大江さんにくっついてきた文官。影が薄すぎる

当然こんなおじさんたちを頼家が信用しようはずもなく、事態は「元鎌倉殿の十三人衆」VS「現鎌倉殿の親衛隊5人衆」の対決へとなだれ込んでいきます。

この回の重要なテロップ:十三人がそろうたびに画面に出てきたカウント。数えやすくてよかったです。

 

第28回 「名刀の主」

頼家に取り入ろうとするも失敗した梶原景時。これまでの「告げ口役」という悪評も手伝って、急速に鎌倉での居場所を失っていく。そんな彼に朝廷からの誘いがあり、景時は鎌倉に見切りをつける決意を固める。だがそれが頼家に耳に入り…

梶原景時退場を丸々一話使って描いた29回。「義経を追い落とした」ということで全くいいイメージのなかった彼を、オーベルシュタインのような愛されキャラにまで持っていった脚本力に脱帽です。あと中村獅童氏は『新選組!』『いだてん』のようなひょうきんな役も上手ですが、やはり今回や『ピンポン』みたいな重厚な豪傑役の方がしっくり来ますね。その死が「想像してくれよ」と言わんばかりでオマケコーナーで語られる演出はあっさりというかお洒落というか。

今回初登場だった重要キャラはアバンタイトルで出てきた後鳥羽上皇。演じる尾上松也氏は見てるとどうしても「リブモ」CMの「なんですって、奥さん!」を思い出してしまっていけません。あと退場したのは三幡の死を悲しんで鎌倉を離れてしまった中原親能さん。存在感がないままの脱落となりました。そろったと思ったらもう2名いなくなってしまった「十三人」。『アルスラーン戦記』の十六翼将みたいです。

この回の重要で不穏なあいてむ:「善児」 そんなもんのこしてくんじゃね~~~!

 

第29回 「ままならぬ玉」

御家人の嫁を略奪しようとしたり、サッカーにかまけたり、頼家の悪評が止まらない。そんな彼を失墜させようと北条パパは婿である全成に「ちょっとだけ」呪うよう説き伏せる。ただ傍若無人に見える頼家ではあったが、彼は彼で内に不安と孤独を抱えていた。

先回で「こいつ駄目だわ」と見放した頼家公を、「やっぱりこの子かわいそう!」と思わせてしまう脚本に翻弄される回。演じる金子大地君は松田翔太氏にも似た危うさを感じさせます。でも同情しちゃうとこの先の展開が辛くなるわけで… こういうの本当にやめていただきたい。

一方でほっこりする二世がこの回で改名した北条泰時君。庶民の立場に立って政治を行ったり、女子に空気の読めてないプレゼントをつっかえされたりと好感度が爆上がりでした。ちなみに私がTwitterで行ったアンケートによるとそれなりの女子が「キノコ好き」と答えていて、義時説ももまんざら間違いではなさそう。問題は量と渡し方でしょうか。

コントのような井戸落ち(史実だそうです)から、心和む夫婦エピソード。しかしラスト直前で入る火曜サスペンス効果音。このヒキは『太陽がいっぱい』のオマージュだと思います。そしてこの回でまた二人合議制のメンバーが脱落(三浦義澄・安達盛長)。自然死だったのがせめてもの救いです。

この回の重要なアイテム:マリ(「しゅうぎく」って言うのね)・キノコ・縄・藁人形

 

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July 31, 2022

2022年6月に観た映画

☆『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

企画の情報を聞いた時は多くのファンが「正気か…」と感じた『機動戦士ガンダム』第1作の番外編。ほぼ外れのない「ファーストガンダム」テレビシリーズにおいて、ただひとつ「微妙」とされているエピソード、「ククルス・ドアンの島」の島を安彦良和御大自らがリメイクした作品。なんだかんだで上半期とりわけ楽しみにしていた1本です。

オリジナルはまだ兵士となることになじめずよくごねていたアムロ君が、突然「いい子」になってしまった印象があるのですが、こちらでは彼特有の繊細さ・多感さも残しつつ少年らしい純真さもあり、わたしたちが良く知ってる「アムロ」になっていたと思います。

全体的な印象としては安彦版『未来少年コナン』みたいなところがあり。ロボットの見せ場もちゃんとありますけど、「人間やっぱり額に汗して働いて飯を作らにゃいかんのだ」というメッセージが伝わってきます。この辺ミスターガンダムの富野由悠季氏と比べると安彦監督はもっとシンプルで健康的な作家だなあ…と改めて感じました。

特にテンションが上がったのは雷鳴・お馴染みのBGMと共にクライマックスでガンダムがヌオッと姿を現すシーン。あとさすがにTV版から40年以上経ってるので、オリジナルの声優さんたちのほとんどが鬼籍に入られてしまったことを実感してしんみりしちゃいました。いまなお現役の古屋徹・池田秀一・古川登志夫3氏はいつまでもお元気でいてください。

 

☆『トップガン マーヴェリック』

これまた80年代の超懐かしい洋画の、だいぶ年を経た「その後」を描いた映画。公開予定が遅れに遅れまくったため実に2年近く予告編を映画館で観させ続けられた作品です。

かつて海軍きっての暴れん坊パイロットだったマーヴェリック。しかし時代は無人操縦の戦闘機が主流となりつつあり、彼のような個人技にモノを言わす飛行機乗りは必要とされなくなりつつあった。そんな中無人機では達成が難しいミッションが発生。マーヴェリックは若き「トップガン」たちを作戦から生還させるため古巣に教官として舞い戻る。

既にいろんな方が言ってると思いますが、空戦も生身の危険な撮影もハイテクのおかげで人間がやる必要がなくなりつつあります。でもそれは「今日じゃない」と言わんばかりに飛行機にとびついたり戦闘機を操縦したりするトム・クルーズ。「体を大事に…」と思いながらもその超絶アクションには感嘆せずにはいられませんし、ネームバリューと共に他の追随を許しません。昔の『トップガン』では役柄はともかく素のキャラはそんな無茶ばかりやるような方ではなかったのですが… 40年近く年が流れたうちに中の人までマーベリックになってしまった感があります。

あともう一点驚いたのはそんなにド派手な題材でもない、かつて1本だけ作られた映画の続編が、日米ともに爆発的なヒットを飛ばしているということ。先に懐かし映画の続編と言えばマトリックスやゴーストバスターズもありましたが、これらはそんなに話題にならなかったような。もちろん「出来がいいから」というのはあるでしょうけど、それだけでは映画はここまで売れないもので。二年間予告編が流れ続けた効果もあったのか… 謎であります。

わたしといえば昔の『トップガン』にいい印象がなかったのとやけに売れてるのでやや斜に構えながら鑑賞してたのですが、アイスマンとの友情や親友の息子ルースターとのわだかまりが解けるところなどはブシュッと鼻水が噴き出たりしました。あと前作『オンリー・ザ・ブレイブ』が大コケした(いい映画なのに…)ジョセフ・コシンスキー監督が大大ブレイクしたことも喜ばないといけません。

 

☆『FLEE』

アニメ映画でありながら今年のアカデミー賞で国際長編部門・ドキュメンタリー部門にもノミネートされた骨太の作品。アフガンで生まれた青年が苦労して欧州に逃れた後で、思い出したくなかった過去の経験を少しずつ振り返っていく内容。難民というだけでも大変なのに、彼はゲイゆえに同胞からも疎まれるという辛い背景があります。

そんなわけで胸と胃がキリキリするようなエピソードが多く語られるのですが、彼の持ち前の明るさか、監督の語り口ゆえかほっこりしたり笑わせてくれるところもチラチラあるのが救いだったり。亡命する時居合わせた美青年に恋しちゃったりとか、初めてゲイクラブに行った時のいきさつだったりとか。主人公が憧れてるのがジャン・クロード・ヴァン・ダムだったりとか。今年はなぜかヴァン・ダムオマージュを各所で見かけたり本人もがんばってたりヴァンダム再評価の年でありますね。

あと平和な国に住んでる我々とは程遠い話のようで、「周囲の期待と自分の望みが反するゆえに苦しむ」というあたりはどこにでもある経験だな、と思いました。

 

☆『鋼の錬金術師 完結編 反逆者スカ―/最後の錬成』

荒川弘先生の名作コミックを、連載20周年ということで実写版も完結させた二部作。先に製作されていた第1作が評判も興行も芳しくなかったのによく踏み切ったな…と変に感心してしまいました。でもまあ見てみると映画紹介漫画『邦キチ 映子さん』で言うところの「ヅラ感」が気になりつつも演者さんがみながんばってたり、原作の重要エピソードをちゃんと取捨選択して編集してたりして、尻上がりに印象がよくなっていきます。特に第3作は山田涼介君・渡邉圭佑君・内野聖陽氏三者がそれぞれに「顔は同じなんだけど人格が違う」2役をそれぞれ上手に演じ分けしていて感心しました。また、スカ―役の新田真剣佑は『ジョジョ』の時を彷彿とさせるような役への憑依ぶりが見事でした。あと原作読んでだいぶ経ってるので久しぶりに思い出したキャラ・話が多数あって色々懐かしい気分にさせてもらいましたよ。

 

☆『ベイビー・ブローカー』

世界でも評価の高い是枝裕和監督が舞台・キャストともに韓国で撮影した作品。いわゆる「赤ちゃんポスト」を利用して乳児の売買を企む二人組と、赤ん坊の母親のロードムービー。主演はやはり世界的名声を誇るソン・ガンホ氏なのですが、監督の性向ゆえか小悪党なのに仏のようにやさしい。いつものガンホさんだったら「シバ〇マ!」と叫んで切れ散らかしそうな場面でも、穏やかに「仕方ねえなあ」と微笑みを絶やしません。自分はそんな誰にでも優しい視点がすごく心地よかったのですが、実際によくある社会問題を題材にしてるゆえに「そんな綺麗ごとで納まるわけねえだろ」と感じられた方もおられるようで。まあでも、是枝さん、この映画のガンホさんとその弟分のような優しさは忘れずにいたいと思います。

 

7月は頑張って10本くらい観ました。次回はその前半の『ロストシティ』『エルヴィス』『バズ・ライトイヤー』『モガディシュ』『ソー ラブ&サンダー』などについて書ければ

 

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July 17, 2022

2022年5月に観た映画

2ヶ月以上前の記憶を掘り起こして書きます。

☆『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』

いまやMCUにおいて中心人物の一人となってしまった感のあるストレンジ博士、単体としては5年ぶりの続編。元カノの結婚式に意気沈々として向かった彼のもとへ、「多元宇宙」から逃亡してきた少女が現れる。ストレンジはその手の問題に詳しいワンダの元を訪れるが…

恐らく今回はコミックの『アベンジャーズ ディスアッセンブルド』を底本にしているかと思われます。当時人気の低迷していたアベンジャーズを、編集部が「一度ぶっこわすか!」ということでワンダを闇落ちさせ、チームを壊滅にまでおいやったというひどい作品です。そんなわけでコミックファンには前知識があるからいいけれど、映画ファン&お子様たちにはかなりショックな内容。原作と同じくまたヒーローとして復帰することを願ってやみません。

ショックと言えば久しぶりに映画監督として復帰したサム・ライミ氏が、MCUの世界観を尊重しつつも彼独特のグロ描写を惜しげもなく発揮しまくったことでも話題になりました。この辺彼のファンからは長年忘れていた「おふくろの味」に再会できたようでたまらなかったみたいです。

面白かったのは、この作品には4バージョンのストレンジ先生が登場するのですが、本家以外はみんな闇落ちしてるのですね。それくらいついダークサイドにいってしまいそうな下地がある人なのです。しかしそれは「素質がある」というだけで絶対的なものではない。先の『スパイダーマン』で悔いながらもピーターを救えなかった先生が、今回は同じ思いを繰り返さないために一人の少女のために奮闘します。そして「このストレンジのいる世界に来てよかった」と彼女が笑顔で言うところにおじさんの鼻水が噴き出ました。

一点不満というか要望を言わせてもらうとシュマゴラスという名前だったガルガントスというキャラクター、大きなお目目がかわいかったのにあっさりやられてかわいそうでした。こちらも次回は善玉として復活させてあげてください

 

☆『スパークス・ブラザーズ』

実に50年以上活躍している米国の兄弟バンドを題材に、『ショーン・オブ・ザ・デッド』などで知られるエドガー・ライトが監督したドキュメンタリー。わたし彼らのことはなんも知らなかったのですが、監督の映画が好きなのと近くでやってたので観てきました。そんなに洋楽には詳しくないんですけど、彼らはそんなに第1級メジャーというわけではないようで。「なつかしのオールディーズベストヒット」みたいな選集でも名前見たことないし。しかしこんだけ長く続いてきたのには、やはり一過性ではない魅力と、マンネリに陥らないよう試行錯誤を続けてきたからということがなんとなくわかりました。一時は本当に仕事が無い時もあったようですが、「ドラッグなどで散財せず堅実に暮らしてために生活に困らなかった」というのには感心させられました。

驚いたのは池上遼一氏が少年サンデーで描いてたマイナーなSF漫画『舞』を彼らが映画化しようとしていたこと。これたまたま読んでてあまり話題に上がったこともない作品だったので「???」となりました。残念ながらその企画は頓挫。それ以前のジャック・タチとの企画も中断となった彼らですが、昨年3度目の正直的にカラックスの『アネット』で映画音楽を担当。夢をあきらめてはいかんですね。

 

☆『バブル』

ネットフリックス先行公開し、一週間後に劇場公開という珍しい形式で発表された長編アニメ。しかし先行の時点でなかなか評判が悪く、びくびくしながら観に行きましたが、これが映像もアクションもストーリーも大変ツボにはまり、「TVサイズで観ないと真価が伝わらないのかな」と思っておりました。しかし劇場で観た人たちの感想も総じてあまりよくなく… 自分、映画を見る目があまりないのかな、と改めて思ったりしました(笑)

好きな点は全体的にりんたろう版『メトロポリス』を思い起こさせてくれたところ。あと十代の恋愛ものであるのに「うわっ これは不可抗力で…」「いやー! エッチ!バカー!!」みたいなコテコテのラブコメ描写がなかったところです。

 

☆『犬王』

湯浅政明×野木亜紀子×松本大洋という超強力布陣で製作された伝奇SFアニメ。先行してTV放映・配信された『平家物語』とそこはかとなく関係あるようなないような、やっぱりあんまりないかな?という作品です。

大胆なのは全体のほぼ半分近くが演奏シーンというほぼライブみたいな構成であること。その無茶な作りを森山未來君と女王蜂アヴちゃんさんとか迫力ある歌声で強引に持っていきます。

ただ突飛なようで根底には親から捨てられたような犬王と親を失った友有(友魚だったり友一だったり)のガキ同士の友情物語があり、その無邪気さが微笑ましかったり胸に沁みたりしました。一方で彼らを翻弄する時の権力者・足利義満には強い怒りを感じます。『一休さん』の「のんびりした将軍様」だったイメージが一気に急降下いたしました。時を越えてよみがえった二人の絆を見届けることで、鑑賞後はさわやかな気持ちになれましたけど。

『どろろ』や湯浅監督の『デビルマン cry baby』を想起させるようなところもありました。

 

5月は他に『シン・ウルトラマン』を2回観たり『鋼の錬金術師 完結編』第1部を観てました。ハガレンに関しては次回『ククルス・ドアンの島』『トップガン マーヴェリック』『FLEE』『ベイビー・ブローカー』などと一緒に書きます

 

 

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July 03, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑥ 6月編

いつも『鎌倉殿』は地上波・BSと2回観ているのですが、先月はスケジュールの都合で1回ずつしか見られず。おぼろげな記憶をたどって頑張って書きます。

 

第22回「義時の生きる道」

突然の八重の死。義時は悲しみをこらえながら彼女が残した大量の子どもたちのワンオペ育児に励む。一方頼朝は都へ上洛。法皇と対面を果たし正式に征夷大将軍の位を授かる。

1190~1192年くらいの話。ずっと裏切り・暗殺・愛する人の死ときついイベントが続いてた『鎌倉殿』で、突然訪れたエアポケットのような癒し回。この回で生霊になったりピンポン玉で死を偽装したりしてた後白河法皇がとうとう本当にお亡くなりになります。「歴史をひっかきまわすだけひっかきまわして」というナレーションの落とし芸が冴えてました。

後半は義時が子供たちのケンカで頭を悩ませます。これとほぼ同じシチュエーションがモーニング不定期連載中の『ワンオペJOKER』であったばかりなんですが、偶然かぶっちゃったんでしょうね。弟が心配で屋敷をのぞきに来た政子さん。「むかし姉上によく首をしめられました」「そういえばよくしめてたわね」 まあ姉というのはそういうものです。

この回の重要でもないアイテム:保育業が大変ですっとんでった義時の烏帽子

 

第23回「狩りと獲物」

1193年、頼朝は御家人たちを集め富士で巻狩りを行う。それに乗じまたしても反乱を企む動きがあった。中心となったのはかつて父親を工藤祐常に殺された曾我兄弟。ここに後世に語り継がれる伝説の仇討が始まる…?

忠臣蔵、荒木又右エ門の鍵屋の辻、そしてこの曾我兄弟の仇討が日本3大敵討ちなんだそうですが、忠臣蔵がメジャーすぎて正直ほかの二つは「何?」という感じであります。で、美談とされてるこの仇討ちが、このドラマでは手違いの上に義時により脚色されたことになっていたり。

前半の巻狩りで印象的なのは鎌倉の時代を担う二人の若者。金剛=泰時は明らかに短期間で背丈が倍以上伸びてるのですが、「成長著しい金剛」のテロップで強引に納得させられました。いま一人の次期暴れん坊将軍・万寿=頼家は悪くない若者なんだけどいまひとつ頼りなさそう。鹿一匹狩らせるのに御家人たちも撮影スタッフも大変だったようです。

スケベ心が幸いしてまたしても難を逃れた頼朝公。しかし今回は「もうわたしのすべきことはないのかも」としょんぼり顔。いよいよ大物退場の序曲が流れ始めます。

この回の一応重要なアイテム:ダミー鹿。および義時と後妻の間を取り持つ鹿のウンコ(2回目)

 

第24回「変わらぬ人」

謀反は未然に防がれたが、その際不審な発言があったということで、範頼は半ば言いがかりのような形で修善寺へ流される。頼朝は自信の衰えを自覚してはいたが、それを認めず大姫を天皇と后とすべく運動を始める。彼女は未だ義高を忘れられずにいるというのに…

1193から98年初めくらいの内容。せっかく比較的ほのぼの回が続いてたのにまたどん底へ突き落される回。大姫に関しては自分も周囲(頼朝以外)もなんとか幸せな方向に導いてあげようとがんばるのに、結局初恋の人への思慕には勝てず…というのが辛すぎるお話でした。あと後白河法皇の未亡人の丹後局が怖かった。鈴木京香さんは『君の名は』(連ドラ)では姑からいびられる側だったのにいつも間にいびる方に…(いつの話だ)。全成殿のイタコ芸が数少ないギャグシーンでございました。

もう一人お気の毒だったのは源範頼公。ドラマでは大抵義経の引き立て役でしかありませんでしたが、『鎌倉殿』では不器用だけど実直で純粋な人柄に描かれてて大幅にイメージアップになったかと思われます。それだけにあの退場の仕方は残酷すぎる。このドラマを毎週見ている姪っ子(小6)のトラウマがまたひとつ増えたのではと心配です。

この回の悲しいアイテム:蒲殿が植える予定だった甜瓜

 

第25回「天が望んだ男」

さんざんナレーションで「最後最後」とあおられつづけた頼朝公。恐怖新聞に寿命を削られる鬼形君のように衰弱が著しくなっていく。それでも生きる望みをあきらめない鎌倉殿。数々の死亡フラグを乗り越えて、果たして生き延びることはできるか!?

…ま、歴史でこの時死ぬことになってるので、どうしようもないんですけどね。ただ上総之介や九郎の時と違い、さんざん笑いを振りまいて去っていくのが彼らしい。あんだけひどいこといっぱいやらかしてたくせに、この幕引きはずるいよ。演じてる大泉さんのキャラのせいで、いなくなったらやっぱり寂しくなるんでしょうね。

ちなみに今ニュース番組の司会もされてる三谷さん、その司会中堂々と脚本を書いてる姿がリークされてました。それを読むと頼朝が善児に必死に命乞いをしてるのですが、あれは完全なるフェイクでしたね。だまされました。

ひとりの英傑が去ろうとする時、彼に関わった者たちの耳に鳴り響く不思議な鈴の音。それが義時だけに聞こえなかったのはいかなる意味が…

あといつの間にか巴御前とだいぶ仲良くなってる和田殿は役得。

この回のまぎらわしいアイテム:頼朝の死をフライングさせかけた餅

 

というわけでなんとか半分までついていくことができました。残り半分もがんばります。たぶん

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June 22, 2022

シンは神学のシン 樋口真嗣 『シン・ウルトラマン』

謎の巨大生物「禍威獣」の頻出に悩まされる近未来の日本。政府はその脅威に対処するため、各方面のスペシャリストにより結成されたチーム「禍特対」を発足させる。禍特対が何度目かに出動した際、突如として上空より謎の巨人が飛来。禍威獣を圧倒的なパワーで退ける。「ウルトラマン」と名付けられた彼は人類の味方なのか、それとも…

庵野・樋口コンビが『ゴジラ』の次に挑んだリメイクは、やはり日本人なら誰でも知るあの巨大ヒーローでした。『シン・ウルトラマン』について今回はダラダラと書きます。以後完膚なきまでにネタバレしてしまうので、ご了承ください。まずは自分の最初の印象から。

最初に冒頭の超『ウルトラQ』オマージュには大興奮でした。続くネロンガ戦、ガボラ戦も大いに楽しませられました。しかしその後ザラブが宇宙人の格好のままコートを着て現れたのには、「これ、普通の人ひかないか?」と心配になったり。さらに追加で巨大な長澤まさみが登場した際には、元ネタ知ってる我々ならともかく、そうでない特撮慣れしてない方々はこのシュール表現の暴走に途中退場してしまうのでは…と(こちらの劇場ではいませんでしたが)。

そんな杞憂をよそに終盤へと進んでいくストーリー。結末がどうなるかハラハラしながら観てましたけど、この一風…というか十風くらい変わった作風に当惑を抑えきれないまま終わってしまった、というのが初見の感想です。

大抵はそこで「微妙に合わないところがあった」で終わってしまう話ですが、この映画にはなんか不思議な吸引力があって、鑑賞後1週間くらいずっとテーマや場面・セリフの意味などについて考えさせられてしまいました。そして自分の中で作品についてのあれやこれやを熟成させた後、もう1回観てみたら今度はしみじみと感動できたのですね。映画は毎週それなりに観てますけど、そんな風に味わえた作品というのはあまりありません。

 

で、最初すんなり入らなかったのが、なんでウルトラマンがそんなに地球人にひかれたのか、というところ。これに関しては彼自身も「色々考えたけどよくわからない」と述べています。思えば私たちも何かを好きになるとき、「なぜ好きになったのか」ということについてはあまり考えないし、よくわからないもの。「かっこよかったから」「綺麗だったから」とそれらしい理屈をつけることはできます。しかし「じゃあなぜかっこよい・美しいと感じたのか?」と問われたらこれはもう理屈では説明できないものです。そもそもあのウルトラマンの前衛的なデザインもヒーローにしては独特すぎる気がしますが、こんだけ世代を超えて絶大的な支持を得ているのですから不思議といえば不思議であります。

あと今回のウルトラマン、昨年エヴァンゲリオンがあったせいかやけに宗教的というかキリスト教的な話に感じられました。

・人間が超越的存在に生殺与奪の権を握られている構図は、旧約聖書で神が度々人々を災厄により滅ぼそうとした話を思い出させます。そのまま実行されたこともあれば、行いの良い僕のために思いとどまった例もあり

・ザラブやメフィラスはまんま悪魔。いかにもその人のため…みたいな風を装って、権力をエサにしたり欲望をあおって人間を堕落させようとします。アダムやエバは成功した例、ヨブやキリストは失敗した例

・超存在だったウルトラマンが人間と融合するところは神、もしくは神のようだったキリストが人間の形で地上に来たことを思わせます。で、キリストは人々に自己犠牲の精神を説き、最後は身を持ってそれを示しました(宇宙に展開されるゼットンのシルエットは十字架を連想させます)。その姿に心を打たれた人はキリストの弟子となるわけですが、本作品では禍特対の面々や迫害者の立場だったゾーフィがそれに当たるのかもしれません。

もう1点強く印象に残ったのは、アナログ的なもの…マーキング、匂い、情熱といったものがザラブ、メフィラス、ゾーフィら外星人のデジタル的な戦略に勝利するというもの。この映画もCGが多用されておりますが、樋口監督があるインタビューで言っていた「特撮は『諦め』の技術ではあるが、そこに実在するものには確かな力がある」という言葉を思い出させます。これからさらに徐々にこの「特撮」というスタイルは消えていくのかもしれませんが、情熱あるクリエイターが研鑽して用い続けるなら、将来も生き残っていくのでは…と希望を抱いてしまうわけです。この辺は図らずもいま同時期に公開されてる『トップガン マーヴェリック』と重なるところでもありますね。
わたしの好きなシーンをふたつ。ひとつはウルトラマンが時々山に行って神永の死体を眺めてるところ。「こいつなんであんなことしたんだろうな」とか考えてたんでしょうか。もうひとつはウルトラマンが犠牲になることに瞬発的に班長が反対する場面。人類のことを思えば土下座してでも「悪いけど頼む」と言うべきなのですけど、彼もまたウルトラマンが好きになっちゃったのでしょうね。
ラストで禍特対の面々は神永に「おかえり」と言いますが、そこにもう共に戦った銀色の巨人の魂はありません。そのことを知った時の彼らの気持ちを想像すると何とも切ないものがあるのでした。
ゴジラはともかく、ウルトラマンが一般の映画でやってどれくらいいくのだろう…と危惧しておりましたけれど、長澤まさみ・西島秀俊・米津玄師のネームバリューか、庵野・樋口のブランド力か、力の入った作りに往年の子どもたちが引き寄せられたのか、はたまたメフィラス山本耕史のキャラが強力すぎたのか…ともかく興行収入40億にはなんとか手が届きそうでホッとしております。
このあと樋口さんはまた西島氏と一緒に(監督ではないですが)『仮面ライダー Black Sun』に加わり、庵野氏は監督として『シン・仮面ライダー』を手がけるとのこと。引き続き注目して参ります。「デザインワークス」に書かれていた「その後の物語」もいつかぜひ観てみたい…



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June 20, 2022

2022年4月後半に観た映画諸々

6月終わる前に上半期観た映画の短評をまとめたかったんですが、なんか無理っぽいですね(諦めが早い)

悪あがき的に4月見た作品の感想だけでも仕上げておきます。

☆『アンネ・フランクと旅する日記』

製作国がベネルクス3国にフランス・イスラエルも加わった実に5か国共同製作アニメ。現代の少女がアンネの生涯を追いかけて旅をする…という内容かと予想していたら、なんと彼女が愛用していた日記が付喪神?となって21世紀に蘇るというなかなかファンタジックな作品でした。

監督は『戦場でワルツを』や『コングレス』のアリ・フォルマン。その2作と比べるとややメロウというか少女漫画チックな作風ではありましたが、これはこれでいいんじゃないでしょうか。

印象的だったのはアムステルダムのいたるところにアンネの名を冠した劇場やら図書館やら博物館やらが乱立してること。もしかしたらいまだに世界で最も著名なオランダ人は彼女なのかも。アンネさんは有名になることより、市井の女性として普通に生きることを望んだでしょうけどね。

 

☆『ファンタスティックビーストとダンブルドアの秘密』

ハリー・ポッター前日談第3弾。1作目はけっこう好きでしたが2作目でキャラが入り乱れてよくわからなくなり…というところでの最新作。また「つづく」で終わったらやだなあ、と思ってましたが、以外にも色々解決して幕となったのでよかったです。興行的に微妙なところらしく、全5作予定ということでしたが、さらに続くかどうかは五分五分のところらしいです。

正直言うと直前に昼飯をがっつり食べてしまったために序盤は割とウトウトしてましたが、ニュートさんとお兄さんが懸命にカニ歩きしてるところでシャキッと目が覚めました。あとタイトルにダンブルドアの名前が冠されてますけど、今回も一番光ってたのは太っちょのジェイコブ氏。彼に改めて惚れ直す約二時間でした。自分もあんなおっさんになりたい。体型だけは近いです。

 

☆『TITANE/チタン』

フランスの新鋭ジュリアーノ・デクルノーがメジャー2作目にしてパルムドールをもぎ取っていったという話題の作品。…なんだけど、生理的にじくじくと痛いシーンが多くちょっと苦手な作品でした。

あらすじは幼いころ事故で体に金属を埋め込まれた女の子が、成長して車に欲情するようになり、ついでになぜか殺人衝動まで抑えきれなくなってしまうというぶっとんだもの。うーん、カンヌよくわかんないね! さらには車とセックス(これが本当のカーセックスか)した結果謎の子どもまで宿してしまうという、罰当たりなマリア様のお話でもあります。

彼女を息子と勘違いして保護しようとするおっさんもよくわからない。少し前の『ロボコン』なみに「そうはならんやろ」のオンパレードで構成されています。これがデビュー作となる主演女優さんには「もっち自分を大事にしてください」という思いでいっぱいになりました。アート作品に造詣の深い評論家の解説が読みたいところであります。

 

☆『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』

昨年配信され絶賛されたアニメシリーズの劇場版。というかむしろアニメ本編の感想を。

小戸川は無愛想なタクシー運転手。彼の周りに引き寄せられるようにして集まってくるチンピラ、不良警官、ネット配信者、謎めいた看護師、仮面アイドル、拳銃魔といった不穏な者たち。そして彼らがすれ違うことで偶発的な事件が幾つか生じ、やがて大がかりな犯罪計画が持ち上がることに。

まるで『傷だらけの天使』か大沢在昌の小説のようなハードボイルドなストーリーですが、問題?はこれが全て動物キャラとなっていること。小戸川はセイウチでチンピラの「どぶ」はマンドリル、不良警官はミーアキャット…という具合に。これ何の意味があるのか? それとも意味なんてないのか?と思いながら観てましたが、その答えはというと(略)。

まあ動物になっているせいでどんな問題児もそれなりにかわいらしいというか、にくめなくなってる効果はありました。

特に評価したいのは最終話。それまでの伏線が見事に実を結んでいき、ラスト数分で最大の謎が明らかにされます。そして………な幕切れ。

劇場版ではその後も描かれるということで完全に釣られて観に行きました。非常にすっきりしました。これ、「映画からでも楽しめる」と宣伝されてましたが、やっぱりTVシリーズを愛した人たちへのご褒美みたいな映画だと思いましたよ。

 

次回は『ドクターストレンジMoM』『スパークス・ブラザーズ』『バブル』『犬王』などについて書くか、『シン・ウルトラマン』で1本書くか、というところです。

 

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