November 13, 2018

松岡よりも熱く ヤヌス・メッツ 『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』

大阪なおみ選手や錦織圭選手の快進撃が話題になっているこの頃。映画でもテニスの名選手を題材にした作品が公開されておりました。今日はそのうちの一本『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』、ご紹介します。

1980年。大会5連覇を控えたスウェーデンのチャンピオン、ビョルン・ボルグは苛立っていた。アメリカの新星マッケンローが彼の王座を奪うのではとしきりに噂されていたからだ。内ではともかく、外では優等生的な仮面を外さないボルグ。審判や観客に悪態をつき、「悪童」の名をほしいままにするマッケンロー。両雄はこれまでの歩みを振り返りながら、やがて激突の日を迎える。

コテコテのオタク人であるわたくしにとってテニスは縁遠いスポーツ。興味もありませんし、やったこともほとんどありません。だのにこの映画に惹かれたのは、予告などからF1の実話を描いた『ラッシュ プライドと友情』を思わせるものがあったから。対照的な二人のライバルが王座を巡って火花を散らす… そういう話、スポーツ漫画好きとしてはやっぱり燃えるものがあるので。

観てみて特に印象に残ったのは、ボルグさんのハングリー精神というか危うさみたいなものでしょうか。もう4回も優勝してるんだからもっとどっしり構えてても良さそうなものなのに、「負けたら俺はみんなから忘れ去られる」と異常までにビクビクしておられます。そういえばヒットメーカー浦沢直樹氏もある漫画で「どうせ俺なんかすぐに売れなくなるから、そうなったらロック喫茶でも開いて何曜日はトースト半額にして」とか不可解なほどに謙虚な発言をしておられました。常人にはわかりにくい思考回路ですが、第一人者というのはそういう風に抱えなくてもいい不安をがっつり抱え込んでいるがゆえに、勝利や練習に貪欲になのかもしれません。
実はわたしもマッケンローの名前は知ってましたがボルグのことは知りませんでしたw でもこうやって三十数年経って映画が作られるわけですから、偉業というのものはそれなりに語り継がれていくものですよね。

一方のマッケンローは若さゆえの怖いもの知らずなところが目を惹きます。判定を巡って審判とガンガンやりあっている様はこないだのウィリアムズさんのよう。そんな自分を抑えきれない爆弾のようなプレーヤーとして描かれています。ところが友達の忠告が効いたのか、理想のライバルに巡り合えたからか、ボルグとの決勝においては別人のようなストイックさで勝負に集中します。やっぱり優れた好敵手というのは相手を技術的にも人間的にも成長させるものなのか。もしそうだとしたらとても美しい話であります。ちなみに彼を演じてる俳優さんがシャイア・ラブーフに似てるなあ、と思いながら観てたら本当にシャイアでした。彼ももう30越えてるはずですけど初々しい青年の役をやるとはなかなかに図々しい。まあ好演でしたので許します。

スポーツ漫画では大抵の場合試合前にライバルが偶然鉢合わせしたりしてあわや一触即発…なんてエピソードがあるものですが、この2人は試合までほとんど接触がなかった模様。そういうところが現実的というか逆に面白かったりしました。

2人の激闘を見て、スポーツの秋ですし、わたしもテニスクラブに通ってみようかしら…なんて思いが1秒だけ頭をかすめました。本当はテニスでもなんでも運動して、この腹をひっこめなきゃいけないんですけんど。

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November 09, 2018

人生はロックらしい 三木聡 『音量を上げろタコ! なに歌ってんだか全然わかんねぇよ!!』

今日から『ボヘミアン・ラプソディ』が公開で非常に盛り上がっているところですが、その陰でひっそりと終わろうとしているもう一本の音楽映画があります。鬼才・三木聡が阿部サダヲと吉岡里帆を主役に迎えて送るロックンロール・ムービー『音量を上げろタコ! なに歌ってんだか全然わかんねぇよ!!』(タイトル長えよ!!!)ご紹介します。

ふうかはバンド仲間とプロを目指すストリートミュージシャン。だが、その声量のあまりの小ささからバンドから外されてしまう。失意のうちに夜の街を歩いていた彼女は、工事現場で大量の血を吐く奇妙な男に出くわす。男は実はドーピングのせいで喉に限界が来ているロックスター・シンだった。彼を病院に運んだことがきっかけで、ふうかはいつの間にやらシンから歌の手ほどきを受けることになるのだが

監督三木さんの作品は他にはわが郷土を舞台にしたドラマ『熱海の捜査官』くらいしか観てないのですが、なんとなくギャグセンスが宮藤官九郎氏や堤幸彦氏、少し前の中島哲也氏に近いものを感じました。クドカンとは使う役者さんもちょっとかぶってますよね。理詰めで笑わせるというよりかは、珍妙でシュールな会話や間で攻めてくる、乾いた静かなお笑いというか。人によっては「わけわからん」で済まされてしまうかもしれません。実際これらの監督さんたちの映画はたまーに面白い時もあるものの、センスが暴走するとどんどん置いてけぼりになってしまい、ギャグが苦痛に感じられることもしばしばです。

ちなみに監督さん、この映画は何に対してもやる気のないお子さんに「夢をもってがんばってほしい」というメッセージをこめて作ったそうです。いや、でも、これで伝わるかな??? ストレートに言葉で伝えた方がいいんじゃないかな??? よそさまの教育方針に口を出すつもりはありませんけど。

じゃあこの映画もつまらなかったのかといえば、それが意外とそこそこ面白かったんですね… ちょっと人には勧めづらいですが。ぽかんとするシーンもありましたが、三回に一回くらいは独特のギャグに「ぶふっ」とか吹き出したりしてました。あまり入ってない映画館でみんな無言で鑑賞してる中、一人だけうっかり声が出てしまうのは少々恥ずかしかったです。

ストーリーも素っ頓狂な演出を引きはがすとなかなかシンプルで心温まるものだったり。お互い心に欠けたところのある二人が、喧嘩したり騒いだりしてるうちに、少しずついい方に変わっていくという。こっぱずかしいけど、これ、そういう意味では恋愛映画でもあるのですよ。映画初出演なのにボーイフレンド役が阿部さんというのが吉岡さんには気の毒なことでしたが。

そもそも酷評も多いこの映画をなぜ観に行ったかといえば、予告か何かで見た主題曲「体の芯からまだ燃えているんだ」が大変いい曲だったので。阿部さんはさすがバンドを組んでいただけあって歌にパンチがありますね。ぶっちゃけこの歌を気持ちよく聞ければあとはメタメタでもOK、くらいの気持ちだったんですが、他も(自分にとっては)色々よかったのでめっけもん、という感じでした。しっとりした物語の幕引きも好みでございました。
その主題曲はこちら。じーんせいがー もえつきるまでえええーえー 来週には『ボヘミアン』の方も観てこようと思います。

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November 08, 2018

オッコちゃん 令状ヒロ子・高坂希太郎 劇場版『若女将は小学生!』

当初はまーーーーったく興味なかったんですが、ネットのあまりの評判の良さが気になって、先日見てきた(またかよ…)アニメ映画。児童小説を原作とした湯けむり人情アニメ『若おかみは小学生!』、ご紹介いたします。

小学六年生の関織子(おっこ)は交通事故で両親を失い、温泉街で旅館を営む祖母峰子のもとに引き取られる。だがその旅館には生前峰子の幼馴染だった少年の幽霊も住み着いていた。旅館「春の屋」に後継者がいないことを心配していたその幽霊・ウリ坊は、おっこに峰子のあとをつぐために若おかみになってくれと懇願する。

まず最初食指が動かなかった理由はアニメなのに舞台が温泉旅館でなんとも地味そう…と思ったからでした。しかしあらすじからもわかるようにいきなりショッキングなエピソードから始まり、次から次へと事件が起きたり珍妙なキャラが登場したりするので退屈するということはまったくありませんでした。

親が死んで孤児になってしまった女の子が老人に引き取られ、新しい環境で一生懸命がんばっていく… こういうの世界の名作児童文学によくあるパターンのような気がします。カルピス(ハウス)名作劇場を日本を舞台にしてやるとしたら、なるほどこういう風になるのかもしれません。

ハイジや赤毛のアンと違うところがあるとすれば、普通に妖怪やお化けが出てくるところでしょうか。しかしこの幽霊、デザインがかわいらしい上に真昼間にも普通に出てくるのでまったく怖くありません。お化けというより妖精に近い存在。ですからおっこも早々となじんでしまいます。

ただおっこがこういう人外と縁があるのは、事故に遭った彼女があの世に近い領域に片足つっこんでるからなのですね。両親が死んだことはわかってるはずなのに、どうしても実感がわかない。まだどこかで生きてるとしか思えない。気丈とはいえまだ不安定な年相応の子供の心情がそんな風に表現されていました。わたしゃ観てないのですが『ボネット』ってそんなお話だったのでしょうか。
またおっこちゃんは「いい子」ではあるのですが、少々抜けてたり時々すねたりもするあたり身近で親しみやすいキャラになっておりました。

以下ほぼ結末までネタバレで。

終盤とうとう両親の死を認めざるをえなくなるおっこちゃん。泣きながら「一人にしないで」と叫ぶシーンにもホロリと来ましたが、それ以上に鼻水を搾り取られたのはいってみれば加害者にあたる男に恨み言ひとつ笑顔で受け入れるくだり。まさに「小僧の神様」とでもいうべきでしょうか。わたくし、誰かが自分のことでわあわあ号泣してる場面より、辛さも悲しみも押し隠して笑顔を見せる話の方が弱いんで…
またラストシーンはしめっぽくなりそうなところを、少しのさびしさとともにさくっと爽やかに切り上げたあたりが好感が持てました。こういうのは先の『ペンギン・ハイウェイ』とも共通しています。

初週は不入りでコケ作品認定されそうだったのに、評判が評判を呼んで上映延長・再上映が続いている『若おかみは小学生!』。温泉がわりにふらっといやされてくるのもよいかもしれません。

ちなみに現在大ヒットを飛ばしている映画『ヴェノム』のツイッター公式アカウントが立った二つだけフォローしてるのが『スパイダーマン』と、なぜかこの『若おかみは小学生!』の公式だったりします。なつっこいお化けが出てくるつながりということなのでしょうか…

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November 07, 2018

エンペラーのご帰宅 リュック・ジャケ 『皇帝ペンギン ただいま』

わたしのベスト・フランス映画と言うとリュック・ジャケ監督の『皇帝ペンギン』なんですが、少し前ジャケ監督が再び南極の珍鳥に挑んだと聞き、一時間以上かけて平塚まで観に行ってまいりました。『皇帝ペンギン ただいま』ご紹介します。

まず前作では時系列にそって皇帝ペンギンの結婚→妊娠→出産→育児→解散と描かれていました。しかし今回はもういきなり雛がそれなりによちよち歩いてるところから始まります。そしてその時点を中心として時系列が行きつ戻りつするので、ちょっとややこしいといえばややこしい構成。あくまでもテーマは「育児」ということでこういう仕様になったのでしょうか。

有名な話ですが、皇帝ペンギンは卵を産むと父親がその番をしてメスが餌を獲りに旅立ちます。そののち雛が生まれ、メスが帰ってくると今度はバトンタッチしてオスが猟に出かけます(この時点でオスの絶食は数ヶ月にもおよび、途中で野たれ死ぬこともあるとか)。で、正編ではそれぞれ一往復したら巣立ちの時期…みたいな感じだったのですが、こちらではさらにその後食欲旺盛な雛のために夫婦そろって何回か餌取りに行く様子も描かれてました。残った雛はどうなるかというと、当番制にでもなっているのかわずかに残った大人ペンギンが保育士のように多くの子供の面倒を見ます。ただ鳥ですし雛は落ち着きがないので危ない場面もしょっちゅう。このあたりは見ていてスリルがありました。

さらに前作からの進歩というと技術の発達によりドローン撮影や、より深い水中も撮ることが可能になりました。…が、この辺観終わってから公式HPで知ったのでもっとその辺に注目すればよかったと後悔いたしました。それこそチコちゃんじゃないですけどぼーっと見てたので… あと種類的には近縁になるアデリーペンギンの登場も嬉しかったです。

そして海に出てから4年間、故郷に戻ってくるまで子ペンギンたちがどうやって過ごし、成長するのか。その辺も明かされるかと期待してたのですが、ぶっちゃけまだそこまではわからないし、カメラも追っていけないようです。その解明もあと一歩のところまで来てるようなので、第三作で(いつだ?)でぜひ観てみたいものです。そのためには温暖化を抑制して皇帝さんたちが安心して子育て出来る環境を守り続けなければいよね。

『皇帝ペンギン ただいま』はディズニー・ネイチャーも製作にかかわっているようですが、これとは別に来年『ペンギン』というそのまんまのドキュメンタリーを公開予定。こちらには皇帝だけでなくアデリーやキングペンギンの出番もかなり多い模様。お願いですから日本でもやってください。予告編はこちら

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November 05, 2018

デンゼル・パディントン アントワン・フークア 『イコライザー』『イコライザー2』

デンゼル・ワシントンといえばかつてはトニー・スコットのお気に入り、というイメージでしたが、最近はすっかりアントワン・フークアのミューズという印象です。そんなフークア監督の初のシリーズ作品となった『イコライザー』『イコライザー2』をご紹介します。

ホームセンターで働く初老の男マッコールは気さくな人柄で周囲から慕われていた。深夜のダイナーで読書をしていた彼は、アリーナという少女と出会う(演:クロエ・モレッツ)。明るく振舞うアリーナだったが、彼女はマフィアに脅されて売春を強要されている身の上だった。アリーナを救うためマッコールは単身マフィアの顔役の元に乗り込み、あっというまにその場にいたギャングたちをうちのめしてしまう。果たしてマッコールの正体は…

…というのが1作目のあらすじ。USA人の好きなものちうとサメやゴリラなどがありますが、それらと同じくらい高い人気を誇るのが「なめてたおっさん・あんちゃんが実は凄腕の殺し屋だった」というパターン。昨年も『ザ・コンサルタント』や『ジョン・ウィック チャプター2』などが大ヒットを飛ばしました。
実はこのマッコールさんもゆえあって引退した殺人マシン。先のキアヌ・リーブスやベン・アフレックとの違いは、とにかくべらぼうに強いこと。1対多数でも決してピンチに陥ることなく、人質をとられた時だけ「まいったなー」という顔をするくらいです。おまけにCIAの実力者にコネがあって多少のことならお願いを聞いてもらえる。まさに完全無欠の「なめてた(略)殺し屋」です。
マッコールさんのもう一つの特色は自分なりの倫理観をきっちり持ってることですね。虐げられてる弱い人たちは力の限り守る。そして彼らを虐げている悪者たちは容赦なく殺す。この優しさと苛烈さが違和感なく同居しているあたりがマッコールという男の怖さでもあり、魅力でもあります。

さて、第二作では職場の商品で悪党どもを殺りまくったのがまずかったのか、マッコールさんはタクシードライバーの転職しております。生き馬の目を抜く大都会。そこでは当然困ってる人や悲惨な境遇の人もいっぱいいるわけで。前作ではクロエちゃん一人に掛りきりだったマッコールさんですが、今回は出会ったかわいそうな人々を片っ端から助けていきます。時には…というか大体暴力で。たまーに非暴力で。そんな風に街の人々とぽっかぽかにふれあっていくマッコールさんがまるでパディントンみたいでほっこりいたしました。まあ実は2作目の巨悪は街の事件とは全然関係ないところにいるんですけど。

実は自分フークア監督そんなに好きでもなくて1作目はDVDで観たのですね。でもそっからなんとなく親しみがわいてきたというか。この二作と間に挟まれた『マグニフィセント・セブン』では力を持たない人々に対する優しい視線が感じられます。以前のフークア監督にはあまり見られなかった要素ですね。そして悪に対しては一片の同情も見せない。たとえば2作目の悪役は普段はどこにでもいる家族思いの父親だったりします。そしてマッコールさんもその妻子にはとても優しい。でも悪い奴は悪い奴なのでその家族のためを思って手心を加えたりはしません。殺ると決めたら一瞬の迷いも見せずやっぱりびしっと殺ります。善良な親の前でも凶悪な殺人犯をためらいもなく殺したブラック・エンジェルズの雪藤さんを思い出したりしました。

いつも以上に「殺」の字が多い感想となってしまいましたが、心温まる描写もたくさんある殺し屋映画なので、ハートウォーミングな作品が好きな人にはおすすめです。
マッコールさん、おそらく次作があるとすればまた転職してると予想されますが、次は何がいいですかねえ。自分は小料理屋の板前さんとか似合うと思うんですが

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October 31, 2018

天駆けるロック様 ローソン・マーシャル・サーバー 『スカイスクレイパー』

『ジュマンジ』『ランペイジ』と、今年もっとも活躍しているアクション俳優ドウェイン・ジョンソンことロック様。その2018年度3本目の主演作は、筋肉スターの本道に立ち返り己の肉体ひとつで悪に立ち向かう痛快娯楽映画。『スカイスクレイパー』ご紹介します。

FBIの特殊チームに所属していたウィルはある事件がきっかけで片足を失い、辞職。しかしその後妻子を得て防犯会社で第二の人生を楽しんでいた。彼の新たな職場は香港にそびえたつ220階建ての超高層ビル。オープンまですべては順調に進んでいたが、謎のテロ組織の犯行により火災が発生。ウィルは中に取り残された家族を助けるため、閉ざされた城塞のようなビルに這い登っていく。

わかりやすい… なんてわかりやすいんだ!!!! まるでくっきりと晴れ上がった青空のように視界すべてが明瞭であります。
まあぶっちゃけちゃうと容易に想像がつくでしょうけど『ダイ・ハード』ですね。スケールアップしてハイテク要素も色々盛り込まれた『ダイ・ハード』。違うのはテロ組織がビルをぶっ壊そうとしてるところと、ロック様にしては珍しく義足を使用しているというハンデがあること。彼が五体満足だったら開始30分もたたずに事件が解決してしまうので、二時間もたせるための工夫のひとつであります。

そんな風に新味に欠けるところはありますが、ロック様のキャラクターとアクション映画のツボがわかってるスタッフのおかげでお好きな方には「そうそう、これこれ、この味♪」と十分楽しめる逸品にしあがっておりました。
特に感心したのはこれまたよく出来たアクション映画の特長ですが、序盤何気なく出てきたセリフやギミックが後半ここぞという場所で生かされること。こういうのがあると多少強引な脚本もすごく頭がいいように見えてきたりします。
そしてわたしがこの映画で最も評価したいのは、クライマックスで悪役と対峙したロック様のキメ台詞。これがあまりにも気持ちよくてそれまでの全部をさーっと忘却しそうになったくらいでした。あとで感想を書くためにその他諸々を必死で記憶にとどめましたが… ともかく、本年度のベスト決めゼリフ映画と言っても過言ではありません。

ただ質的には『ジュマンジ』『ランペイジ』に劣るものではないと思うのですが、興行的にはその2作に一歩劣る結果となってしまいました。ステイサムの『MEG』のヒットからもわかるように、最近は筋肉スターが一人でがんばるより、動物をからめたりもう何人かの筋肉スターを共演させないと黒字は難しいのかもしれません。

さて、そんなロック様の次回作は一大ヒットシリーズ『ワイルド・スピード』のスピンオフになるそうです。これまた目新しいものはなさそうですが、手堅い売り上げを記録しそう。邦題は『ワイルド・スピンオフ』がいいと思います…!

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October 30, 2018

必殺剣トンボ斬り 歯室麟・木村大作 『散り椿』

昨年惜しくも亡くなった葉室麟氏の小説を、日本きっての名カメラマン木村大作が映画化。『散り椿』、ご紹介します。

友の父親の不正を告発した扇野藩士瓜生新兵衛は、そのことが元で脱藩。妻の篠と二人江戸でひっそりと暮らしていた。だが妻と藩主が相次いでこの世を去ったあと、新兵衛は思うところあって故郷へ戻ってくる。折しも扇野藩では新しい藩主のもと改革を進めようとする新兵衛の友・榊原采女と、旧藩主の影で私腹を肥やしていた家老・石田玄蕃の対立が激化。新兵衛の帰還はその争いにさらなる嵐を呼ぶ。

完全なる噂話ですけど、ジャニーズでもっとも喧嘩が強いのは誰かといえば岡田准一氏と松岡昌宏氏なんだとか。松岡氏の場合は気合というか番長的な強さらしいですが、岡田氏が強いのは格闘技を本格的にマスターしてるから。確かにドラマ『SP』における彼のアクション・身体能力はそれこそ半端ないものがありました。
そんな彼が時代劇で鬼気迫るチャンバラを見せてくれるというので期待していた本作品。ちなみに岡田君はいまをときめく是枝裕和監督の『花よりもなほ』という時代劇にも出ているのですが、そちらは剣はからっきしの侍の役だったんで今思えばなんかもったいない気がします。
で、その殺陣はどうだったかというと、これがなかなか独特でございました。普通チャンバラというとその方が華やかだからか剣を大きく振り回して首や胴体をチョンパするものですが、『散り椿』では剣の振りは最小限。相手の急所を細かくチョキチョキ切っていくような殺法でございました。確かに1人で多数を相手にするにはその方が効率が良さそう。あと重心を低くして「どんっ」と当たっていくような斬り方やチャンバラの合間にでんぐり返しを持ってくるようなアクションも、最近の時代劇ではあまり見なかったような。名カメラマン木村監督は「もう殺陣は全部岡田君に任せといた」とのことなので、いささか無責任な気はしますが、それで正解だったと思います。

一方ストーリーの方はどうだったかと申しますと、とりあえずだいたいのところは面白かったです。不穏な空気が流れるとある藩にいわくつきの男が舞い戻り、さらに状況がきな臭くなっていくあたりとか。そして男はどんな秘密を隠していて、何を企んでいるのか… 一人の男を中心にして周囲が洗濯機のようにかき回されていくこの流れ、ベタですがそれこそ黒澤明の『用心棒』『椿三十郎』のようです。
ただよくわからないのは当時藩を勝手に抜けるというのは相当な重罪だったはず。君主が死んだとはいえそんな簡単に帰って来れるものなのでしょうか。この辺は原作を読むとわかるのかな?(未読)
黒澤作品と違うのは主人公がややウェットなところですかね。ウェットというか彼も彼の妻も親友の采女も思考パターンが大概面倒くさい。三者の面倒くささが絡み合って事態はすっかりややこしくなってしまうのですが、この面倒くささが考えようによっては日本人尊んでいる「おくゆかしさ」というやつなのかもしれません。うーん、めんどくさー!!

岡田君は年末から来年にかけてドラマ『白い巨塔』に映画『来る』『ザ・ファブル』と相変わらずお忙しい模様。アクション好きとしては「伝説の殺し屋がなるべく目立たぬよう努力してひっそりと暮らす」という『ザ・ファブル』に期待しております。やっぱ体は動かせるうちにガンガン動かしていきましょうよ!とピークを過ぎた40代は思うのでした。

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October 24, 2018

最も危険な将棋 瀬川昌司・豊田利晃 『泣き虫しょったんの奇跡』

♪ふう~けえ~ば とぶよ~な しょおぎのこまにィ~~と。本日はもう公開が終了してしまった将棋映画の傑作『泣き虫しょったんの奇跡』を紹介いたします。

時は80年代。特に主体性のなかった瀬川昌司少年(しょったん)は明るい担任の先生に励まされてから、将棋にどんどんのめり込んでいく。隣家に住む鈴木悠野というライバルに恵まれたしょったんはめきめき実力をあげ、ついにはプロ棋士を養成する「奨励会」に入会。だが奨励会で生き残ることは想像を絶するすさまじさで、しょったんは次第に追いつめられていく…

洋画の「実話に基づいた話」というは向こうではよく知られていても、日本人にはそうではないことが多いですよね。最近だと『アメリカン・スナイパー』とか『フォックス・キャッチャー』とか。この『泣き虫しょったん』もいわゆる「衝撃の実話」なんですけど、わたくし恥ずかしながらちい~とも知りませんでした。これ、当時は相当話題になったと思うんですけど、その時よほどボーっと生きてたのか。ともかくそのころの奨励会には「26歳までに4段に昇格できなければ退会→プロにはなれない」という鉄の掟がありました。一度退会したしょったんがどうしてプロになれたのか… そのプロセスはまさしく「奇跡」以外の何物でもありません。

ストーリーはおおむね3部にわけることができます。将棋を知り、友とひたすら打ち込んでいくワクワクする第一部。奨励会に入るものの次第にプレッシャーに蝕まれていく第二部。この第二部が本当に胃がキリキリするようなつらいパートで、自身奨励会に所属していたという豊田利晃監督の経験が存分に生かされております。そしていったんゼロにリセットされてから、静かに再起をはかっていく第三部…と。それこそ本当に映画みたいな話であります。
主演の松田龍平さんはお父さんゆずりのオーラを漂わせている方ですが、今回はそのオーラを封印。ひたすらおとなしげでぼそぼそしゃべるしょったんをある意味熱演しておられました。
そのしょったんを温かく支えるのが3人のオヤジたち。将棋倶楽部のおじさんのイッセー尾形、実父の國村隼、再起を手助けする小林薫、三者三様の人間力でもってそれぞれの時代のしょったんを導いていきます。決して安易に感動をあおるような作りではないのですが、出てくる人々の静かな情熱が鼻水を誘ういい映画でございました。

…にもかかわらず興行はだいぶ苦しかったようで。『聖の青春』もいい映画でしたが、あまり芳しくない成績でした。この度はつい最近藤井聡太君の快進撃もあったので、その影響でもう少し売れるのでは…と期待しましたがやっぱりダメでございました。なんというか「将棋」という題材そのものが映画興行にむいてないのかもしれません。個人的には本年度の実写邦画では1,2を争う出来だと思っているのですが… 無念。わたくし好きな映画はあんまり人に勧められない場合が多いですけど(劇場版『仮面ライダーアマゾンズ』とか)、『泣き虫しょったんの奇跡』は自信をもってたくさんの人に推せる作品です。

ちなみにこの映画、出番1分もありませんが『聖の青春』『3月のライオン』にも出てた染谷将太氏もキャストに名を連ねています。染谷将棋三部作とでも呼べばいいのか。また将棋映画が作られることがあったら、引き続き登板していただきたいですね!


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October 23, 2018

サラリーマン×プー太郎 A・A・ミルン マーク・フォースター 『プーと大人になった僕』

『パディントン2』『ガーディアンズ』『ブリグズビー・ベア』と昨年から熊系の傑作映画が続いていますが、ここに来て天下のディズニーが世界で最も有名な熊キャラの実写映画を発表いたしました。『プーと大人になった僕』、ご紹介いたします。

クリストファー・ロビン少年と喋る熊のプーさんは大の仲良し。二人は森の仲間たちといつも一緒に遊んでいたが、やがてクリストファーが寄宿学校に入るため別れなければならなかった。やがてクリストファーは成長し、結婚、戦争を経てカチコチのサラリーマンになってしまう。ある時仕事に息づまりベンチでうなだれている彼の前に現れたのは、子供のころと変わっていない「くまのプーさん」だった。

プーさんといえば日本でも誰とて知らないものはいない超メジャーなキャラでありますが、正直自分は「プーさんのハニーハント」に一回乗ったくらいのなじみしかありません。周囲にわらわらいる動物はティガーくらいしか知らなかったんですけど、今回ようやく他の連中の名前も覚えることができました。

童話系の実写映画というと今年は先にもあげた『パディントン』や、『ピーターラビット』がありましたが、プーさんが彼らと違ってなんかぬいぐるみとしてのイメージが強いせいか、動くとなんか怖い。デザイン的にもチェコの前衛アニメ作家・シュバンクマイエルの作品に出てきそうな感じでちょっと不気味なムードが漂っていました。が、それも最初のうちだけで観ているうちにだんだんとかわいく見えてきます(たぶん)。

最近ディズニーは過去の名作の実写化に力を入れてますよね。『シンデレラ』に『ジャングル・ブック』に『美女と野獣』、これからも『アラジン』や『ダンボ』が待機してます。『マレフィセント』を除けばどれも原典にほぼ忠実な実写化となっていましたが、この『プーと大人になった僕』にかんしては相当な変化球…独自のアフターストーリー…で挑んできました。ツイッターではみんな「これ『劇画オバQ』じゃん」とか言ってました。『劇画オバQ』とはそんなに誰でも知ってる作品であったのか…? それはさておき、やや皮肉っぽかった『劇画オバQ』と比べると、こちらの方は監督の人の好さゆえか普通にハートウォーミングなストーリーになっています。
わたしが特にほっこりしたのはロビンさんちご家族の包容力の広さですね。お父さんもお母さんも娘さんも心の中でストレスを抱えているのですが、だからといってそれを人やクマにぶつけたりはしない。ロビンさんも一回だけ切れてましたが、相当切羽詰まった状況にありながら、それでも一生懸命旧友の面倒を見ます。演じるは昨年の『T2 トレインスポッティング』が記憶に新しいユアン・マクレガー。あっちでは相当ダメな大人でしたがやればできるじゃねえか!と思いました。

この映画で特につきささるのは会社の書類を大事そうに抱えてるロビンに対して、「それは風船よりも大事なものなの?」と問うプーさんのセリフ。うん、そうだよね… わたしも正直仕事とかよりガンプラやアメコミフィギュアの方が大事だよ…!!!!
あとディズニー関連では数秒だけプーさんが出てきた『ウォルト・ディズニーの約束』を思い出したりしました。こちらにも仕事で追いつめられたお父さんが出てくるのですが、実話だけにけっこう辛い話だったりしてね…

やっぱり仕事なんかはほどほどでいいんじゃないですかね。楽してお金が稼げたらなあ~ってなんでそんな話になってしまうんでしょう。ともあれプーさんにいろいろ気づかせてもらい感謝でした。

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October 22, 2018

転生したら普通に勇者だった件 S・S・ラージャマウリ 『マガディーラ 勇者転生』

公開から1年を経てもIMAXリバイバルなどで話題を呼んでいる『バーフバリ』。本日はそのS・S・ラージャマウリ監督が9年前に手がけたもうひとつのスペクタクル映画『マガディーラ 勇者転生』を紹介します。

17世紀のインド。勇者パイラヴァと王女ミトラヴィンダは相愛の仲であったが悪漢の奸計に陥り、結ばれることのないまま悲劇的な最期を迎える。
それから約400年後の現代。バイクレーサーの血気盛んな若者ハルシャは、バス停である女性の手に触れた途端電撃のような衝撃を受ける。やがてはハルシャは自分が勇者パイラヴァの生まれ変わりであり、その女性インドゥもまたかつての恋人ミトラヴィンダの転生であることを知る。

わたくし監督ラージャマウリさんはハエが主人公の映画『マッキ―』でブレイクした方かと勝手に思ってたんですが、それ以前からインドでは大大人気監督だったみたいで。すいません。特にこの『マガディーラ』は本国で1000日を越えるロングランを記録したというからぶったまげです。1000日言うたらぶっちゃけ3年弱ですからね。日本で記録的ロングランといえば『タイタニック』でも1年くらいでしたし。

序盤こそ突然女詐欺師を捕まえるくだりで謎の「金のめんどりダンス」がえんえんと流されてしまい面喰うのですが(後にカメオ出演している主演俳優のお父さんのヒットナンバーであると知りました)、運命の二人がビビビッと出会った途端テンポが俄然よくなってきます。17世紀パートの歴史劇はそれこそ『バーフバリ』のようであり、現代パートの恋のさや当ては『マッキ―』のようであったり。というか『バーフバリ』は前二作で積み上げたものを踏まえてさらにスパークさせた映画だったんだな…ということがよくわかりました。

あと4作観て改めて思いましたが、ラージャマウリ監督の作風ってすごく『ジョジョの奇妙な冒険』っぽいですね。メインキャラはみんな濃い目の顔立ちでいちいちズバーンとポーズを決めます。悪役はどこまでも悪く一片も同情の余地のないやつなのですが、どこか不思議な色気があったり。そして物理では不可能なアクションも「オラオラオラオラ」と気合で可能にしていきます。主人公側に物悲しい背景があるあたりも大変ジョジョっぽいですね。

尺やスケールの点では『バーフバリ』よりもスケールダウンしてる感はありますが、『マガディーラ』が面白いのはやっぱり戦国時代と現代を行ったり来たりする構成。いまどき生まれ変わりとかあまりにもおとぎ話っぽい気はしますが、インドの人々にとってはいまだに身近でロマンをかきたてさせられる素材なのかもしれません。

ラージャマウリ監督作品にはこの翌年に作られた『荒武者キートン』のリメイク『あなたがいてこそ』というのもあります。2010年にひっそりと日本公開されてたのですが、来月横浜のシネマヴェチェントという劇場でリバイバルされるとのこと。うーん、行きたいけどきびしいなあー

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