September 02, 2010

どんどんばんばんドーパント 『仮面ライダーW FOREVER A to Z 運命のガイアメモリ』

100901_204842夏休みは終わったけど、こっちはまだ終ってなーい! ということで、劇場版仮面ライダー最新作ご紹介します。

ミュージアムとの最終決戦を控えた翔太郎とフィリップ。だがその矢先に、ミュージアムが開発した次世代型ガイアメモリ26本が、謎の傭兵チーム「NEVER」によって強奪されるという事件が起きる。その力を使い、風都の人々を恐怖に陥れるNEVERのリーダー・大道克己。一方そのころフィリップは、事件解決を依頼してきたICPO捜査官マリアに、母の面影を見出そうとしていた・・・

この時期にやる例年のライダー映画は、おおむね本編とはパラレルワールドで、「もうひとつの最終回」みたいなものをやることが多いです。例外といえば『電王』くらいでしょうか。
しかし今回の『W』劇場版は、見事に本編の合間にがっちりとはさまるミッシング・リンクのようなエピソード。といって、映画を見なくても本編のお話には支障はないようにできています。わからないことといえば、なぜ風都タワーが最終五話手前でぶっこわれているのか?ということくらい。

でもやっぱり一年『W』に親しんできた人は見ておいたほうがいいでしょう。なぜなら予算がほとんどこっちに行っちゃってるから(笑)わたくしすでに本編の最終回も見まして、いや、大変よい最終回だと思ったのですが、やはり劇場版と比べてみてみると、絵的にはいささか地味な印象をぬぐえません。
ライダー映画って時々素人目にも「お金かかってないなあ」というのがわかって悲しくなることがあるのですが、今回はかなり潤沢に資金を使っている様子です。この辺は塚田プロデューサーの手腕でしょうか。

どう豪華かというと、まずWの変化形態11種類が全て出てくる上、さらにアクセルの2形態に、劇場版初御目見えのジョーカーにエターナル。そして隠し玉二発までが用意されているという。思えばWは後半ほとんどエクストリーム形態にしか変身してなかったからな~ 目まぐるしく色の変わるダブルを見ながら、「あれ? これはどんな能力のヤツだっけ?」と必死に思い出してましたよcoldsweats01

さらに普段なら一時間一体の敵怪人が、今回は五体も出てきます。雑魚キャラもわらわら湧いてきたりして。序盤なんか思い切り苦戦してるし、「本当に時間内に全部倒せるのだろうか・・・」と不安になりました(笑)
その五人の中のメインが仮面ライダーエターナルとなる、元ソフィア松岡充。まあ彼は違和感なく普通に『W』の悪役を演じていたなあ、という印象。変身後のエターナルは大変素晴らしい造形でうっとりしましたけどね。悪の親玉が純白で、それに立ち向かうヒーローが真っ黒というのが面白いです。
さらに目立った怪人としては変身前のおみ足が素晴らしいヒート・ドーパントのお姉さん。そして作品を食いかねないほどのインパクトを放つルナ・ドーパントのオカマさん。
あまりにオカマの演技が板についていたので誰だか気づかなかったのですが、この方、実は元格闘家の須藤元気さんでした・・・ 須藤さん、あんた偉いよ・・・ 今までのプライドもかなぐり捨ててさあ・・・
と思ったら、Wikiによるとこのキャラをオカマにしようと言い出したのは須藤氏本人だったそうで。ほかにもかなり重症のアニメマニアであることなど、面白いことがいろいろ書いてありましたcoldsweats01

さて、ストーリーはと言いますと、ちょっとネタバレですが途中でフィリップくんが災難にあい、翔太郎くんが一人でがんばらなくてはならなくなります。普段頼りにしている相棒を助けるために、孤軍奮闘する翔太郎。まあ似たようなエピソードはテレビシリーズでもありましたけど、やはり劇場のでかいスクリーンで見ると力の入れ具合も変わってくるというもの。
風都の人々が愛してやまないシンボルだったのに、NEVERに占拠されて悪の基地と化してしまった「風都タワー」。その魔の城へ向って一人乗り込んでいく翔太郎=ジョーカー。こういうの燃えますですcrying。あ、照井竜もいたか・・・

100901_205052本編のまとめ記事に関しては、また日を改めまして(いつになるかなー(^^;)) 小林靖子姉さん脚本の『オーズ』も楽しみです。

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August 24, 2010

エイドリアンVSプレデター 二ムロッド・アーントル 『プレデターズ』

100824_182139あら気がついたら一週間更新さぼってた(笑) そんな間にこの映画も上映終了crying サマーム-ビーの先陣を切って、すでにその役割を終えた『プレデターズ』についてダラダラと語ります。

目が覚めたら突然空中でスカイダイブしていた傭兵のAさん。なんとか無事に着地したAさんは、似たような経緯で不時着してきた者たちと出会います。マフィア、ヤクザ、ロシア兵、イスラエル兵、サイコキラー・・・ 彼らはみな殺人のプロフェッショナルでした。お互い不信感がぬぐえない彼らでしたが、ひとまず手を組みその地を脱出することに。彼らは知りませんでした。そこが宇宙の狩りマニア「プレデター」の猟場であるということを・・・

まずわたしの『プレデター』シリーズに関する印象を。1987年の第一作はテレビでなんかやりながら見た覚えがあります。感想は「どうも盛り上がりに欠ける話だなあ」というものでした(ファンの方すいません)。まあこれは『プレデター』に限らずジョン・マクティアナン監督の特性とでも申しましょうか。『ダイ・ハード』しかり、『13ウォリアーズ』しかり。そういや最近撮ってませんね、映画。

そんで第二作は未見。わたしがプレデターさんのかっこよさに目覚めたのは2004年の『エイリアンVSプレデター』でした。槍や手裏剣など多彩な武器をひゅんひゅん操り、あの最強の宇宙生物エイリアンをさえ一刀で断ち切るその強さ。「これまで頭のゴテゴテしたダサい宇宙人とか思ってて、本当ゴメン!」と心の底から謝ったものでした。

というわけでこの度の新作『プレデターズ』。今度は未知の惑星を部隊に、人間VSプレデターの死闘が描かれています。正直言うとエイリアンさんと互角に渡り合ったプレデターさんが、いまさらホモ・サピエンスなんか相手にしなくてもねえ・・・とも思ったのですが、いやいや、なかなかやがんばってましたよ、ホモ・サピエンス(笑)。エイリアンさんが登場しない分、ストーリーにいろいろ工夫がなされていました。プレデターさんのねちっこさの描写とか、人間チームの個性の書き分けなどにね。

超科学を武器に人間どもをいたぶるプレデターさん。「大人気ないなあ」と最初は思います。でも考えてみれば人間だってこすい方法を使って、動物や鳥や魚をハンティングしたりするじゃないですか。もしかしたらこの設定は、「たまには動物さんたちの身になってみたら?」という作者からのメッセージなのかも。おお、なんかこれ、すごい高尚な映画って気がしてきたよ!?

あとですね、前半ではプレデターさんたちの方がとてもおっかなく見えるんですが、お話が進むにつれ、本当に怖いのは生き残るためには手段を選ばない「人間の心」であることも明らかになっていきます。

が(笑)、

やっぱりねえ~ ヤクザがプレデターと日本刀でチャンバラやってる時点で、そういう高尚なメッセージも宇宙の彼方に飛んでいってしまうのが悲しいですね・・・ ややこしいことは考えず、『バトル・ロワイヤル』のノリで生き残りゲームを楽しむのが正解でしょうか。はい。

主演にエイドリアン・ブロディ。わたくしこの人の映画は『キングコング』と『ダージリン急行』くらいしか見てないのですが、なんかこう、「受難の人」という印象です。いまハリウッドで理由もなくひどい目にあう人物をやらせたら、たぶんナンバー1かと。本人もそれをわかっているのか、さして嘆きもせず「はいはいまたですか」って感じで災難を受け流しております。

ウィキペディアを見てみますと、ロバート・ロドリゲス氏がかつて描いたボツのスクリプトなど出ているのですが、これがなかなか面白そうなんですよね。この辺もいつか日の目を見ないものかしら。

Krkh042まあどんな形にせよ、またいつかプレデターさんのいかした活躍がみたいものです。今度はミラクル七号や『宇宙戦争』のトリポッド、はたまた『地球が静止する日』のゴートなどを登場させて、「最強宇宙人決定バトルロイヤル」などさせてみるのはいかがでしょう。

それでは最後はこの言葉でしめましょう。「エイドリアーン!!

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August 17, 2010

ウィンディ・シティ・コップ 『仮面ライダーW』を語る③

100817_172508強敵との闘いの中で、新たな力を手に入れていく翔太郎たち。照井竜も家族の仇であった伊坂深紅郎との決着をつける。そんな折、フィリップは少しずつ自分の過去についての秘密を知る。その衝撃も冷めやらぬうちに、いよいよミュージアムと財団Xは自分たちの計画を最終段階に移した。仮面ライダーW、決戦の時が迫る・・・

新作映画の記事をひーこらこなしてるうちに、気がつけば『W』も残り二話となってしまいました・・・ まこと時の経つのは早いものです。今回は『仮面ライダーW』における女性の描かれ方に関して少々。

漫画やアニメなどのサブカルチャーにおいて、女性が都合よく描かれることは少なくありません。どういうことかというと、「主人公がなんのとりえもないボンクラなのに、すごいカワイコちゃんが理由もなく好きになってくれる」という作品が多いこと。まあそういう作品もある種の男の子たちに夢と希望を与えるために、必要っていや必要なんですが。

ところがこの『仮面ライダーW』においてはそういう「あま~い」だけの女の子はほとんど登場しません。メインの三条陸氏がアニメ畑の出身であるのにも関わらず(笑)
どんなゲストヒロインがいたかふりかえってみると、翔太郎の人のよさにつけこんで共犯者を殺させようとしたり、復讐の片棒をかつがせようとしたり。ギャンブルや非行にはまって家族を悲しませたり。犠牲者のようなフリをして、実は影で糸をひいていたり。翔太郎たちだって一生懸命やってるのに、苦戦してると役立たず呼ばわりしたり。・・・・怨念で自分を裏切った男を呪い殺そうとしたコもいたな。

ゲストがそんなですから、レギュラーの園崎さんちなんか輪をかけてすごいです。役に立たないとわかった途端にためらいもなく夫を殺害する冴子さまに、表ではキャピキャピアイドルを装いながら、裏では始終怒りまくってる若菜姫。そしてそのお母さんがまた包帯でぐるぐる巻の復讐の権化ときたもんです。

唯一そういう毒が見受けられないのが、メインヒロインである?亜樹子ちゃん。ですが、彼女はどうも翔太郎たちから女性として見てもらってない気がいたします(笑)
ともかく、そういうドロドロした情念ばかり見せ付けられて、お茶の間のガキんちょたちが女性不信に陥ってしまわないかちと心配になりますが、一方で女性の一途な面や純粋な面が描かれたエピソードもあるので、その点はバランスがとれています。

最終決戦を前にして、気になるのがタブー・ドーパントのメモリを持つ冴子さま。復讐の対象を失いながらも、まだ目に闘志を宿している彼女がラストにおいてどのような動きを見せるのか? もしかしたらラスボスである加頭を倒すキー(ウー)マンとなるのは、彼女なのかもしれません。

100817_172535ちりばめられた謎もほぼ全て明らかになりましたかね。強いていうなら鳴海荘吉がなぜ変身ベルトとスカルのメモリを持っていたかってことですが・・・ ま、シュラウドからもらったんでしょう。
最終五話直前のエピソードとなる劇場版も現在公開中。近日中にこちらもレビューいたします。


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August 14, 2010

ニッポン救世主伝説 神山健治 『東のエデン 劇場版II Paradise Lost』

100814_183434これ見たのもう二週以上前だなあcoldsweats01 よって静岡東部でもすでに上映終了しております。今日はテレビシリーズから始まった『東のエデン』の完結編についてちょっこし書きます。オリジナルについてはコチラを、劇場版第一部についてはコチラをご覧ください。

元総理の息子という肩書きを与えられ、日本に戻ってきた滝沢。その周囲が再び騒がしくなる中、咲は滝沢に頼まれて彼の母親を懸命に探す。一方滝沢は勝利のためにはミサイル攻撃も辞さない「セレソン」の一人、物部に対抗すべく策をめぐらす。そして「セレソン」たちの生き残りゲームも終局にさしかかったその時、ずっと謎だったゲームの主催者「ミスター・アウトサイド」の正体がようやくその姿を現した・・・

セレソンたちが次々と脱落していく中で、滝沢の前に最後に立ちはだかったのは「No.1」物部でありました。元官僚であり、恐らく「No.2」の辻と並んで、最も高い知力と行動力を持つ男。そして将来の日本に対する自分なりのヴィジョンもしっかり持っております。
ただ彼のヴィジョンというのがかなりクセモノでありまして。聞いているとまるで戦前の治安維持法を復活させて、全体主義的な時代に戻そうとしているとしか思えない。しかし物部の言い分にも一理あり、一方的に「悪」とも処断しがたいところがあります。主人公の滝沢ですら、「じゃあ物部さんが総理になってよ」とまで言い出す始末。
けれども、人を集団としか見られない物部と、個々の人の心に訴えようとする滝沢とは決裂することになります。

そんな二人の対決を離れたところでじっとうかがっているのがミスター・アウトサイド、こと亜東才蔵。これまでほとんどわたしたちに近い世代しか出てこなかったこのアニメですが、彼の登場により、作品世界は戦中や高度経済成長期といった日本の近代史とつながることになります。
ともかくお金を儲けなくては、ということで動いてきた戦後日本。しかし20世紀末においてその方向にも限界が見えはじめ、この国は進むべき場所を見失ってしまいました。そんなわけで用意されたのがこの「セレソン」のゲームだったわけです。
しかし作品としてははっきりと具体案は提出せず、結論としては「一人一人、真剣に考えよう」という程度のものでありました。でもわたしはそれでいいと思ってます。そんなに簡単に解決策が出せれば誰も苦労はしません。このアニメを見た若者が社会や周りの人々に対して、少しでも積極的に考えるようになれたなら、作品には十分価値があったと思います。

強いて神山氏が残したヒントを探るとするなら、それは「世代を越えた協力が必要」ってことではないでしょうかねえ。上の世代は若い世代のためにもっと道を開くようにして、下の世代はもっと社会に関わっていくようにがんばる。社会から脱落したようなわたしが言うのもなんですが、もっと多くの大人たち・若者たちがそう努力するなら、日本はもっと住みよい国になると思います。

このアニメは一応ラブストーリーの一面もあったと思うのですが、この劇場版においては、むしろそんな「日本の行く末」の方が大幅にクローズアップされてしまった感があります(笑) 滝沢と咲の恋については、はっきり決着が着いたというよりはまだまだ発展途上のような。まあそれはそれで先を想像する楽しみもあるというもの。

100814_183510「先を想像する」といえば、亜東という最強のカードを手に入れたタッ君は今後どんな活躍を見せるのでしょう。世界の各国を相手に痛快なパワーゲームでも繰り広げるのだろうか・・・ なんて考えると楽しいですね。
ともあれ『東のエデン』、全編見られて本当に良かったです。上映してくださったジョイランド沼津さまに、感謝半永久的に(ハンパ)

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August 09, 2010

ザ・コブ クリストファー・ノーラン 『インセプション』

100809_185718『ダークナイト』で一躍勇名を轟かせたクリストファー・ノーラン監督の最新作は、P.K.ディックの世界を思わせるサイバーパンクSF。『インセプション』ご紹介いたします。

裏社会に生きるエージェント・コブは、人の夢に潜入し、重要な情報を盗み取ることを生業としていた。ある時コブは大企業の社長であるサイトーの脳内に潜入するが、任務に失敗してしまう。顧客の手から逃れようとするコブを助けたのはなんとサイトーだった。彼はコブにライバル会社の跡取り息子の潜在意識にもぐりこみ、とある意識を植え付けて(インセプション)ほしいと依頼する。

今回はもう最初からどんどんネタバレしていきます。以下はできたら作品をご覧になった方のみ、お読みください。

映像作品の強みに「同時進行」というものがあります。幾つかの異なる場所で行われている事柄を、演出の妙でもってほぼ同じ時間でもって見せていくことができるという。まあ小説やマンガでもできないことはありませんが、やはり「実際に動いている」映像作品に比べると、臨揚感が格段に違います。
しかしこの「同時進行」も、下手をすると見ているものの頭をこんがらがせてしまう恐れがあります。わたしの記憶では『スターウォーズ エピソード1』の山場などは、四つの視点が絶えず入れ替わり立ち変わり進行していくので、見ていてかなりせわしなかったりしました。
で、この『インセプション』もかなりその点でややこしい構成だったりします(笑) こちらもクライマックスでは意識の階層に応じた四つの時間軸が同時に進行していきます。しかもそれぞれの世界の出来事が、他の世界にも密接に影響していくというややこしさぶり。しかしここまで徹底されるとかえって混乱するというより、感心してしまうから不思議なものです。うん、ここまで思い切った実験というかチャレンジは、なかなかできるもんじゃないです。

ただ「同時進行」といっても、画面を四分割しているわけではないので、多少のズレが出てきてしまうのは否めません。DVD化の際には特典として、画面を「田」の字に区切って四つの世界を本当に同時に見せていく映像を付けるというのはどうでしょう。メーカーの方、どうぞご一考を。


ハード面の話はこれくらいにして、次にソフト面の話を。
わたしがノーラン監督の作品を見たのは『バットマン・ビギンズ』からなんですが、この『インセプション』を含む近年の四作には、多かれ少なかれ「親と子」というモチーフが使われているように思えます。
『インセプション』の主人公コブは、「子供たちの元へ帰らせてやる」という約束を信じて、難解なミッションに必死の思いで挑みます。一方コブのチームが潜入する「意識」の持ち主のロバートは、父との関係に強いわだかまりを有しています。
親でありたいと願うコブ。子でありたいと望むロバート。二人の思いが頂点に達してシンクロした瞬間、バラバラだった世界は一つになり、夢が現実のものとなる。このあたりに強いカタルシスを感じました。

で、ここでどうもひっかかるのがコブの依頼主である「サイトー」の存在。人の人生をいじくって自社の利益を図ろうとするなんて、なんてひどいヤツだと思いながら見ていたのですが、どうも見終わってみるとこの人、ロバートにいいことをしてあげたようにしか思えない。
そもそも「自分の考えで動け」という意識を植え付けたとして、本当に彼の会社が傾くかどうかは微妙なところです。別に社長自らこんな危険なミッションに参加しなくても、株やら市場やらを利用して安全かつ確実に追い落とす方法が幾らでもあるような気がするんですが。

もしかするとサイトーというのはロバートの父に雇われたエージェントで、ロバートに父の真意を伝えさせることが目的だったのかも。「普通に口で言えばいいじゃん」と思われる方もおられるでしょうが、『ロード・トゥ・パーディション』や『アイアンマン2』を見ればわかるように、父と子の関係というのはその辺、かなり面倒くさいものなのですよ。その上長年の確執があったりすると、率直に顔を合わせて言ってもなかなか信じてもらえなかったりして。
ただこの考えだと、「じゃあどうしてサイトーはコブにその目的を伝えなかったのか」という新たな疑問が沸いてきたりします。 ・・・うん、なんか事情があったんですよ。きっと。

妄想はこのくらいにして。
ラストシーン、「夢の中では回り続ける」というコマが倒れる前に映画は終りになります。若干傾いているようにも見えたんですが、それは「現実であってほしい」というわたしの願望がそう見させたのかも。
「子供の格好が夢の中とまったく同じ」ということから、全てコブの夢だった・・・と考える方もおられるようですが、実際は評論家の町山智之氏ほかがおっしゃってるように、「どっちでも取れるように作ってある」というのが真実でしょう。この辺は『トータル・リコール』や『マトリックス』(第1作)などでもわかるように、サイバーパンクもののお約束というか。
ただ衣装デザイナー担当のジェフリー・カーランド氏が言われるには、コブの子供が着ている服は、それまでとラストとで違うんだとか。そりゃ一体どういうことなんだーっ!!

100809_185749・・・・わかったぞ。そういうつつみくらますようなことを言って、もう一回見させようという魂胆なんだな!? ていうかなんだか本当にもう一回見たくなってきてしまったんですが(のせられやすい)。
ともあれ、『インセプション』は現在日米ともに大ヒット公開中。♪夢の中へ 夢の中へ 行ってみたいと思いませんか~ ・・・夢の内容によるかな。


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August 04, 2010

とーい昔の君へ リー・アンクリッチ 『トイ・ストーリー3』

100804_173211あのウッディとバズが10年ぶりに帰って来た! んだけど、今度の彼らはなんだか深刻そう・・・ 本日はピクサーの原点である『トイ・ストーリー』シリーズの完結編?をご紹介いたします。

ウッディが日本の博物館に送られそうになってから数年。いまや持ち主のアンディは大学進学を控え、もうオモチャで遊ぶ歳ではなくなってしまった。行き違いから彼に捨てられたと思ったオモチャたちは、自ら「オモチャたちの楽園」と噂される託児所「サニーサイド」へ向うが、そこは楽園などではなく、ぶっ壊れるまで子供たちに虐待され続けるオモチャの強制収容所であった・・・

だれですかっ こんなおっかねえ話を思いついたのわっshock

それはひとまずおいといて、前作「2」のラストを思い出してみましょう。一件落着した後、ウッディに語りかけるバズ 「いつかはアンディだってわたしたちを必要としなくなるぞ」 それに対し答えるウッディ 「仕方ないさ。でもたとえそうなっても俺にはバズという相棒がいる。それで十分さ」

・・・ってちょっと待て。いますごく重要な問題をさくっと流しただろ!

そう、いつか子供が大人になった時、オモチャの居場所はなくなってしまうのです。中にはいいトシこいてオモチャでコキコキ遊んでる大人もいますが・・・ げふんげふん
ま、ともかくこの問題に正面から取り組んで、納得のいく結論を出すには十年の歳月が必要だったということなのでしょう。

思えばこの十年でピクサーもすっかり日本に定着した感があります。実は『トイ・ストーリー』の1と2というのは日本においてはそれほど目立ったヒット作ではなかったそうですが(それぞれ15億と35億)、今回は初日の二日間だけで9億を稼ぎだすほどの快進撃。それだけピクサー、そして『トイ・ストーリー』が一大ブランドとなったということなのでしょう。
中には「いきなり『3』から見た」という方もおられるようですが、やはりここは前二作を見てからトライしていただきたい。でないと、三つ目の宇宙人たちがなぜクレーン車を見て「かみさま~」と駆け出すのかわかりません。ぶっちゃけ、ここ一番大事なとこなんで。
また前二作を見ることによって、「オモチャは子供に遊ばれてこそオモチャ」「しかしやがては捨てられてしまう身」という彼らのバックボーンが一層深みを増します。

果たして旅立つことになったアンディはオモチャたちにどんな決断をくだすのか? そしてウッディたちの運命は。

考えてみればオモチャと人だけでなく、人間同士でも大抵は必ず別れがつきまとうものです。たとえどんなに親しい間柄でも。
ここでこの「別れ」の儀式をきっちりやっておくなら、お互い次のステージへと気持ちよくステップアップできるわけですが、その辺がおざなりだったり不幸な形で済まされてしまうと、本編に出てくるロッツォ・ハグベアのように一生を左右するトラウマを負いかねない。「別れ」って大事だなあ、とつくづく感じ入ったのでございました。

とまあ深刻なところばかり語ってしまいましたが、いつものピクサー節は健在です。本当にもう、ネタ、詰め込みすぎなんですよあなたたちは!
まあなんつーかオモチャっていうのは、もう姿かたちだけで十分キャラ立ちしてるからずるいですよね・・・
仮面ライダーと思しきカマキリ男やら、おなじみのシンバルを連打するおサルやら、ウン年間逃亡生活をしている走る電話やら、不幸な過去から笑わなくなってしまったピエロ人形やら・・・ もう一度言います。ネタ、詰め込みすぎです。
なかでもはっちゃけてたのがバービーのボーイフレンドとして作られたケン人形。女の子のオモチャとして作られた男の子、という矛盾をはらんだ出自ゆえか、性格もかなり一筋縄ではいかないようで。来年のアカデミー助演男優賞は、まず彼と見てまちがいないでしょう。

さらには絶対脱出不可能なサニーサイドからどうやって脱出するのか? 脱出できたとして彼らに明日はあるのか? 最後の最後まで、本当に目が離せません。

100804_173247正直言うと最初は「なにもいまさら続編なんか作らなくても」と思ってたんですよね。作れば悲しい話になってしまうのがわかっていたから。
でも今は、ちゃんと彼らとお別れができて本当によかったと思います。これこそが最高の別れ方というものでしょう。
ちなみに次のピクサーの新作は『カーズ2』に『モンスターズ・インク2』。安易に続編を作らないところがピクサーの良いところだったのだが・・・
あと捨てられたオモチャたちにもそれなりにハッピーな毎日が待ってるかもよ?という作品には『屋根裏のポムネンカ』という素敵な作品があるのですが、こいつがどういうわけかまだDVDになっていないようで・・・ 納得、いきませんよ! というわけで、出すなら今です。「東欧版トイ・ストーリー」というコピーで売り出せば、きっとバカスカ売れますから!

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August 03, 2010

武士のラスト15分 平山秀幸 『必死剣 鳥刺し』

100802_183701『たそがれ清兵衛』以後コンスタントに作られている藤沢周平原作映画。今回は『愛を乞うひと』などで名高い平山秀幸氏がメガホンを取った、『必死剣 鳥刺し』をご紹介いたします。

江戸時代のとある藩にて。藩主は愛妾の言うがままに暴政を敷き、民衆の不満は募る一方となっていた。そんなある日のこと、中級武士兼見三左エ門は突如城内にて、その愛妾・蓮子を刺殺する。打ち首もやむなしと思われた三左エ門だったが、彼に下されたのは一年の閉門という驚くほどに軽い処置であった。「なぜ殿はわたしに死を賜れぬのか」 三左エ門は深く悩む・・・・

まず序盤の流れですが、とてもよくできたミステリーとなっております。
一つは「なぜ三左エ門は殺されなかったのか?」という謎。藩主は自らも省みぬ忠義の振る舞いに心を動かされたのか? それともほかに何か理由があるのか?

もう一つは「なぜ三左エ門は突然そんな凶行に走ったのか?」という謎。普通に考えるなら、藩政を乱す不届き者に我慢がならず・・・ というところなんでしょうけど、三左エ門はそんなに蓮子に対して憤ってるそぶりは見せないので、あまりそうも思えません。実はこっちの謎は結局はっきりとは語られなかったのですが(笑)、三さまの身に起きた不幸を思い返してみると、もしかすると忠義というより自殺願望のようなものだったのでは・・・ と思います。

そして題名になっている「必死剣 鳥刺し」の謎。三左エ門が会得しているという究極の剣技の名前。「いまだ誰も見たことがなく」「使い手自身、それを振るう時には半ば死んでおりましょう」というその技は、いったいどんなものなのか・・・

昨年から時代劇の本数もそれなりにありますけど、どうも評判を聞くとあまりかんばしくないようですね。原因はどうも時代劇に、半ば現代的な感覚を取り入れちゃってるからだと思います。まあわたしは『GOEMON』は好きですけど。
で、まあそこへ行くとこの作品、なかなかストレートでよいんじゃないかと思いました。「新感覚」はあえて取り入れず、シンプルに日本情緒と殺陣のみを追及しております。
わたしが特に感じ入ったのは武家屋敷の機能美とでも申しましょうか。この映画同様シンプルで機能的で、無駄なものがない。そんないい意味で日常的というか「無味乾燥」な背景が、突如として凶行と惨劇の場となる。それが映像に独特の緊張感をはらませています。

以下は深刻にネタバレしていきます。ご注意ください。

chick
chick
chick
chick
chick

わたくしこの映画に山田洋次監督の「がんす三部作」にあるような和み系の空気を期待していたんですが、きつめの作品も撮っておられる平山監督のカラー・・・というかチョイスゆえか、かなり矛盾というか皮肉の利いた仕上がりになっていました。
死を願っていた三左エ門が死を許されず、ようやく生きる目的を得られたかと思ったら、その矢先に・・・という流れは、予想もしていなかったので愕然としてしまいました。実は藤沢作品は一作も読んだことはないのですがcoldsweats01映像化されている作品の中でここまで無常感漂うものはなかったのではないでしょうか。

せめてもの救いは自分の人生を弄ばれた三左エ門が、必死剣により見事「武士の一分」を見せつけるところですが、それでも武士であるがゆえに、どうしようもないバカ殿は殺すことができない。それどころかそいつを守るために心身ともに優秀な人物を倒さねばならない・・・・ この辺にも強いニヒリズムを感じました。

100802_183729それはともかく、なぜか舞台挨拶では「早くおわんねーかな、と思った」を連発していたトヨエツ氏、なかなかの熱演でありました。かつてはトレンディードラマで一世を風靡した彼でありますが、歳を経てかなりチョンマゲが似合う風貌になってきました。
気がつけばこの映画も夏の大作におされて上映は今週いっぱいのところが多い模様。ご興味おありの方はお早めに。

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July 28, 2010

適当掲示板98&2010年上半期に見た映画を振り返っちゃいますよーだ

みなさん、こんばんばん。当ブログに関するご意見・ご感想そのほかありましたらこちらにどうぞ書き込んでやってください。

さて、七月も終わりに近づいた今頃になってではありますが、2010年上半期に見た映画を振り返ってみます。並みいる映画ブロガーの皆さんに比べればそれほど数は見ておりませんが、このくらいでまとめておくと年末の時大変便利なのでございますよ。それでは参りましょう。

fuji1月
100120_174638『アバター』が「こいつはすごい!」ということで年末から爆発的ヒットを飛ばしていた一月。
わたしのベストも『アバター』と、知られざるデンマーク近代史を題材にした『誰がため』でありました。共に圧政に立ち向かう男の闘いを描いた二本。
ほかに印象に残ったのは遅れてかかった『空気人形』『母なる証明』など。


snow2月
100310_183746大雪と冬季五輪で沸いた二月。
ベストは『インビクタス 負けざる者たち』『コララインと魔女のボタン』。前者はラグビーW杯南アフリカ大会に材を取った作品。後者は「もう一つの世界」に迷い込んだ女の子の冒険人形アニメ。
ほかに印象に残った作品は・・・ないな。この月は雪やら風邪やらでそんなに映画を見られなかったのでした。


sun3月
100326_182452『ハートロッカー』『アバター』のアカデミー対決が話題を呼んだ3月。
ベストは『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』『スパイアニマル Gフォース』そして『しあわせの隠れ場所』。自分の才能を信じ、突き進んだり痛い目にあったりしたヒーローを描いた三本。
ほかに印象に残った『シャーロック・ホームズ』『ハートロッカー』もそんな話でした。悪い意味で印象に残ってしまったのが『マッハ!弐!!!!』


cherryblossom4月
100412_103449『アバター』に迫る勢いで『アリス・イン・ザ・ワンダーランド』がヒットを飛ばした四月。
マイベストは『シャッター・アイランド』『第9地区』。「本当に一番怖いのは人間なんでないかな」ということを訴えた二本。
ほかに印象に残ったのは『息もできない』など。


bullettrain5月
100514_181030『アリス』が変わらぬヒットを飛ばし、鳩山政権の余命が残りあとわずかとなっていた五月。
マイベストは高田馬場は早稲田松竹まで見にいったリバイバル作品『不思議惑星キン・ザ・ザ』と、ジム・キャリーがゲイの天才詐欺師を演じた『フィリップ、君を愛してる!』
ほかに印象に残ったのは『タイタンの戦い』など。


rain6月
100619_174342ワールドカップで日本代表が意外な活躍を見せた六月。
マイベストは世間的にも大ヒットとなった『告白』と、待ちに待ってましただよーだった『アイアンマン2』
他には『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』が良かったかなと。


というわけで各月ベストにあげた13作品。
単にわたしの好みで言いますと
①Gフォース ②コラライン ③アイアンマン2 ④第9地区 ⑤アバター ⑥フィリップ、君を愛してる!
となりますが、「人に薦められる」となると
①告白 ②幸せの隠れ場所 ③誰がため ④アバター ⑤コラライン ⑥インビクタス
というところでしょうか。残り五ヶ月もよい映画と出会えますように~

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July 24, 2010

FLY ME TO THE EARTH ダンカン・ジョーンズ 『月に囚われた男』

100724_180843首都圏より数ヶ月ばかり遅れて上映。そして既に終了。一度くらいはやってる間にサバッと決めてみたいものですね。あのデビッド・ボウイのご子息が監督デビュー。異色のSF映画『月に囚われた男』参ります。

いまからそれほど遠くない未来。人類は既に枯渇した資源を月から採取するようになっていた。月の採掘場で働いている人数はわずかにたった一人。任期の三年がようやく終わりに近づいてきたころ、作業員のサム・ベルは奇妙な事態に遭遇する。基地から調査に出た際、自分以外いるはずのない人間を発見したのだ。そしてその男は自分とまったく同じ顔をしていた・・・

果たしてこの「もう一人の自分」は何者なのか?
1.妄想 
2.生き別れの双子の兄弟
3.ドッペルゲンガー
4.超能力に目覚めてぷちっと過去にタイムスリップしちゃった

正解は・・・ ご自分の目でお確かめください。実は自分、予告編見た時に、あまりの精神的圧迫に耐えられなくなって、妄想と現実の区別がつかなくなってしまう、そんなお話なのかと思ってました。が、これが意外と論理的に説明のつくことだったりして。あ・・・ この時点でもうかなりネタバレですよね。すいません。

まず目をひいたのは広大な月面のビジュアル。なんにもないごつごつした地面の上を、どこかレトロ調の巨大なビーグルがとろとろとろとろ進んでいく。そんな風景に心安らぐものを感じたりして。
ただ、たまに見る分ならともかく、そこへ三年間置き去りにされるとなったら話は別です。それなりに話相手や通信手段もあるとはいえ、たった一人で三年もの月日を過ごさねばならないとしたら・・・ 想像するだに背筋に怖気が走ります。

以下さらにずんずんとネタバレしていきます。未見の方はお気をつけください。


一日千秋の思いで待ちわびたその日を前に、男につきつけられる残酷な現実。先日『アイアンマン2』でこれ以上内くらいイヤミな役を演じたサム・ロックウェルですが、こちらでは切々たる演技で観客の涙を誘います。
帰りたいけど故郷はあまりにも遠く・・・ そうした思いは、異国の地で生涯を終えざるをえなかった多くの旅人たちとシンクロいたします。そういえば阿倍仲麻呂も月を見上げながら故郷を思う歌を詠んでいましたっけ。サムが見上げているのは月ではなく、故郷そのものですけど。ともあれ、夜空に浮かぶ多くの光は、昔から望郷の念をかきたてる力があるようです。

そんな哀れなサムを暖かく見守るのが、基地に備えられた人格型プログラム・ガーティ。序盤のあたりなどは『2001年宇宙の旅』のHAL9000を思わせるような不気味さを感じるのですが、映画がすすんでいくに従って「なんていいヤツなんだ! うおあおおおーん!!」とまた涙を振り絞ってくれます。
考えてみれば不思議な話です。金属で作られた無機質な存在が、なぜにこれほどまでに暖かく優しい気持ちを抱けるのか。もしかしたら男を見続けていた「月」の切ない思いが、いつしかガーティの内に乗り移ったのかもしれません。・・・どうしたのかしら今晩のアタシ、なんだかとてもメロウな気分kissmark

原題は単に『Moon』。この邦題になったのはデビッド・ボウイ出演のカルト映画『地球に落ちてきた男』を意識してでは、とマイミクさんがおっしゃってました。なるほど。
そんなわけでお父様のお名前でお客を呼ぼう、という目論みも感じられないではないですが、見てみて確かに親の七光りではない、確かな実力を感じました。数々の映画祭で受賞した多くの賞がそれを物語っています。

20080227174543そんな『月に囚われた男』は地方での巡業も大体終ったようで、来月11日には早くもDVDがリリースされるようです。てゆうかパパの映画とのセットとか売り出さなくても。先の『2001年』や、『エイリアン』なんかが好きな人におすすめかな・・・ この二つほどには怖くないですけど。

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July 23, 2010

映画ドラゴンへの道 ぴあフィルムフェスティバル 『くらげくん』『白昼のイカロス』

100723_084436先日東京は京橋の国立近代美術館フィルムセンターで行われている「ぴあフィルムフェスティバル」へちょこっと足を伸ばして参りました。「ショートショート・フィルムフェスティバル」に引き続き、migさんの弟さんの片岡翔監督の応援に、わずかながらでも力になれればということで。
その日観た作品は片岡監督の『くらげくん』と、もう一本阿部綾織さん・高橋那月さんの『白昼のイカロス』。順番にご紹介しましょう。


☆『くらげくん』 片岡翔 (14分)

ガキ大将のコタロウくんと、いつも女の子っぽい服を着ている「くらげくん」は大の仲良し。ある日くらげくんはお母さんの都合で少し離れた町へ引っ越すことになってしまう。コタロウくんと離れたくないくらげくんは、彼に「一緒に遠くに逃げない?」と持ちかける。

『くらげくん』予告編

この映画はまずこの「くらげくん」を見つけてきたことが大きいですね。女の子の服を着ているのにほとんど違和感がなく、とてもかわいらしい。また衣装もそれほど女の子女の子していなくて、「星から来た王子様」のように見えなくもありません。監督の片岡翔さんによりますと、三回目のオーディションでようやっとイメージに合う子を見つけられたのだとか。

わたしたちは生きていく上でさまざまな二者択一を迫られますが、くらげくんは男であることも女であることも選びません。ただ両者の間をくらげのようにたゆたっております。もしかしたら女の子になりたいのかもわかりませんが、とりあえず劇中ではそういうセリフはありませんでした。くらげくんがジャンケンが好きなのは、もしかしたら選択肢が二つだけじゃないからかも? 彼が望んでいるのは、何かになるということよりも、大好きなコタロウくんといつまでも一緒にいたい。ただそれだけなのです。

たとえばこれが「くらげくん」ではなく女の子の「くらげちゃん」だったらどうでしょう。「わたしたち将来結婚しようね!」「うん!」・・・めでたしめでたし、ということで終るでしょう。それも悪くはないかもしれませんが、それだったらわたしの心にはそんなに深くは残りません。無神経にも「うおー あぶねー 男と結婚なんてまっぴらだよー」と言い放つコタロウのアホ。でもここでくらげくんは女の子のようにワッと泣き出したりはしません。ただ寂しげにじんわりと笑います。そんなくらげくんの切ない気持ちややせ我慢がなんとも胸をうちます。

別の記事にも書いたことがありますが、子供映画の名作には列車・線路が印象的な仕方で使われていることが多いです。『小さな恋のメロディ』『ミツバチのささやき』『スタンド・バイ・ミー』『動くな、死ね、甦れ!』・・・ この映画でも道のすぐわきをオモチャのような小さな線路が続いていたり、西日のさした電車で寄り添って眠る二人の少年たちの姿が忘れがたい印象を残します。

上映終了後舞台あいさつがありました。「将来なんになりたいの?」という質問に、はにかみながら「特にありません」と答える二人の姿は、「立派な俳優さんになりたいです!」とか言うよりよっぽど劇中のイメージにあっていて思わずにやけてしまいました。


☆『白昼のイカロス』 阿部綾織・高橋那月 (83分)

田舎から友人を頼って上京して来た少女、春織。夜の雀荘で働くうちに、彼女は脚の悪い青年アランや、老カメラマン・マグチ、その愛人のアサコらと知り合う。それなりに順調に行き始めた都会での生活だったが、時折訪れる怒りや悲しみに若い魂は激しく揺れ動く。

『白昼のイカロス』予告編

くらげの次はイカ・・・ というわけではなく。若い女性監督二人による共同作品。これが監督二作目となるそうです。主演の春織は阿部さんが演じ、主人公の友人の役で高橋さんも出演しております。

田舎から出てきた若い女の子と雀荘というモチーフは、西原理恵子の『まあじゃんほうろうき』(漫画)などを連想させますが、こちらはあんなに過激で騒がしい話ではありません。くらげくんほどではありませんが、ヒロインの春織もまた、どこか中性的なキャラクター。一応女性のなりはしていますが色気というものが皆無で、時々ケモノのようにキレたりもします。普段ほわほわ~っとしているだけに逆上しているシーンはなかなかにインパクトがありました。

この作品に出てくる人たちはみな生命力が弱いために、日の下に出ることをいやがります。まるで日光にさらされたら溶けてしまうのでは、と思えるほどに。真夜中や明け方の街を連れ立って歩く春織たちの姿は、遠くに映る町の明かりとあいまって、一種幻想的な雰囲気をかもし出しております。
特にマグチ氏が青みがわずかにさしてきた空の下、春織を「撮ってやるよ」というシーン。あまり美人とはいえない(失礼)春織が、この時ばかりは見事に一枚の美しい絵になっている。このあたりに映像の持つ力を感じました。

鈍ければ何も感じずにたんたんと日常を送れるのに、繊細であるがゆえに周囲の悲しみや無神経さに深く傷ついてしまう。そういや学生のころ、こんな風に生きるのに不器用な友人たちが身近にいたな・・・なんてことを懐かしく思い出したりました。

こちらも上映後監督さんたちの挨拶がありました。阿部さん・高橋さんは劇中のイメージとはうってかわって鉢巻姿でボケ・ツッコミを繰り返していて、なんだかほっといたしました(笑)


恐らくあと五年もすればくらげくんはくらげくんを演じられなくなるだろうし、阿部さん高橋さんもこういうむき出しのタッチで作品を撮るのは難しくなるでしょう。そんな貴重な時間を永遠にフィルムの中に閉じ込てめておくことができるから、映画は素晴らしいです。


100723_084518『くらげくん』は既に那須国際映画祭で短編賞を、東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で観客賞を受賞しております。やはり『白昼のイカロス』と並んで7月27日の13時15分からフィルムセンターで上映されますので、ご興味おありの方は足を運ばれてください。

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