December 14, 2017

超人・半神・機人・金持ち (一応)ザック・スナイダー 『ジャスティス・リーグ』

Jsa_2MCUに追いつき追い越せとばかりに奮闘するもうひとつのアメコミ映画世界「DCFU(DCフィルムズ・ユニバース 最近DCEUから改名したみたいです)」。その総決算たる大集合映画が先日満を持して公開されました。『ジャスティス・リーグ』、紹介します。

お話は『バットマンVSスーパーマン』の直後から始まります。異世界からの侵略がせまっていることに気づいたバットマン=ブルース・ウェインは、スーパーマン亡きあとの地球を守るべく、特別なパワーを持った超人たちを探す。だがそのうち二人はブルースの要請にすんなりと応じようとはせず、チーム結成には暗雲が漂う。そうこうしているうちに侵略者「ステッペンウルフ」が無数の兵士を連れて来襲。地球を改造する力を秘めた3つの「キューブ」を求め、それらを守る者たちに容赦ない攻撃をくだすのだった。

「アベンジャーズの後追い」なんてことも言われてますが、コミックのジャスティス・リーグの歴史はそれよりもっと古かったりします。まず1940年に前身である「ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ(JSA)」が誕生。そして「アベンジャーズ」登場の3年前である1960年にJSAをリニューアルさせた「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」が創刊。以後この名前で一旦のリセットを経て、様々なメンバーが入れ替わりしながら50年活動します。
そして2011年再びのリセットイベント「NEW52」に際しチーム名が「ジャスティス・リーグ」に変更。

現在コミックではこの本家の他に米国政府指揮下にありかつての同タイトルとは違う立ち位置の「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」(ややこしい…)、魔界担当の「ジャスティス・リーグ・ダーク」、国連が作ったけど終了したっぽい「ジャスティス・リーグ・インターナショナル」、よくわからない新チーム「ジャスティス・リーグ・ユナイテッド」などがありなかなかにカオスであります。

では今回映画に出て来るメンバーを「なにをいまさら…」というキャラも含めて紹介します。

☆スーパーマン…言わずと知れた(雑誌形式では)世界最初のアメコミヒーロー。怪力・飛行なんでもできちゃう。MARVELとDCの最大の違いは「MARVEL宇宙にはスーパーマンのような圧倒的な大黒柱がいない」ということかも。真っ先にあげちゃったけど今度の映画に出るかは一応不明(白々しく)

☆バットマン…アメコミで最高の人気を誇るキャラ。特殊能力は金と推理。バットマン一派の人気が突出しすぎてるのがDCの悩みどころかも。時々「何の超能力もないの?」と揶揄されるが時間さえあれば宇宙の最高神にも勝てる男。ただゴッサムシティの治安は永久に解決できない

☆ワンダーウーマン…世界最初のアメコミヒロイン。怪力と嘘発見がスペック。キャリアの割に伸び悩んでいたが、先の映画で大ブレイク。DCのいまひとりのアイドル・スーパーガールと比べると「お母さんみ」が強いのが特徴か。好物がアイスクリームなのが萌える

☆フラッシュ…光速で駆けるスピードスター。一応アメコミの第二黄金期のきっかけとなった重要なキャラで、現在映画とドラマが並行してる唯一のヒーロー。時々物理を越えたスピードを出してしまい、並行世界にいったり現実改変を招いたりするのが玉にきず

☆アクアマン…今回映画とコミックで一番風貌が変わったキャラ。海底人と地上人のハーフで、水や魚類を操ることができる。それゆえ水のないところでは手持無沙汰になってしまうという、サイボーグ008的な問題を抱えている。日本での愛称はサバ夫(?)

☆サイボーグ…実は一番よく知らないキャラ。特殊能力は変形・飛行・ネット検索。若手ヒーローチーム「ティ―ン・タイタンズ」に加入してから人気が上がり、少し前JLのメンバーに大抜擢される。恐らく「黒人一人くらい入れとこう」というPC的配慮かと思われます。風呂にどうやって入るのかが謎


さて、肝心の内容の方ですが、『BVS』や『スーサイド・スクワッド』と同じくDC世界の奥行きを感じさせるネタが色々入っていて、コミックファンとしてはまことに楽しゅうございました。逆にそういうDC愛がない人には、ちょっとあっさり風味に感じられるかもしれません。こう言ってはなんですが、本当に予想範囲内のことしか起きないので。
そしてやっぱりちらつく『アベンジャーズ』の影。監督がジョス・ウィスドンに変わる前から決まってたことだと思うんですけど、「宇宙の果てからマッチョな悪者が軍勢を率いて攻めてくる」というプロットはもうちょっと変えられなかったのかと。そしてまたキーアイテムがサイコロだと来ている(三つに増えてましたが)。
一方で『アベンジャーズ』よりも良いところもあります。尺が短くなった分テンポがよくなったりとか。超人たちがかみ合わなくてギスギスしてるパートが短かったのも好印象でした。これはエズラ・ミラー演じるフラッシュの性格に負うところが大きいですね。本当にひとりムードメーカーがいるだけで場の空気というものはずいぶん変わるものです。

今年は『パワーレンジャー』や『スパイダーマン ホームカミング』などヒーローものと『ブレックファスト・クラブ』をかけあわせた作品が目立ちましたが(『ブレックファスト~』観てないんですけどね…)この『ジャスティス・リーグ』もカーストの違いを乗り越えていく学園ドラマと似たところがありました。
バットマンは過去のあやまちをひきずってる先生、ワンダーウーマンは以前の失恋を乗り越えられない級長、アクアマンはやたらとイキりたがる番長、フラッシュは寒いギャグを連発するお調子者、サイボーグは怪我で夢断たれた体育会系…といった具合です。それぞれに悩みを抱えてる面々が、ディスカッションしたり一緒にクラブ活動に精出したりしてるうちに、やがて自分の殻を打ち破っていく、そんなムードが大変さわやかで好みでした。

Photoただ『ワンダーウーマン』の好調にのって大ヒットとなるかと思いきや、全米ではDCFU中もっとも低調なスタートで赤字はまちがいないとのこと。やっぱりメリケンの映画ファンは常に何か目新しいものを求めているということですかね… ここでくじけないでDCFUにはさらにがんばって残りの企画を面白いものにしてほしいものです。とりあえず現在ほぼ確定してる企画は『アクアマン』と『ワンダーウーマン2』、そして『フラッシュ(ポイント)』というところでしょうか。あと一応『スーサイド・スクワッド2』『ザ・バットマン』『バットガール』『シャザム』『グリーンランタン・コァ』『サイボーグ』『ジャスティス・リーグ・ダーク』といった企画も上がっている模様。果たしてどこまで実現できるでしょう。


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December 12, 2017

星を奪うもの 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 怪獣惑星』

Photo昨年『シン・ゴジラ』の大ヒットで大いに復活の兆しを見せた東宝怪獣映画。今年はアニメの三部作という変化球で攻めてまいりました。『GODZILLA 怪獣惑星』、ご紹介します。

突如として巨大怪獣の出現が頻発するようになった世界。人類はなんとかそれに対抗しようと戦いを続けていたが、それまでの怪獣をはるかに超える存在「ゴジラ」の登場により敗北を余儀なくされる。宇宙に新天地を求めて旅立った人類だったが、先の見えない旅に次第に消耗していき、ついには地球への帰還を望むようになる。その先陣を切る若者ハルオは激しい怒りと科学的な理論をもってゴジラ殲滅のプランを練り上げたのだが…

まず語っておきたいのが公開前に出版された前日談となる小説『GODZILLA 怪獣黙示録』。映画ではナレーションで済まされた人類衰亡の歴史をインタビュー形式でつづったものなのですが、これが滅法面白くて。カマキラスやらドゴラやらオルガやら、存在をすっかり忘れていたマイナー怪獣が次から次へと出てきて破壊の限りを尽くすという内容。滅亡の危機が迫っているというのに団結も出来ず決定的な対抗兵器もなく、ただただ絶望しかない『パシフィック・リム』みたいな暗い話なんですが、登場怪獣の顔ぶれの懐かしさに楽しさしか感じないという奇天烈な1作でありました。

しかし今回は映画の前にこれを読んでしまったのがよくなかった。なんでかというと『怪獣黙示録』に比べると『怪獣惑星』はあまりにも登場モンスターの種類が限られていて、ちょっと派手さに欠けるところがあるからです。どうせ3部作でやるならこの『黙示録』を1作目にして映像化すりゃよかったのに…と思わずにはいられませんでした。

ただ映画本編もまったくつまらなかったわけではなく。むしろ小説を先に読んでなかったら普通に楽しめたと思います。
特に印象に残るのはゴジラよりも彼?に鬼気迫る憎しみを抱き、「何が何でも絶対殺すマン」と化している主人公のハルオ君。ふつうあんな山みたいな怪獣を目にしたら一目散に逃げ出したくなるのが普通の人間です。しかしハルオ君は恐怖などまったく表に見せず、「ゴジラ―!! ぶっころーす!!」と何度も何度もあの巨体に向けて特攻していくあたり頭の配線が2,3本ぶっとんでるとしか言いようがありません。でもまあこれくらいエキセントリックなやつでないとゴジラとの真っ向勝負はできないでしょう。芹沢博士や矢口蘭堂に並ぶ怪獣キラーになれるかどうか、これからの成長に注目です。というか『進○の巨人』のエ○ン君とよく似ておりますね。

あと主人公を絶望に追い込む脚本虚淵玄氏お得意のストーリー展開に今回も引き込まれました。ただ虚淵さんの真骨頂はむしろストーリーの中盤あたり。だいたいその辺で主人公の世界観を根底から揺るがす衝撃的な事実が明らかになり、お話がどう解決するのかさっぱり予想がつかなくなります。というわけで1作目終盤のアレもまだまだ前フリにすぎず、本当のショックは2作目あたりに待っているものと思われます。ハルオ君のさらなるあがきに期待しましょう(ひどい)

Photo_2とりあえず次はもう少しいろんな種類の怪獣が出てくると嬉しいですね… ちなみに2作目『決戦・起動増殖都市』のポスターにはメカファンには嬉しい「アレ」の姿がちらっと描かれております。その辺にまんまと踊らされるワタクシ。『シン・ゴジラ』に比べるとあんまり売れてないようなので無事完結までたどり着けるか少々危なっかしいですが、東宝を信じて応援していこうと思います。というわけで第二部は来年5月の公開。そして丸一年後の11月あたりで完結編…という計画なんでしょうか。なんとかついていくのでスタッフのみなさんがんばってくだされ

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December 11, 2017

まんが2本昔話 トラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

Kubo1『コラライン』『パラノーマン』などで知られるストップモーションアニメの雄・ライカの最新作は、なんと日本のおとぎ話をモチーフにした冒険談。本国より1年遅れての公開となった『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、ご紹介します。

そこは昔々の日本。目の見えない母と暮らす隻眼の少年クボは、不思議な三味線の力で人形を動かして日々の糧を得ていた。だがある祭りの夜、母のいいつけを守らず家に帰りそびれたクボは恐ろしい魔女たちの襲撃を受ける。実はクボの祖父は月に住む魔王で、少年のもう片方の目を執拗に狙っていたのだった。無慈悲な祖父と戦うためにクボは猿とクワガタを相棒とし、三つの武具を探す旅に出る。

「アニメ」という語にはもともと「魂」という意味があります。本来命のない絵や人形をまるで生きてるかのように見せる…魂を吹き込んでるような作業ゆえ、こういう呼び方をされているのですね。クボ君も命のない折り紙を自在に動かしていましたが、ライカのお仕事はまさしく人工物に生き物のような感情や動きを再現させています。
ストップモーションアニメの雄といえばもう一社、『ひつじのショーン』や『ウォレスとグルミット』のアードマン・スタジオがあります。ライカと比べるとそれが味ではあるんですが、アードマンはもう少し動きがカクカクしています(両社とも「1秒に24コマ」という基準は一緒なんですが…)。一方ライカの人形の動作はまるでCGアニメのようになめらか…というかだんだん人形に見えなくなってくるから恐ろしい。ライカ作品ではコマ撮りアニメでは普通簡略される細かな表情までクルクルとよく動かしているので、その常軌を逸した手間暇のかけ方ゆえそんな現象が生まれるのかもしれません。

しかしそれは恐ろしく非効率的な作業であります。一週間で平均3.3秒しか作れなかったというから驚きです。それだけ時間を費やしたらからには、当然見合うだけの儲けがあるのかと思いきやライカの作品はこれまですべて赤字だったりするから泣けてきます。毎回アカデミー長編アニメ部門にノミネートされているとはいえ(ただしいまだに受賞は果たせず)、どうしてそんな赤字続きで会社が成り立っているのか疑問でした。ところが最近その謎がなんとなく解けました。実は『KUBO』の監督にしてライカの社長トラヴィス・ナイトは、ナイキの会長フィル・ナイトのご子息なのです。そしてフィル・ナイトはライカの会長も兼任してたりして。つまりナイキが浮いたお金を回してくれるからなんとかやっていけるのでは… そうとしか考えようがありません。

少々ネタバレになりますがタイトルにもある「二本の弦」とはある絆の象徴であります。ライカとナイキも靴ひもみたいな糸…絆で結ばれている関係にあるといえます。ありがとうナイキ。

お話の方はどうかというと、わたしたちが幼少のころに親しんだ多くの民話・昔話をバラバラに解体し、再構成したような作りでありました。少年のお供?の1人が猿なのは妥当なチョイスですが、もう1人がクワガタ怪人なのにはちょっと頭をひねりました。まあ「クワガタ(鍬形)」というのはもともと兜の飾りのことなので、「武士っぽい」ということから来た発想なのかも。
そして「赤子のころから体の一部を奪われる」という残酷な生い立ちは『どろろ』の百鬼丸を思い出させます。思えばライカ作品はパラノーマンといいコララインといいいつも子供たちに「そりゃ無茶だろ…」というくらい重すぎる試練を課します。それでも「こまったなあ」という表情で過酷な運命をなんとかしていく子供たちの姿に、くたびれた大人は頭を垂れるほかないのでした。
ポスターなどからは勇ましいイメージを受けるクボくんですが、本編を見ると年相応の無邪気な少年だったりするのでそんなところがまたいじらしかったりします。

Kubo2『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は初日観たときは半分くらいの入りだったのですが、その後ネットや口コミで良さが伝わって満員になる回も増えたとのこと。せっかくのライカ&ナイト氏の日本へのラブコール、もっと多くの人に広まればよいな、と思います。
そしてナイト監督の次回作はやはり日本発祥のキャラである『トランスフォーマー』の「バンブルビー」スピンオフであるとのこと。こちらも楽しみにしております。というか、楽しみになってきました!


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December 06, 2017

ストーリー・オブ・騒動 完結編 久保茂昭  『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』

Hl31♪はいやー はいやー はいやー はいやー 2か月前の第二弾の後を受けて、畳み掛けるように公開された第3作。『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』、ご紹介します。1、2作目の感想はこちら

とうとうSWORDをつぶすべく本格的に動き始めた九龍会。必死で抵抗するコブラたちだったがその力の差は圧倒的で、山王連合をはじめ各チームは壊滅的なを被害を受ける。国の事業のために地区の中央にあるスラム「無名街」は爆破されることが決まり、コブラもついには九龍会の手に落ち拷問を受けることに。SWORDの若者たちに果たして明日は来るのか…

前作ラストでヤクザの組長相手に300キックをかましたコブラ君。ただでは済むまいとは思っていましたが、予告を見たら裸にむかれてコンクリを飲まされそうになっていたからビックリです。それほど思い入れのあるキャラでもなかったのですが、彼の胃袋が心配で心配で結局公開1週目に観てまいりました。自分も仕事柄コンクリを扱うことがあるので、人体にどういう影響があるのか知っておきたかったし。

というわけで自分的にはそのコンクリシーンのあたりがスリルのMAXでした。いや、全体的に大変楽しませていただきましたけどね(笑)。

ただTLを眺めていると「ちょっと物足りなかった」という声もちらほら。思いますに、これまでコブラ君たちは気合と拳ですべて物事を解決してきました。ところが今回彼は初めて「拳だけでは解決できない」壁にぶち当たってしまうのですね。ではSWORDの皆さんがどうしたかと申しますと、拳と一緒に頭も使い始めちゃうという。これがなかなかに強引な作戦なんですけど。ともかくそんな風にちょっと大人になってしまったコブラちゃんと仲間たち。でもこれまでのファンたちにしてみれば、あくまでガキの拳で悪者たちをぶっとばしてスカッとさせてほしかったのかもしれません。
あと極悪マフィアみたいだった九龍会も終盤に来て急に「あ、ぼくたち悪かったかな」みたいなことを言いだして自分たちを反省し始めるのですね。悪者ヤクザだったらそこは自分を見つめなおしたりしないで、最後まで本当~ににくたらしいワルでいてくれないと。そして主人公たちに完膚なきまでに叩き潰されてくれないと。この辺が微妙にずれてるがゆえにややカタルシスが削がれた気はします。自分は懐の広い人間なので、「まあこんなんもありか~ツ」と思いましたけど。それに若いお兄ちゃんたちが画面狭しとピョンピョン元気に飛び回っていたのは、1,2と比べて全くひけをとらなかったし。

今回印象に残った点の一つは、コブラちゃんがようやく主人公らしくなってきたということ。実は2の途中くらいまでは、山王の頭二人がどっちがコブラでどっちがヤマトなのかよくわかってませんでした。だって彼らって大抵いつも二人でいるし、1では九十九さんが、2ではロッキーばかりが目立っていたし。でもまあこの度はコブラ君も一人で真剣に悩んでたり、コンクリ飲まされかけたりしていてちゃんとお話の中心になっていた気がします。
目だっていたといえば窪田正孝君演じるスモーキーもようやくちゃんとした見せ場が巡ってきました。映画しか観てない身からすると、これまでずっと寝たきりで具合が悪いというイメージだったので。窪田君は自分は『ケータイ捜査官7』のころから知ってますけど、顔がスクリーンに大写しになっても普通に鑑賞に耐える、いい俳優さんになったな…と思いました。

ハイロ―らしいヘンテコな部分も健在。たとえばSWORD地区にカジノを作るために政府は「爆破セレモニー」なるものを敢行するのですが、ちょっとこういうことを思いつくお役人さんは頭がどうかしてると思います(笑) でもハイローの世界ならアリなんでしょうね! それにやっぱりタイトルに「MISSION」と入っていたら爆破を防がないといけない気がします。

Hl32ひとまずこれで幕となったっぽい「HiGH&LOW」シリーズ。でもまた伏線っぽいものを匂わして終わっちゃったし、それなりにヒットしたしで続きが作られそうな匂いがプンプンします。自分はそんなにがっつりはまったわけではありませんが、この変な勢いのあるタイトルがこれで終了してしまうのは確かに惜しい。邦画界の異端というかカルトとして、まだまだがんばってほしいものです。♪はいやー はいやー はいやー はいやー

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December 04, 2017

This is… スティーブン・キング アンディ・ムスキエティ 『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』

It130年前ベストセラーとなったスティーブン・キングの代表作が、なんでかいまごろ再映像化。ところがこれがアメリカで大ブームを巻き起こしておりまして… 『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』ご紹介します。

80年代末、メイン州はデリー。少年ビルのまだ幼い弟は、ある雨の日こつ然と姿を消してしまう。そのころ街では子供の失踪事件が多発していた。弟を諦めずに探すうちに、ビルは転校生ベンからデリーでは27年ごとに大きな災厄が訪れていることを教えられる。やがてビルと仲間たちにも及ぶ魔の手。そして彼らは災いをもたらすものが、相手が恐怖する存在に変身できる怪物「IT」であることを知る。

いきなり中バレですが、原作『IT』は文庫本で全4冊もある大長編。「大人編」と「子供編」が交互に語られて同時進行していくという構成です。こんな話どっかで聞いたような…(『20世紀○年』…)  今回は二時間ちょいの枠に収めるためばっさり「大人編」をカット。『スタンド・バイ・ミー』のような少年の夏休み冒険談がずっと続きます。ホラー風味で。

何度も書いてますけど自分はホラー苦手のチキンメンです。この映画もあらすじを知ってるのにかなり怖かった。よく子供のころ、学校の一室とか大きな家のあまり行かない部屋とか何か潜んでそうで異様におっかなかったりしたじゃないですか。『IT』はそんな懐かしい恐怖をこれでもか!というくらい思い出させてくれます。それでも耐えられたのはちょっとこの『IT』、ホラーとしては掟破りなところがあったからでして。
ホラーというのは一応観客を怖がらせることを主眼としています。しかし人間が抱く恐怖が怪物のエネルギーであったことを知ったビルたちは、その恐怖を克服しようと懸命に闘うのですね。だから後半はおっかないというより燃える展開になるんです。まだ非力でいじめっ子にもひるんでいるような少年たちが、人知を超えた化け物に勇気ひとつで立ち向かっていく… これが熱くならずにいられるでしょうか。逆に生粋のホラーファンにはこの辺調子が狂うかもしれません。

わたしも原作読んだのだいぶ前なので忘れているところもいっぱいあるんですが、今回特に気づいたのは少年たちの保護者がどなたもこなたも毒親ばっかりだということ。キング作品には問題児ならぬ問題親がよく出てくるのですが、本作品はさながらその集大成といった感があります。怪物だけでなく家庭でもストレスにさらされる子供たちを見ているのは実につろうございました。まあキング先生はけっこう子供たちに対して情け容赦ないところがありますよね… 天使のような幼子でさえぶっ殺したりするし(T T) その辺は全体的にさわやかであってもさすがはキング・オブ・ホラーです。

ちなみにこの『IT』、現在アメリカでは今年ヒットした映画の第5位をマーク。ホラー映画としては歴代第一位の座を獲得しています。なんでそんなに売れたのかはよくわかりません。最近の80年代ブームにうまくのっかったからかな? でもそれだけではこれだけの数字は叩き出せないだろうし。やっぱり原作のもつスリルや謎解きやキャラクターの魅力を存分に再現できたからかなあ。

あとこれは洋画に限られないんですけど、ここ2,3か月は純愛ものよりもなぜか「力を合わせて戦おう!」というタイプの映画や「兄弟の絆」を強調した作品がヒットしておりますね。今の世相となにか関係あるのかは…すいません。よくわかりません。

It2というわけで『IT/イット "それ"が見えたら終わり。』は日本でも地道に売り上げを伸ばしており、3週目にして1位をゲットするというまさしくモンスターのようなしぶとさを見せています。
そして予想通り今回オミットされた「大人編」も製作がアナウンスされました。約二年後の2019年9月に全米公開を予定しているとのことです。

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November 28, 2017

瞬間、心、重なっちゃったりして ナチョ・ビガロンド 『シンクロナイズド・モンスター』

Sndm1なんでかよくわからないけど東宝からクレームを受けたという噂のヘンテコ怪獣映画が、ようやっと日本でも公開されました。実力派女優アン・ハサウェイを主演に据えた『シンクロナイズド・モンスター』、ご紹介します(原題は『COLOSSAL』)。

ネットの炎上でライターの職を失ってしまったグロリアは、酒浸りの日々を送っていた。ついには彼氏に三下り半をつきつけられ、田舎に帰ることに。再会した同級生オスカーのバーで働くことになった彼女は、ある日店のテレビで「韓国に怪獣が出現した」というニュースを見て驚愕する。そしてさらにたまげたごとに、グロリアは怪獣が自分の動作と全くシンクロしていることに気づいてしまう。怪獣とグロリアの間にはいったいどんなつながりがあるのか?

いやいやいや、この発想のバカっぽさ、並大抵ではありませんよね。怪獣もあれも出てくるし、これは絶対に俺たちオタク向けの映画だろう!と胸ワクワクで観に行ったのですが、ところがこれがなかなかオタク…というか、非モテ・キモメンにはつらい映画でした。
お話軸となっているのはもちろんグロリアなんですが、彼女の対となっているのが同級生のオスカー。地元でずっと細々と暮らしているさえない男。最初はなかなかいいやつそうに見えるのですが、ストーリーが進むにつれだんだんとそのうちに潜む暗黒面が明らかになってきます。もしグロリアが帰ってこなければ、そのまま田舎で平々凡々な毎日を送っていたのかもしれませんが、うっかり美人の同級生と親しくなった彼は慣れない状況に我を失い暴走を始めます。

これ、怪獣を除けばいかにも現実にもありそうな話ですよね。オタク・非モテというのは普段あまり女性と接点がないゆえに、少し優しくされただけで全力で勘違いに走ってしまう。これが十代や二十代ならともかく、中年のおっさんとなると傍から見ていて痛々しくてなりません。ちょっと冷静になれば自分がいかにかっこわるいか気付そうなものなのに。孫子の兵法にいわく。「敵を知り、己を知らば百戦危うからず」 年甲斐もなく恋をするときはまず自分のスペックを客観的に判定することです。そして性能が段違いの相手には決して挑んではなりません。非モテおっさんの1人として、このことを常々肝に銘じておきたいものです。

…話がだいぶ横道にそれました。自分としてはそれでもやっぱり非モテ仲間として、オスカーに親近感を抱かずにはおられず。暴走する彼を見て「キモメンに悪い奴はいない! オスカー正気にかえれ!」と改心できるよう必死に祈っておりました。果たしてその祈りが通じたかどうかはご自分の目で確認されてください。

他にも「怪獣映画なのに怪獣があまり動かない」という不満もありましたが、やっぱり「怪獣とシンクロする」というこのアイデアを、自分はまず評価してあげたい。あとオスカーに弱みを握られて八方塞がりになってしまったグロリアが、どうやって窮地を抜け出すのかもハラハラさせられました。この辺だけでも一応観る価値はあるかと思います。

Sndm2『シンクロナイズド・モンスター』はすでに第一陣は終わったところも多いですが、これからさきかかる劇場もいくつかあるようで。くわしくは公式サイトをご覧ください。

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November 22, 2017

明日があるかアスガルド タイカ・ワイティティ 『マイティ・ソー/バトルロイヤル』

Mtbr1実に今年4本もの映画が日本で公開されたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品。その最後を飾るのはアベンジャーズのビッグ3であるアスガルドの雷神。『マイティ・ソー/バトルロイヤル』(原題は『ソー/ラグナロク』)ご紹介します。ちなみに1作目の感想はこちら。2作目『ダークワールド』の感想はこちら

夢の中で徐々に現実味を増してくる故郷アスガルドの崩壊「ラグナロク」。それをふせぐべく宇宙を奔走していたソーだったが、その間弟ロキが父王に化けてアスガルドをいいように支配していることに気付く。父オーディンはいったいどこにいるのか。ロキをふんづかまえつつ捜索を続けていたソーは、地球の北欧で父を探し当てる。だがすでにオーディンの寿命は尽きようとしていた。彼は自分の死後封印が解かれて恐ろしい敵が襲来することを告げて消える。まさにその直後、兄弟の前に恐ろしい死の女神ヘラが姿をあらわした…

今回は『ソー』の感ソーというより、これを例にとりながら最近のアメコミ映画の傾向など語って行こうかと思います。
まずこれは特にMCUに言えることですが、4作全部がお笑い系でした。すきを見せるとすぐネタをつっこんでくる。まことに油断なりません。この『ソー』の前二作も多少はお笑い要素がありましたが、それよりは神話劇・ラブロマンスの側面の方が強かった。しかし今回は恋愛の「れ」の字も見当たりません。むしろ前二作よりも宇宙系のドタバタということもあって『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のノリに近い感じ。まあぶっちゃけいまアメリカで特にウケやすい作風ということです。正直これまでとのあまりの違いにとまどいましたが、本国では『バトルロイヤル』は最初の週のみで1作目の売上を軽く凌駕。こうなると「売れたもん勝ち」としか言いようがありません。

もう一点は「アイテムや後ろ盾より心が大事」ということ。アイアンマンは「3」でアーマーを、キャプテンアメリカは2と3で国家権力の後ろ盾を、新スパイダーマンは高性能のスーツを、ワンダーウーマンはアレスを倒す剣を途中で失います。ソーは1作目でも一度己の象徴「ムジョルニア」を手放しましたが、今回は見事に粉々のバラバラにされてしまったので完全に喪失してしまいます。しかしまあ、そういう時ヒーローは自分を見つめたりメンターの声を思い出したりして立ち直るのですね。アイテムや組織の応援がなくても、あきらめないことで心の中の真の強さを掘り起こす。この辺は日常生活においても見習っていきたいものです。

あとお笑い要素が強い作品でも、主人公たちはなにかしらの喪失を経験するというのも最近の傾向です。大体それは大切な人であることが多いですね。生別にしろ死別にしろ。どっかんどっかん笑わせてくれたあとに、しんみり漂う一抹の寂しさ。この切なさと愉快さの絶妙なバランスが近年のアメコミ映画を傑作としてる気がします。『レゴバットマン・ザ・ムービー』なんかは例外ですが。
具体的にはあげませんが今回ソー様はけっこういろんなものを失いました。しかし新たに得たものもまた多く、意気揚々と旅立つ彼の姿に安堵いたしました。

Mtbr2ちょっともやるところがないでもないですが、アイアンマンとキャプテン・アメリカ、そしてロキと比べても影が薄かったソー様が。こんだけ大ブレイクしたんだから喜んであげるべきなのかもしれません。そしてあと『ブラック・パンサー』を挟んで、MCUは3回目の大集合映画「アベンジャーズ./インフィニティ・ウォー』へと突入します。本当につぎからつぎへとよう作るわ…(素晴らしい)。もう一方の雄DCの集合映画『ジャスティス・リーグ』も明日より公開。こちらも楽しみです。

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November 13, 2017

アンドロイドは電影少女の夢を見るかもしれない リドリー・スコット&ドゥニ・ヴルヌーヴ 『ブレードランナー2049』

Br20491カルト映画の大傑作としてその手のベストには必ず名を連ねる『ブレードランナー』が、『ボーダーライン』『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴの手で復活。『ブレードランナー2049』、紹介します…と言いたいところですが、今日はもう紹介は諦めました。観た人か全く興味ない人のみお読みください。でも一応いつものようにあらすじから。

西暦2049年。人間と寸分たがわぬアンドロイド「レプリカント」が発明され、社会に溶け込んで様々な仕事に従事したり、時々反乱を起こしたりしていた。自身レプリカントである「K」は反抗的な同族を取り締まる捜査官「ブレードランナー」。黙々と任務をこなす日々を送っていたが、ある標的との闘いののち、謎に包まれた女性の白骨死体を発見する。調査をすすめるうちにその女性はレプリカントでありながら子供を宿していたことが判明。その子供は果たしてどうなったのか。真相を追ううちにKはアイデンティティを深く揺るがす事態に直面する。

『ブレードランナー』1作目は1982年の公開。同じ時期『E.T.』がかかっていたのはよく覚えていますが、こちらの方はまったく記憶にございません。その伝説を知って十代になってからTVで2回ほど観ましたが、正直あまりピンと来ませんでした。その映像の構築力には確かに目を見張るものがありましたが、各方面に色々影響を与えてしまったために、フォロワー的作品になじんだ身にはかえって新鮮味が乏しく思えてしまうという。日本アニメでもぱっと思いつくだけで『ボトムズ』『イノセンス』『カウボーイビバップ』などいろいろあります。正直公開時スクリーンで観た人の感動がすこしうらやましかったりもします。
あとうけやすいエンターテインメントとは一線を画してるところがあるというか。反乱したレプリカントのリーダーと壮絶な死闘を演じたのち、なんと主人公のデッカードはその宿敵に命を救われてしまう。そしてやんわりとした謎を残して物語はEND。なんともモヤモヤいたしますが、この一筋縄ではいかないストーリーがある種の人々の心をとらえ、「ふたつで十分ですよ」の名ゼリフとともに時代を越えて愛されることになりました。何度も編集しなおされ幾つものバージョンが作られたことがそれを証明しています。

で、ようやく今回の続編のお話。同じ世界を舞台とする物語ですが、30年経ち監督も違うので当然いろいろと違うところがあります。
まず街の空気ですが猥雑でありながら活気に満ちていた1作目に比べ、『2049』の街はどこか寒々しいというか社会の衰えを感じさせます。核の滅亡の恐怖があった80年代前半より、一応それが去った現代に作られた映画の方が未来像が暗いというのは、なんとも皮肉なものであります。
この空気の違いは監督の資質の違いもあるかと思います。エロ描写ひとつとっても肉食系でギラギラしたリドスコに比べると、ヴィルヌーヴのそれはいちいちオシャレで綺麗。ドゥニさんも作品によっては残酷描写を多用することがありますが、彼の場合リドスコのように暴力を楽しんではおらず、普通に「痛々しいもの・悲しいもの」として描いております。

そしてなにより大きな違いは、デッカードが「実はレプリカントなのか?」という謎を残したまま前作が終わってしまったのに対し、今回はしょっぱなからKがレプリカントであることを明かしている点です。しかしその明々自白だった出自がきわめて不確かなものであったことを知り、Kは深く思い悩みます。自分がレプリカントにより生まれた「運命の子」だと思った時、それはまちがいで彼はおとりにすぎなかったことを知らされた時、Kは二度とも深く嘆きます。やっとのことで受け入れた運命もまた偽物にすぎなかった…とはまことに残酷な話ですよね。世に「自分が実は伝説の救世主だった」という物語はたくさんありますが、「救世主かと思っていたら実は違った」という話はほとんど知りません(『侍戦隊シンケンジャー』が少し近いかも)。ですがそんな物悲しいストーリーが、うすら寒いけど心地よい背景とあいまってわたしの心を強くとらえたのでした。

大きな力に翻弄されつづけた「ブレードランナー」が、最後に自分の望む決断をし、個人としての矜持を見せる… そういうところは新作も旧作も変わりないかと思います。

あとこの映画『ブレードランナー』の正統的な続編でありながら、大変ヴィルヌーヴらしい映画でもありました。まずとてもミステリーっぽい作りな点。ある「謎」を中心に物語が展開し、意外な真相が用意されていたりする。ドゥニさんはアート指向も強い方ですが謎を放置したりはしませんね。一応はっきりした答えを残して終わってくれます。
もう一点は「引き裂かれた親子の物語」であるということ。『灼熱の魂』『プリズナーズ』『ボーダーライン』『メッセージ』… これらにはいずれも子を深く思ったり、その愛ゆえにくるってしまう親の情が描かれております。『ブレードランナー2049』にもそういう要素が後半出てきますが、今回はむしろ「子供」の側の視点が主になっていたのが変わっておりました。

Br20492「伝説の名作ふたたび」ということで作られた本作。しかし現時点で日米ともに初登場売上一位を記録したにも関わらず、製作費に遠く及ばないため大赤字が確定しております。まさにこの点でも本家を踏襲してしまいました。
スタッフがこの事態をどれほど予想していたかは謎ですが、自分は素晴らしい映画を作ってくれてありがとうと言いたいです。『ブレードランナー2049』はそんな状態ながらも一応プチヒットしながら公開中。また伝説となり30年後に第3作が作られることを願います(わし死んでるかも)。


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November 09, 2017

ボンクラのニャンダフル・ライフ ジェームズ・ボーエン&ロジャー・ポスティスウッド 『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』

Bbnk1先日『僕のワンダフル・ライフ』という犬の映画が話題を呼んでましたが、今回は猫の映画の話です。あちらがファンタジーっぽい話なのに対し、こちらは「実話をもとにした物語」。『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』、ご紹介します。

親に捨てられ、ドラッグに溺れ、日々の食事にも事欠くストリート・ミュージシャンのジェームズ。彼は親切な社会福祉士の口利きでなんとかある公営住宅に入れることになった。そんなジェームズの住まいにある日一匹の猫が迷い込んでくる。ジェームズは飼い主を見つけようとするが徒労に終わり、なんだかんだで猫をひきとることに。ボブと名付けられたその猫は驚いたことにどこまでもジェームズの後をついてきて、彼の演奏にも立ち会うようになる。そんな一人と一匹の姿はいつしかロンドンで人々の話題になっていくのだった。

よく少年漫画などで「やさしい」以外とりえのない少年の前に突然美少女が現れて、勝手に好きになってくれる話ってありますよね。まさにそんな映画です。違うのは美少女が猫だということです。そういう漫画を見かける度に「はいはい、よく中二君が抱く妄想だよね」と一笑に付してましたが、いやあ… そんな話実際にあるんですねえ… 本当に夢を諦めてはいけないですね。

さらに驚くべきはこのボブが犬のようにジェームズのあとをひょいひょいとついていくこと。普通猫は縄張りもあるしそんなことはしないものです。しかしボブはまるでアニメに出てくるマスコット動物のように、ジェームズの肩に乗って二階建てバスで移動したりもします。冬は襟巻の代わりになってあったかいだろうなあ…じゃなくて、そんな猫いるか!!??と思わずにはいられません。それも小さいころから芸を仕込まれてきたわけではなく、ある日ぷいっと迷い込んできた猫がそんなことをやるからたまげます。

そしてそんな猫をよく撮影のためにもう一匹見つけてこれたなあ…と思っていたら、またまたビックリすることに、これボブさんご本猫が演じられてるんですね。ジェームズさん本人がカメラの外で上手に指導されてるのか、極めて自然な演技でした。本当にあった猫の話を、その猫が実際に再現しているという点で、まことに他に類を見ない映画と言えましょう。

作品はボブとジェームズの絆を描くとともに、ドラッグから抜け出すことの大変さも描かれてます。春の『T2 トレイン・スポッティング』でもありましたが、ドラッグはとことん人をダメにします。しかしそれに手を出す人にもやりきれない事情があることも多く。そして一度はまってしまうとその沼から抜け出すことは容易ではありません。
幸いジェームズはボブの存在のおかげでその悪癖を断つことができました。すべての患者に効果があるわけではないでしょうが、猫がドラッグ中毒の抑止力にもなるという一例です。一匹の普通の猫が一人の人の人生を変えてしまうことも確かにあるんですよね。昨年初めの『猫なんてよんでもこない』を思い出したりもします。

ただジェームズ氏は気づいているのかどうか。彼はドラッグへの依存からは脱することはできたでしょうけど、代わりに別の依存症にどっぷりはまってしまっております。そうです。猫依存症です。幸い今はボブ氏が健在だからいいけれど、犬猫は大抵人間より先に逝ってしまうもの。その時にジェームズ氏が耐えきれるのかとても心配です。なぜならいままさにわたしがその苦しみと戦っているからですああああああああねごねごねごねごおおおおおおおお!!!!

…失礼、取り乱しました。いつかなんとかこの病から立ち直りたいと思います。
Bbnk2春に亡くなったモンさんは肩の上には乗っかってきませんでしたが、昼寝してるとよく腹の上には乗っかってきました。そんな懐かしくも重苦しい感触を思い出させてくれた『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』。まだいろんなところで公開しておりますので、気になった方はボブさんの美猫ぶりをスクリーンで堪能されてください。公式サイトはこちら


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November 08, 2017

正義は金 FROGMAN 『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』

Photoいまだかつてないアメコミ映画ラッシュとなった2017年。今回はその中でも群を抜いて低予算の日本代表的作品をご紹介します。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』、参ります。

今日も赤貧にあえぎながら世界征服に励む秘密結社鷹の爪団。だが彼らの発明になぜか興味を抱いた天才犯罪者ジョーカーが「鷹の爪団」に接触を図ろうと来日する。ジョーカーの野望を阻止すべくスーパーヒーローチーム・ジャスティスリーグは後を追うが、主要メンバーのバットマンはある事件のショックからひきこもりになってしまっていた。

マーベルが六本木ヒルズで展覧会を開いたりファッション関係から女子たちの興味をひいたりしてるのに比べ、DCはチャンピオンにコミカライズを連載したり茅ヶ崎に専門店を開いたり果ては『鷹の爪』とコラボしたり… どうもマイナーな方へマイナーな方へ進んでいってるような気がしてなりません。まあ要は面白ければそれでいいんですけど。

『鷹の爪』映画の特色に画面の右端に備えられた「予算メーター」というものがあります。映画の中で予算が消費されればされるほどゲージがどんどん下がっていくという。しかしただでさえ低予算の『鷹の爪』シリーズに莫大な製作費がつぎこまれてるDCの面々が本気で暴れたらどうなるか。3分と持たずに映画は終了してしまいます。ではどうやって約二時間もたせればいいのか… まあこれまでシリーズを観てきた方にはおなじみの「あの裏ワザ」でお金をかき集めてくるわけですね。その浮いたお金で作られた白組やプロダクションI.Gの本気映像には目を見張るものがあります。そして平常時の低予算画風とのものすごい落差が独特のギャグになったりしています。

しかし映画を観てる時は気楽にケラケラ笑っておりましたが、「映画と予算」を巡る問題について考えると頭を抱えてしまいます。今公開中の『ブレードランナー2049』にも顕著ですが、その週の売上第一位を記録しても製作費・広告費においつかないと「大コケ」と言われてしまったりする。じゃあその分予算を抑えればいいじゃん、ということになりますけど、それが簡単にできたら誰も苦労しないわけで。あとどう考えても当たらなそうな企画にものすごい額のお金がぶっこまれるのも謎であります。投資する方たちはそれなりの勝算があるのか、それともわかっちゃいるけどやめられないのか。本当に映画ビジネスというのは難しいですね。

横道にそれました… ほかの見どころとしましては『レゴバットマン・ザ・ムービー』とはまた別の角度からバットマンの本質に迫っていたり。ブルース・ウェインは両親が殺されたからバットマンになったわけですが、もしこの悲劇が未然に防がれていたらどうなっていたか。このアンサーがなかなかにひどい(笑) 他にもアクアマンをサバ夫よばわりしたりワンダーウーマンをオカン扱いしたり… 面白いけどひどい。よくDCが許したな…とも思いましたが、アメコミは自社でもっとひどいパロディをやったりするのでこれくらい全然許容範囲なのでしょう。あとテラスハウスやあれやそれといった日本作品のわかりやすいパロディもあちこちにちりばめられております。

ちなみにこの映画東京までわざわざ出張って観に行った(アホだ)ら、ラッキーなことに舞台挨拶つきでした。マスコミがひいた二回目のあいさつだったせいか、監督が本音をぶっちゃけたりキャストのテンションが低かったり、両者が険悪なムードになりかかったり… 予想してた華やかな感じでは全然ありませんでしたが、それはそれで見ごたえがありました。特に印象に残ったのは一同のお金の失敗についてのコメント。バットマンの声役の山田孝之氏は「金貸しの役を長いことやってたので、お金の使い方は堅実になりました」と語っておられました。イイネ!!
20171021_151536他の本場のアメコミ映画と比べると上映館がだいぶ少ないのが泣かせどころですが、それでもファンであれば観ておいて損はない一作です。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』はたぶんまだ全国各地で細々と公開中。できればもう少しスクリーン増えますように。彼らの聖地島根では無事かかるようでほっとしてます。


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