January 09, 2018

ゼロから始めりゃいいじゃない 谷口悟朗 『コードギアス 反逆のルルーシュⅠ 興道』

Cdg11少し前「外伝」の『亡国のアキト』が完結し、『コードギアス』もこれで収束かな…と思っていたら間を置かずに本編が帰ってまいりました。旧TVシリーズを劇場版に再編集した三部作の第一部『コードギアス 反逆のルルーシュⅠ 興道』、ご紹介します。

大国ブリタニアが世界を牛耳っているもうひとつの「現代」。まだ幼いブリタニアの王子ルルーシュは目と足が不自由な妹と共に政治取引の材料として日本へ送られ、そこで首相の息子枢木スザクと友情を育む。
しかし穏やかな日々は長くは続かず、ブリタニアは日本に侵攻し力ずくで自国の領土としてしまう。自分の存在をないがしろにされたルルーシュは父とブリタニアへの復讐を誓う。
それから数年後、一介の学生として身分を隠しながら暮らしていたルルーシュは、偶然軍が極秘に護送していた謎の少女C.C.に出会う。そして成り行きから彼女と「契約」を交わしてたルルーシュは、悪魔の力「ギアス」を手に入れたのだった…

『コードギアス』第1期放映開始からはや11年と少し(もうそんなに経つのかよ…)。ここでもちょくちょく感想書いてましたけど、当時はそりゃあ夢中になって毎週観てたものでした。
今回は総集編ということで観ようかどうか迷っていたのですが、映画館の予告で主題歌の『COLORS』が鳴り響いたら懐かしさがどーっつ押し寄せてきて、結局鑑賞することにしました。
で、改めて思いましたけど、やっぱ面白いですわ、このアニメ。伝奇物語として、架空歴史ものとして、超能力SFとしてよく出来てる。そしておまけにオシャレなロボットまで大活躍するんですけど、実はこれ、ロボット出なくてもストーリーにほとんど支障ない気が… でもやっぱりロボがいた方が画面が華やかになりますしね! 出すことに決めた製作陣に大いに賛同いたします。

あともうひとつ感心したのは見事な編集ぶり。この込み入った全50話の物語を3作の映画にまとめるのってすごく大変なことじゃ…と思っていたのですが、非常に自然に「はしょった」感もなく、約1/3にあたる17話くらいまで一気にまとめあげておりました。同じくギアス保持者であるマオとの戦いのくだりはばっさりカットされましたが、あそこはどちらかといえば脇筋で、なくても特に問題ありませんし。あと総集編でありながら、これをいきなり観た人でもちゃんと話が、面白さがわかるようになっていたのも偉かったです。

話は変わりますが、ちょうどいまネットフリックスで『デビルマン』の新作『crybaby』が配信中。これの脚本が『コードギアス』と同じ大河内一楼氏なのですね。大河内氏は『革命機ヴァルヴレイヴ』でも人情家タイプと冷徹な天才タイプの友情とぶつかり合いを描いておりましたが、もしかしたらその源流は『デビルマン』にあったのかなあ…と憶測しております。

2017best12はやくも来月には第2部『叛道』が、5月には第3部『皇道』が予定されている劇場版『反逆のルルーシュ』(うちの方は少々遅れて公開される可能性が大ですが)。次はストーリー中最大の悲劇が訪れるあのくだりをやるのだろうなあ…と思うとちょっと気が重いです。観ますけどね。
そして全3作が完結したそのあとは、TVシリーズのその後が作られるという… いったいどうやって?と首をひねらずにはいられませんが、しばらくはこれまでのルルーシュ君の歩みをもう一度見守っていこうと思います。

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December 27, 2017

第14回SGA屋漫画文化賞

昨年は仕事が修羅場で年始にずれこみましたが、今年は平和なので年内にマンガベストを発表できます。限りない自己満足で継続しているSGA屋漫画文化賞。今回で14回目です…
例によって賞金も賞品も授賞式もありません!! ではまいりましょう。


2017cm1☆少年漫画部門 ちばあきお・コージィ城倉 『プレイボール2』

まさかあの『プレイボール』の続きが読めるとは… 38年前の終了場面のすぐ後から始まる奇跡の続編。
そしてなにより驚くのはコージィ城倉氏の再現力。あのころと変わらない谷口君、丸井君が確かに紙面で躍動しております(イガラシはまだちょっと大人しいかな?)。迷作『砂漠の野球部』のことは喜んで忘れましょう。
欲を言うならコージィ先生、『キャプテン』の近藤君のつづきも読みたいです。

2017cm2☆少女漫画部門 吉田秋生 『海街diary』

今年は少女漫画はこれしか読んでないので自動的にこれが受賞という… すいません。
香田さんちのお姉さんも次から次へと良縁にめぐまれ、あとはすずちゃんが我が静岡県へやってくるだけとなりました。さすがにあと1巻で完結かな…
名作『BANANA FISH』のアニメ化も発表され、吉田先生周りがにぎやかになってきましたね。

2017cm3☆青年漫画部門 田中芳樹・藤崎竜 『銀河英雄伝説』

『封神演義』の藤崎先生が青年誌らしい熱さで描く21世紀版の新『銀英伝』。週刊連載だけあってサクサク進んでいるようにも見えますが、開始2年でまだ原作の1巻部分しか進んでおりません。でもやっぱり面白い! がんばれ! 
余談ですがつい先日、田中先生の代表作のひとつである『アルスラーン戦記』が30年かけて完結いたしました。めでたかったが辛かったですね…

2017cm4☆中年漫画部門 原作:萩原天晴・漫画:上原求、新井和也・協力:福本伸行 『1日外出録ハンチョウ』

「悪魔的スピンオフ第2弾!理外の飯テロ漫画!!」 このコピーがすべてを物語っております。『カイジ』本編を読んでなくても映画の1作目だけ観てればだいたいわかる親切設計。与えられた24時間の枠内で五官をフルに発揮して、その街を・飯をいかに味わい尽くすかという人生の教科書。こちらを大賞にしようかとも思ったのですが… ああ! はやく3巻が読みたい!!

2017cm6☆漫画家漫画部門 平松伸二 『そして僕は外道マンになる』

『ドーベルマン刑事』『ブラック・エンジェルズ』など、「ダークヒーローが外道をぶっ殺しまくる」作品でよく知られる平松先生が異常なまでの話の盛りっぷりで楽しませてくれる自伝的作品。…だったのですが、最近ではこの作品の単行本があまり売れてないことを苦にしてどんどん暗黒面に落ちていってる先生がちょっと心配(それはそれで面白いんですが)。先ごろ増刊的な『グランドジャンプ プレミアム』から本誌の『グランドジャンプ』に移籍したばかりですのでまだまだ続くと思うのですが。

☆ウェブ漫画・猫漫画部門 桜井海 『おじさまと猫』
いつまでもペットショップで売れ残っているブサイクな猫。「どうせ誰もわたしにゃんかほしがらない」 そう諦めきっていた彼女の前に現れたのは… こちらのまとめから読むことができます。来年2月22日には単行本も発売。

2017cm5☆翻訳部門 フランク・ミラー ジェフ・ダロウ 『ザ・ビッグガイ&ラスティ・ザ・ボーイロボット』

突如東京に現れた大怪獣。立ち向かうのはア○ムをチンチクリンにしたような少年ロボット・ラスティ。だがその戦力差はいかんともしがたく… 肉味噌・血みどろ描写を得意とするフランク・ミラーが何を思ったか突然手掛けたポップでキュートな作品。長年翻訳を待ち望んでいましたがようやく今年実現しました。おそらく『ベイマックス』に深い影響を与えた…と勝手に思っています。今年は他に通販限定の『アベンジャーズ・プライム』、悪趣味描写満載の『ザ・ボーイズ』などが印象に残りました。

2017cm7☆アニメ部門 長井龍雪 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』

春に完結を迎えたこちらが二年連続の受賞…というか、今年はテレビアニメをこれくらいしか観てませんでした。
あまりにも悲壮な終盤の展開に打ちひしがれたファンも多かったようで。わたしも大変複雑な気持ちでしたが、ともかく鉄華団の少年たちのことを忘れたくなくて…
長年続いた週末夕方のTBSアニメ枠もこの作品をもって終了。これまたさみしいことであります。

そしてトリです。
2017cm8
☆大賞 野田サトル 『ゴールデンカムイ』

日露戦争の地獄を生き抜いた帰還兵「不死身の杉元」は、幼馴染の病を治すため、砂金を求めて北海道へ渡る。そこで彼が遭遇したのは奇妙な刺青を掘られた脱獄囚たちだった。彼らの刺青はつなげるとひとつの地図になり、アイヌの残した金塊のありかが書かれているという…

今年『ハンチョウ』と並んでもっともはまった漫画。吉村昭の渋いネタをこれでもかこれでもかとぶちこんでおきながら、若者たちをもとりこにするほどの一大エンターテインメントに仕上げております。本筋にはあまり関係ない北海道の野生の珍味描写も読みごたえたっぷり。これまた春にはアニメ化されるそうですが、どちらかというと骨太な役者さんたちでの実写版が観とうございます。

というわけで本年もいっぱい面白い漫画に出会えて感謝。週末に映画の方のベスト記事を書いて今年のブログ〆といたします。

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December 14, 2017

超人・半神・機人・金持ち (一応)ザック・スナイダー 『ジャスティス・リーグ』

Jsa_2MCUに追いつき追い越せとばかりに奮闘するもうひとつのアメコミ映画世界「DCFU(DCフィルムズ・ユニバース 最近DCEUから改名したみたいです)」。その総決算たる大集合映画が先日満を持して公開されました。『ジャスティス・リーグ』、紹介します。

お話は『バットマンVSスーパーマン』の直後から始まります。異世界からの侵略がせまっていることに気づいたバットマン=ブルース・ウェインは、スーパーマン亡きあとの地球を守るべく、特別なパワーを持った超人たちを探す。だがそのうち二人はブルースの要請にすんなりと応じようとはせず、チーム結成には暗雲が漂う。そうこうしているうちに侵略者「ステッペンウルフ」が無数の兵士を連れて来襲。地球を改造する力を秘めた3つの「キューブ」を求め、それらを守る者たちに容赦ない攻撃をくだすのだった。

「アベンジャーズの後追い」なんてことも言われてますが、コミックのジャスティス・リーグの歴史はそれよりもっと古かったりします。まず1940年に前身である「ジャスティス・ソサイエティ・オブ・アメリカ(JSA)」が誕生。そして「アベンジャーズ」登場の3年前である1960年にJSAをリニューアルさせた「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」が創刊。以後この名前で一旦のリセットを経て、様々なメンバーが入れ替わりしながら50年活動します。
そして2011年再びのリセットイベント「NEW52」に際しチーム名が「ジャスティス・リーグ」に変更。

現在コミックではこの本家の他に米国政府指揮下にありかつての同タイトルとは違う立ち位置の「ジャスティス・リーグ・オブ・アメリカ」(ややこしい…)、魔界担当の「ジャスティス・リーグ・ダーク」、国連が作ったけど終了したっぽい「ジャスティス・リーグ・インターナショナル」、よくわからない新チーム「ジャスティス・リーグ・ユナイテッド」などがありなかなかにカオスであります。

では今回映画に出て来るメンバーを「なにをいまさら…」というキャラも含めて紹介します。

☆スーパーマン…言わずと知れた(雑誌形式では)世界最初のアメコミヒーロー。怪力・飛行なんでもできちゃう。MARVELとDCの最大の違いは「MARVEL宇宙にはスーパーマンのような圧倒的な大黒柱がいない」ということかも。真っ先にあげちゃったけど今度の映画に出るかは一応不明(白々しく)

☆バットマン…アメコミで最高の人気を誇るキャラ。特殊能力は金と推理。バットマン一派の人気が突出しすぎてるのがDCの悩みどころかも。時々「何の超能力もないの?」と揶揄されるが時間さえあれば宇宙の最高神にも勝てる男。ただゴッサムシティの治安は永久に解決できない

☆ワンダーウーマン…世界最初のアメコミヒロイン。怪力と嘘発見がスペック。キャリアの割に伸び悩んでいたが、先の映画で大ブレイク。DCのいまひとりのアイドル・スーパーガールと比べると「お母さんみ」が強いのが特徴か。好物がアイスクリームなのが萌える

☆フラッシュ…光速で駆けるスピードスター。一応アメコミの第二黄金期のきっかけとなった重要なキャラで、現在映画とドラマが並行してる唯一のヒーロー。時々物理を越えたスピードを出してしまい、並行世界にいったり現実改変を招いたりするのが玉にきず

☆アクアマン…今回映画とコミックで一番風貌が変わったキャラ。海底人と地上人のハーフで、水や魚類を操ることができる。それゆえ水のないところでは手持無沙汰になってしまうという、サイボーグ008的な問題を抱えている。日本での愛称はサバ夫(?)

☆サイボーグ…実は一番よく知らないキャラ。特殊能力は変形・飛行・ネット検索。若手ヒーローチーム「ティ―ン・タイタンズ」に加入してから人気が上がり、少し前JLのメンバーに大抜擢される。恐らく「黒人一人くらい入れとこう」というPC的配慮かと思われます。風呂にどうやって入るのかが謎


さて、肝心の内容の方ですが、『BVS』や『スーサイド・スクワッド』と同じくDC世界の奥行きを感じさせるネタが色々入っていて、コミックファンとしてはまことに楽しゅうございました。逆にそういうDC愛がない人には、ちょっとあっさり風味に感じられるかもしれません。こう言ってはなんですが、本当に予想範囲内のことしか起きないので。
そしてやっぱりちらつく『アベンジャーズ』の影。監督がジョス・ウィスドンに変わる前から決まってたことだと思うんですけど、「宇宙の果てからマッチョな悪者が軍勢を率いて攻めてくる」というプロットはもうちょっと変えられなかったのかと。そしてまたキーアイテムがサイコロだと来ている(三つに増えてましたが)。
一方で『アベンジャーズ』よりも良いところもあります。尺が短くなった分テンポがよくなったりとか。超人たちがかみ合わなくてギスギスしてるパートが短かったのも好印象でした。これはエズラ・ミラー演じるフラッシュの性格に負うところが大きいですね。本当にひとりムードメーカーがいるだけで場の空気というものはずいぶん変わるものです。

今年は『パワーレンジャー』や『スパイダーマン ホームカミング』などヒーローものと『ブレックファスト・クラブ』をかけあわせた作品が目立ちましたが(『ブレックファスト~』観てないんですけどね…)この『ジャスティス・リーグ』もカーストの違いを乗り越えていく学園ドラマと似たところがありました。
バットマンは過去のあやまちをひきずってる先生、ワンダーウーマンは以前の失恋を乗り越えられない級長、アクアマンはやたらとイキりたがる番長、フラッシュは寒いギャグを連発するお調子者、サイボーグは怪我で夢断たれた体育会系…といった具合です。それぞれに悩みを抱えてる面々が、ディスカッションしたり一緒にクラブ活動に精出したりしてるうちに、やがて自分の殻を打ち破っていく、そんなムードが大変さわやかで好みでした。

Photoただ『ワンダーウーマン』の好調にのって大ヒットとなるかと思いきや、全米ではDCFU中もっとも低調なスタートで赤字はまちがいないとのこと。やっぱりメリケンの映画ファンは常に何か目新しいものを求めているということですかね… ここでくじけないでDCFUにはさらにがんばって残りの企画を面白いものにしてほしいものです。とりあえず現在ほぼ確定してる企画は『アクアマン』と『ワンダーウーマン2』、そして『フラッシュ(ポイント)』というところでしょうか。あと一応『スーサイド・スクワッド2』『ザ・バットマン』『バットガール』『シャザム』『グリーンランタン・コァ』『サイボーグ』『ジャスティス・リーグ・ダーク』といった企画も上がっている模様。果たしてどこまで実現できるでしょう。


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December 12, 2017

星を奪うもの 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 怪獣惑星』

Photo昨年『シン・ゴジラ』の大ヒットで大いに復活の兆しを見せた東宝怪獣映画。今年はアニメの三部作という変化球で攻めてまいりました。『GODZILLA 怪獣惑星』、ご紹介します。

突如として巨大怪獣の出現が頻発するようになった世界。人類はなんとかそれに対抗しようと戦いを続けていたが、それまでの怪獣をはるかに超える存在「ゴジラ」の登場により敗北を余儀なくされる。宇宙に新天地を求めて旅立った人類だったが、先の見えない旅に次第に消耗していき、ついには地球への帰還を望むようになる。その先陣を切る若者ハルオは激しい怒りと科学的な理論をもってゴジラ殲滅のプランを練り上げたのだが…

まず語っておきたいのが公開前に出版された前日談となる小説『GODZILLA 怪獣黙示録』。映画ではナレーションで済まされた人類衰亡の歴史をインタビュー形式でつづったものなのですが、これが滅法面白くて。カマキラスやらドゴラやらオルガやら、存在をすっかり忘れていたマイナー怪獣が次から次へと出てきて破壊の限りを尽くすという内容。滅亡の危機が迫っているというのに団結も出来ず決定的な対抗兵器もなく、ただただ絶望しかない『パシフィック・リム』みたいな暗い話なんですが、登場怪獣の顔ぶれの懐かしさに楽しさしか感じないという奇天烈な1作でありました。

しかし今回は映画の前にこれを読んでしまったのがよくなかった。なんでかというと『怪獣黙示録』に比べると『怪獣惑星』はあまりにも登場モンスターの種類が限られていて、ちょっと派手さに欠けるところがあるからです。どうせ3部作でやるならこの『黙示録』を1作目にして映像化すりゃよかったのに…と思わずにはいられませんでした。

ただ映画本編もまったくつまらなかったわけではなく。むしろ小説を先に読んでなかったら普通に楽しめたと思います。
特に印象に残るのはゴジラよりも彼?に鬼気迫る憎しみを抱き、「何が何でも絶対殺すマン」と化している主人公のハルオ君。ふつうあんな山みたいな怪獣を目にしたら一目散に逃げ出したくなるのが普通の人間です。しかしハルオ君は恐怖などまったく表に見せず、「ゴジラ―!! ぶっころーす!!」と何度も何度もあの巨体に向けて特攻していくあたり頭の配線が2,3本ぶっとんでるとしか言いようがありません。でもまあこれくらいエキセントリックなやつでないとゴジラとの真っ向勝負はできないでしょう。芹沢博士や矢口蘭堂に並ぶ怪獣キラーになれるかどうか、これからの成長に注目です。というか『進○の巨人』のエ○ン君とよく似ておりますね。

あと主人公を絶望に追い込む脚本虚淵玄氏お得意のストーリー展開に今回も引き込まれました。ただ虚淵さんの真骨頂はむしろストーリーの中盤あたり。だいたいその辺で主人公の世界観を根底から揺るがす衝撃的な事実が明らかになり、お話がどう解決するのかさっぱり予想がつかなくなります。というわけで1作目終盤のアレもまだまだ前フリにすぎず、本当のショックは2作目あたりに待っているものと思われます。ハルオ君のさらなるあがきに期待しましょう(ひどい)

Photo_2とりあえず次はもう少しいろんな種類の怪獣が出てくると嬉しいですね… ちなみに2作目『決戦・起動増殖都市』のポスターにはメカファンには嬉しい「アレ」の姿がちらっと描かれております。その辺にまんまと踊らされるワタクシ。『シン・ゴジラ』に比べるとあんまり売れてないようなので無事完結までたどり着けるか少々危なっかしいですが、東宝を信じて応援していこうと思います。というわけで第二部は来年5月の公開。そして丸一年後の11月あたりで完結編…という計画なんでしょうか。なんとかついていくのでスタッフのみなさんがんばってくだされ

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December 11, 2017

まんが2本昔話 トラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』

Kubo1『コラライン』『パラノーマン』などで知られるストップモーションアニメの雄・ライカの最新作は、なんと日本のおとぎ話をモチーフにした冒険談。本国より1年遅れての公開となった『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、ご紹介します。

そこは昔々の日本。目の見えない母と暮らす隻眼の少年クボは、不思議な三味線の力で人形を動かして日々の糧を得ていた。だがある祭りの夜、母のいいつけを守らず家に帰りそびれたクボは恐ろしい魔女たちの襲撃を受ける。実はクボの祖父は月に住む魔王で、少年のもう片方の目を執拗に狙っていたのだった。無慈悲な祖父と戦うためにクボは猿とクワガタを相棒とし、三つの武具を探す旅に出る。

「アニメ」という語にはもともと「魂」という意味があります。本来命のない絵や人形をまるで生きてるかのように見せる…魂を吹き込んでるような作業ゆえ、こういう呼び方をされているのですね。クボ君も命のない折り紙を自在に動かしていましたが、ライカのお仕事はまさしく人工物に生き物のような感情や動きを再現させています。
ストップモーションアニメの雄といえばもう一社、『ひつじのショーン』や『ウォレスとグルミット』のアードマン・スタジオがあります。ライカと比べるとそれが味ではあるんですが、アードマンはもう少し動きがカクカクしています(両社とも「1秒に24コマ」という基準は一緒なんですが…)。一方ライカの人形の動作はまるでCGアニメのようになめらか…というかだんだん人形に見えなくなってくるから恐ろしい。ライカ作品ではコマ撮りアニメでは普通簡略される細かな表情までクルクルとよく動かしているので、その常軌を逸した手間暇のかけ方ゆえそんな現象が生まれるのかもしれません。

しかしそれは恐ろしく非効率的な作業であります。一週間で平均3.3秒しか作れなかったというから驚きです。それだけ時間を費やしたらからには、当然見合うだけの儲けがあるのかと思いきやライカの作品はこれまですべて赤字だったりするから泣けてきます。毎回アカデミー長編アニメ部門にノミネートされているとはいえ(ただしいまだに受賞は果たせず)、どうしてそんな赤字続きで会社が成り立っているのか疑問でした。ところが最近その謎がなんとなく解けました。実は『KUBO』の監督にしてライカの社長トラヴィス・ナイトは、ナイキの会長フィル・ナイトのご子息なのです。そしてフィル・ナイトはライカの会長も兼任してたりして。つまりナイキが浮いたお金を回してくれるからなんとかやっていけるのでは… そうとしか考えようがありません。

少々ネタバレになりますがタイトルにもある「二本の弦」とはある絆の象徴であります。ライカとナイキも靴ひもみたいな糸…絆で結ばれている関係にあるといえます。ありがとうナイキ。

お話の方はどうかというと、わたしたちが幼少のころに親しんだ多くの民話・昔話をバラバラに解体し、再構成したような作りでありました。少年のお供?の1人が猿なのは妥当なチョイスですが、もう1人がクワガタ怪人なのにはちょっと頭をひねりました。まあ「クワガタ(鍬形)」というのはもともと兜の飾りのことなので、「武士っぽい」ということから来た発想なのかも。
そして「赤子のころから体の一部を奪われる」という残酷な生い立ちは『どろろ』の百鬼丸を思い出させます。思えばライカ作品はパラノーマンといいコララインといいいつも子供たちに「そりゃ無茶だろ…」というくらい重すぎる試練を課します。それでも「こまったなあ」という表情で過酷な運命をなんとかしていく子供たちの姿に、くたびれた大人は頭を垂れるほかないのでした。
ポスターなどからは勇ましいイメージを受けるクボくんですが、本編を見ると年相応の無邪気な少年だったりするのでそんなところがまたいじらしかったりします。

Kubo2『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は初日観たときは半分くらいの入りだったのですが、その後ネットや口コミで良さが伝わって満員になる回も増えたとのこと。せっかくのライカ&ナイト氏の日本へのラブコール、もっと多くの人に広まればよいな、と思います。
そしてナイト監督の次回作はやはり日本発祥のキャラである『トランスフォーマー』の「バンブルビー」スピンオフであるとのこと。こちらも楽しみにしております。というか、楽しみになってきました!


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November 08, 2017

正義は金 FROGMAN 『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』

Photoいまだかつてないアメコミ映画ラッシュとなった2017年。今回はその中でも群を抜いて低予算の日本代表的作品をご紹介します。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』、参ります。

今日も赤貧にあえぎながら世界征服に励む秘密結社鷹の爪団。だが彼らの発明になぜか興味を抱いた天才犯罪者ジョーカーが「鷹の爪団」に接触を図ろうと来日する。ジョーカーの野望を阻止すべくスーパーヒーローチーム・ジャスティスリーグは後を追うが、主要メンバーのバットマンはある事件のショックからひきこもりになってしまっていた。

マーベルが六本木ヒルズで展覧会を開いたりファッション関係から女子たちの興味をひいたりしてるのに比べ、DCはチャンピオンにコミカライズを連載したり茅ヶ崎に専門店を開いたり果ては『鷹の爪』とコラボしたり… どうもマイナーな方へマイナーな方へ進んでいってるような気がしてなりません。まあ要は面白ければそれでいいんですけど。

『鷹の爪』映画の特色に画面の右端に備えられた「予算メーター」というものがあります。映画の中で予算が消費されればされるほどゲージがどんどん下がっていくという。しかしただでさえ低予算の『鷹の爪』シリーズに莫大な製作費がつぎこまれてるDCの面々が本気で暴れたらどうなるか。3分と持たずに映画は終了してしまいます。ではどうやって約二時間もたせればいいのか… まあこれまでシリーズを観てきた方にはおなじみの「あの裏ワザ」でお金をかき集めてくるわけですね。その浮いたお金で作られた白組やプロダクションI.Gの本気映像には目を見張るものがあります。そして平常時の低予算画風とのものすごい落差が独特のギャグになったりしています。

しかし映画を観てる時は気楽にケラケラ笑っておりましたが、「映画と予算」を巡る問題について考えると頭を抱えてしまいます。今公開中の『ブレードランナー2049』にも顕著ですが、その週の売上第一位を記録しても製作費・広告費においつかないと「大コケ」と言われてしまったりする。じゃあその分予算を抑えればいいじゃん、ということになりますけど、それが簡単にできたら誰も苦労しないわけで。あとどう考えても当たらなそうな企画にものすごい額のお金がぶっこまれるのも謎であります。投資する方たちはそれなりの勝算があるのか、それともわかっちゃいるけどやめられないのか。本当に映画ビジネスというのは難しいですね。

横道にそれました… ほかの見どころとしましては『レゴバットマン・ザ・ムービー』とはまた別の角度からバットマンの本質に迫っていたり。ブルース・ウェインは両親が殺されたからバットマンになったわけですが、もしこの悲劇が未然に防がれていたらどうなっていたか。このアンサーがなかなかにひどい(笑) 他にもアクアマンをサバ夫よばわりしたりワンダーウーマンをオカン扱いしたり… 面白いけどひどい。よくDCが許したな…とも思いましたが、アメコミは自社でもっとひどいパロディをやったりするのでこれくらい全然許容範囲なのでしょう。あとテラスハウスやあれやそれといった日本作品のわかりやすいパロディもあちこちにちりばめられております。

ちなみにこの映画東京までわざわざ出張って観に行った(アホだ)ら、ラッキーなことに舞台挨拶つきでした。マスコミがひいた二回目のあいさつだったせいか、監督が本音をぶっちゃけたりキャストのテンションが低かったり、両者が険悪なムードになりかかったり… 予想してた華やかな感じでは全然ありませんでしたが、それはそれで見ごたえがありました。特に印象に残ったのは一同のお金の失敗についてのコメント。バットマンの声役の山田孝之氏は「金貸しの役を長いことやってたので、お金の使い方は堅実になりました」と語っておられました。イイネ!!
20171021_151536他の本場のアメコミ映画と比べると上映館がだいぶ少ないのが泣かせどころですが、それでもファンであれば観ておいて損はない一作です。『DCスーパーヒーローズVS鷹の爪団』はたぶんまだ全国各地で細々と公開中。できればもう少しスクリーン増えますように。彼らの聖地島根では無事かかるようでほっとしてます。


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October 18, 2017

烈轟忍法帖 チャーリー・ビーン 『レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー』

Lng11『レゴRムービー』『レゴバットマン・ザ・ムービー』と連続して傑作を世に送り出したレゴ映画シリーズ。しかし第3弾のこれはどうなんだ…?と心配しながら観に行ったのですが、全くの杞憂でありました。今回もめちゃくちゃ面白い! そんな『レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー』ご紹介します。

そこは香港と西海岸を足して割ったような街、ニンジャゴーシティ。豊かな自然に囲まれたにぎやかな都市だが、ひとつ難点があるとすると、それは定期的に悪の魔王ガ―マドンが侵攻してきてなんでもかんでもぶっ壊していくこと。幸い街には守り手たる正義のニンジャたちがおり、ガ―マドンは毎回彼らに敗北しては去っていく。ニンジャたちを人々は称賛するが、実はリーダーのグリーンニンジャはガ―マドンの息子であり、父親が悪者であることに人知れず悩んでいた。

ちなみに同名のTVシリーズがすでに数シーズン放映されていますが、そちらとは設定の異なるパラレルワールドの関係だということ。それでは面白い点を片っ端からあげていきましょう。

①最初に目を引くのはやっぱり主人公のロイドが駆るドラゴン型ビーグル(上画像参照)。ダイレンジャーの龍星王とか好きだったんでこいつはたまりませんわ… 他のメンバーのビーグルも正統派からヘンテコなものまで個性派ぞろいです。

②主人公のロイドことグリーンニンジャ。お父さんが悪の帝王であるがゆえに学校ではハブにされてるという泣けるけど笑える設定。ただ現実にも親父が町内きっての問題児で家族が肩身の狭い思いをしてる…という例はあると思います。他のメンバーがきらびやかな属性を持ってるのに彼には特にそういうのがない、というのも泣けます

③悪の帝王ガ-マドン。CVが山寺宏一さんのため闇落ちしたレゴバットマンに見えて仕方ない。4本ある腕で色々変わった芸を見せてくれます。あと最近の流行に合わせてかサメ型のメカがお好きみたい

④ガ-マドンの持つ「最終兵器」。その威力はこちらの予想の遥か斜め上を行く。レゴ風の核弾頭のようにも見えるが…(下画像参照)

⑤メンバーの中でとりわけ異彩を放つのがホワイトニンジャ。R・田中一郎のような天然っぽい発言が目立つが、実はその正体はロボ。機械らしい薄情な一面もあり。

⑥ジャッキー・チェン。どこまでもいつも通りのジャッキー・チェン。

⑦ガ-マドン配下のなぜか魚介系で統一されてる将軍たち。いらんことを言っては豪快に粛清されていく様子が哀れであり、おかしくもあり。

⑧キラキラこまごましてて抒情性あふれるニンジャゴーシティの風景。前二作とはまた違った味わいがあります。

…とまあざっとあげただけでこんだけ魅力あふれる要素があります。すごいでしょう。
そしてどこまで作り手が意識してるかわかりませんが、レゴムービー、レゴバットマンと共通するテーマも幾つかあります。

ひとつめは孤独や疎外感。主人公は一見楽しくやっているようで、心に満たされない空洞を抱えていたりします。

ふたつめは親子の絆の話であるということ。『レゴ・ニンジャゴー』は特にそれが強調された作品でありました。

みっつめは悪者への深い愛情と理解。どうしてこのシリーズは悪者にこんなに優しいのか。嫌われ者を排除するのではなく、温かく迎えてあげよう!という点でこの上ない教育映画だと思います。

あと山寺宏一。もうミスターレゴムービーといっても過言ではないと思います。

Lng4これほどまでに面白くて感動する『レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー』ですが、日本ではやっぱり大爆死してますcryingcryingcrying 一般の方々が「なぜレゴをわざわざ映画館で見ねばならんのだ?」という気持ちもわかります。でもどうか、だまされたと思って観てほしい… こんな調子だといよいよ次の『レゴRムービー2』は日本ではDVDスルーになってしまうかも。そうならないために、焼け石に水とわかっていても自分はこの映画を必死に応援し続けます。
『レゴ・ニンジャゴー・ザ・ムービー』は一応まだ全国の映画館で上映中。タイムリミットはあと10日か… 少しでも興味を持たれた方、猫・レゴ・ジャッキー・チェン、いずれかが好きな人はぜひごらんください!


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September 12, 2017

おいでよ杜王町 荒木飛呂彦・三池崇史  『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』

Jjkb1約30年の歴史を誇る人気漫画が、鬼才三池崇史の手によりとうとう実写映画化。吉と出るか凶と出るか、鬼が出るか蛇が出るか… そんな『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』ご紹介します。

風光明媚な日本の一都市杜王町。しかしその町にはサイコキラーが潜んでいるらしく、行方不明者や殺人の被害者が近年増加し続けていた。そこへ引っ越してきた平凡な高校生・広瀬康一は、奇妙なヘアスタイルの東方仗助という少年と知り合う。たまたま彼と居合わせた際、宏一は仗助が「スタンド」と呼ばれる操り人形にも似た超能力の持ち主であることを知る。

自分もいい年なので恥ずかしながら『ジョジョ』の連載が始まったころのことが記憶にあります。『ドラゴンボール』や『北斗の拳』が人気絶頂だった「少年ジャンプ」において、突如現れた「世界名作劇場」のような漫画。はやいうちに打ち切られるだろう…という予想を裏切り、現在もまだ掲載誌を変えて続いているから驚きです。
自分が本格的にはまったのは主に中東を舞台とした第3部のあたりから。単行本も最初から買い揃えたのですが、現代日本が背景のこの第4部の途中で脱落しちゃいました。ははは(第5部は最近廉価版で全部読みました)。そんな中途半端なファンですが、それだけにあまりこだわりなく実写版を鑑賞することが出来ました。

いろいろ危ぶまれた三池監督の『ジョジョ』ですが、けっこうがんばっていたのではないでしょうか。つか、三池さんも宇宙や未来が舞台でなければそれなりにちゃんとやる方だと思います。春の『無限の住人』も力作でしたし。
わたしがこの映画で気に入ったのは仗助がきちっと主人公をこなしていたということ。原作の第4部は康一君や岸辺露伴、吉良吉影という立ちまくりのキャラに押されてしまってどうも仗助の影が薄かった印象があります。しかし劇場版では露伴も吉良も登場せず、仗助が最もかっこよかったエピソードをメインにしてるのでかなり輝いておりました。いまひとつ朴訥な演技の山崎賢人君も、それがかえってぼーっとした仗助のキャラにあっておりました。
自分の敵を助けた際、第3部の主人公である承太郎は「俺にもよくわからねえ」と答えるのですが、仗助は「別に。何も死ぬこたあねえと思っただけだよ」と言います。この自然で力の入ってない「人助けの理由」、第4部でとりわけ気に入ってたとこなので、映画でも取り入れてくれたのは嬉しゅうございました。

そんな山崎君とある意味対照的だったのが虹村億泰役の最近改名した新田真剣佑君。これまで割と少女マンガ系の出演が目立ってましたが、今作ではガラッと雰囲気を変えて少年漫画の三下的なキャラをガラ悪く熱演しておりました。まあガラはともかくとして、彼はお父さんがサニー千葉だけに武術の心得もある俳優さんなんですよね。優男役が多くてもったいないなーと思っていたのですが『ジョジョ』ではようやくその辺が生かされて「待ってました」という感じでした。

あと他に原作ファンとして(ぬるめですが)よかった点はいかにもCGでしたが、「現実に動くスタンド」が見られたことです。これはやっぱり漫画でもアニメでも味わえない、実写版ならではの強みです。特に億泰の持つ「ザ・ハンド」などはデザインも忘れてたのですが、そのなんにも考えてなさそうなフェイスがとてもかわいく、この度魅力を再発見いたしました。
Photoというわけで意外とよかった実写版『ジョジョ』ですが、ワーナーその他の思惑が大幅にはずれ、興行的にはこけちゃっているようです。同時期に公開してる『銀魂』は大ヒットだったのに… まあ考えてみればこのジョジョ4部も二十年以上前の漫画ですからね。一般の若い子たちにはなじみが薄かったかなあ。
そうなると心配なのはこの後の展開。最低あと2作は必要と考えてましたが、なんとかあと1作で〆る方向でがんばらねばならないかも。せっかく「第1章」と銘打ったんだから、これっきりで終わりということだけはやめてください。
幸い成績不振にも関わらず公開から一か月経ったいまもまだ公開してます。というか今週が山場だと思うので少しでも興味を持っている方はぜひごらんください。


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September 05, 2017

バンガボンの名前 トム・ムーア 『ブレンダンとケルズの秘密』

Bdkz1昨年の『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』が好評を博したのか、2009年に製作されやはりアカデミー長編アニメ部門にノミネートされたトム・ムーア監督の前作が、この度ようやっと日本でも公開されることになりました。まあもう始まって一か月くらい経ってるんですけど… そんなわけで今回はその『ブレンダンとケルズの秘密』をご紹介します。

9世紀のアイルランド。ある僧院に暮らす少年ブレンダンは、院長である叔父のもと、バイキングを防ぐための城壁作りに日々励んでいた。そんなある日僧院に高名な修道士エイダンがやってくる。彼が作る美麗な書物「ケルズの書」にすっかり魅せられたブレンダンは、エイダンとともに書物を完成させることにのめりこんでいく。だがその間にもバイキングの脅威は僧院に刻一刻と迫っていたのだった。

まず子供向けアニメなのに舞台が主に「僧院」というところが渋いですよね。寺院系の建物とそこで暮らす人々が中心のアニメというと、他には『一休さん』くらいしか思い当りません。しかしまあ、中世のころの僧院とか修道院ってなにやらロマンをかきたてるものがあります。

あとこのアニメを際立たせているのは、ケルズの書が開かれたり、森の木々がざわめいたりするときにぱっと画面を覆う万華鏡のようなきめ細かい装飾表現。『ソング・オブ・ザ・シー』と共通してるようで、また少し違うタッチを楽しむことができます。独特のキャラクターデザインも面白いですね。特に要所要所で活躍する猫「バンガボン」は口元のXが変わってて印象に残ります(下のイラスト参照)。

僧院に隣接する森のあれこれにもわくわくさせられます。。この時代、森というのは人間にとって最も身近な異界だったわけで。人知を超えた存在がそこには息をひそめております。わたしがこの映画で特に心惹かれたのは、ブレンダンと森にすむ謎の少女のつかの間の交流。子供のころだったからこそ通じ合えた儚い絆が中年男の胸をうつのでした。

で、ここからは八割方ネタバレですが

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これ、ディズニーのアニメであれば、ケルズの書のスーパーパワーか何かで悪者たちがズドーン!とやっつけられてめでたしめでたしとなると思うのです。しかしこの作品はその点ファンタジー系のアニメでありながら大変現実的でシビアです。生きていく上で、苦難や悲劇はどうしても避けられない。ではどうやってそれを乗り越えられるのか? そんな問いかけがなされてるような気がしました。そしてそんなごまかしのないストーリーだからこそ心に深く残るものがあります。
Bdkz2『ブレンダンとケルズの秘密』はそろそろメイン館の恵比寿ガーデンシネマなど第一陣が終了の模様。そのあと全国各地の劇場でポツポツとかかっていくようです。くわしくは公式サイトをどうぞ。
トム・ムーア関連作品としては製作を務めている『The Breadwinner』(イスラム系少女の脱出劇?)や、監督作『WOLFWALKERS』(狼少女と人間少女の友情物語?)などがスタンバイしてるようです。この勢いなら日本でもそんなに間を置かず公開されるかなー


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August 30, 2017

恐怖のバナナ軍団VS80年代から来た男 カイル・バルダ&ピエール・コフィン 『怪盗グルーのミニオン大脱走』

Photoまだまだ続く夏休み映画特集。本日は今夏最大のヒット作となるであろうイルミネーション・エンターテイメント最新作『怪盗グルーのミニオン大脱走』をご紹介します。

子どもたちのため犯罪者を引退し、反悪党同盟のエージェントとして活躍していた元怪盗グルー。だが手ごわい泥棒のバルタザール・ブラットに後れをとったために、妻のルーシー共々組織を首になってしまう。失意を味わうグルーの前に、一人の老紳士が現れる。彼はグルーの生き別れの兄弟・ドルーの執事だった。

1作目で親となり、2作目で妻を得、どんどん人間的成長を遂げていってるグルーさん。3作目ではもしかして子供たちの巣立ちが描かれるのでは…と思いましたが、さすがにまだはやかったようです。今回スポットがあてられるのはあとから加わったルーシーがどのようにして本当の母親になっていくかということと、初めてあうグルーとドルーが兄弟としてうまくやっていけるかということ。こうやって書くとなんか普通にさわやかなファミリードラマみたいですなあ。

ただ前作の時点で既に問題となっていたことですが、グルーさんってやっぱり悪党の時の方が輝いてたし生き生きとしてるんですよね… 悪の誘惑にかられながらも「俺には家族が」とこらえるグルーさん。えらい! でもキャラとしては微妙! スタッフもその辺に限界を感じてるのでかつてのグルー的なドルー(ややこしい)というキャラを用意したのかもしれません。
新ライバルのバルタザールが主人公より断然個性的なのも問題です。彼はもともと世界的に有名な子役スターだったのですが、大きくなったらすっかり人気がなくなってしまい、世間を恨んでヴィランになってしまったという設定です。黄金時代であった80年代が忘れられず、その時代の音楽とファッションで華麗に悪事を働くバルタザール。なんて面白いやつなんだ… そういえば先の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でもふんだんに80年代オマージュがささげられていましたが、いまちょうどそのころ子供だった世代が映画産業の中心になってるということでしょうかね。

グルーさんの分の悪いところはまだあります。このシリーズいまやすっかり日本でも大人気になってしまいましたが、注目を集めているのは彼ではなく子分のミニオンたちだということです。グルー不在の『ミニオンズ』が大大ヒットをおさめてしまったことが、皮肉にもそれを証明してしまいました。『アナと雪の女王』を「アナ雪」と言うがごとく、本作品を「ミニオン」としか言わない一般の皆さん。とうとうTVCMまでタイトルコールのところで「怪盗グルーの」を省くようになってしまいました。なんてかわいそうなんだグルーさん…! ま、実際ミニオンたちの方が見ていて楽しいのだから仕方ないやね(あっ)

本作品にはミニオンの他にもいろいろかわいいものが出てきて癒されます。ドルーの島のブタさんたち、バルタザールの子分のロボット(声:宮野真守)、ユニコーンっぽいある動物など。三姉妹たち…特に末っ子のアグネスも相変わらずいい子でかわいいですね。声をあてていた芦田愛菜女史も7年の間に成長してしまい、さすがにかつてよりは大人っぽい声になってしまいました。バルタザールと違って立派な大人になってくれることを祈るばかりです。

Photo_2これで完結となるかと思った『怪盗グルー』シリーズですが、ちょいバレするとまだまだ続きが作れそうなENDでした。とりあえず次はスピンオフ第二弾である『ミニオンズ2』が3年後の2020年に予定されています。ますます薄くなるグルーさんの影… がんばれ!

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