August 28, 2022

2022年7月後半に観た映画

☆『炎のデス・ポリス』

『THE GREY』『コンティニュー』などのジョー・カーナハン監督作品。彼の映画が好きなのでただそれだけの理由で観ました。砂漠の孤立した刑務所にサイコ犯罪者が集結。モブの警官たちはサクサクやられてしまい、血の気の多い女子ポリスのみがほとんど独力で彼らと戦うことになります。サイコさんたちは比較的信用できそうな詐欺師(フランク・グリロ)、絶対信用できなさそうな殺し屋(ジェラルド・バトラー)、会話が成立しないサイコ中のサイコ(トビー・ハス←知らない人)の3名様。最後の一人は完璧に無理として、便宜上詐欺師と殺し屋のどちらかとは手を組まなきゃならない。だけど基本的にどっちにも勝ってもらっては困る… そんな『エイリアンVSプレデター』のようなジレンマが面白かったです。どっちかというと前作『コンティニュー』の方が好きだけど

 

☆『ミニオンズ・フィーバー』

ご存じ大人気シリーズ『怪盗グルー』スピンオフの第二弾。グルーと出会ったばかりのミニオンたちの活躍が描かれます。正直言うとスピンオフの方はグルーは切り離してミニオンだけのお話にしてほしかったような。前作『ミニオンズ』がそんな感じで滅法面白かったので。でもまあこれはこれで水準の面白さは保っておりました。どう見てもイーストウッドのような老ギャングとグルーの世代を越えた友情は微笑ましかったですし。

あとは70年代的なミュージックシーンとか、カトリックに怒られそうなエクソシスト・シスターとか、唐突に始まる燃えよドラゴンオマージュとか… 私は世代的にちょっと後ですけど、大人たちは当時を懐かしみながら観てもよいかも。最後のはっちゃけぶりも楽しませてもらいましたが、色々後発の『ソニック2』や『スーパーペット』とかぶってしまったのはなぜなんだろう。

 

☆『キングダムⅡ 遥かなる大地へ』

大ヒットコミックの映画版『キングダム』の続編。王宮の陰謀を阻止した奴隷の少年・信は、いよいよ大将軍への夢をかなえるため、初陣となる戦場へ赴くことになります。今回は原作の6~8巻あたりでしょうか。最初から最後まで秦と魏の合戦のみが描かれます。だから話としてはすごくわかりやすい。自分前作は年間2位にしたくらい好きな映画なんですが、それでも邦画にありがちな欠点…とにかくキャラが絶叫する等…が多かったことは否めません。ただ今度は広い平原で殺し合ってる話なので、むしろ絶叫してる方が自然だったり。そんなわけでややくどさが抑えられたような印象があります。あとやっぱり古代の戦車戦って滅多に見られないだけに燃えますね。『マッドマックス 怒りのデスロード』のオマージュ的なものも感じました。

特に好きなのは予告でも使われてた信とキョウカイの別れのシーン。かっこよく拳を突き出し合って決めるのかと思ったら…w そのあとキョウカイの笑顔がまたよかったです。

早くも来年第3作が公開予定。全編映画化するのは確実に無理なので、ドラマ化するか『ちはやふる』のように映画で独自に上手に終わらせるしかないと思います。

 

☆『神々の山嶺』

夢枕獏の小説を谷口ジロー氏が劇画化し、それをさらにフランスのスタッフがアニメ化した…というややこしい経緯のアニメ。小説の方は『エヴェレスト』の題で実写映画化されたこともありますね。伝説のアルピニストを追う雑誌ライターが、彼の足跡をたどるうちに共にエベレストを登ることになる…というストーリー。日本の70~80年代くらいの懐かしい街の景色がフランス風のお洒落なタッチで再現されていたのは、なにやら不思議な感覚でした。懐かしいのにどこが違う…みたいな印象。実際の70年代日本の映像にある、雑然として垢抜けないような空気が抜けちゃってるんですよね。それはそれでひとつの映像美として楽しみました。雄大な山々の風景に関してはただただ圧倒されるばかりでした。

で、この映画時々ホラー的な演出もチラチラ入るんですよね。それくらい登山には怖い一面もあるわけです。なぜそんな怖かったりしんどい思いをしてまである人たちは山に登りたがるのか。その結論を「わかんない」で〆ていたのは大変すがすがしかったです。

友を死なせた悔い」「極限へ挑戦」「次世代へ継承」そして「こういう生き方しかできない」という愚直な主人公像などは今大ヒット公開中の『トップガン マーヴェリック』にかなり近かったです。

 

☆『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者

1993年から続く『ジュラシック・パーク』シリーズの完結編(前にも1回終わってたけど)。恐竜が人間社会に出現するようになってしまった世界で、新旧三部作の登場人物たちが新たな陰謀に挑みます。以後、完全ネタバレなのでご了承ください。

このシリーズをきれいに終わりにするとしたら、「人類が恐竜に淘汰される」「恐竜がまた世界から姿を消す」「今度こそ完全に安全なジュラシックパークが建造される…」というあたりかと思うんですが、そのどれでもありませんでした(笑)新三部作の主人公たちが家族として結ばれた…というとこだけなんとなく完結編っぽかったです。

今回の作品に期待したのは我々の身近な都市部でいろんな恐竜が暴れる映像。前半のヴェロキラプトルとのチェイスシーンは見事にその期待に応えてくれましたが、後半に入ったらまたいつもの研究施設内で右往左往する流れになってしまい… ただ恐竜の活躍が見られる映画ってほぼほぼこのシリーズしかないので、それでも貴重といえば貴重なのです。

新三部作の製作も務めたコリン・トレボロウ監督は「これで僕の役割は終わり」と言ってますが、ジュラシックパークでも他の映画でもいいので数年に一度は恐竜をスクリーンで拝みたいところです。

 

次回は『劇場版 Gのレコンギスタ』『三谷かぶき 風雲児たち』『ソニック・ザ・ムービー2』『バッドマン』『がんばれ! スーパーペット』などについて書きます。

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December 29, 2021

第18回SGA屋漫画文化賞

とうとう18回を迎えたSGA屋漫画文化賞(どこの誰も読んでないというのに)。1回目の時に生まれた世代がもう高校卒業なわけですよ。ふううう… 気を取り直してまいりましょう。例によって賞金も賞品もありません。むしろわたしがほしい。では去年に引き続いて私を今年支えてくれた3作くらいから。

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☆スポーツ漫画部門 コージィ城倉(原案:ちばあきお)『プレイボール2』『キャプテン2』

今年完結を迎えた『プレイボール2』。甲子園への道が危うくなったクライマックスのあたりとか、読んでて具合が悪くなるくらいでした。で、これで谷口君ともまたお別れか…と感傷的になっていたら、なんと並行連載されてた『キャプテン2』に引き続き彼も登場するという超絶ギミック。アメコミとかならともかく、野球漫画では前例のないことでは。というわけで来年も期待してます。

 

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☆格闘漫画部門 丸山恭右 『TSYYOSHI 誰も勝てない、アイツには』

「なめてたコンビニ店員が史上最強の男だった」を地で行くこの漫画も第4部に突入。そのあまりの強さ故とうとう国家権力を敵に回してしまった川畑強。一個人では無敵でも絶対的な社会のシステムに対しその強さはどこまで通用するのか…? 納得のいかないことが多いこの世の中に川畑さんの必殺拳が炸裂することを願ってやみません。

 

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☆日常漫画部門:萩原天晴・上原求・新井和也 『1日外出録ハンチョウ』『上京生活録イチジョウ』

完結した『トネガワ』の後を受け新たに始まった『カイジ』スピンオフ新作が画像の『イチジョウ』。若いころなれない一人暮らしや都会での生活をした経験のある人なら「あるあるあるある」と言いたくなるネタが目白押しです。ただ楽しい反面おっさんが読むと、輝かしき青春時代を思い出してちょっぴり切なくなってしまうかも。それに対して『ハンチョウ』はひたすら癒ししかありません。ネタが尽きたらハンチョウの独特な視点で映画・マンガレビューなどしてほしいな…と思うわたくしでした。

 

続きまして今年に入って初めて読んだ4作品。

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☆アメコミ関連部門:宮川サトシ/後藤慶介 『ワンオペJOKER』

『デッドプールSAMURAI』や『スーパーマンVS飯』などゆるいアメコミ関連ジャパコミが目立った2021年。その中で1作選ぶならこれを。事情で赤子になってしまったブルース・ウェイン。自分の生きる目的を失ってしまったジョーカーは「なら俺がバットマンに育てりゃいいじゃん!」という発想の大回転をかまします。そんなアホらしい話でありながら1話に1回はほっこりするハートウォーミングな作品。それでいいのかジョーカー(面白いからいいです)

 

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☆人間ドラマ部門 和山やま『カラオケ行こ!』

『女の園の星』も人気の和山先生の1巻完結のコミック。そのコンパクトさがいいよね! 実はこれ『アメト―――ク』の「漫画芸人」特集でどなたかに7割方ストーリーをばらされてしまったのですが、そしたら結末が気になってしまい翌日書店で買ってきてしまいました。どう考えても接点のなさそうな二人のすれ違いドラマ、みたいなのが好きな人におすすめ。

 

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☆ギャグマンガ部門 酒井大輔 ゴリせん~パニックもので真っ先に死ぬタイプの体育教師~』

こういうタイトルになってますが本当にすぐ死んだら漫画は1話で終わってしまうわけで。普通なら瞬殺されてしまいそうな状況を異常な頑丈さで死亡フラグを叩き折っていく…という内容です。なぜか次々と怪物、宇宙人、殺し屋襲い来る学校で、己の教師人生を邁進しつづけるゴリせん(本名明らかになってたっけ?)。自分もこんな熱くてあったかい先生に教わりたかったな。

 

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☆時代・歴史漫画部門 松井優征 『逃げ上手の若君』

時は室町黎明期。南朝により滅ぼされた鎌倉幕府執権の遺児である北条時行は、諏訪神社の助力を得て足利尊氏らに戦いを挑む… 言うても主人公の特技は「逃げる」ことなので、それを武器にどうやって逆転するのか…というのがこの漫画のキモのひとつです。

あと天下の少年ジャンプでこんなマイナーな時代のマイナーな人物を扱うとは、それだけでも応援したくなります。幸い現時点ではそこそこ人気ある模様。打ち切りにならずに無事ちゃんとした完結まで行けますよう。まあわたし検索して時行君の生涯読んでしまったのですが、歴史を踏襲するのか改変してしまうのか。

 

こちらはマンガじゃないのですが

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☆漫画関連書籍部門 萩尾望都 『一度きりの大泉の話』

幻想コミックの大家萩尾望都先生が、若き頃交流してた竹宮恵子先生率いる「大泉サロン」を振り返った自伝。若き二人の天才の意気投合、切磋琢磨、そしてすれ違いは本当にドラマチックでございました。萩尾先生はこの本を「大泉での話を封印するために著した」とのことですが、これはかえってあのサロンの伝説性を高めてしまうのでは。駆け出しのころの萩尾先生のエピソードもひとつひとつが興味深かったです。

 

そして大賞です。

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☆大賞 みなもと太郎 『風雲児たち』『風雲児たち 幕末編』

今年は終盤に来てさいとう・たかを先生、白土三平先生、平田弘史先生といった巨星が次々とこの世を去られましたが、このロングシリーズ『風雲児たち』を描き続けておられたみなもと太郎先生もお亡くなりになってしまいました。

多くのピンチを乗り越えて明治維新の数年前までた来ていたこの作品、きっとまた先生と共に復活するであろうことを心待ちにしていたのですが… この緻密な歴史模様をギャグで表現するという手法、継承できる人を見つけるのは至難の業ではあると思います。しかし誰か先生の遺志を継いで、たどり着いたであろう結末までひっぱってくれることを切望いたします。そして微力ながら先生が残した多くの遺産を次世代に向けて語り継いでいきたいとおもっています。

 

少ししんみりしてしまいました。明日はこれまた恒例の映画ベストをまとめます。

 

 

 

 

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July 20, 2021

4~6月に観た個性的なアニメ映画について

忘れたころのブログ更新… 今回は春ごろに観たアニメ映画4作品についての備忘録であります。

 

☆『RED LINE』

10年前に作られたSFアニメ。そんなにメジャーでもないのに今回10周年記念上映などやっていたので「それほどのものなのか…」と思い観てきました。手短に紹介すると宇宙を舞台にした『チキチキマシーン猛レース』ですね。それに恋愛と友情と怪物と国家の陰謀と男の意地やらなんやらが絡んで大したてんこ盛り状態でした。

とはいえメインとなるのはあくまでレース。多少の物理法則は気合と勢いで全てふっとばす、迫力に満ちた作画と動きを堪能させてもらいました。このノリ、いかにもTRIGGERっぽいな…と思ったらやっぱりスタッフに今石洋之氏やすしお氏の名前がありました。というわけでプレTRIGGER的な作品としても楽しめるかも。

 

☆『JUNK HEAD』

日本ではめずらしいストップモーションアニメ。製作に7年を費やしたそうです。人類が生殖能力と引替に無限の寿命を得た世界で、一人の青年の秘境と化した地下世界での冒険が描かれます。ギレルモ・デル・トロやシュバンクマイエル、『エイリアン』に通じるグロセンスに加え、それらに独特なキュートな造形も混じっているところに強い個性を感じました。

万人に受ける作品じゃないと思うんですが「お好きな人にはたまらない」ものがあり、自分などはついつい3回も観に行ってしまいました。そういう一種の中毒性を有しております。

ちなみに3部作構想とのことで今回はお話の途中で突然ぶつっと終わります。続編を待望する一方でこのまま終わったらそれはそれで美しいかな、とも

 

☆『トゥルーノース』

フルCGスタイルで北朝鮮の強制収容所の実態を描いた異色の作品。なんで実写でやらんのか…と思いましたが、実際に収容所のセット作ったりたくさんの朝鮮系のモブキャストを集めるよりかはこの方が安上がりだったからかもしれません。

どうしても戦後まもなくっぽいような印象を受けてしまいますが、これ21世紀に入ってからの時代設定のようで。父が反政府活動を行っていたために地獄のような環境に放りこまれながらも、純粋さを失わず他の人のために行動する兄妹の姿に心打たれます。

完全な実話ではないものの、多くの人の証言を元に作られた映画だそうで。希望を捨てないことがテーマとなってはおりますが、彼の地で苦しんでいる人たちがいつか解放される時代は来るのだろうか…と重い気分にさせられました。

 

☆『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』

上半期最も楽しみにしていた作品のひとつ。日本を代表する大河アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの最新作です。

鑑賞前に原作を読んだとき「これ、映像というか娯楽にはむかない話だよなあ…」と思いましたが、原作にかなり忠実であるにもかかわらず絵の美麗さに圧倒されてしまって、気がついたら1時間半経ってしまいました。ガンダム=ロボアニメの方式というより京アニの文法で作られております。

監督がインタビューで「ロケハンに行けてないので2作目の進行が遅れている」とおっしゃってたのですが、ガンダムにロケハンって必要なのか??と思わずにはいられませんでしたw まあこれまでのシリーズはされおいて、『ハサウェイ』はそれが必要不可欠なスタイルで作られているということですね。ですから宇宙空間の未来未来した光景はごくわずかで、あとの背景は我々の世界とそんなに変わりが無く。唯一の違いはその世界に時々モビルスーツが大暴れすることです。

主人公がいわゆる「テロリスト」である点も思い切った要素のひとつです。主人公は純粋なんですがその過激な行動は「2.26事件」か日本赤軍のそれを連想させます。対する連邦政府は連邦政府で骨の髄まで腐敗しきっていたり。そんなどこにも正義のない戦いにひきながらも、いきいきとしたキャラクターたちの躍動に目を奪われてしまいました。

これまた3部作の1作目。できれば「衝撃の結末」は変えてほしいんですが、これを見た限り監督さんは原作どおりやる気満々のようです。む~~~ん…

 

次回は4,5月に見た作品でまだ感想を書いてない『21ブリッジ』『ジェントルメン』『ファーザー』などについて書く予定です(いつのことやら)

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December 24, 2020

第17回SGA屋漫画文化賞

2020年もあとわずか。本日は17年も続いてるのに誰も知らない漫画賞「SGA屋漫画文化賞」を開催します。例によって賞品も賞金もありません。むしろわたしがほしい。では参ります

 

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☆スポーツ漫画部門 コージィ城倉(原案:ちばあきお)『プレイボール2』

今年の「またか」案件その1。巨星ちばあきおの遺産を直球で引き継ぐこのシリーズも10巻目となりました。この巻ではいよいよ第1部ラストでケチョンケチョンに負けた谷原高校と公式戦にて相対することになります。果たして墨谷は甲子園に行けるのか… ってか、行かんでどうする。同時進行で連載されてる『キャプテン2』の単行本化も早くお願いします。

 

 

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☆アクション漫画部門 原泰久『キングダム』

今年の「またか」案件その2。長寿連載となったこの漫画も、ここに来て大きな節目を迎えます。宿敵であった龐煖との決着。そして主人公信にとうとう姓が与えられます。もしかしてやはりライバルである李牧が由来に関わってくるのかな?と予想してましたが全然違いました。中華統一まであとどれくらいかかるかなー

 

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☆恋愛漫画部門 をの ひなお『明日、私は誰かのカノジョ』

日がなスマホばかり見ていると広告につられて漫画を読み始めてしまうことがしばしばあります。これもそのうちの1作。正直自分には似つかわしくない作品ではありますが、恋愛と執着と商売のわかりやすそうでわかりにくい境界が非常に丁寧に描かれています。あとろくなオッサンが出てこないので反面教師として勉強させていただいてます。

 

 

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☆格闘漫画部門 丸山恭右 『TSYYOSHI 誰も勝てない、アイツには』

スマホ広告につられて読み始めた漫画その2。一見オタク風の冴えないコンビニ店員が、実は世界各国が垂涎して求める神にも等しい格闘者だった…というストーリー。第1部はほとんどギャグでしたが第2部に入ると彼をめぐって対決する選手たちの過去がどれも重苦しく、それだけに応援したい気持ちがたかまっていきます。そしてそれをただ傍観している主人公…というちょっと異様な状況。でもこれが何でかすごく面白い! 年明けから始まる第3部にも大いに期待してます。

 

 

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☆ドラマ漫画部門 吉田秋生『詩歌川百景』

一昨年堂々の完結を迎えた『海街diary』。海の次は山だ!とばかりに今度は山間の温泉街を舞台とした一人の青年の成長ドラマが描かれます。ドラマ言うてもお話の起伏はさらに淡々としていて、どこにでもあるような人々の哀歓が実につつましく綴られていきます。だけどこの静かさ、シンプルさが非常にいいんですよね… 人情の機微を描写することには定評のある吉田先生のひとつの到達点。

 

 

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☆SF漫画部門 松本直也『怪獣8号』

これまたウェブで話題を呼んでる作品ですが、ジャンププラスにて掲載された第1話からTwitterトレンドでバズリまくった異例中の異例とも言えるコミック。怪獣が災害として普通に跋扈する世界で、超常の力を手にしてしまった男の戦いと友情。恐らく『デビルマン』『寄生獣』「新劇の巨人』と続く「異形系」の系譜に連なる漫画でありながら、それらにありがちな暗いムードが(今のところは)ほとんどありません。『仮面ライダークウガ』や『パシフィック・リム』の影響も見受けられますが、ちゃんと自分の個性の中にそれらを落とし込んでるのが見事。間違いなくいま最も面白い漫画のひとつ!です!!

 

そして今年のベストワンであります。

 

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☆大賞 吾峠呼世晴 『鬼滅の刃』

まったく面白くもなくすこぶる順当な結果でありますが、大賞は2020年列島を騒がせまくったこの作品といたします。大正時代、母のように優しい主人公という少年漫画にしては異例の設定でありながら読む人を次々と虜にしていく魔性のコミックであります。

私自身も今年は鬼滅に踊らされた一年でありました。ほぼ年明けくらいに読み始め、あっという間に単行本を買いそろえ、五月に完結を目撃し、秋に映画に涙し、年末に最終巻をゲット…という。「漫画・本屋・紙の本はオワコン」という声が囁かれる中それらをバコーンとひっくり返してくれたのが誠に痛快でありました。願わくばこの作品をきっかけに本・漫画・書店の隆盛がもう少し続きますように。

 

 

今年は停滞しまくった当ブログですが、もう少ししたら恒例の映画ベストを書きます。誰にも求められてなくとも(笑) それをもって2020年の締めくくりといたします。

 

 

 

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February 03, 2020

年末アニメ祭り②白と黒の衝撃 『ひつじのショーン UFOパニック!』『羅小黒戦記』

Farmageddon_20200203204601 まだ年末の話が終わりません… 2019年はどん詰まりに来て年間ベスト級のアニメ映画が立て続けに公開されて大変困りました(いや、別に困ることはないか)。1本目は『ひつじのショーン UFOパニック!』。英国ののどかな農村を舞台にしたTVシリーズの劇場版第二作。今回はETよろしく地球にやってきた迷子のエイリアンをめぐって町全体…どころか宇宙規模の大騒動が巻き起こります。恐らく『ひつじのショーン』最大のスケールかと思われます。が、中心となるのはあくまでいつもの農場。このギャップがなんともいえません。

そして特筆すべきは前作 と同じように「フゴフゴ」「フガフガ」という意味不明語のみで1時間半押し通すこと。それでいてちゃんと話は通じるししかも面白い。これね、相当な離れ業ですよ… まあ正直言うと前半は「標準くらいの面白さだな」と思いながら観てました。ですが中盤くらいでさすがにこれは我らがショーンでもどうにも出来まい…という大惨事が生じてしまいます。しかしそれでも普通に解決しちゃうんですよね、ショーンは。一介のひつじであるのにおおよそ不可能なことはないという恐ろしいキャラクターです。でも本人?の頭にあるのは日々を楽しく過ごし、愉快な遊びを探すことだけという。こんな兄貴分いたらいいなあ…と思わずにはいられません。ひつじだけど。

もう1本の『羅小黒戦記』もかわいらしい姿なのに、実は無敵な小動物が主人公のアニメ。住処の森を追われた黒猫の妖精「小黒(シャオヘイ)」」が、人間界と妖精たちの争いに巻きこまれていくというストーリー。『平成狸合戦ぽんぽこ』に異能力バトルを混ぜ合わせたようなスタイルなのですが、この作品の魅力はなんといっても小黒のキュートなデザイン。特に猫好きにはハートを錐で突き刺すくらいの威力があります。だからもう小黒が悲しい声を出せば泣きたくなるし、嬉しそうにしてると鼻水が垂れ流れてきます。ただ先にも書いたようにこの小黒、かわいいだけでなく実はとんでもないパワーを秘めた言わば「神」に近い存在。だのに本人?はいたって無自覚というところもショーンに通じるものがあります。

この2本そんな風に似てるところもありますが、作品のベクトルは好対照です。『ひつじのショーン』はそれはもうすがすがしいくらいに、人を笑わせ、楽しませることを目的とした作品。観終わったあとそんなに心に残るものはないかもしれませんが、それはもう清々しく幸せな気分に包まれます。一方で『羅小黒戦記』はやはりエンターテインメントでありながら、現代中国の抱える問題をやんわりと風刺しております。お堅いかの国でもこういう映画が作られ、しかもそれがヒットしたというのは喜ばしきことですね。そしてこちらはこちらで鑑賞後ほっこりとした暖かい気持ちにさせられます。

個性と完成度の優れたこの2作品ですが、日本ではあまり注目を浴びなかったり上映館が少なかったりするのは残念なことです。配信・発売が開始されたら一人でも多くの人に見ていただきとうございます。また『羅小黒戦記』の方は阿佐ヶ谷の小さな映画館「ユジク阿佐ヶ谷」にて未だに満席のロングランを続行中。お近くにお住まいで興味をもたれた方はぜひスクリーンで小黒に会いに行ってみてください。

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January 28, 2020

年末アニメまつり①さよならは別れの言葉じゃなくて 『アナと雪の女王2』『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』

Olaf_getty まだ年末の話をします。昨年の暮れはそっち方面の注目作がいっぱいあったのでアニメ映画ばかり観ておりました。本日はその中の3本をほぼネタバレ大全開で語ってみます。

ひとつは今もなお大ヒット公開中の『アナと雪の女王2』。世界的、とりわけ日本で記録的興行を打ち立てた新時代のディズニープリンセス映画の続編。絆の力で試練を乗り越えた姉妹の前に、新たな危機が訪れます。

Sakuhin017589_1 ふたつめは『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。たれぱんだ、リラッくまなどで知られるサンエックスがまたしてもど派手にあてたかわいらしいキャラクターたちの劇場版。わたくし全然知らなかったのですが、ツイッターで「なんか映画版はすごいらしい」「まどか☆マギカを彷彿とさせる」という評判を読みつられて観にいっちゃいました。

5549_item01 みっつめは『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』。2010年に日本公開され、大人の事情で2作目が劇場スルーされたシリーズが奇跡的にスクリーンに帰ってきました。わたしの知る限りこんな例は他には『トリプルX』くらいしかありません。多くの冒険を繰り広げてきた少年と竜のコンビが、竜のハンターたちや移住問題と戦います。

この3本どれも楽しく鑑賞させてもらいました。で、気づいたのはどれも最後に「お別れ」が待ってるということでした。夏にやってた『トイ・ストーリー4』、昨年の『シュガーラッシュ・オンライン』もそうでした。そういえばわたしが子供のころなじんでた名作アニメにはそういう切ない話が多かったなあ。『銀河鉄道999』『ルパン三世 カリオストロの城』『ドラえもん のび太の恐竜』『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』などなど。ただ昔の作品の場合は「もう二度と会えない」的な胸にツーンとくるものが多かったのですが、最近のものは「会おうと思えばたまには会える」的なものが多いですね。

あとそれぞれのお別れも似てるところもあれば違うところもあり。『アナ雪2』の場合は「え!? そんなにあっさりでいいの!?」というくらい淡白でしたが、この作品と『ヒックとドラゴン』は「お互いの種族のために最善の道を選ぼう。離れていてもこころはひとつ」という感じでした。クリエイターとしては「いつまでも一緒にべったりだと共依存になってしまう。絆を保ちつつそれぞれ自立しなければいけない」ということを訴えたいのかなあ。ただ『ヒクドラ』1作目の結末が好きだった者としては「ずっとずっと隣にいたっていいじゃねえかよ!」と思ってしまうのでした。いいとしこいて独りもんだからでしょうか。

対して『すみっコぐらし』は「一緒にいたいのに生まれもった性質ゆえにそうできない」というハートがキリキリするようなものでした。小さなお子様も観るだろうになんと容赦ない… それはともかくメインキャラである「すみっコ」たちがほとんどしゃべらず、ナレーター二人の語りだけで進行していくスタイルはなかなか独特でした。

やっぱりなにもかもがハッピーエンドの作品よりは、切ないお別れ的な結末の方が心に残るものです。 だからといってそちらの方が優れているというわけでもなく… 結局おれは何が言いたいんだ! ふんがーー!!(飲酒中)

次は年末アニメ祭り後編として『ひつじのショーン UFOフィーバー!』『羅小黒戦記』について書きます。

 

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December 29, 2019

第16回SGA屋漫画文化賞

今年も残すところあと2日。誰も存在を知らないこの漫画賞の発表でございます。例によって賞品も賞金もありません。むしろ欲しい。では参ります。

Photo_20191229222601 ☆少年漫画部門:板垣巴留 『BEASTERS』

お友達の激押しに動かされて読んでみた作品。少年誌において動物が主人公の学園ドラマという恐ろしく挑戦的な内容。にも関わらず人気を博しアニメ化までされました。わたしゃまだ3巻までしか読んでませんが、高校生ながら優しくハードボイルド道を突き進むルゴシ君のキャラクターに惹かれます。

51rs9e4rd2l__sx345_bo1204203200_ ☆少女漫画部門:帳六郎 『千年狐』

中国の志怪小説集『捜神記』をベースに、妖怪と人間の交流をキュートに描いた作品。作者のモフモフ描写にはなみなみならぬものがあり、見ているだけでその柔らかさが手に伝わってくるようなタッチ。ギャグ調でありながら泣かせるところはしんみり泣かせてくれます。

91nsc3ncyul ☆青年漫画部門:原泰久  『キングダム』

もうこれはいまさら紹介するまでもありませんが、『プレイボール2』『ハンチョウ』と並んで今年も最も多く元気をもらった作品なので。年末ギリギリのところで大一番的な激闘が繰りひろげられ、大変ヤキモキハラハラさせられました。映画版も大ヒットしめでたいことであります。

9784065177259_w ☆中年漫画部門:萩原天晴・上原求・新井和也 『1日外出録ハンチョウ』

そういうわけでオヤジ部門は当然この作品です。というかこの漫画が終わるまでこの部門は自動的にこれが受賞する感じです。最新第7巻では「上野科学博回」と「筋肉自慢回」が特にツボでした。福本ワールド関連では『新・黒沢』も盛り上がりました。

Photo_20191229225801 ☆ギャグ漫画部門:野中英次・井野壱番 『クロマティ高校職員室』

なんとあの脱力ギャグの金字塔『クロマティ高校』が約13年の時を経て復活。作画こそ別の方ですがムードも面白さも全然変わって無くて嬉しくなっちゃいました。「続編だかスピンオフだか決めてないのでスピンオフ続編ということにしてください」とそんな投げやりなところもクロ高らしい。

Kvteaser3 ☆アニメ部門:今石洋之『プロメア』

2019年は国内だけでも意欲的なアニメ映画がいっぱい公開されましたが、わたし的ナンバー1はこれ。今石広之&中島かずきの『グレンラガン』コンビ最新作と来たらこれが燃えずにいられましょうか。堺雅人氏演じるクレイのぶち切れたシャウトは各界で絶賛を浴びました。

そして栄えある大賞は

565712w300☆『バットマン ディテクティブ・コミックス』

邦訳部門と合わせてダブル受賞です。今年はバットマンが「発明」されてからちょうど80年という大変記念すべき年でした。画像の「ディテクティブ・コミックスはそれにあわせた通算1000号。2019年は映画的にはさびしいバットマンでしたが、代わりに宿敵の作品『ジョーカー』が予想を覆して大ヒットしましたのでそれで良しとしておきましょう

明日は姪っ子たちが来る中隙を縫って映画ベストの記事を書きます。それをもって2019年のブログ締めといたします。

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October 30, 2019

北極点に進路を取れ レミ・シャイエ 『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』

こないだから子猫を引き取ってしまったので更新が滞りがちです… 今回は名だたる賞に輝きながら3年もの間日本未公開だったアニメ映画『ロングウェイ・ノース 地球のてっぺん』ご紹介します。

19世紀ロシア。北極点を目指して消息を断った探検家の祖父を追い、貴族の少女サーシャは北の海へ旅立つ。世間知らずの身ゆえ苦労を重ねながらも、サーシャはようやく目的を果たすための船と乗組員を手に入れる。だが行く手には荒海と極寒と氷壁が待ち受け、さらに果てない苦難が少女たちを襲うのだった。

まず帝政末期のロシアが舞台というのがアニメでは珍しい(他は『アナスタシア』くらい?)。ほんでもって制作はデンマークとフランス。丸っこいキャラデザと淡い色調は『ソング・オブ・ザ・シー』などで知られるトム・ムーア作品を思い出させます。あちらよりはまだ頭身が伸びやかではありますが。

映画を観る前はサーシャちゃんは根っからのお転婆娘なのかと予想していましたが、実際はかなり育ちのいいお姫様でございました。そんな箱入りのお嬢さんがおじいさんのために慣れない仕事をがんばってこなし、ついには荒くれどもも舌を巻く冒険家になっていくのですが、その成長ぶりにおじさんはただただ感心するばかりでした。

一方で男どもはどいつもこいつも問題児ばかり。一番人格者の船長さんでさえ堅物すぎるところがあるし、その弟は悪いやつじゃないんだけどチャランポランな野郎であります。サーシャを慕う下っ端の少年も肝心なところで彼女を責めたりします。でもまあダメンズたちもそれぞれに反省し、最後には一丸となって目的を果たそうとがんばる姿は微笑ましゅうございました。

児童文学と冒険小説を見事に融合させたようなそのストーリーはどこまでもまっすぐで、ひたすら気持ちがよかったです。これからロシア貴族たちは大変な時代を迎えるわけですが、サーシャさんならば気丈にその激動を乗り越えていけることでしょう。

このアニメは普通の映画館ではなく恵比寿の写真美術館というところで鑑賞いたしました。こちらとすぐ近くの恵比寿ガーデンシネマ、そして阿佐ヶ谷のユジク阿佐ヶ谷の3館はがんばって欧米の個性的なアニメを上映してくれてるので地方の身ながら感謝しております。『ロングウェイ・ノース』も写真美術館では公開が終わってしまいましたが、ユジク阿佐ヶ谷でひきつづき上映が決まっておりますので気になった方はそちらでごらんください。

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October 10, 2019

ベル・エポックを君と ミシェル・オスロ 『ディリリとパリの時間旅行』

『キリクと魔女』『アズールとアスマール』などで人気の高いフランスのアニメ作家ミシェル・オスロ氏の最新作。本日は19世紀末のヨーロッパで元気な女の子が冒険を繰り広げる『ディリリとパリの時間旅行』について書きます。

パリの万国博覧会で故郷を紹介するためにニューカレドニアからやってきた少女ディリリは、会場で郵便配達の少年オレルと知り合う。パリについてもっと知りたいと願うディリリは、オレルに頼んで町の様々なところを訪れ、数多くの研究者・芸術家と出会う。折りしもそのころ世間では少女の誘拐事件が続いていた。さらわれた女の子たちを助けるため、ディリリとオレルは犯人グループの所在を突き止めようと奮闘する。

オスロ監督といえば民話や昔話のアニメ化をずっとてがけておられましたが、今回は近代と現代の境目あたりの、かなりわたしたちに近い時代のお話となっております。「時間旅行」とありますがタイムマシンが出てくるわけではありません。21世紀のわたしたちをいわゆる「ベル・エポック」の時代に連れて行ってくれる、というわけでこのような邦題がついたものと思われます。キュリー夫人からピカソにプルースト、ロダンにギュスターブ・エッフェルなど、わたしでさえ知ってるような歴史上の偉人が次々と登場。まさに「石を投げれば有名人に当たる」状態。歴史ファンにはたまらないものがあるかと思われます。パリ万博が舞台で黒人の女の子が地元の少年とレトロな乗り物で追跡劇を展開するあたり、おっさんのアニメファンとしては『ふしぎの海のナディア』第一話を思い出したりしました。

「ヨーロッパのアニメだなあ」と強く感じたのはヒロイン・ディリリの奇抜なヘアスタイル(下画像参照)。当時のニューカレドニアの平均的な髪型だったのでしょうか。まるで幅広のリーゼントのようです。ただ一生懸命ぴょこぴょこ動いているディリリちゃんを見ているうちにかわいく見えてきました。大人にもはっきりと意見を述べる一方、誠実に向き合ってくれる人にはドレスの両端をつまんでおじぎする姿が大変キュートでした。レジェンドたちと対面するたびに「研究者になる!」「芸術家になる!」「発明家になる!」と触発されまくるのですけど、「君なら全部なれるよ…」と励ましてやりたくなりました。

そんないたいけな少女を狙う誘拐集団の目的・手段がなかなかにエグくて、この辺は正直ひきました… けれど過酷な仕打ちをうけながらもまっすぐなこころをうしなわないディリリちゃん。ますます応援したくなるのでした。

これまでのミシェル・オスロのスタイルを踏襲しながらも、さらに作り込まれた美術も堪能させていただきました。華やかなパリの街がきめ細かく精密に書き込まれていて、実写なのか絵なのかわからない背景も多々ありました。たぶん絵だと思うんだけど… またクライマックスで夜の街を滑空する飛行船の描写も息を呑むほどに美しゅうございました。

『ディリリとパリの時間旅行』はかれこれ一月ほど前に見たのですが、まだ今月下旬まで恵比寿ガーデンプレイスで上映中。その後もぽつぽつと各劇場を回るようです。今年は小規模ながら、『ロングウェイ・ノース』『アヴリルと奇妙な世界』『ブレッドウィナー』と勇ましい少女を主人公とした欧州アニメの公開が続いております。『ロングウェイ・ノース』も見てきたので近々レビューいたします。

あとどうでもいい話ですが、この映画見た日台風が関東を直撃して、家まで帰るのにけっこう苦労しました(笑) みなさん、明日からの大型台風にどうぞお気をつけくださいー

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August 20, 2019

傷だらけの… 新海誠 『天気の子』

『君の名は。』でジブリに匹敵するほどのブレイクを成し遂げた鬼才・新海誠。言うまでもありませんけど、その待望の新作が現在公開中であります。『天気の子』、紹介いたします。

わけあって離島から東京へ家出してきた少年・帆高。ネカフェ難民として苦しいくらしを続けた後、彼は怪しげなフリーライター須賀に拾われ、怪しげな都市伝説を調査する仕事を見つける。なんとか仕事も板についてきたころ、帆高はチンピラにつきまとわれていた少女陽菜と出会う。彼女はなんと帆高が取材の際うわさを聞いた「空を晴れさせる能力を持つ少女」だった。

前作のあまりの大ヒットぶりに置いてかれた元からのファンが、「おれたちの新海が帰ってきた!」と喜んでいる本作品。たしかに『君の名は。』よりも直情的というか、作家性が強く表れた映画となっていました。でもやっぱりこの二作で新海監督は大きく変わったと思うんですよね(自分はまだ未鑑賞作品もあるなんちゃって新海ファンですが)。以下にその理由を述べます。

以前の新海作品の主人公はすかした感じのかっこつけた少年がほとんどで、心の中はともかく表面上はエッチなことなど全く考えてないようでした。が、帆高くんと瀧くんは普通におっぱいに興味があるようです。そのことを指摘されて真っ赤になって否定するシーンもあったり。こんなにかっこ悪い姿を以前の新海作品の主人公が見せることはなかったように思います。

もうひとつは「ムー」です。まさか二作続けて新海さんがこの雑誌をキーアイテムとして用いて来ようとは夢にも思いませんでした。胡散臭さの点では東スポに匹敵する「ムー」(すいません)が恋愛ものの小道具として用いられた例は、わたしは他には『ぼくの地球を守って』しか知りません。ちなみに監督は地方の建設会社の御曹司で「ムー」の愛読者だったそうなので、キャラ的には『君の名は。』のテッシーに近いようです。

さらにもう一点ありますが、それは後に回します。

『天気の子』ではこの作品独自の要素も幾つかあります。新海作品といえばキラキラピカピカしたビジュアルが特徴ですが、本作品ではそれよりむしろ薄暗くドバドバ降り続く雨のシーンが多い。それでもかびくさい感じはせず、清潔感・透明感にあふれているのが彼らしいですけど。

あと貧乏描写もこれまでには観られなかった点です。前作でがっぽがっぽ稼いだはずなのに、なぜこれほどまでにジャンクなご飯描写が真にせまっているのでしょう。「貧乏」といえば、実は自分がこの映画にとりわけ感心をひかれたのは、懐かしの名テレビドラマ『傷だらけの天使』のオマージュなのでは?と思うところが幾つかあったからでした。まず『傷だらけ~』の舞台であった代々木会館がこちらでも重要な建物として登場します。また、主人公たちは無垢な人たちのために奮闘し、貧乏でありながら安い食べ物をおいしそうに食べ、明るい未来が全く見えない中でも懸命あがきつづける、そういう姿も通じるものがあります。さらに『傷だらけ~』のオサムと同じく『天気の子』の須賀には離れて暮らす幼い子供がいたり。明確なソースはございませんが、監督はけっこう意識してたのでは、と思い込んでおります。

『天気の子』は不思議な偶然というか、まさに今の時期にぴたりと合わせて公開されたような作品でもあります。ずっと長雨が続いてて、ようやく晴れたその日が公開日だったり、先の代々木会館が封切りからまもなくしてとうとう取り壊されたり。またこの映画の本当に直前に京都アニメーションの悲しい事件がありました。図らずもこの映画はその悲劇に対する鎮魂歌であり、亡くなった方たちの遺志を継ぐ決意表明となってしまった気がしてなりません。それなりに映画を観続けておりますが、こんなにも「時」に呼ばれてきたような例はちょっと記憶にありません。

以下は結末に触れてるのでご了承ください。

 

 

 

 

『君の名は。』以降で変わったな、と思った三つ目の点は、「ハッピーエンドに対するこだわり」です。前作も今作も物悲しい結末にしようと思えばいくらでもできたはずなのに、強引にベタなハッピーエンドに落とし込んでいます。でもそんな優しい新海監督の方が自分は好きです。ヒロインが『秒速5センチメートル』とおなじ「きっと大丈夫」というセリフをいうところに一抹の不安を感じないでもないですが…(あちらは全然大丈夫じゃなかったので…)

というわけで『天気の子』は予報通り現在大ヒット公開中です。前作には及ばないでしょうけど、おそらく本年度最高の売上を記録するのでは。今の時期は『トイストーリー4』『ライオンキング』『ワンピース』などもあり、ここ3年くらいで最も映画館に人があつまっている気がします。そんな盛況が嬉しいわたくしでございました。

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