第21回SGA屋漫画文化賞
この線香花火より存在感の薄い漫画賞、もう21回目なんですよね… なんというか、こう、アレですよね…
…
気を取り直していきましょう。仕事納めでヘロヘロで風呂入って酔っぱらいですが、がんばって書けるだけ書きたいと思います。
2024年わたしが読んで特に励まされた・感銘を受けた漫画作品に与えられる「SGA屋漫画文化賞」。例によって賞金も賞品もありません。
まずここ数年の間ずっとわたしの支えとなってくれている3作品をまとめて
●常連部門
☆萩原天晴・上原求・新井和也 『1日外出録ハンチョウ』
☆コージィ城倉(原案:ちばあきお)『キャプテン2』
☆丸山恭右 『TSYYOSHI 誰も勝てない、アイツには』
去年とまーーーーったく変わらないラインナップですね。今年も辛い時苦しい時癒しとなってくれてどうもありがとうございました。終わってしまったら確実に生きる気力が数%失われてしまうので、永遠に終わらないでほしい。つか、わたしが死んでから終わってください。
今年『キャプテン2』では実に『プレイボール』連載開始から51年かけてとうとう墨谷高校が甲子園出場を果たしました。本当におめでとうございます。
●ヒューマン部門
☆鍋倉夫 『路傍のフジイ』
旧Twitterというか現Xのプロモで流れてきて、つい気になって全話読んでしまった作品。主人公フジイ君は多くの人から「つまらないやつ」と思われております。自分もつい誰かのことを「退屈な人だ」と思ってしまうことがあります。でもそれはその人のいいところがわかってないだけでは? そして自分はそんなことが言えるほど面白い人間なのか? そもそも人の真の価値は「面白い・つまらない」で測れるものなのか…とこの漫画を読んでると色々考えてしまいます。ことしを代表するクリエイターである横槍メンゴ先生・吉田恵里香先生も絶賛されてました。
●グルメ部門
☆久部緑郎・河合単 『らーめん再遊記』
わたしこのシリーズの前作である『らーめん才遊記』も全部読んだですが、そちらは本当に良くも悪くも「ふつーに面白い漫画」という印象でした。ところが続編のこの作品は明らかに前作よりもべら棒に面白い。それはたぶん自分がゆとりちゃんのように夢や希望にあふれたキラキラした若者ではなく、今作の主人公芹沢のような少し人生に疲れたおっさんだから…だと思います。彼のような才能や人脈はないですけれど(髪はある)。ねじりん棒のようにひねくれまくった芹沢が縁もゆかりもなかった人たちとつかの間触れ合い、ささやかな笑顔と共に別れていく。そんなストーリー構成はまさしくラーメン・ハードボイルドと言えるかもしれません。
●スポーツ部門
☆蒼井ミハル 『クレイジーラン』
『明日私は誰かのカノジョ』が終了し、『TSUYOSHI』くらいしか読むものがないな…と思っていた「サイコミ」で突然グン!と存在感を増してきた陸上漫画。陸上ってそもそも漫画の題材にするのが難しそうなスポーツ(思い浮かぶのが『スプリンター』と『奈緒子』くらいしかない)ですが、団体競技である「駅伝」にスポットをあてることによって一癖も二癖もあるキャラたちの群像劇として『ちはやふる』や『帯をギュッとね!』みたいな痛快作に仕上がってます。どっちかというとずっとギャグ>燃えみたいなムードでしたが、最新エピソードである競技大会のくだりは嘘のような盛り上がりというか燃え上がりを見せてくれました。経験者による解説もいちいち興味深いです。
●新星部門
☆葉月セン 『一月の白魔』
このブログも旧Twitterもそれなりに長くやっておりますが、フォロイーさんが連載を始められて単行本が世に出る…という体験をしたのは初めてでございました。
太宰治を彷彿とさせるペシミスティックな世界観と、柔らかく繊細、かつスッと突き刺さりそうな画風が見事にマッチ。つぶやきのひょうひょうとした先生の人柄からは想像もつかない人間の暗部がまざまざと描き出されていて、それがまた意外すぎて興味深い。この辺ちょっと山岸涼子先生と似たところも感じられました。
寒い夜コタツでぬくぬくしながら、しんしんとした恐怖を味わいなおしたい1作でございます。
●アニメ部門
☆大張正己 『勇気爆発バーンブレイバーン』
今年は年明けからこいつのインパクトに思いっきりやられてしまい、そして結局この衝撃を越えるアニメがなかったというね… さんざん視聴者を当惑させておきながら1クールですっぱり終わり、我々を置いてけぼりにしていったひどい作品でございました。でも勇気をありがとう、イサミ。そしてブレイバーン。バンバンババンバババババババ ブレイバー―――――ーン!!! (間奏) この星の嘆く声を聞(略)
●大賞
☆芥見下々 『呪術廻戦』
『僕のヒーローアカデミア』『推しの子』とメガヒット作が次々と完結していった2024年。異論はありましょうが、その中で一番見事なクライマックスを描ききったのが本作品かと思います。絶対的な拠り所であった師匠の死→絶望的な状況から綱渡り的に繰り出される「奥の手」の数々→「最強」を手に入れながら「最悪の敵」に慈悲を忘れない主人公… といった大河バトルのお手本のような幕引きでした。この漫画は『鬼滅』と違ってまた続編なりスピンオフなど作れそうですけどね。
それにしてもこう次々とビッグタイトルが終了してしまうと、今後の漫画界の隆盛がちと心配です。次なる人気作が生まれればいい話ですが、空いた穴がちょっと大きいなあ…
ネガティブな締めになってしまいましたが、来年もまた良い漫画に巡り合えますように~
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