鎌倉四姉妹の逆襲 吉田秋生 『海街diary』
『BANANA FISH』や現在劇場版公開中の『櫻の園』で知られる吉田秋生先生の最新作。さきごろ文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したそうです。うひょー
鎌倉に姉妹たちだけ住んでいる幸、佳乃、千佳のもとに、ある日消息がわからなくなっていた父の訃報が届いた。父に対し強いわだかまりを抱いていた幸は、佳乃と千佳の二人だけで、葬儀に出てくるように申し渡す。
観光気分でその場所へ赴いていった二人を待っていたのは、腹違いの妹であるすずだった。その後結局やってきた幸はすずと話をするうちに、彼女に「一緒に住まない?」ともちかける。
この作品、実は先に描かれた『ラヴァーズ・キス』と世界観を共にしています。舞台も鎌倉だし、『ラヴァーズ・キス』に登場した人物がチラホラ顔を出していたりします。ただ素直に「続編」といいがたいのは、まず『ラヴァーズ~』の約一年前から始まっている「前日譚」であるがゆえ。あの話は発表された当事はまちがいなくその時の「現代」・・・・・90年代半ばが舞台だったと思うのですが、『海街』もまた今の「現代」を舞台としているので、その辺頭を柔らかくする必要があるでしょう。
さらに登場人物の顔も微妙に違っていて、両作品の重要人物である藤井朋章くんなどは

こんなに顔が変わっています(まあわたしの絵も微妙に似てないですけど
)
ま、吉田先生の10年間の絵柄の変遷を確かめるために読み比べてみるのも面白いかもしれません。
さて、お話は初めこそ奔放な次女・佳乃の目線で進められていきますが、次第に四女のすずを中心とした話が増えていきます。すずちゃんが新しい街で出会う人々や、その哀歓が少女らしいみずみずしい感性を通して語られます。この「子供の目を通して」というのが、わたしが特に魅かれるあたりです。これまで専ら大人メインで、ゲイレイプさえ
描いていた吉田先生が、こんなほのぼのした心温まる話を作れるなんて! つくづく奥の深いお方であります。
「『BANANA FISH』は『日出処の天子』の影響下に描かれた作品であり、ひいては吉田秋生も山岸涼子から深い影響を受けている」というのがわたしの前からの持論であります(あんまし賛同してもらえないけどね・・・)。
で、この『海街diary』にも少し前紹介した『舞姫テレプシコーラ』と重なるところが幾つかありまして。
いや、今回は意識したというより、なんとなくかぶっちゃったんだろーなーとは思うんですが、少年少女が共にスポーツ?に励む話であり、その内の一人が片足に深刻な障害を抱え、「死を考えた」なんてセリフが出てくると、どうしても『舞姫~』を連想してしまうのですよ。つい最近読んだばっかりということもありますが。
もっとも吉田先生と山岸先生では扱う材料は一緒でも、調理の仕方はかなり違います。吉田先生が絵もお話もカラリとしているのに比べ、山岸先生の方はゆらゆらとした情念が漂ってくるような、そんな感じ。そうした作家性の違いがまた興味深かったりします。
わたしは映画も漫画も好きです。言うまでもないことですが、両方にそれぞれいいところがあるわけです。で、漫画の利点というのは「気に入った絵を、いつまでもじっと眺めていられる」ところにあると思います。映画じゃ「あ、ちょっと待って!」と思ってもさーっとフィルムは流れて行っちゃいますからね
。かといってビデオ機器で一時停止するのも、なんか無粋な気がしますし。
で、特にそれを感じたのが二巻最後のエピソードのあるシーン。幸とすずが、カレーを作りながら話している場面です。父が鎌倉の家を出て行ったことを、自分の母のせいだと考えたすずは、幸に泣きながら「ごめんなさい」と謝ります。自分が知らず知らずのうちに妹を傷つけていたことを知った幸もまた、「ごめんね」とつぶやいてすずの肩に手を回します。そして二人の背中に「ただいまーっ ホタテなかったからアサリにしたよー」「あとアイス買ってきたー」と佳乃と千佳の声がかぶさる。この場面が、まるで時間が止まったかのように見えて、なんとも言えず美しい。まさに「漫画を読み続けていて良かった」。そんな風に思える場面です。
さらに登場人物がどいつもこいつも撫で繰り回したくなるような、いいヤツばっかしでして。一人一人がわたしたちと同じ平凡な人間でありながら、深い悲しみを抱え(サッカー小僧二人は別。あとチカちゃんも)、それでも笑いながら生きている。そんなところが胸を打つ『海街diary』。そろそろ時系列的に『ラヴァーズ・キス』に追いつきそうな感じです。朋章くんが里伽子と仲良くしているところを見て、佳乃さんがズーンと落ち込むとか、そんな話がなければいいんだけど。
『海街diary』は現在一巻「蝉時雨がやむ頃」と二巻「真昼の月」が、それぞれ小学館フラワーズコミックス(普通のよりちょい大版)より発売中。そんで「月刊フラワーズ」にて不定期連載中。
この進行の遅さがいいような、じれったいような・・・
























































