March 04, 2019

死んだはずだよ王子様 谷口悟朗 『コードギアス 復活のルルーシュ』

一昨年からひっぱり続けて来た『コードギアス』リファインプロジェクトもいよいよ大詰め。待望の完全新作の公開とあいなりました。『コードギアス 復活のルルーシュ』ご紹介します。ついでにこれまで書いた総集編の感想を貼っておきます。
☆第一部 興道
☆第二部 叛道
☆第三部 皇道

悪虐皇帝ルルーシュの死により世界に平和がもたらされてから2年。復興の立役者である仮面の男・ゼロとブリタニア皇女のナナリーが、中東の小国ジルクスタンで何者かにより拉致されるという事件が起きる。かつてゼロの下で活躍した凄腕の戦士カレンは、事件解決のためジルクスタンに潜入。彼女はそこで思いもよらない人物と再会する。

…とぼやかして書きましたが、タイトルで既にばれちゃってますね。TVシリーズ終了時必死になってルルーシュが生きているヒントを探してみましたが、どっかで谷口監督の「確実に死なせた」という発言を読んでがっくりきたものでした。監督のうそつき!
それはともかく今回の映画、一言でいうと「よく出来た同窓会」という感じでした。あのキャラ、このキャラ、生き残った連中はみなそれぞれに成長し今の生活を楽しんでいる。その辺の様子を眺められてだいぶほっこりいたしました。激しく憎しみ合って命のやり取りをしてた者同士がテーブルを囲んで談笑してるあたりは「おや?」と思わんでもなかったですが、現実には難しい話ことに虚構の中ならばこういう和解があってもいいじゃないか…と考え直しました。

そしてまさかのルルーシュ復活に狂喜する面々の姿は、ずっとこのシリーズを追っかけてきたファンの心情そのまんまだなあと。こいつ、けっこうとんでもないこといっぱいやらかしてる少年ではあるんですけどね~

作者が若気の至りでやりすぎてしまった悲惨な結末を、年を重ねてから懺悔のように改変する例って時々ありますよね。永井豪先生の『デビルマン』、富野由悠季氏の『Zガンダム』、庵野秀明氏の『エヴァンゲリオン』… あ、こんなもんか。ネットで数年後に付けたしのような動画がUPされた『エウレカセブンAO』のような例もあります。それらはショッキングだったから歴史に残ったということもありますし、穏やかに作り直すことはかつてのテーマを否定することにもなりかねないのですが、自分のようにぬるい人間は昔のトラウマがいやされるようでこういうのけっこう好きです。あと谷口監督は若気の至りというより一応計算ずくであのラストに持っていったと思うのでけど、それでもいくばくかの迷いがあったのでしょうね。なんにせよこういう風にオリジナルに沿った形で結末を作り直せるというのは人気作だけに許される特権だなあと。

で、ここからまた再び長い物語が始まるのかと思いきや見事に収束してしまった『コードギアス』。まあまたえんえんと追いかけるのも大変なのでそれもいいかという気もしますが、やっぱりせっかく再度ここまで盛り上げたのにもったいないんじゃないでしょうか。ラストシーンから察するに今度はルルーシュに代わる次世代の主人公が登場する…という展開も予想できますが。続きを作るならできるだけキャラを不幸にしない方向でよろしくお願いしますね!(無理)

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January 09, 2019

ワイスピバトルでつかまえて リッチ・ムーア/フィル・ジョンストン 『シュガー・ラッシュ:オンライン』

世界を制覇せんばかりの勢いで次々と力作を贈り続けるディズニー帝国。その最新作は5年前TVゲームを題材にして好評を博したあの映画の続編です。『シュガーラッシュ オンライン』ご紹介いたします。前作の紹介はこちら

前作での出会いと冒険からしばらく後。壊し屋のラルフとレーサーのヴァネロぺはますます仲良しになり、二人は毎晩ゲームセンターの色々な機械に潜り込んで楽しい日々を過ごしていた。だがいつしかヴァネロぺは決められたコースを走ることに退屈を覚えるようになる。そんな彼女のためにラルフは強引に新コースをこしらえるのだが、そのことがきっかけでヴァネロぺのゲーム「シュガーラッシュ」はクラッシュしてしまう。二人は店主が新たに備え付けたWifiを利用して、ネットの世界でゲーム機を修理する方法を探すのだが…

というわけで今回の舞台はインターネット。「物質でない世界を可視化する」という試みはピクサーの『インサイド・ヘッド』でも行われておりました。あちらはあちらですごかったですが、やはりオタクにとっては様々な見知ったキャラがうろつきまわってるこちらの方が楽しい。また普段利用してるあのサービスやSNSがいかにもといった形で表現されていていちいち舌を巻かされました。「どんなに人気を得ようとしても、結局は猫動画がトップ」とかね(笑)

相変わらずのゲームパロディにも爆笑させられました。ディズニーのプリンセスがグランド・セフト・オートのようなバイオレンスゲームに迷い込んだらどうなるか… これがけっこうそれなりに自然に溶け込んでたりして。予告でうざいくらい流されてた「大きな男の人に幸せにしてもらった?」というアレですが、「現代のお姫様は男に頼らなくたって十分活躍できる」ことへの逆説的なギャグだったようです。

さて、以下は結末までネタバレで。

そんなわけで一見にぎやかで愉快そうに見える『シュガーラッシュ オンライン』ですけど、芯の部分は題名とは裏腹に相当ビターでございました。ラルフとヴァネロぺの関係はいろんなものに重ねあわせることができるかと思いますが、自分はやはり「親友」という言葉が一番しっくり来ると思います。その無二の親友が自分とは違うことを望んでいたら?というお話なんですね。このままの安定を望むラルフ。新しい世界へ旅立つことを願うヴァネロぺ。どちらも決して悪いわけじゃないのだけど、ずっと一緒にいることはどちらかに無理を強いることになってしまうわけです。こういうのって現実にも実際にありそうな例ですよね。

で、こういう時つらいのはより深く相手に依存してる方。要するにラルフです。元嫌われ者でかわいくもないおっさんが奇跡的にプリンセスとお友達になれたのですから、そりゃべったりになるのは当たり前でしょう。だけど本当に親友ならさびしくても相手の望みを優先してあげなくてはなりません。そこでトチ狂って親友に執着しすぎると、それこそ友情がぶちこわしになってしまいます。いまなら友達が遠くに行ってしまっても、それこそオンラインでいろいろ使えるサービスもあるわけですし。
…とえらそげに書いてみましたし、それが正しいことは十分わかっているのですが、ラルフの身になって考えるとさびしすぎるしつらすぎる。それでも男は(女も?)耐えなくちゃいけない。こんなシビアな現実をつきつけてくれるとはにくい… にくいぜディズニー…!! エピローグでの様々な悪ふざけはこのさびしさをまぎらわそうという狙いだったのかもしれませんが、全然中和されてねーから!! 思えば1作目も「どんなになりたくてもなれないものがある」というきついテーマだったしなあ~ ここ最近のディズニーの定番であった「一見親切そうな人が黒幕」というパターンから脱却したところは評価しておりますけど。

こんなほろ苦いお話、子供たちにうけるんかいな、と思いましたが、カラフルな世界を愉快なキャラが駆け回るだけで十分楽しめるのか、本作品は日本では公開から3週連続のトップを飾っております。こうなるともう売れたもの勝ちでしょう。いろいろ申しましたが大傑作なことには間違いないと思います。

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December 29, 2018

第15回SGA屋漫画文化賞

2018年もあと2日とちょっと。恒例の漫画ベストと映画ベストをもって〆たいと思います。本日は漫画ベストの方を。第15回SGA屋漫画文化賞参ります。賞金も賞品もありません。むしろくれ。

2018c1☆少年漫画部門:ゆうきまさみ 『究極超人あ~る』

リアル中二のころ夢中になったあ~る君が30年ぶりに帰ってきたとあったら、そりゃ受賞させないわけにはいかないでしょう。
それにしてもあ~る君も登坂先輩もほんと変わんないねえ。その辺に安心したり、自分だけがオヤジになってしまったことがちょっとさびしかったり、
ゆうき先生、またちょこちょこ読みきりで続き描いてくださいねー


2018c2☆少女漫画部門:吉田秋生 『海街diary』

二年連続受賞であります。理由は他の少女漫画をほとんど読んでないのと、12年に渡る連載がめでたく完結されたので。
いやあ、すげえあっさり終わりましたが、それがかえってよかった。あと巻末の番外編的な短編「弟」も胸にしみじみと沁みいるお話でした。
吉田先生はもう1作鎌倉を舞台にした作品を構想されてるそうで、そちらも期待してます。


2018c3青年漫画部門:ちばあきお・コージィ城倉 『プレイボール2』

昨年は少年漫画部門でしたが、今年はこちらで。
ついに始まった谷口君最後の夏大会。今年もっとも続きが楽しみだった漫画。
「ちば野球漫画」を忠実に再現しながらも、現代的な見方も取り入れてあるのが興味深いです。

青年系では他には『キングダム』『ゴールデンカムイ』『銀河英雄伝説』といったヤンジャン系が相変わらず熱いです。


2018c4☆中年漫画部門:原作:萩原天晴・漫画:上原求、新井和也・協力:福本伸行 『1日外出録ハンチョウ』 

これまた2年連続受賞。今年も辛いとき悲しいとき、わたしのささえとなってくれたのはこの漫画の「いかに物事を楽しむか・いかに楽しみを見つけるか」というスピリッツでした。ああもう、大槻さん抱いて…!!
オヤジ系漫画ではやはり福本関連の『新・黒沢』が熱い展開になってきております。あとここ数年楽しみにしてた『銀牙 THE LAST WARS』が終わってしまってちょっぴりショック。


2018c5☆その他部門:矢部太郎 『大家さんと僕』

芸人が描いた漫画が手塚治虫文化賞とはなにごとじゃーーーーーい!! と斜に構えた姿勢で読み始めましたが、最後まで目を通して納得…というか降参いたしました。
大家さんと矢部さんのコンビは『こぐまのケーキ屋さん』の店長&店員さんとよく似ています。大家さんが強風にさらわれそうになるとこなんか特に。

その他系では安達哲先生の『総天然色バカ姉弟』の新刊が出たのもよかったっす。


2018c6☆邦訳部門:ピーター・J・トマシ, ホルヘ・ヒメネス 『スーパーサンズ』


スーパーマンの息子ジョンとバットマンの息子ダミアン。何から何まで対照的な二人が角突き合わせながら繰り広げる冒険コメディ。それをサポートする二人の父ヒーローのやり取りがまた面白い。
今年読んだ邦訳アメコミは他に『バットマン:ザ・ラストエピソード』『バットマン/フラッシュ ザ・ボタン』『バットマン メタル・プレリュード』など。バットマン関連ばっかりじゃー


2018c7☆アニメ部門:雨宮哲 『SSSS.GRIDMAN』

25年前ごくごく一部で人気を博した特撮ヒーロー『電光超人グリッドマン』が、平成も終わろうといういまこの時にアニメになって帰ってきた…!
このアニメは何を語ろうともネタバレになってしまうので、興味ある方はさっさとネトフリに入ってごらんください…! 『ウルトラマンネクサス』『仮面ライダーW』などを手がけてこられた長谷川圭一先生の最高傑作であります。

アニメでは他に超珍作の『ポプテピピック』やあの名作のリメイク『デビルマンcry baby』が印象に残っております。


2018c8☆大賞:徳丸正弘 『もっこり半兵衛』

下ネタ漫画を得意としておられた徳丸先生がギャグセンスはそのままに江戸の人々の情愛や哀感を高らかに歌い上げた傑作時代劇漫画。
特に2巻冒頭の「伊助の武芸指南」が大変素晴らしく、シンプルながら交わされる会話の一つ一つが力強くかつ切ないエピソードでした。思い出しただけでも鼻水が垂れ流れます… チンコネタが苦手でなければ自信を持っておすすめいたします。

本年もいっぱい面白い漫画に出会えて感謝。来年も積極的に面白き漫画を発掘していきたい所存にございます。では。


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December 25, 2018

ニュータイプの涅槃が見られるか 富野由悠季・福井晴敏・吉沢俊一 『機動戦士ガンダムNT』

そういえば『00』が終わってからめっきりガンダムについて書かなくなってしまいましたが、今でも自分は普通にガンダムが好きです。『UC』や『鉄血のオルフェンズ』もかなりはまって観てましたし… そのガンダムの映画が微妙な距離(車で1時間半)の劇場でかかると知り、年末の忙しい時期マイカーを飛ばして観に行ってまいりました。『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』ご紹介いたします。

地球の支配階級と宇宙に移民させられた人たちの対立がつづく近未来。度重なる戦火や極限状況はやがて一部の人間を新たなる種「ニュータイプ」へと進化させていく。そしてそのニュータイプの精神に感応して動くマシン「サイコフレーム」は超常の現象まで引き起こし、世界を震撼させる。奇跡を呼び起こした機体「ユニコーンガンダム3号機フェネクス」の力を手に入れるべく争奪戦を繰り広げる各勢力。その中にはフェネクスのパイロット・リタと幼少時を共に過ごしたヨナ・バシュタとミシェル・ルオもいた。

「ナラティブ(NARRATIVE)」とは「物語」「神話」という意味があるそうで。副題の「NT」はそれと、宇宙世紀ガンダムの重要なキーワード「ニュータイプ」をひっかけてるものと思われます。

で、この度の新作、やはり原作を福井晴敏氏が手掛けた『UC』の後日談的な意味合いが強く、補完能力の強い方ならいきなりこれを観ても大丈夫でしょうけど、できたら『UC』を先に観てから臨んだほうがよいかもしれませんん。他にも『Z』や『逆襲のシャア』などからの引用もいろいろあり、宇宙世紀ガンダムを知ってれば知ってるほど楽しめる作りになっております。

それほどまでにガンダムを愛している福井氏ですが、宇宙世紀の創始者富野由悠季監督とは違う独自の道を歩み始めている気もします。まず富野監督との大きな違いのひとつはセリフが普通によくつながってる(笑) 富野監督のセリフ回しって会話になってんだかなってないんだかよくわかんない感じですしね… それがひとつの味でもあるんですけど。もうひとつは大人たちが概ねちゃんとしているということ。『NT』では子供を人体実験するひどい大人も出てきますが、『UC』と同じく主人公を心配して健全な道を歩ませようとしている大人たちもちゃんといます。富野作品では若者と一緒にフラフラしてる大人が多かったからなあ。

そして富野監督が見切りをつけた「ニュータイプ」について蒸し返してる…じゃなくて、もう一度ちゃんと取り組もうとしてる点。御大は途中で「人類の進化が明るい未来をもたらす」というテーマに行き詰まりを感じてしまったのか、『F91』以降は前面に出さなくなってしまいました。しかし初代ガンダムから付き合ってる我々としては、やはり宇宙世紀ガンダムにはこの要素がないと物足りなく感じてしまいます。

ちなみにニュータイプの能力についてどんなだったか振り返ってみると、初代のころは「人一倍勘がいい」くらいのものだったと思います。それが『Z』『ZZ』になるとモビルスーツに半端ない出力を放出させたり、死者の精神を呼び寄せたりすることもできるようになりました(笑) そして『UC』に至るとサイコフレームの力もあって、神に近い存在にまでなり、周囲一帯の艦隊を無効化することさえ可能になりました。まさにニュータイプ能力のインフレ化が止まらないような状態になっております。
今回の『NT』では、「ニュータイプなら肉体が滅んでも精神だけ永遠に存在できるのでは」というところにスポットがあてられています。なんかかつて『銀河鉄道999』でも問われたような問題ですね(なつかしいなあ)。福井さんはその危険性と希望の両方を説き、結局「どっちやねん」という状態で幕を引きます。ずるいですね! 

なんかいろいろdisってるような文章になってしまいましたが、主人公3人の哀れな境遇や強い絆にはけっこう鼻水垂らしてたりしてました。自分、なんだかんだ言って福井節にはかなり弱いもので… そういえば超能力を持つゆえに虐げられる子供たち、というモチーフは『終戦のローレライ』にもあったなあ。あれも『Zガンダム』の「強化人間」にインスパイアされたアイデアだったんですかね。
メカ戦においてもいっぱいサービスしていただきました。懐かしのディジェにはじまり、着たり脱いだりと忙しいナラティブガンダム、ラスボス感たっぷりのセカンドネジオングに、ユニコーンガンダム1号機にも増して神がかってるフェネクスとキャラ立ちまくりのモビルスーツ群がスクリーンを彩ります。

さて、このままニュータイプの影響力が強まると時代的に後に位置する『F91』とはつながらなくなりそうですが、サンライズ的にはその辺どう処理するのか? その答えは来年から始まる『閃光のハサウェイ』3部作で知ることが出来そうです。『Zガンダム』以上に暗いと言われるこの作品、果たして我々の胃は耐えられるのか… た、楽しみですね!

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December 11, 2018

闇肉街で生きる ギョーム・“RUN”・ルナール/西見祥示郎 『ムタフカズ-MUTAFUKAZ-』

Mfk1日本製アニメとしてはかなり異彩を放っていた『鉄コン筋クリート』。そのスタッフがまたなかなかヘンテコそうな作品をこしらえたので先日観てきました。『ムタフカズ』、ご紹介します。

掃き溜めのような街「ダーク・ミート・シティ」で親友ヴィンスと暮らす青年アンジェリーノ(リノ)は、不真面目ではないのだが不幸を呼ぶ体質らしく、どんな仕事もすぐ首になってしまう。ある日ピザの配達中女の子に見とれていたリノは車と激突。怪我は大したことなかったが、それ以来彼は人に化けて街に潜んでいる怪物たちを見分けられるようになってしまう。

と書くとそれほど珍しくもないSFジュブナイルのようですが、変わっているのはメインとなるリノとその二人の友人も外見的には人間でないところ。リノは多少かわいらしいヴェノムのようですし(上画像参照)、ヴィンスは燃える骸骨(中画像参照・ゴーストライダーかよ!)、ウィリーはどうやらコウモリっぽいのですが翼もないし謎の生き物としかいいようがありません(下画像参照)。Mfk2ですが町の人々は彼らを見ても別段驚きません。ドラえもんやオバQが歩いていてもあの世界では普通に受け入れられてるような、そんな感覚なのかもしれません。ちなみに「ムタフカズ」とはヒスパニック系ギャングのスラングだそうで、人間ではないっぽいですが、ルチャ・リブレとナチョスを愛好してるのを見ると彼らも一応メキシコ系の若者のようです。

そんなゆるキャラのような3人が宇宙人の陰謀に巻き込まれ、ギャングたちの抗争にも関係し、ルチャ・リブレの神話にも関わったり、若者らしい恋や友情のドラマもあり…はっきり言ってかなり詰め込みすぎです。にもかかわらずあんまりそれがうっとおしく感じられなかったのは、ひとえにポップな美術背景とそのゴチャゴチャ感がマッチしてたからでしょうか。フランスの作家がメキシコ系アメリカ人を描き、日本人スタッフが映像化という多国籍な製作環境もいい感じのごった煮感に貢献しております。あと相当バカバカしい話でありながらリノやヴィンスの友を思う気持ちにはホロリとさせられました。

Mfk3自分がなんとなく気にいってしまったのは謎の生き物のウィリー。うるさいし小ずるいしブサイクなデザインなんですが、どうしてかかわいそうな目にあってるともらい泣きしそうになってしまいました。声を演じるは『花筐』での好演が印象的だった満島真之介氏。あちらではにおい立つような男の色気を放ちまくっておりましたが、こちらではすっぱだかの珍獣を違和感なく演じた上にEDではラップまで披露していて芸達者だなあ…と感服いたしました。

あんまり話題にもならずにどんどん公開も終わりつつあるようですが、気になった方はこちらの予告編をご覧ください。陰謀に巻き込まれた貧乏青年の映画と言えば先日『アンダー・ザ・シルバーレイク』というのも観ました。こちらについても近々書きます。


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November 28, 2018

シン・キングギドラ 静野孔文 瀬下寛之 『GODZILLA 星を喰う者』

はやいもので1年前始まったアニメゴジラ3部作も、先ごろめでたく完結編が公開されました。これがまたなんとも扱いに困る代物でして… ともかくその『GODZILLA 星を喰う者』をご紹介します。第1部『怪獣惑星』の記事はコチラ。第2部『決戦機動増殖都市』の記事はコチラ

あと一歩でゴジラを殲滅するところまでいったものの、部下のユウコを見捨てられずその機を逃してしまったハルオ。もはや万策尽きたかと思えた人類軍だったが、ハルオの盟友である異星人メトフィエスは、異次元から恐るべき存在を召喚して悲願を成就しようと企んでいた。

今回は大体ネタバレの観た人向けで…
前作は意外な形で(笑)メカゴジラをフィーチャーしたアニメ版ゴジラですが、完結編では満を持して最大のライバル「キングギドラ」を持ってきました(劇中では単に「ギドラ」)。普通の怪獣としては出てこないだろうな…とは予想しておりましたが、特異点(ブラックホール)から時空を超えてやってくるエネルギー体のような形での登場。時空の層が違うゆえか向こうは自由に攻撃できても、ゴジラの方は接触することさえかなわない恐るべき存在。「恐るべき」といえばその飽くなき食欲のゆえについには地球すら破壊してしまうという超弩級の破壊神でもあります。そんなゴジラ・アースをも上回るモンスターをどうやって撃退すればいいのか。退けられたとしてじゃあ残ったゴジラはどうすればいいのか… 頭の中を「無理ゲー」という言葉が縦横無尽に飛び交います。

それはともかく、なぜメトフィエスが自分たちまで滅ぼしてしまうようなそんな怪物を呼び寄せたのか、というのが本作品の重要なポイントのひとつです。早い話が人間も文明もいつかは終焉を迎えるのだから、どうせなら宇宙で最強の存在の犠牲になった方が華々しいじゃないか、ということでありました。キムタクならずとも「ちょ、まてよ」と言いたくなる思想ですが、人間なら誰でも一度は「どうせいつかは消滅してしまうんだから、自分の存在に意味なんてないのでは」と考えたことがあるのでは。当たり前すぎてそれこそ「中二」と言われてしまう論題かもしれませんが、これってやはり生涯かけて考え続けなきゃいけないことだと思うんですよね…

自分はこのシリーズを「3作かけてゴジラを倒す話」だと思い込んでいたのですが、そうじゃありませんでした。「3作かけてゴジラに対する敗北を受け入れる話」だったのです。家族を殺されて復讐にいきりたつハルオでしたが、文明を破壊することが地球の意思だとしたら? その「怒り」こそが種族や自然環境を滅ぼす原因だとしたら? 地球の意思を受け入れてゴジラと共存していくことこそが道理ではなかろうか…と問いかけられてるような結末でありました。

ただハルオはすんなりゴジラと和解…という風にはいきませんでした。怒りを捨て、子孫を残したところで彼の物語は完結したということなのでしょうか。機械と一体化することを拒み、宿敵を倒すことよりも地球を守ることを選んだ彼には、どこまでもしぶとく生きつつづけてほしかったのですが。この点に関しては果たしてあれで正しかったのか、観てから10日以上経った今もぐるぐると考え続けております。

真面目すぎたがゆえの欠点もありましたが、アニメ版ゴジラ三部作はかつてない怪獣映画であり、意欲作・実験作だったと思います。スタッフの皆さん、どうもお疲れ様でした。

アニゴジは終わりましたがゴジラ映画は来年5年ぶりのハリウッド作品が公開。さらに翌年にはキングコングとの対決も控えております。平成が終わってもまだまだその咆哮がやむことはないでしょう。ガオッ!!

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November 08, 2018

オッコちゃん 令状ヒロ子・高坂希太郎 劇場版『若女将は小学生!』

当初はまーーーーったく興味なかったんですが、ネットのあまりの評判の良さが気になって、先日見てきた(またかよ…)アニメ映画。児童小説を原作とした湯けむり人情アニメ『若おかみは小学生!』、ご紹介いたします。

小学六年生の関織子(おっこ)は交通事故で両親を失い、温泉街で旅館を営む祖母峰子のもとに引き取られる。だがその旅館には生前峰子の幼馴染だった少年の幽霊も住み着いていた。旅館「春の屋」に後継者がいないことを心配していたその幽霊・ウリ坊は、おっこに峰子のあとをつぐために若おかみになってくれと懇願する。

まず最初食指が動かなかった理由はアニメなのに舞台が温泉旅館でなんとも地味そう…と思ったからでした。しかしあらすじからもわかるようにいきなりショッキングなエピソードから始まり、次から次へと事件が起きたり珍妙なキャラが登場したりするので退屈するということはまったくありませんでした。

親が死んで孤児になってしまった女の子が老人に引き取られ、新しい環境で一生懸命がんばっていく… こういうの世界の名作児童文学によくあるパターンのような気がします。カルピス(ハウス)名作劇場を日本を舞台にしてやるとしたら、なるほどこういう風になるのかもしれません。

ハイジや赤毛のアンと違うところがあるとすれば、普通に妖怪やお化けが出てくるところでしょうか。しかしこの幽霊、デザインがかわいらしい上に真昼間にも普通に出てくるのでまったく怖くありません。お化けというより妖精に近い存在。ですからおっこも早々となじんでしまいます。

ただおっこがこういう人外と縁があるのは、事故に遭った彼女があの世に近い領域に片足つっこんでるからなのですね。両親が死んだことはわかってるはずなのに、どうしても実感がわかない。まだどこかで生きてるとしか思えない。気丈とはいえまだ不安定な年相応の子供の心情がそんな風に表現されていました。わたしゃ観てないのですが『ボネット』ってそんなお話だったのでしょうか。
またおっこちゃんは「いい子」ではあるのですが、少々抜けてたり時々すねたりもするあたり身近で親しみやすいキャラになっておりました。

以下ほぼ結末までネタバレで。

終盤とうとう両親の死を認めざるをえなくなるおっこちゃん。泣きながら「一人にしないで」と叫ぶシーンにもホロリと来ましたが、それ以上に鼻水を搾り取られたのはいってみれば加害者にあたる男に恨み言ひとつ笑顔で受け入れるくだり。まさに「小僧の神様」とでもいうべきでしょうか。わたくし、誰かが自分のことでわあわあ号泣してる場面より、辛さも悲しみも押し隠して笑顔を見せる話の方が弱いんで…
またラストシーンはしめっぽくなりそうなところを、少しのさびしさとともにさくっと爽やかに切り上げたあたりが好感が持てました。こういうのは先の『ペンギン・ハイウェイ』とも共通しています。

初週は不入りでコケ作品認定されそうだったのに、評判が評判を呼んで上映延長・再上映が続いている『若おかみは小学生!』。温泉がわりにふらっといやされてくるのもよいかもしれません。

ちなみに現在大ヒットを飛ばしている映画『ヴェノム』のツイッター公式アカウントが立った二つだけフォローしてるのが『スパイダーマン』と、なぜかこの『若おかみは小学生!』の公式だったりします。なつっこいお化けが出てくるつながりということなのでしょうか…

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October 07, 2018

ポノック3本勝負 『小さな英雄 カニとタマゴと透明人間』

8月に観た映画の感想もこれでようやく最後の1本… スタジオジブリのあとを継ぐべく作られたスタジオポノックが、昨年の『メアリと魔女の花』に続いて送る第二弾。『小さな英雄 カニとタマゴと透明人間』をいまごろ紹介いたします。ポノックが誇る実力派作家3人によるオムニバス映画でございます。

一本目は『カニーニとカニーノ』。3人の中では最もメジャーな米林宏昌監督作品。カニの兄妹の小さな冒険を描いたお話で、宮沢賢治の『やまなし』にアクションを組み込んだようなアニメ。川辺の背景が美しかったり、捕食動物が半端なく恐ろしかったり、短い時間の中でもいろいろ光るものがありました。さすがは安定の米林さんであります。

二本目は『サムライエッグ』。タマゴのアレルギーに悩む小学生の日常を切り取った作品。「日常」といってもアレルギーは時として死に至りかねないほどの症状を引き起こすこともあり、毎日が危険と隣り合わせなわけであります。決してくらい話ではないのですが、そんなアレルギーの苦しみを体感させるような美術・演出はインパクトがありました。

三本目は『透明人間』。存在感が薄いあまり誰の目にも見えなくなってしまった青年のピンチと奮闘の物語。透明なだけでなく体重も異常に軽いため、常に重しの消火器を携行しなくてはならない…という設定も気の毒ながら笑えました。青年がうっかり重しを手放してしまったため、ふわふわと際限なく上空へ浮かんでいってしまうシーンなどは夢で時々みることがあるため、軽いデジャブを覚えたりしました。

3作品とも発想・題材・美術ともにひかれるものがありましたが、惜しいのはやっぱり「短い」ということ。まったく違う種類のアニメをオムニバスで…という企画は冒険してていんですけど、全部合計しても一時間に満たないとどうしても「物足りない」という感が否めません。特に最後の『透明人間』はもう20分ほど延ばしてじっくり見せてほしかった。去年『メアリ』をやったばっかりであまり時間が取れなかったのでしょうか…

というわけでこの「ポノック短編劇場」、続けるのであれば次回はせめて1時間半か2時間くらいの尺でお願いしたいところです。ジブリもまた復活するようですけど、某御大が亡くなったらまたそこで終了だと思うので、ポノックにはアニメ映画を盛り上げるためにがんばってほしいのでした。ファイト! 3発!!

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October 05, 2018

萌える! お姉さん! 森見登美彦 石田祐康 『ペンギン・ハイウェイ』

アオヤマくんは子供にしては珍しい研究者肌の小学4年生。日々疑問に感じたことをノートにまとめては丁寧に調査・考察を繰り返していた。そして彼がとりわけひかれているのは、歯科医につとめているやさしいグラマラスなお姉さんについてのことであった。ある日アオヤマ君の街に南半球にしか棲息していないはずのアデリーペンギンが大量に出現するという事態が起きる。さっそく原因究明に乗り出したアオヤマ君は、調査の途中でペンギンとお姉さんに奇妙なつながりがあることを発見する。

夏は時期的にアニメ映画をよく観るのですが、この『ペンギン・ハイウェイ』もそのうちの一本。予告でお姉さんが投げた缶ジュースがうにゅうにゅっとペンギンに変身する映像を見てあっけにとられてしまいまして。アオヤマ君じゃないですけどその現象の謎をとくべく鑑賞いたしました。あと自分、ペンギン好きなもんで。映画に出てくるペンギンといえば大抵は皇帝ペンギンで、アデリーペンギンにスポットがあてられることってあまりないので、これは観ねばと思いました。
で、果たして怪現象になぜペンギンが関わってくるのか、納得のいく理由があったかというとこれがよくわかりませんでした(笑) わたしの頭が悪いのか、それとも重要なセリフを聞きのがしたか。でも無数のペンギンがわらわら動いている絵に大変ほんわかしてしまったので、その辺は適当でもよしとします。あとEDに宇多田ヒカルの歌が流れるとなんとなく「まあいいか」という気分になってしまうものです。

この映画の魅力は主人公のアオヤマくんとお姉さんに負うところも大きいですね。アオヤマくんはなかなかかわいげのないお子様ではありますが、興味のあるテーマにぶつかる時は実に子供らしいいい顔を見せます。一方でいじめっ子の攻撃や同級生の女子のアプローチにはクールな態度を崩さず、小学生のくせにいちいちかっこいい野郎だな、と思いました。
そんなアオヤマ君が慕っているのが謎多き歯科医のお姉さん。ちょっとおっぱいが強調されてるところがネットでは議論を呼んだりしておりました。おっぱいの是非はともかくとして、少年が短い間年上の女性に淡い思いを抱き、その出会いを通じて成長する…みたいな話は『銀河鉄道999』みたいでなかなかツボでした。声を当てているのは蒼井優さんですが、前にやはり声優を担当された『鉄コン筋クリート』で「おっぱいぼい~~~ん」というセリフがあったことをここに記しておきます。

余談ですが西原理恵子先生のエッセイ漫画によると、高知では昔普通に野良のペンギンがその辺をうろついていたそうで。遠洋漁業に出てたおっさんたちが法律のことも知らずお土産に持ち帰ったりしてたんだとか。いまあちらの水族館にいるペンギンたちはその末裔なんだそうです。映画を観ながらそんな話を思い出したりしてました。

今夏の日本アニメ映画はこれと『未来のミライ』のほかにもう一本『小さな英雄 カニと卵と透明人間』も観ました。次回はそれについて。あとペンギン映画では現在名作ドキュメンタリー『皇帝ペンギン』の続編、『皇帝ペンギン ただいま』も細々と公開中です。

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September 24, 2018

家族はつよいよ2 ブラッド・バード 『インクレディブル・ファミリー』

あの1作目から14年… わたしはだいぶ年を取りましたが、彼らはあの時と変わらず帰ってやがり参りました。『インクレディブル・ファミリー』、ご紹介します。

いろいろあって家族の絆を取り戻したパー家。だが世間では変わらずヒーロー活動は禁止されていて、彼らにとっては肩身の狭い日々が続いていた。そんな折、ある資産家がパー夫妻にヒーローが再び表舞台に立てるための計画に協力してほしいと申し出る。考えた末にそのプロジェクトに乗ったボブたち。とりあえずいろんな意味で柔軟なパー夫人が秘密裏にレスキュー活動を行うことになる。そして家の留守を任されたボブは、いくつもの能力を持つ末っ子ジャック・ジャックの世話に手を焼かされることに…

モンスターズ~にファインディング~にカーズと、2作目は1作目のわき役が中心になることが多いピクサー作品。今回もイラスティ・ガールことパー夫人をメインに持ってきています。近年ますます女性の社会進出が顕著になってきている世界情勢を、如実に反映した内容となっていました。
三児のお母さんがスーパーヒーローの映画って果たして面白いのか?という疑問がわく人もいるかと思われますが、これがなかなかに楽しい。ゴム人間といえば『ワンピース』のルフィや『ファンタスティック・フォー』のリードがいますが、最新のCGアニメで描かれたゴムアクションはさらにそれらの上をいっておりました。
そしてイラスティ・ガールさんですが、かっこよくもあり、ほのかなお色気もあり、そして家に帰ると家庭的な奥さんという、熟女好きにはたまらないキャラでありました。出番が増えた分、前作より魅力も大幅にアップしております。

ただ観ていて心配になるのは、最近のディズニー、ピクサーには「人当たりのいい権力者、パトロンは信用してはいけない」という法則があること。この作品にもいかにもそんな登場人物が出てきます。こいつ絶対裏切るだろうな~と決めつけながら鑑賞しておりましたが、実際はどうだったかというと… 一応伏せておきましょう(笑)

先に公開された『未来のミライ』と同じく「育児」が重要な要素になってるところも興味深かったです。くんちゃんは普通の人間の子供でしたが、ジャック・ジャックは光線を放つし炎は吐くしでこんなベビーの面倒を見ていたら命がいくつあっても足りません。加えて長女の思春期の悩みや長男の難しそうな宿題まで取り組まなければならないのですから、スーパーヒーローのボブさんといえ、どんどん憔悴していくのはやむなきこと。スーパーヴィランに立ち向かうのと同じくらい、家事・育児は大変ということなんでしょうね。わたしは子供いませんけど全国のお父さん・お母さん、まことにお疲れ様であります。

さて、この作品ヒーロー映画的にはなかなか危ないテーマにも挑んでいます。それは「ピンチの際にはヒーローに頼るべきか? それとも自分で解決すべきか?」というもの。実際にヒーローはいませんが警察や救急におきかえて考えることもできるでしょう。わたしとしては普通にケース・バイ・ケースだと思うのですが、この映画はその辺投げっぱなしで終わってしまいました。観客一人一人で考えてくださいってことなんでしょうかね。

もうひとつ特筆すべきことをあげると、『ミッション・インポッシブル』シリーズを手がけたマイケル・ジアッチーノの音楽がレトロ調でめちゃめちゃ渋かっこいいこと。Mr.インクレディブル、イラスティ・ガール、フロゾンには専用のテーマがあるのですが、これらがまた無駄にオシャレで決まりまくっておりました。本年度の映画音楽ベスト1に選びたいくらいです。

お母さんが大暴れしてヒーローが育児に励むこの映画、果たして一般受けするのかと思いましたが、世界でも日本でもけっこうなヒットを飛ばしているようで、不思議なものであります。よかったね、ブラッド・バード!

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