August 17, 2017

ビックリヒーローズ高校白書 ディーン・イズラライト 『パワーレンジャー』

0f638427f91e3c27cba4613325b9d21b夏休みもいよいよ後半。よい子の皆さんは宿題片付けてるでしょうか。本日はそんな子供たちに送る夏休み映画の1本『パワーレンジャー』をご紹介します。

アメリカの田舎町に住む高校生のジェイソンはアメフトの花形選手だったのに、派手ないたずらをやらかして居残り勉強をさせられることに。そこでいじめられっ子のオタク・ビリーになつかれてしまったジェイソンは、半ば強引に遺跡調査に付き合わされる。ビリーが発破をしかけると中に眠っていた超古代の装置が作動。偶然居合わせた他の高校生3人らとともにジェイソンたちは超能力に目覚め、装置の所有者であった異星人ゾードから「パワーレンジャー」に任命される。

日本人ならほとんどの人が知ってる長寿特撮シリーズ「スーパー戦隊」。作品ごとに設定は変わるものの、大体5人のヒーローチームが巨大ロボを駆って悪と戦うという内容です。その16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のころから、特撮パートだけを抜き出して、アメリカ人用に作り直したものが『パワーレンジャー』です。こちらも一応現在までオリジナルと並行してシリーズが継続しているとのこと。

というわけで基本は子供向けのはずなのですが、なぜかこれがけっこうしっかりした青春ドラマになっておりまして、スクールカーストやSNS、家族との関係など、現代アメリカのティーンが直面する多くの悩みが取り上げられたりしてます。
こうした作りは1985年の名作『ブレックファスト・クラブ』を意識してるようです(自分は観てませんが)。そちらは普段グループが異なるゆえ接点の無かった五人の高校生が、居残り勉強を通じて友情を深めていくという話だそうで。ともかく、米国の洋画・ドラマでは体育会系はオタクをいじめるのが相場と決まっているのに、のっけからいきなりかばってくれるというのはなかなか斬新でした(いじめっ子が速攻で親友になった『21ジャンプストリート』のような例もありますが)。

ただ青春ドラマとしての充実度が高くなればなるほど、「あれ? もしかして変身とか巨大ロボとかいらないんじゃね…」という気がしてくるから困ります。自分がこの映画を観た最大の動機は「巨大ロボの合体が気になるから」だったので。オリジナルの「ジュウレンジャー」のロボはそれはもう合体ギミックが秀逸で、何度もばらしたり組み合わせたりしてよく遊んだものでした(自分当時大学生でしたが…)。だから今回のロボ「メガゾード」もおおよそ合体しづらそうな形状なんですが、きっとその辺の描写をきちっとやってくれると期待してたんですが… 結論から言うと、上手にごまかされた、という感じでした。青春模様もいいけれど、まずはそこを!そこをしっかりやらないといけないのでは!! じゃないとお子様たちはオモチャを買いませんよ! もちろんわたしもです!(お前は買うトシじゃないだろ)。ハアハア、ハアハア…

またしても呼吸が荒くなってしまいましたが、全体的に丁寧な造りですし、クライマックスのバトルは燃えますので、そこは評価しております。

Img_0この『パワーレンジャー』、そんな風に一体どの年齢層に向けて作ってるのか微妙なため、本国・日本ともにきびしい成績になってしまったようです。しかし意外にもDVD・玩具関連の売れ行きは好調なようで(あれ?)。思わせぶりなオマケシーンもありましたし、がんばって続きを作っていただきたいものです。今度こそちゃんとした合体ギミックを披露するためにも。ちなみに日本での公開は残ってるところでも大体明日までです。

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May 19, 2017

プラと呼ばないで クリス・マッケイ 『レゴバットマン・ザ・ムービー』

1491803297468上半期最も楽しみにしてた1本だったのに、感想書くのがモタモタしているうちに完全に公開が終わってしまった~~~! とほほ…
何の力添えもできず大変申し訳ないかぎりですが、遅まきながら『レゴバットマン・ザ・ムービー』、ご紹介いたします。

そこは全てがレゴでできた世界。犯罪都市ゴッサムシティで活躍するヒーロー・バットマンは、今日も惨事を未然に防ぎ、声援をあびながら秘密基地に戻る。だが広大な邸宅で彼を待つのは執事とコンピューターだけ。孤独に晩飯をチンしてくつろぐバットマンに、執事はそろそろ家族を作ってはとすすめるが…

本作品は2014年に公開された『レゴ(R)ムービー』の姉妹編というかスピンオフのような位置づけ。あちらにもすっとぼけたバットマンがサブキャラとして登場します。ただ今回の映画と同一人物なのかというと、そんな気もするし、違う気もする大変あいまいな設定です。まあこんなゆるさがレゴ映画の魅力のひとつとも言えます。

バットマンといえばまず『ダークナイト』を思い浮かべて、暗くてハードでシリアスなイメージをもっておられる方も多いことでしょう。確かにいまのバットマンに関していうなればそれは間違いではありません。しかしなにせ約80年もの歴史を持つシリーズですから、その間にはギャグ調に振り切れた時期もあったのです。いい例が今回もちらっと出てきた60年代に作られたTV版。そんな黒歴史も含めて、バットマンの長い長い歩みと本質を総括した内容となっていました。

バットマンの本質とはなんぞや。それは彼がスーパーヒーローで世界最高の探偵であると同時に、子供で偏執狂であるということです。子供のころ目の前で両親を殺されたというトラウマが、犯罪と戦う原動力となっている反面、未だに彼の内面を子供のままとどめてしまっている。言うなればごつくて暗いピーターパンのようなもの。まあ普通ちゃんとした大人は犯罪と戦うにしてもあんなコスプレしたり、不眠不休で訓練したり働いたりしないものでしょう。自分のペースと家族を大事にしたうえでやるものだと思います。
だからブルース・ウェインが普通の大人になる…幸せになって孤独感を感じなくなったら、『バットマン』という物語は終わるのだと考えます。実際映画『バットマン&ロビン』や『ダークナイト・ライジング』はそんな感じでしたし。
では肝心の原作はと申しますと、いまバットマンには養子・実子含めて3人の息子がいます。それとは別にぐれて勘当したような子供までいます。そんだけ子供に囲まれてブルースが立派なお父さんになったかといえば、これがはなはだ微妙でして… どの子どもたちにもちゃんとコミュニケーションを築けてないようですし、その上しょっちゅう死んだり失踪したりしてます。まあウェイン氏が本当にまともな大人になってバットマンを卒業してしまったら、DCコミックスとしては大変な痛手になるでしょうからそれはまだまだ先のこと…というか実現しないような。コナン君が半永久的に元の姿に戻れないのと一緒です。

もうひとつバットマン世界…というか多くのヒーローものに関して言える本質としては、「ヒーローとヴィラン、ふたつそろってて初めてお話が成立する」ということです。建前としては悪者なんかいないほうがいい、ということになってますが、もしあの世界にコスをまとっているのがバットマンだけで、ほかに珍妙な格好をした悪役がいなかったとしたら、そもそも物語としてなりたちません。まさにヒーローがいるからこそヴィランがいて、ヴィランがあってこそのヒーローであります。『レゴバットマン』では普通はごまかされそうな、そんな二者の絆が微笑ましく描かれておりました。これを通常のバットマンでやったら白けるか、めちゃくちゃ皮肉っぽくなると思うんですけど、二頭身のレゴの世界ならばみんなが幸せになれるというとてもほっこりした仕上がりになっております。
ちなみにいまコミックのマーベルではどちらかというとヒーロー同士が主義主張をめぐって激突するという話がとても多く、悪役の影がとても薄くなっています。その方が現実的でテーマも深くなるのでしょうけど、ここんとこの売上がぱっとしないところを見ると、もう少しバランスたもってやった方がいいんじゃないかな~と1ファンとしてはお思うわけです。

まわりくどい理屈ばかり書き連ねてしまいましたが、『レゴバットマン』はこんな面倒くさいことなど考えなくても…というか考えない方が楽しめる映画です。仏頂面でかっこ悪いバットマンに笑い、邪険にされるジョーカーに腹をかかえ、DC以外からもやってくる大量のカメオ出演に興奮し、文字通り血の一滴も出ない活劇ににんまりする。ああ… こんなに面白い映画なのに日本ではなぜ大コケしたんだ!! 世の中いろいろ間違いが多すぎる!!

Lgb2そんな『レゴバットマン・ザ・ムービー』、8/2にDVDが出ます。観られなかった方はそれからでも観てください。そしてこれだけレゴ映画が不振なのに秋には新作の『レゴ・ニンジャゴー』が公開決定してます。あまりにも無謀すぎるチャレンジ。わたしはもちろんお布施と思って観に行きますよ!


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May 15, 2017

伊藤系の計画 伊藤計劃・村瀬修功 『虐殺器官』

Gsk1去年くらいからですかね。早逝の天才・伊藤計劃氏の一連の代表作をアニメ化しようというプロジェクトがありまして、これが一応ラストになるのかな? 本日は氏のデビュー作にして最高傑作とも誉れ高い『虐殺器官』のアニメ映画版を紹介します。

米軍特殊部隊に所属するクラヴィスはある任務で某国の独裁者を追う中、様々な国で虐殺を扇動していると思われるジョン・ポールなる男の存在を知る。米政府は彼をとらえるべく潜伏先と思われるチェコへクラヴィスを差し向ける。そしてクラヴィスはジョンの元恋人ルツィアに接触するが、任務を越えた感情を彼女に抱くようになる。

原作は2,3年くらい前に読みました。知り合いのあるお方が激賞してたのと「衝撃の問題作!」みたいな帯にひかれて読みました。まず印象に残ったのは巧みなストーリーテーリングもさることながら、その徹底して乾いた文体。
読者も主人公も突き放したような本作のうすら寒いムードは、日本のエンターテインメントには珍しいものでした。ハードボイルドを通り越してハードコールドとでも申しましょうか。ほかにはその道のマニアである伊藤先生の映画ネタや、なかなか想像しづらいSFメカ?「肉の鞘」、そして本作の要となるアイデア「虐殺の文法」などに興をそそられながら読んだのを覚えています。

さて、劇場版はどうだったかと申しますと、こちらではまるでガラス細工のような透明感あるキャラデザが目を惹きました。クラヴィス君は小説を読んでいてたぶんイケメンなんだろうな…とは思っていたんですが、そのあまりの美形っぷりは完全に趣味の世界の領域でありました。普段ハリウッド映画を見慣れているものとしては、軍人といえば筋肉ムキムキのいかついタイプが念頭にあったので、それなりに違和感を覚えたのは確かです。一方でその生気や感情に乏しい造形が原作の冷え切った空気になかなかマッチしてるな…とも思いました。
監督は村瀬修功氏。わたしとしては『ガンダムW』や『アルジェント・ソーマ』などの作画でなじみ深い方です。ただ今回は村瀬氏自身ではなくredjuice(れっどじゅうす)という変わったペンネームの人がデザインを担当されたとのこと。

そんなギリシャ彫刻のような美男子たちがスクリーンでアップになるだけで、それはそれで目の保養にはなります。ただSFアクションを期待していくと、動く時は動くものの、止まってる場面もけっこう多かったりしてフラストレーションがたまるやも。まあ原作がもともと薀蓄や科学理論でふんだんに彩られた小説なので、語りの部分が多くなるのは致し方なきことかもしれません。
あと前日に観た『ハードコア』にひきつづき、こちらもかなり人体グチャグチャ描写がくどくて、またしても胸焼けに襲われました。鑑賞後、無性に小動物のモフモフしたかわいらしい動画が観たくなりましたよ…

もっとも気になってた「肉の鞘」ってのがどんなものなのか見られたのはよかったけれど、『虐殺器官』ってやっぱりあまり映像化向きではなかったかも…とも思いました。ここんとこ『君の名は』や『この世界の片隅に』など、生活感にあふれたロマンスあふれるアニメ映画が続いてて(この2作はわたしも好きですが…)、「アニメはやっぱりメカだろう? SFだろう? ここら辺でそういうアニメの王道たる映画を…」と感じてた身としてはこの映画には大いに期待していました。まあ決して失望したわけではないんですけど、うーん… もう一歩なにか突き抜けるようなものがほしかったというのが正直なところです。去年日本を席巻した先の二作品には、確かにそれがありましたからね。
41prk9iwxpl__sx336_bo1204203200_ですから日本のアニメクリエイターたちには、日常系・ロマンス系に負けずに熱くド派手なSF映画をここらで一発作っていただきたい。月村了衛氏の『機龍警察』を実力あるスタッフで映像化したら面白いと思うんですが… どないでしょう。

ちょいとくさしてしまいましたが、アート系の作品として見ればそれなりに楽しめると思われる劇場版『虐殺器官』。こちらは遅れてかかってたので完全に公開が終わりました。まだ発売日は不明ですが、ぼちぼちDVDが出るのではないでしょうか。


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April 24, 2017

イルミネーション系のど自慢 ガース・ジェニングス 『SING』

20170415_162223今年の春休みシーズンを征したのは、驚くべきことにドラえもんでもなくディズニーでもなくイルミネーション・エンターテインメントのこの作品でした。『SING』、紹介いたします。

動物たちが暮らす街で劇場のオーナーをしているコアラのムーンは、人格にやや問題はあるもののショービジネスに対して並々ならぬ夢と情熱を抱いていた。いよいよ劇場がピンチになった時、ムーンは起死回生の案として町の住民たちによる歌唱コンテストを企画する。しかし秘書のカメレオンがうっかり賞金の額を一桁多く書いてしまったため、コンテストは早くも波乱含みに…

予告を見た時にはそれほどそそられなかったこの作品。だって動物たちののど自慢大会って、いまひとつ花がないというか地味というか。去年派手に楽しませてくれた『ズートピア』があっただけにね。
それがなぜ観に行ったかといえば、ひとつには単に評判がいいから。もうひとつには『銀河ヒッチハイクガイド』『リトル・ランボーズ』のガース・ジェニングスが監督を務めていると聞いたので。日本で作品が公開されるのはかれこれ7年ぶり。最近どうしてるのかな~って時々思ってたんですよ。ただ『銀河ヒッチハイクガイド』との共通点を一生懸命探してはみたんんですが、皮肉っぽくてカラッとしたギャグセンス以外あんまり見当たりませんでした。『リトル・ランボーズ』の方とは「障害にあっても夢を諦めない」ストーリーが多少似てはおりましたが。

それはともかく実際に鑑賞してみたら予想以上の出来に感心してしまいました。確かに地味には地味なのです。我々と変わらぬ様々な悩みを抱えた等身大の人物…じゃなくて動物たちが織り成す物語なのでね。しかしそれだけに個々のキャラがきわめて身近に感じられるし、彼らが目標の実現のためにがんばる姿には理屈抜きで応援したくなります。ところがこの映画、中盤過ぎまではかなりサド的というか、キャラクターたちへの追い込みっぷりが半端じゃありません。そのあまりの非情な展開に「こりゃどう考えてもライブ開催は無理だろ」と、あきらめのいい人生に疲れたおじさんは思ってしまいました。

あと目立っていたのはムーンさんとネズミの歌手・マイクの問題児っぷり。まあなんというかイルミネーションの主人公たちは反社会的な輩が多いですね。それこそがディズニーとちょっと違うところであり、アカデミー長編アニメ部門から敬遠される所以なのかもしれません。ただムーンさんは欠点と同じくらい良い特質ももっていますし、劇中にある体を張った洗車シーンを見てしまったら、もう愛さずにはいられません。マイクの方は「愛すべき」とまではいきませんが、主人公サイドなのに最後まで成長せずに嫌味を垂れまくるそのキャラは異彩を放っていました。

そしてなんといっても見事なのは『SING』 という題だけあって歌唱シーンが大変楽しい。ずっと地味臭かった話がクライマックスのステージで一気に花開いていいきます。どの歌も大変聞いていて心地よかったですが、自分がとりわけ気に入ったのはなぜかヤマアラシのアッシュちゃんがトゲを飛ばしながら歌う「Set It All Free 」だったりして。劇中で好きなナンバーであるクイーンの「Under Pressure」が流れたのも嬉しゅうございました。

Kanbanそれにしてもイルミネーションのアニメが公開されるたびなんでこんなに日本でうけているのか、いまひとつ謎であります。この社名、まだそんなにこちらでは浸透してないと思うんですが。それとも「ミニオンのスタッフが贈る!」と言われると、一般のファミリー層はぐっとひきつけられるんでしょうかね。とりあえず『SING』はまだ大ヒット公開中。夏には『怪盗グルー』の第3作もスタンバイしております。

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April 12, 2017

頓狂ディズニーシー ロン・クレメンツ ジョン・マスカー 『モアナと伝説の海』

1『アナ雪』以降、ジブリ不在ということもあって完全に日本での巻き返しに成功した感のあるディズニーご本家。本日はその最新作で快進撃を続けている『モアナと伝説の海』をご紹介します。

南洋の平和な島で長の娘として健やかに暮らしてきた少女モアナ。しかし彼女は出ることを禁じられている外の海への憧れを、ずっと抑えながら日々を過ごしていた。そんな折、島では魚が取れなくなったり、穀物が急に枯れたりと不吉な現象が続く。その原因が外海の魔神の呪いにあると知ったモアナは、精霊に導かれるまま広い世界へと漕ぎ出すのだが…

公開されるや否や映画ファンの間で「マッドマックスっぽい」と評判を呼んでいた本作。確かにそれらしいところもちらほらあります。しかしわたしが思い出したのは昨年日本でようやく公開された『ソング・オブ・ザ・シー』。禁じられた海へと惹かれていく少女。その少女を誘う精霊。古の災いにより呪いをかけられてしまう巨神…といったモチーフが共通しています。片や大資本で作られた南洋の神話、片や独立系のスタジオで作られた西欧の伝説ですからイメージもストーリー展開もだいぶ違いますが、それでもこういう民話にはある種の定型があるのか、似通った部分があるのが興味深いです。

で、マッドマックスにも例えられてるようにこの話、かなり男子の冒険物語っぽいところもあるのです。モアナは宮崎アニメのコナンかパズーのように人並み外れた大ジャンプを見せますし、次から次へと現れる海の魔物にもひるまず果敢に立ち向かいます。そして助け手となる神マウイと一緒にいても、一向にロマンスが芽生える気配がない。まあマウイは一応人の形をしていても神様なんで、人間のもつ恋愛感情とか超越しちゃってるのかもしれませんが。それ以前にキャラデザの時点でラブコメ向きではない気もします。ともあれ、喧嘩しつつも仲良く冒険を続けるマウイとモアナはカップルというより気心知れた友人、あるいは兄弟のようでした。

ではなぜモアナは男子ではなく女の子としてこの物語に選ばれたのか。女子たちを映画館によぶため…という目的もあるかと思いますが、彼女には能天気な男の冒険児にはない特質があります。それは挫折した時に見せる内面の弱さであったりとか、恐ろしい魔物をも思いやる心であったりとか。そういった女子ならではの柔らかい性質と男の子らしいたくましい冒険心が混ざり合って、実に中性的でバランスのとれたエンターテイメントになっておりました。

ポリネシアの民話を下敷きにした独特な背景や妖怪、アイテムも魅力のひとつであります。思えばこの辺を舞台にしたアニメ映画って今までこれといってなかったような。ミッシェル・オスロなども世界各地の昔話のアニメ化を精力的に行っているので、短編かなにかでやっているかもしれませんが。まあとにかく西洋ファンタジー世界とは一風違った南洋のセンスが目に楽しゅうございました。
1491803284646というわけで予想通り大ヒットを続けている『モアナと伝説の海』ですが、驚いたことにさらにこれを越えて売れている海外アニメが同時公開中です。次の次くらいにその作品について取り上げる予定です。下のイラストはウシ先生が描いてくれた赤ちゃんモアナ。か~わい~な~~


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March 06, 2017

お熱いドッグがお好き コンラッド・ヴァーノン&グレッグ・ティアナン 『ソーセージ・パーティー』

Sp1いまや全然珍しくもなくなったフルCGアニメーション。「こういうの、前にも観たなあ」と思うことが多くなってきました。しかし先ごろとびっきり個性的で珍妙でお下劣なCGアニメが登場いたしました。『ソーセージ・パーティー』、ご紹介しましょう。

そこはとある町のスーパーマーケット。食品たちや製品たちは、いつか神(お客さん)に選ばれて、店の外へ出ていくことを夢見ていた。そこはきっと素晴らしい楽園に違いないという伝説を信じて。ソーセージのフランクもその一人というか一個だった。そしてあわよくば隣で売られているセクシーなパンと楽園で結ばれたいという妄想にもふけっていた。だがその甘い夢は奇跡的に外から戻ってきたハニーマスタードの証言により打ち砕かれる。彼が言うには外界は神が食品を貪り食い、商品を消費する恐ろしい世界だというのだ… 

まあなんで主人公がソーセージかというとですね。いわゆるなにかの比喩なわけですね。そしてソーセージを挟むパンも何かの象徴なのです。そしてソーセージとパンが合体するということは… ああ、もうこれ以上はちょっと言えません!
かようによくこんな下品なこと思いつくなあ、そしてそれをアニメでやるなあ…とあきれ果てるのですが、テーマが何もないかといえばそんなことはなく、意外と考えさせられるお話になっています。飽くことなく必要以上にモノを買い、食べる人々の姿が実に醜く目にうつるのですね。こうはなりたくはないなあ…と思いつつももうすでにそうなっているのかもしれません。

お話は最初こそピ○サーの名作のようなムードで始まります。というかやはりこの映画、下ネタをぶち込んだ『トイ・ストーリー』のような趣があります。主人公たちが人間たちとコミュニケーションが取れなかったり、おとぎ話を信じ込んでるあたりとかね(そして現実は厳しい…)。あらためてかの作品の偉大さに感じ入りました。
そして世界の真実が明らかになったあたりから、今度は途端にホラー調になります。これがまあやっぱり絵柄はそのまんま漫画調なんですけど、妙にシュールな怖さがありまして。メシ・フロ、済ませたあとのレイトショーなのでちょっとうとうと来てたんですが、そのあたりから急にしゃきっといたしました。

食べられるしかないと運命を悟ったソーセージたちは果たしていかなる決断をくだすのか。そこから先が本当に想定を超えるというか、ぶっとんだ展開を見せます。R15指定ならではの残酷描写や下ネタもバンバンヒートアップしていきます。クライマックスの一シーンなどは劇場全体にすごく気まずいムードが漂ったりもしました(笑) しかし、まあそれをさしひいても一見の価値がある…と言っていいのか。大変人を選ぶ映画であることも確かです。

Sp2で、この『ソーセージ・パーティー』、こちらで上映されたのもだいぶ遅れてからだったので、もう明後日にはDVDが出ます。ご興味おありの方はぜひお子様の目の届かないところでご覧くださいまし。セス・ローゲン、エドワード・ノートン、ポール・ラッド、ジョナ・ヒルなど声優陣がなかなか豪華なのも見どころ…というか聴きどころです。


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February 04, 2017

ロシアの森からこんにちは ユーリー・ノルシュテイン特集上映

Scan7あいかわらず1ヶ月おくれでの感想アップです… ロシアの伝説のアニメーション作家、ユーリー・ノルシュテイン。その特集上映が年末から行われていたので正月早々張り切って行ってきました。その紹介と雑感をば。

☆「25日・最初の日」(1968年)
ロシア革命の日を振り返った勇壮な絵アニメ。一言でいうなら共産主義のプロパガンダアニメなのですが、労働者側の描き方があまりにも迫力ありすぎてあまり正義の側には見えないような。現代人からのフィルターがかかった目から見ているせいでしょうか。

☆「ケルジェネツの戦い」(1971年)
AD988年にあったロシアとタタールの戦いを題材にした作品。バロック調の絵画を切り抜いたような絵柄が独特な印象を残します。クライマックスの激戦はさながら切り絵版『300』のような迫力があります。

☆「キツネとウサギ」(1973年)
前二作とはうってかわった子供向けの動物童話。ただ絵柄はなかなかにシュール。凶暴なキツネに家を追い出されたウサギくん。森の猛者たちは彼を助けようとするがことごとく敗退。誰もがキツネにはかなわないとあきらめたとき現れたのは…
後の「霧の中のハリネズミ」と同様、損得抜きの純粋な友情が胸をうちます。腐女子の皆さんが妄想をかきたてられそう。

☆「アオサギとツル」(1974年)
純情なアオサギと気位の高いツルの擦れ違いの恋模様。まあ最後はうまいとこおさまるところにおさまるんでしょう?と予想していたら笑えるサプライズ・エンディングが。例えて言うならつげ義春の「ねじ式」のような。
淡い色調と細い描線は日本の浮世絵を意識したとのこと。

☆「霧の中のハリネズミ」(1975年)
ノルシュテインの最高傑作との誉れ高い1本。友達の熊のもとへイチゴを届けようとしたハリネズミだが、道は霧が深くどんどん迷ってしまう。「迷う前と後でハリネズミの価値観が変わる」「我々が見ている世界は全体のごく一部でしかない」という深遠なテーマも含まれていますが、それはともかくハリネズミ君がほんと~~~~にかわいい。高畑勲激賞もなっとくの満足感です。

☆「話の話」(1979年)
へんてこな子犬を狂言回しに、脈絡もなくつむがれる幾つかのシュールな情景。ほかの作品はすべて10分ですが、これだけ30分弱です。
十代のころ深夜放送で一度見たのですがわけがわからず、今なら理解できるかな~と再挑戦したのですが、やっぱりちんぷんかんぷんでしたw ただ今回はそのわけわからなさを楽しむ余裕がありました。
解説を読むとどうもノルシュテインの幼少期の記憶や原風景をつなぎあわせたらこうなった…とのこと。そう考えるといろいろうなずけるところがあるような。

Scan6気に入った順は上からハリネズミ、キツネ&ウサギ、話の話…というところでしょうか。噂に名高い傑作を一挙に観られてようございました。
ノルシュテイン特集上映はひきつづき横浜、川崎などで細々と公開中。今回はデジタルリマスターを記念してのイベントだそうなので、近々DVDも出ると思います。


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January 27, 2017

第13回SGA屋漫画文化賞

え… もう13回目なの… 本当、バカみたい
例年なら年末に行う年間漫画ベスト記事ですが、死ぬほど忙しかったので一か月遅れのいまごろになっての発表です。誰も待ってやしないだろうけど…

では各部門の発表にうつります。

090310_130332☆少年漫画部門 井上敏樹・横山一 『仮面ライダークウガ』

現行の平成ライダーの玩具販促が露骨になっていく一方で、残酷性と「ヒーローとは」というテーマを前面に押し出した原点がコミックで復活しました。
最初こそぱっとしない印象でしたが、オリキャラの外道刑事の登場や第二作「アギト」の影がちらついたあたりからグングン面白くなってきました。今後の発展に大いに期待です。
ヒーローコミックでは『鉄のラインバレル』コンビによる『ゲッターロボ DEVOLUTION』も楽しみですが、まだまだ序盤の様子。

Ksks☆少女漫画部門 こうの史代 『この世界の片隅に』

実はこの漫画には何年か前に賞をあげてるんですが、映画化に伴ってひさしぶりに読んでみたらその素晴らしさを再認識というか、前はまだまだ味わい方が未熟だったことに気づきました。そういうわけで再受賞です。
まあここんとこ本当に少女漫画を読んでいないという理由もありますが…
あ、『海街diary』の新刊は相変わらずよかったです。完結まであと1,2巻でしょうかねえ。

Photo☆青年漫画部門 松原利光 『リクドウ』

週刊ヤングジャンプ連載のボクシング漫画。当初は『軍鶏』の影響かひたすらどすくらい人間模様が続いていましたが、最近はそういうものに頼らずともまっとうな少年の成長ストーリーとして、そしてなによりスポーツ漫画としてハラハラドキドキ読めるようになりました。
昨年も申しましたがここんとこ青年誌はヤンジャンが独走状態で『キングダム』『銀河英雄伝説』なども目が離せません。ほかの雑誌もがんばりましょう!

Photo_2☆中年漫画部門 杉作 『にゃん組長』

『クロゴウ』『猫なんてよんでもこない』の杉作先生が次に挑むネコ漫画は、裏社会で孤独を抱えて生きる暴力団組長と、ぐうぜん彼に拾われた我儘な子猫のハートフル・ストーリー…と書くと、なんか違う気がするな。実際は『ホワッツ・マイケル』の「ヤクザK」にかなり近い内容です。
オヤジ漫画誌は相変わらず漫画ゴラクが快調ですね。というか連載作品的に「中年ジャンプ」といっていいような気もします。男塾シリーズとか銀牙シリーズとか。

090906_184610☆ギャグ漫画・ウェブ漫画部門 田中圭一 『田中圭一のペンと箸』

下ネタを扱わせたら右に出る者はいない田中K一先生が、あえてその得意技を封印して、有名漫画家さんたちの素顔をご家族の証言から描き出すという意欲作。さきごろウェブでの連載がめでたく完結し、単行本化もなされました。いやあ、田中先生、こんな心温まる漫画も描けるんですね! やればできるじゃないですか!!
不幸なめぐり会わせで同時に連載されている吉沢やすみ先生のご息女による『ど根性ガエルの娘』も共に読むと、家庭やノンフィクションの奥の深さが垣間見えておすすめ…というか、胃が痛くなります。

20160611_200432☆翻訳部門 『デッドプール Vol.3 グッド・バッド・アンド・アグリー』『グレイソン』

今年は(も?)デッドプールさんの年でありましたが、読んだ中でとりわけ面白かったのが。個人誌の第3巻。70年代の絵柄をトレスしたハチャメチャな前半と暗く重い後半の落差が強いインパクトを残します
もう一作はナイトウィングのコスチュームを捨ててさらに地味になった初代ロビンの活躍を描いたシリーズ。ところがこれがなかなか面白い。特に巻末の一編は読者の推理力が試される意欲作です。

C1o1zgvucaeav7o☆アニメ部門 長井龍雪 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』

昨年より続いているガンダムシリーズの最新作。ぶっちゃけここ数年で一番熱いロボットアニメです。
子供が搾取されてる社会で、それでも自分の足で生きようともがき、戦う少年たち。ブラジル映画の『シティ・オブ・ゴッド』をたぶんに意識しているものと思われます。
ほとんど世界を相手にしてしまっている鉄華団の行く末はいずこか。残りあと10話くらいなのに収拾のつく気配がまったくありません。

そしてトリです。

120107_202925☆大賞 望月三起也先生と『ワイルド7』シリーズ

2016年惜しくも亡くなられた望月先生。その遺作は先生の代表作サーガの最新作『ワイルド7R2』でした。思えば学生時代、入手しづらかった第1シリーズの単行本を探して古書街を歩き回ったこともあったなあ…
巨匠がこの世を去っても、彼が生み出した伝説のヒーロー・飛葉大陸は新たな書き手によってこれからも生き続けると信じたいところです。

いやあ、最近本当に漫画を読む量が減りました。オタクとしてこれはいかんですねえ。今年は忙しい合間を縫っても面白い漫画をバリバリ読んでいきたいです。


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November 26, 2016

呉の花嫁 こうの史代・片渕須直 『この世界の片隅に』

Ksks2016年も残すところあとわずか。そんな大詰めに来て年間ベスト1,2を争うド傑作と巡り合ってしまいました。こうの史代原作によるコミックをアニメ映画化した『この世界の片隅に』、ご紹介します。

昭和初期。広島市に住む「ぼーっとした」少女すずはやがて成長し、呉の青年周作に見初められてその地へ嫁ぐ。慣れない土地でしかしすずは持ち前のおおらかさと周作の愛情により、次第にその家と呉になじんでいく。だが戦局が悪化するにつれ食糧事情はひっ迫。さらに絶え間ない空襲によりすずと家族の神経は次第に疲弊していく。彼女はそんな時代にあっても、なお明るさを失わずにいられるか…

こうの作品に出会ったのはかれこれ10年以上前に出会った『夕凪の街 桜の国』。その叙情性とメッセージ性、構成に感動し、5年後くらいにやはり戦時中を舞台にした本作品にも手をのばしまた。その時もいたく感動しお気に入りの作品になったのですが、「アニメ化進行中」というニュースを聞いても「大丈夫なんかなー」という印象しかなく。それが昨年ユーロスペースで予告編を見たらその見事でさわやかな映像にすっかり心を奪われてしまい、「よっしゃ観るぞおおお!!」という気持ちにさせられたのでした。

この作品が映画になるにはふたつの苦しい戦いを経る必要がありました。ひとつは大口の出資者が見つからずクラウドファンディングという方法で製作費を募らねばならなかったこと。一時など監督のご家族の食費は1日100円という状況にまで落ち込んだそうです。そんな厳しい食生活が偶然にもすずさんちのそれとシンクロしておりました。
もうひとつの戦いは独立問題で芸能界界からほされている元・能年玲奈ののんさんを主演に起用したこと。なんでまたそんなわけありそうな子を…と思ったのですが、「この役をやりたい」というのんさんの情熱とそのあまりのはまりっぷりに監督も感激してすず役を任せたそうです。実際聞いていて海女のアキちゃんの顔が全く浮かばないほど役に同化されておりました。ただそのためにTV関係では全く宣伝してもらえず、どれほどの人に観てもらえるか暗雲がたちこめているような状況になっておりました。
ところが公開されるやいなやSNSの口コミ効果か、公開館60数館にも関わらず週末の興行ランキング10位を獲得。2週目には1週目の売り上げを上回ったというから驚きです。中心館となっているテアトル新宿では連日の満席を記録。そして上映館の数は日を追うごとに増えていっています。
数々の逆境をはねのけてこれだけの成果を収めていることはまことに痛快ですが、それはやはりこの作品の底力があったればこそでして。こうの先生の原作、片淵監督の表現力、そしてのんさん初めとするキャストたちの奇跡的なめぐり会い、これだけの傑出した要素がそろっていて人の心を打たなかったら、もうそれは世の中おしまいってなもんです。

映画が優れている点はやはり色と音がついていること。「楠公飯」にしても「進駐軍の残飯雑炊」にして色がついたことでまるで匂いがこちらに漂ってくるかのような存在感がありました。すずが初めて経験する空襲の時のカラフルな爆発や、水原に描いてあげた兎の跳ねる海の絵も目と脳にさわやかなインパクトを残していきます。ミリタリーマニアであるという監督の飛行機や爆発のサウンドもまるで我々がその場にいるかのような臨場感を醸し出しております。

一方原作には原作ならではの良いところもあります。本編に挿入されるオマケ漫画や、すずたちの日々の暮らしを描いた数ページなどは「漫画にはこういう表現・演出もあったんだ」と思わせるほど自由奔放で楽しい。
そして映画化で大幅に削られたリンさんに関するあれやこれや。映画は映画でマッシュアップするためにこれらのエピソードを削らざるを得なかったのでしょうが、わたしにとってすずさんとリンさんの交流は『この世界の片隅に』おけるとてもひかれた部分だったのでそれらもぜひ見たかったです(エンドロールなどで少し補完されてはいましたが)。

まあ要するに何が言いたいかというと、漫画もアニメもどちらもいいということです。お互いがお互いのいいところを引き立て、補い合ってるような素敵な関係。漫画原作映画は数あれどこれほどに素敵な「結婚」はそうないでしょう。

以下、後半ネタバレしてるのでご了承ください。

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前半のずっとほほんとしてたすずさんも中盤をすぎるとある悲劇を境に激しい悔恨に苦しめられることになります。この作品は状況設定がいわゆる「朝ドラ」のパターンに似ているところもありますが、ここが決定的に違うところかもしれません。すなわち肉体的にも精神的にも人が引きちぎられていくショックをまざまざと見せつけているという点です。前半は皆で楽しそうに笑っている場面ばかりなので、なおさらそれが胸にこたえます。
さらに追い打ちをかけるようにすずは妹から「広島に帰ってこない?」とすすめます。広島がこのあとどうなるか知っている我々とすれば「そこだけには行ってはいかん!」と青筋を立てながらすずさんに叫びたくなります。
あるいはそこですずさんが広島に戻り、原爆のせいでこの世を去ったなら戦争の悲惨さはより一層効果的に伝わったことでしょう。でもこうの先生も、もちろん片淵先生もそうはされなかった。それはおそらくこの作品が「戦争の悲劇性」だけを主眼としたものではなかったから。そのことに本当に「ありがとう」と言いたいです。

あともう一点書いておきたいのがすずさんや周作だけでなく、その周りの人々が誰もかれも本当にいとおしいということ。先にも述べたリンさん、周作の姉の圭子とその娘の晴美ちゃん、すずの幼馴染の水原、最後にすずがめぐり会う広島の少女。もうおっさんで涙腺がバカになっているということもありますが、彼ら彼女らのことを思い出すだけで鼻水がダラダラ垂れてきてしまうのはなぜでしょう。本当に悲しいけれど優しくて一生懸命な「この世界」の人々が大好きです。

こんだけウダウダ書いたあとになんですが、こんな駄文読む必要はないです。ただ映画『この世界の片隅に』を観に行ってほしい。たとえ合わなかったとしても、とりあえず映画館で鑑賞してほしい。こんな風にお願いすることは自分で言うのもアレですけど、数年に一回あるかないかなので。わたしの本気度がわかっていただけたでしょうか。

Sga1いつも以上にとっちらかったよくわかんないレビューとなってしまいました。好きなものを効果的に語るのって本当にむずかしい。『この世界の片隅に』は現在のところこちらの映画館で公開中・公開予定。今年突発的に生じた日本映画ルネサンスはここに至って頂点を迎えたといっても過言ではありません。その「事件」をぜひご自分の目で確認していただきたいです、


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November 04, 2016

ナニワ陰陽道 奥浩哉・さとうけいいち 『GANTZ:0』

Gantz012004年アニメ化、2011年実写映画化、そして2013年堂々連載完結した『GANTZ』。
このまま勢いも収束していくかに思われましたが、ここに来て突然の新作CGアニメが公開となりました。『GANTZ:0(オー)』ご紹介します。

死んだ者を生き返らせ、ゲームのコマのように得体のしれない怪物と戦わせる謎の球体GANTZ(ガンツ)。通り魔の犯行を防ごうとして命を落とした高校生・加藤勝もまたGANTZに召喚され、第二の生を得た。わけがわからぬまま、彼はこれまでゲームに参加してきた者たちとともに、そのステージである大阪の地へと転送される。だがその地で遭遇する怪物たちは、先の参加者たちでさえ怖気をふるうほど圧倒的に強大な存在であった。たった一人の身寄りである弟のもとへ帰るため、加藤はその不条理で絶望的な戦いに身を投じる。

というわけで今回映像化されたのはシリーズでもやや中盤を過ぎた「大阪編」。ここでは本来の主人公である玄野計が死亡しているため、副主人公的な存在である加藤君がお話を引っ張っていきます。ちなみに最初ひねくれていた(だんだんいいやつになっていくんですが)「ごく普通の高校生」玄野に比べると、加藤君は他人のために命を張るのをいとわない、まさに正義の味方のような青年です。

だいぶ前に書いた原作漫画の紹介記事でも触れましたが、『GANTZ』の魅力というのは「死がすぐそばまで来ていて、それを鼻先で交わしていく恐怖感、緊張感、高揚感、爽快感」「不条理極まりなくてユーモラスなんだけど、過剰なまでに残酷だったりするヴィジュアル」にあると思っています。「大阪編」はそうした『GANTZ』の持ち味がピークに達したエピソードと言っても過言ではありません。今回の敵はぬらりひょん、天狗、ダイダラボッチといった日本古来の妖怪たち。ぱっと見クスッと笑ってしまうような外見です。でもこいつらがものすごく強い上に残酷度も半端ない。何度もゲームをクリアしてきた猛者たちですらあしらわれてしまうほどに。原作を読んでいた時、自分は何度も何度も「いや、こんな文字通りのバケモノたちを倒せるわけないだろ…」と震撼いたしました。この度の劇場版は先に原作を読んでいたのでなんというか再確認みたいな鑑賞になってしまったのですが、初めてこのエピソードを見る人はもっともっとこの絶望感とカタルシスを味わえるんだろうな…と少しうらやましく思いました。

あと前の実写版(特に第1部)もがんばっていましたが、『GANTZ』に登場する装備や怪物を最も迫力豊かに描けるのは、やはりこのCGアニメという手法かもしれません。特にこの大阪編に登場する巨大ロボのインパクトと存在感は、紙上に描かれた絵をはるかに上回っておりました。はっきり言うと『パシフィック・リム』みたいでした。「大阪編」はパシリムより前に描かれているので「真似した」ということはないと思うのですが、映画版では動きや構図の点でもいかにもパシリムを意識したシーンが幾つかあって嬉しくなっちゃいましたね。残念なのは(これは原作にも言えることですが)この巨大ロボットの出番があまり多くはないこと。これを最初から最後まで大暴れさせてくれたらもっとよかったのに… まあその辺は次回作に期待するとしますか。ていうか次回作あるのかしらん(^_^;

少し残念だった点。未映像化だった「大阪編」をやると聞いたので、「もしかしたら実写版の続きなのかも?」と淡い期待を勝手に抱いたのですが、そちらとは関係ない完全リブートというかパラレルワールドのような仕様になっていたこと。実写版の結末はあまりに玄野君が気の毒でわたしはまだ納得がいってないんですよ! でももうさすがにあちらのその後が語られることはないんだろうなあ~ もう自分の脳内で独自に妄想を繰り広げるしかないんだろうなあ~ つか、今回も玄野くんえらい損な役回りでしたね… 続編が作られないとこのまま死にっぱなしなんですが。

45697048あまり「大ヒット!」とはいかなかったのでさらに映画が作られるかは微妙ですが、やるならばおそらく後半の山場である「カタストロフィ編」妥当なところでしょうか。あるいはもう原作は無視してオリジナルのエピソードを作ってしまうか。どちらでもいいのでこのCGアニメの新たなる可能性を探求し続けていってほしいものです。

『GANTZ:0』は現在全国の映画館で公開中。あと奥浩哉先生の漫画で『GANTZ』と同じ路線の『いぬやしき』がそろそろクライマックスに突入している感じです。興味を持たれた方はこちらもどうぞ。


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