『べらぼう』を雑に振り返る 10月編
脚本家の森下先生がここに来て4話ごとの振り返りを始められたので、わたしも負けずに頑張ろうと思います。そんなわけで10月編。
☆第37回「地獄に京伝」
春町と喜三二が去り、蔦重の手元に残った強力なカードはいまや歌麿と京伝のみに。だが京伝はご政道を批判する蔦重の方針に尻込みしてしまう。
ここから数回にわたりスポットが当てられる山東京伝。いかにもナンパそうな名前の恋川春町が堅物で、剣豪みたいな名前の山東京伝がお調子者というのは面白いですね。
このエピソードで興味深かったのは「面白けりゃいい」という京伝と「風刺がなきゃダメ」という蔦重の対立。最近ネットでもこういう論争ありましたが、自分は「どっちもそれなりにないとダメ」派です(ぬるい)。ジャンル・メディアってのはいろんなものがあってこそ栄えるものだと思うので。
蔦重も定信も「春町の死を無駄にしたくない」という気持ちは一緒なのに、思い切り正反対の方向に向かってしまう。この辺のすれ違いも歯がゆうございました。
この回の『風雲児たち』ポイント:尊号問題一件。これ図にでも書かないとわかりづらいのでは…
この回の使える故事:「韓信のまたくぐり」
☆第38回「地本問屋仲間事之始」
京伝と蔦重は見事に決裂。それでも周囲の言葉に耳を貸さず、定信への反抗を試み続ける蔦重。一方そのころ歌麿の妻おきよは病魔に侵されつつあった。
先回あたりから権威があるのをいいことに威張り散らかす蔦重。少し前まで誰にも優しい好人物だったのに、どうしてこう感じ悪くなっちゃったのか。まあ面白い大河ってのは、主人公のダメな面・ダークサイドも巧みに描くものが多いですんけどね(その最たる例が『鎌倉殿の13人』)。もっともそれを強調しすぎるとさすがに観ていて辛くなることも。
しかしこれまでの人徳もあり、本屋仲間たちは京伝も含めて次々と彼の計画に賛同してくれることに。これで上り調子になるかと思いきや…
そしてあまりにも凄惨なおきよの最期。天(森下)はどこまで歌麿を苛むのか。喋れなかったおきよさんの唯一セリフあるシーンには胸がズキュンとしました。
☆第39回「白河の清きに住みかね身上半減」
蔦屋の出版物はとうとう定信の逆鱗に触れ、重三郎と仲間たちは投獄されることに。おていは彼を救うために定信付の儒者に嘆願を試みる。
というわけで歴史の年表の中では蔦重が最もしんどかったであろう「身上半減」のエピソード。これ実際はどういう刑罰だかよくわからないそうで、スタッフの皆さんが知恵を絞った結果ああいうユニークなものになったそうです。
今までさんざんボコられてきた蔦重も、伝馬町のプロの仕置きはこたえた様子。さらにおていさんに突き飛ばされ、鶴屋さんにこっぴどく叱られ… 自業自得なところもありますが、さすがに気の毒になりました。とばっちりでやはり牢屋でしばかれ、「蔦重が書けっていったんです!」と音を上げる京伝。先回の心意気はどこへやらですが、ネットでは「その通りだよね」とみんな彼に同情的でした。
ただ大衆から「身上半減」をからかわれても逆上したりせず、次のアイデアを思いついちゃうところは蔦重ならでは。彼の再起を予感させます。
この回の『鬼平犯科帳』ポイント:葵小僧の一件。池波版で珍しく史実に材を取った一編がありました。えぐい話でした。
☆第40回「尽きせぬは欲の泉」
お上からの処罰に大打撃を受けた蔦屋。だが彼の元に次々と新たなる才能があつまり始める。そして歌麿も蔦重の説得に心を動かされ…
「これまでありがとう蔦重! 化政文化は俺たちに任せろ!」的な次世代スター、曲亭馬琴や葛飾北斎が本格的に登場。いよいよお話も終盤にさしかかってきたな…としんみりしてきたり(写楽はこの時点で気配すらありませんが)。馬琴はとても面倒くさそう、北斎は全然遠慮なさそう。そんな二人が激突しないはずはなく… まあなんか楽しそうな喧嘩ではありましたが。「手をケガしないように気をつけろよ」とこれまた「そういうところですよ!」とツッコみたくなる蔦重の注意。
失意の歌麿も創作意欲を取りもどし、こりごりだった京伝もおだてにのせられて復帰することに。絵も描けて文才もあって色男で歌もうまい京伝先生。普通なら嫌味になりそうなのに、この性格がなんともにくめません。
放送の方はいよいよ今日を含めてあと2回。どんなクライマックスが待っているのでしょう。


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