2024年10月に観た映画
お、一月前に追いついて来た。今年はなかなか優秀であります。では10月に観た映画の覚書を
☆『トランスフォーマー ONE』
最近「宿命のライバルが昔は仲良しだった」という路線が人気なんですが、その先駆け的な作品。長年因縁の対決を繰り返してきたコンボ…じゃなくてオプティマスとメガトロンは元々親友だった!という出だしから始まる本作。ブラック企業から搾取される若者たちの苦労話なあたりはちょい前の『エイリアン ロムルス』ともかぶっております。
CGアニメだったらスルーでいいか…という気分だったわたしを動かしたのは、これが3DIMAXで観られると聞いたので。最近めっきり減りましたよね、3D作品。キャラクターが広大な都市を背景に宙を落下したり縦横無尽に飛び回ったりする映像は大変3Dの大画面にマッチしていて見応え十分でした。悲しいのはその大画面のスクリーンの観客がわたし一人だったということです。
トランスフォーマーと言えばトラックや乗用車といった実際にある地球の乗り物に変形するのが特長。今回は彼らが地球に来る前なので、それっぽい未来メカみたいなのに変形しててごまかしてたのはご愛敬でした
☆『憐みの3章』
春にオスカー関連で話題を呼んだ『哀れなるものたち』が記憶に新しいヨルゴス・ランティモス監督最新作。今回もなかなかにぶっとんだ作風で、しかも不条理具合にさらにアクセルがかかっておりました。
それぞれに独立したと思しき三つの物語。ただ同じ役者さんがそれぞれのエピソードで違う役で出てきたりするので、章がおわるごとに頭を切り替えていかねばなりません。で、この3幕がどれも底意地が悪いというか、悪魔的というか、痛々しい話で正直不快感をぬぐえませんでした。でも面白いかつまらないかといえば、ちょっと面白いのが困ったところです。
そんなわけであまり好きなタイプの作品ではないのですが、3編の意外な共通項が明らかになるラストカットだけはなかなか可愛らしくて気に入りました。
☆『シビル・ウォー アメリカ最後の日』
2週連続不穏なジェシー・プレモンス。個性的なアイデアのアート系作品を多く輩出しているA24の最高収益を達成したという作品。恐らく来年のアカデミー候補は間違いないかと(はずれたりして)
独裁者が大統領になってしまったため、壮絶な内戦が勃発してしまったUSA。その最前線をカメラでおさめるべく、現地を旅するジャーナリスト一行が我々の目となります。最初から最後までずっとヒリヒリした緊張感が続くのかと思いきや、のどかな風景と穏やかな楽曲のせいか、意外と心休まる場面も色々ありました。
あらすじだけ読んで今の戦争が絶えない世界への批判的なものでもこめられてるのかな…と予想してましたが、そういう社会風刺よりも、ジャーナリストたちが目的のために徐々に人でなしになっていくような、人間の暗部の方がメインとなっております。この辺やっぱり『エクスマキナ』『MEN』といったやはり意地の悪いアレックス・ガーランドの色が出ておりました。
それにしてもアメリカがこんなファシスト的な国になるかねえ…と思ってた矢先に某氏が大統領に返り咲いてしまったのでたまげました。映画のようになりませんように。
☆『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』
アメコミ映画でありながらカンヌを沸かせ、日米ともに大ヒットを記録したあの『ジョーカー』の続編。収監されたジョーカーが運命の恋人に巡り合って再び覚醒。息詰まる法廷劇へと発展していきます。
これが公開されると米国ではめちゃくちゃ評判が悪く売り上げも壊滅的。前作の神がかりぶりはなんだったのか…という評判が聞こえてきました。ところが日本でのみなさんの感想を聞くと「つまらないけど嫌いになれない。むしろ好き」という方がいっぱいいて。こういうこともあるから映画ってやつは面白いですね。
自分は普通に予想のつかないストーリーが面白かったし、ジョーカーが法定で「復活」するところは大興奮でした。ところがそこからストーリーはどんどんカタルシスを否定する方向にすすんでいくのですね。ジョーカー(アーサー)が刑務所も司法もぶっこわして、悪のカリスマとしてさらに凄みをましていく… みんなが見たかったのはそういう話では。でもそれでは前作の「なぞり」でしかなくなってしまう。監督が今回やりたかったのは分不相応な男がカリスマに祭り上げられてしまったら、そのあとどうなるか…という話っだったのだと思います。
観終わったあとなんかむなしい気持ちにはなりましたが、自分もやっぱりこの映画が嫌いになれません。不思議な作品でした。あとレディ・ガガの歌う『クロース・トゥ・ユー』が良かったです。
☆『ボルテスV レガシー』
オタクなら誰でも知ってる、一般の人はあんまり知らない、そんな往年のスーパーロボットアニメ『ボルテスV』が、なぜか大ヒットしたフィリピンのスタッフの手によって大体そのまんま実写化されてかえってきました。ただ今回劇場でかかったのは92話に及ぶテレビシリーズの本当に序盤だけなので、壮大なるプロローグだけしか観られなかったりします。
なんせガンダム以前の熱血主人公が中心だったころの作品なので、ムードが全体的に熱(苦し)い。その上フィリピンのお国柄スパイスがふんだんにまぶしてあってさらに熱(苦し)い。この辺多少の耐性が必要かとおもわれます。
一方で最新のCG技術で再現された合体シーン、巨大ロボ戦は本当にいい意味で熱い。なぜ映画館で映画を観るのかと言われれば、それはでかいものをなるべくでかく観るためです。その意味では十分に映画館向きな映画でした。全編劇場でやるのは無理でしょうけど盛り上がる完結編はスクリーンで観たいものです。
☆『カミノフデ』
特撮界の造形カリスマ・村瀬継蔵氏が監督を務めている特撮怪獣映画。一般的には夏に公開されたのですが、自分は10月に行われた第7回熱海怪獣映画祭にて鑑賞して来ました。大変残念なことにこの映画祭の少し前に村瀬監督が亡くなられ、この映画が遺作となってしまいました。
とある造形作家の追悼展から始まるストーリーが、図らずも現実とシンクロしてしまったというか、このことを予見していたのか。そんなわけでややしんみりした形で鑑賞することとなってしまいました。怪獣映画と書きましたが、怪獣よりも十代の少年少女の冒険や世代を越えた絆と和解の方がメインかもしれません。
最近めっきりマンホール女優のイメージが強くなってしまった釈由美子さんがやはりマンホールに興味を持っていたり、翌日飛び入り参加された樋口真嗣監督がちょっとぎごちない演技をされてたり、マニア的な視点でくすくす笑えるところがあり。追悼式に不謹慎でもうしわけございませんでしたが、直前に怪獣イラストコンテストの授賞式もあって多くの笑顔に包まれていて、こういう見送り方もいいんじゃないかと思いました。
次回は『ヴェノム ザ・ラストダンス』『十一人の賊軍』『八犬伝』『グラディエイターⅡ』『最後の乗客』『リトル・ワンダーズ』『ザ・バイクライダーズ』について書きます。
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