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December 29, 2023

2023年11月に観た映画

2023年も残すところあと数日。やばいぜ… 悪あがきのように11月に観た映画の寸評を書いてみます。

☆『オオカミの家』

チリ製作のストップモーション・アニメ。かの国でかつて栄えた「コロニア・ディグニダ」というカルト組織をモチーフにしております。この教団に関してはエマ・ワトソン主演の『コロニア』という映画を観ていてちょっとだけ知っておりました。

ホラーの名手アリ・アスターが大絶賛したということで「そんなに怖いのか…」とビクビクもので臨みましたが、トラウマになるほどではなかったです。でもまあ確かに話といいグニャグニャした画風といい趣味は悪い。単に絵的なセンスだけだと『ポプテピピック』内で多くの視聴者を当惑させた「ボブネミミッミ」とちょっと似てます。

この映画は久しぶりに鎌倉方面のパン屋さんと兼用で営業されてるミニシアター「シネコヤ」さんで観ました。席数が限られてるとはいえなかなか盛況だったのでなんか嬉しかったです。

 

☆『ゴジラ-1.0』

すいません、大体ネタバレで… 本年度邦画界における最大の話題作の1本。舞台は初代ゴジラが現れた1954年より数年前。ライバル怪獣も超兵器もなさそげな中、あの怪獣王をどうやって倒すのか…というのが大事なポイントのひとつです。もう一つの重要ポイントは神木隆之介君演じる主人公が特攻隊の生き残りだということ。こないだの『クリエイター』もそうでしたが、やっぱりみんな「誰かが身を犠牲にしてみんなを守る」という話が好きなんですよね。日本だけでなく世界的に。しかしそれを元特攻兵にやらせるのはとてもイヤだな…と思っていたので、一応否定する形で終わったのにとても満足しました。

満足したといえばクライマックスにおいて〇が吹っ飛んだゴジラのビジュアルが見られたのも良かったです。映画館に何故行くかといえば、でかいものがでかく見えるからであります。今回はビッグスターゴジラさんの初めて見るあんな映像、こんな映像がいっぱいあったのでそれだけで大興奮でした。あと決戦における「やったか!」「ダメか…」の繰り返しは3ループくらいがベストですね。それより少ないと物足りないし多いとダレる。この辺は洋画の子たる山崎貴監督の真骨頂でありました。

ただいかにも朝ドラ然とした丁寧な?お芝居、脚本が苦手に思った方も多数おられるようです。自分は朝ドラにも慣れてるからいいけれど、この辺やっぱりどんなに白米(映像)が上級でも、上に納豆をかけられちゃうと拒否反応が出ちゃう人もいるということなんでしょうね。

一方でこの作品、既に米国でも公開され、売り上げも評価も邦画としては近年稀に見る数字をたたき出しています。日本人からするとくどく見えるお芝居も、向こうの方々にはあまり気にならないようで。自分も欧米や韓国の映画観てる時、あまり「おおげさだなあ」とは感じませんしね。むしろ「向こうの人だったらやっぱこれくらい怒るよな」とか思います。

 

☆『キリエのうた』

長年映画ファンを自認している身ではありますが、実は岩井俊二作品初挑戦。岩井ファンに言わせるとこれは彼のキャリアの中でもイレギュラー的な映画だそうで。現役シンガーが主演ということで勝手に流しギタリストロードムービーみたいなものを予想してました。が、だいぶ違いました。ずっと集中して観てられたのですが、何故か体感時間は『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』より長く感じました。個人的には主人公二人が砂浜で寝そべってるところで終わった方がいいんじゃないか…と思いましたがまあこれは好みの問題ということで。

ベスト恋愛映画に『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』をあげていた岩井さん。そういえば先のガンダム最新作もシスターフッドの話で主題歌がアイナ・ジ・エンドさんでした。単なる偶然だとは思うのですが

 

☆『マーベルズ』

マーベル・シネマティック・ユニバース最新作。スーパーヒロイン3人組が宇宙をまたにかけて活躍するお話。心身共に人間離れしたキャプテン・マーベルと、彼女に憧れるキャピキャピした女子高生のミズ・マーベル、そしてそんな二人に挟まれて色々苦労するモニカ・ランボーさんという取り合わせが観ていて愉快でした。能力を使うたびに彼女らの座標がという設定も独特でよかったです。

ただこの作品、ディズニープラスのドラマのあれやこれやを観てないと色々脳内補完が必要だったりします。全部観てる自分のような者からすれば「これがあれにつながるのか!」とご褒美が満載なのですが、ライトな映画だけしか観てないファンにとっては「ついていけんわー」となってしまった模様。

今年はアメコミ映画の(主に商売的な面で)衰退が強く感じられた年でした。自分は最後の瞬間までつきあいますけどね… あとドラマ『ミズ・マーベル』はパキスタンのこちらではあまり知られてない歴史をわかりやすく説明してくれるのでおすすめです。

 

☆『スラムドッグズ』

ひどい飼い主に捨てられたワンコが、愉快な仲間たちを得て主人に復讐する話。全編にワンコのモノローグが流れながら進行していくのですが、とにかく下ネタが多い。あと製作にフィル・ロードとクリス・ミラーが入ってるので当然のようにドラッグネタがあります。

もしかしてワンコを捨てた後で人間がその大切さに気付いたりするのかな…と甘っちょろい期待を抱いていましたが、そんなことは全くなく。映画史上最低最悪の飼い主と言っても過言ではないかと。毒親を愛していた子供が自分の思いに踏ん切りをつけて、その呪いから自由にされる話なのかもしれません。そんな毒親を下半身丸出しで熱演してたのはコメディアンでもあるウィル・フォーテ。『ネブラスカ』では親を思う優しい息子を好演していたのに…

あとマギーという雌犬の声を上品そうな女性が声をあてておられました。下ネタの多い脚本だったので大変だったのではなかろうか…と労りの気持ちで日本語版エンドロールを確認したらモデルのマギーさんでした。お疲れさまでした。

 

☆『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

この児童書のようなタイトルに「どうしよっかなー」と鑑賞をためらっていたのですが、観てみてびっくり。「鬼太郎」を題材にしながらも、まるでパルプフィクションのように絶望的かつ美しい友情物語に仕上がっておりました。大沢在昌先生は「ハードボイルドというのは自分にとっては無関係だった二人がつかの間に触れ合い,そして別れていく物語」とおっしゃってましたが、そういう意味では上質のハードボイルドとも言えます。

パルプフィクションといえば戦争の影がまだ色濃く残る時代に、心に傷を負った男が権力者たちのスキャンダルに入り込んでいく…というところも共通しています。ルックスはだいぶ違いますが自身戦争で筆舌に尽くしがたい経験をされた水木先生の人生も「水木」に反映されております。

自分は鬼太郎関連でいうと元祖とも言える『墓場鬼太郎』が好きなのですが、あれはけっこう「水木」が悲惨な役回りなのでこちらを観た後に「墓場」を鑑賞するときついかも。「墓場」は完全なる別ギャグバージョンとして楽しみましょう。

 

12月の記録を年内にまとめるのはあきらめました。明日は2023年の映画ベストを発表いたします。そうできたらいいなあ(弱気)

 

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