『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑨9月編
第34回「理想の結婚」
後味の悪い頼家暗殺の後、鎌倉は実朝を中心とした体制を一層強いものとしていく。さすがに自分の罪の重さに落ち込んでいた義時だったが、影の薄さナンバー1だった13人の一人二階堂行政から孫娘を嫁にとすすめられ、年甲斐もなく(地味に)浮かれ出す。
タイトル元は『最高の離婚』でしょうか。たぶんまだ1204年ごろのお話。陰残な内ゲバがず――――――っと続いていて疲れ切った視聴者たちに、オアシスのように訪れた息抜き回。「義時最後の妻」である「のえ」さん、清純派であまり菊地凛子っぽくないなあと思っていたら終了間際にやらかしてくれたというか笑わせてくれたというか。これをもって義時の「おなごはキノコが好き」説は完全に誤りであったことが証明された感。
この回は実朝を鍛えるべく各御家人たちが各々得意分野を代わる代わる教授するシーンも楽しかったですね。義村の「おなごとのあとくされの無い別れ方」講座はいらない、というか無い方がいいと思います。
この回の重要なアイテム:何度目かの山盛りキノコ ナベになった鹿之助
第35回「苦い盃」
実朝がまだ若いため、実質鎌倉のトップに立っているのは執権・北条時政。だが基本は田舎のおっさんなので、その治めっぷりは情に流されやすくいい加減な采配も多い。そこへ来て妻のりくに煽られて、さらなる領地拡大を狙い始める。そのことが発端で、婿であり同胞である畠山重忠との間柄に亀裂が入っていく。
前回に引き続き笑える場面も多いのですけど、それと並行して畠山さん退場の前奏曲が奏でられていくのがつらい回。引き続き、といえばいまひとつ掴みどころのなかった実朝君はアットホームな和田邸で鹿鍋をいただいてから、どんどん彼と奥さんになついていきます。その様子が大変微笑ましいのですけど、不在の間に御所は大騒ぎになってしまい、こいつら絶対あとですげえ怒られるぞ…とハラハラしました。
そして抜き打ち的に出てきた謎の老婆=大竹しのぶ。悩める実朝君に「お前の悩みはお前だけのものではない」と、見かけとは裏腹にとてもいいアドバイスを送ります。それを聞いてさめざめと泣く実朝君。なんていい子なんでしょう。前二代がアレすぎたというのもありますが、この子は一体誰に似たのでしょう。
この回の重要な教訓:よくわからない書類にハンコは押さない 雪の日は出歩かない たまには風呂に入る
第36回「武士の鑑」
悪妻に煽られまくった時政パパはとうとう重忠を陥れることに成功。ここに「畠山重忠の乱」が勃発。ただ重忠は軍勢を集めることはせず、恭順もせず、少数の兵で武士の誇りを守ることで歴史に名を残そうとする。
1205年の出来事。この回はもう畠山重忠&中川大志君の独壇場でありました。顔もいい、頭も切れる、武芸も達者となればちょっと嫌味なキャラになりそうですが、おごるところは少しもなく、質実剛健を地で行く畠山殿にただただ感服し、泣かされた回でありました。まだ若いのに貫禄たっぷりにそれを演じきった中川君がまたすごい。
また、悲痛なエピソードに笑いを添えてくれた和田さんとのあれこれも印象深かったです。「あいつとは同じものを感じるのです」とか「なんでわかったんだ!」とか「腕相撲で決めよう」とか。この「美男と野獣」コンビも見納めと思うと寂しい限りでした。クライマックスにおける小四郎との『クローズ ZERO』みたいなヤンキーバトルも迫力ありましたね。
結局なんでいるのかわからないままに足立遠元氏もこの回でフェードアウト。「13人」も残り7人となりました。
この回の重要なアイテム:重忠と和田さんの別れの水杯
第37回「オンベレブンンビンバ」
時政の悪政により無実の罪で討たれた重忠。鎌倉でさらなる悲劇が起こらないようにするため、政子と義時は父と戦う決意を固める。両者の激突は必至…かと思われたが、なぜか時政は酒と魚持参で一人政子たちの元を訪れる。そして北条親子の最後の宴が始まる。
突然の謎タイトル。ネットでは「イタリア語で『子供のための影』の意味では」という考察が流れてましたが、単に大姫の呪文「オンタラクソワカ」を適当に覚えていた、ということでした。誰もちゃんと覚えていなくて放送禁止すれすれのワードまで飛び出して来ましたが、そのあまりの和やかさに「毎回こういうのでいいんだよ! もう史実も無視していいから!!(駄目です)」と思わずにはいられませんでした。
時政さんも色々ひどいことやってんですけど、「もうこここまでかな」と悟ったような笑顔を見せられると坂東彌十郎さんの人柄もあってか、速攻で許したくなってしまうのがずるいですね。和田さんが結果的に上総広常の思い出話をしてたのにも和みました。
この回の重要でもないアイテム。トキューサがモチモチモチモチしてた餅
先ごろ「全48回」という発表がありましたので、『鎌倉殿』もあと残り11回。早くも寂しくなってきました…
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