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July 31, 2022

2022年6月に観た映画

☆『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』

企画の情報を聞いた時は多くのファンが「正気か…」と感じた『機動戦士ガンダム』第1作の番外編。ほぼ外れのない「ファーストガンダム」テレビシリーズにおいて、ただひとつ「微妙」とされているエピソード、「ククルス・ドアンの島」の島を安彦良和御大自らがリメイクした作品。なんだかんだで上半期とりわけ楽しみにしていた1本です。

オリジナルはまだ兵士となることになじめずよくごねていたアムロ君が、突然「いい子」になってしまった印象があるのですが、こちらでは彼特有の繊細さ・多感さも残しつつ少年らしい純真さもあり、わたしたちが良く知ってる「アムロ」になっていたと思います。

全体的な印象としては安彦版『未来少年コナン』みたいなところがあり。ロボットの見せ場もちゃんとありますけど、「人間やっぱり額に汗して働いて飯を作らにゃいかんのだ」というメッセージが伝わってきます。この辺ミスターガンダムの富野由悠季氏と比べると安彦監督はもっとシンプルで健康的な作家だなあ…と改めて感じました。

特にテンションが上がったのは雷鳴・お馴染みのBGMと共にクライマックスでガンダムがヌオッと姿を現すシーン。あとさすがにTV版から40年以上経ってるので、オリジナルの声優さんたちのほとんどが鬼籍に入られてしまったことを実感してしんみりしちゃいました。いまなお現役の古屋徹・池田秀一・古川登志夫3氏はいつまでもお元気でいてください。

 

☆『トップガン マーヴェリック』

これまた80年代の超懐かしい洋画の、だいぶ年を経た「その後」を描いた映画。公開予定が遅れに遅れまくったため実に2年近く予告編を映画館で観させ続けられた作品です。

かつて海軍きっての暴れん坊パイロットだったマーヴェリック。しかし時代は無人操縦の戦闘機が主流となりつつあり、彼のような個人技にモノを言わす飛行機乗りは必要とされなくなりつつあった。そんな中無人機では達成が難しいミッションが発生。マーヴェリックは若き「トップガン」たちを作戦から生還させるため古巣に教官として舞い戻る。

既にいろんな方が言ってると思いますが、空戦も生身の危険な撮影もハイテクのおかげで人間がやる必要がなくなりつつあります。でもそれは「今日じゃない」と言わんばかりに飛行機にとびついたり戦闘機を操縦したりするトム・クルーズ。「体を大事に…」と思いながらもその超絶アクションには感嘆せずにはいられませんし、ネームバリューと共に他の追随を許しません。昔の『トップガン』では役柄はともかく素のキャラはそんな無茶ばかりやるような方ではなかったのですが… 40年近く年が流れたうちに中の人までマーベリックになってしまった感があります。

あともう一点驚いたのはそんなにド派手な題材でもない、かつて1本だけ作られた映画の続編が、日米ともに爆発的なヒットを飛ばしているということ。先に懐かし映画の続編と言えばマトリックスやゴーストバスターズもありましたが、これらはそんなに話題にならなかったような。もちろん「出来がいいから」というのはあるでしょうけど、それだけでは映画はここまで売れないもので。二年間予告編が流れ続けた効果もあったのか… 謎であります。

わたしといえば昔の『トップガン』にいい印象がなかったのとやけに売れてるのでやや斜に構えながら鑑賞してたのですが、アイスマンとの友情や親友の息子ルースターとのわだかまりが解けるところなどはブシュッと鼻水が噴き出たりしました。あと前作『オンリー・ザ・ブレイブ』が大コケした(いい映画なのに…)ジョセフ・コシンスキー監督が大大ブレイクしたことも喜ばないといけません。

 

☆『FLEE』

アニメ映画でありながら今年のアカデミー賞で国際長編部門・ドキュメンタリー部門にもノミネートされた骨太の作品。アフガンで生まれた青年が苦労して欧州に逃れた後で、思い出したくなかった過去の経験を少しずつ振り返っていく内容。難民というだけでも大変なのに、彼はゲイゆえに同胞からも疎まれるという辛い背景があります。

そんなわけで胸と胃がキリキリするようなエピソードが多く語られるのですが、彼の持ち前の明るさか、監督の語り口ゆえかほっこりしたり笑わせてくれるところもチラチラあるのが救いだったり。亡命する時居合わせた美青年に恋しちゃったりとか、初めてゲイクラブに行った時のいきさつだったりとか。主人公が憧れてるのがジャン・クロード・ヴァン・ダムだったりとか。今年はなぜかヴァン・ダムオマージュを各所で見かけたり本人もがんばってたりヴァンダム再評価の年でありますね。

あと平和な国に住んでる我々とは程遠い話のようで、「周囲の期待と自分の望みが反するゆえに苦しむ」というあたりはどこにでもある経験だな、と思いました。

 

☆『鋼の錬金術師 完結編 反逆者スカ―/最後の錬成』

荒川弘先生の名作コミックを、連載20周年ということで実写版も完結させた二部作。先に製作されていた第1作が評判も興行も芳しくなかったのによく踏み切ったな…と変に感心してしまいました。でもまあ見てみると映画紹介漫画『邦キチ 映子さん』で言うところの「ヅラ感」が気になりつつも演者さんがみながんばってたり、原作の重要エピソードをちゃんと取捨選択して編集してたりして、尻上がりに印象がよくなっていきます。特に第3作は山田涼介君・渡邉圭佑君・内野聖陽氏三者がそれぞれに「顔は同じなんだけど人格が違う」2役をそれぞれ上手に演じ分けしていて感心しました。また、スカ―役の新田真剣佑は『ジョジョ』の時を彷彿とさせるような役への憑依ぶりが見事でした。あと原作読んでだいぶ経ってるので久しぶりに思い出したキャラ・話が多数あって色々懐かしい気分にさせてもらいましたよ。

 

☆『ベイビー・ブローカー』

世界でも評価の高い是枝裕和監督が舞台・キャストともに韓国で撮影した作品。いわゆる「赤ちゃんポスト」を利用して乳児の売買を企む二人組と、赤ん坊の母親のロードムービー。主演はやはり世界的名声を誇るソン・ガンホ氏なのですが、監督の性向ゆえか小悪党なのに仏のようにやさしい。いつものガンホさんだったら「シバ〇マ!」と叫んで切れ散らかしそうな場面でも、穏やかに「仕方ねえなあ」と微笑みを絶やしません。自分はそんな誰にでも優しい視点がすごく心地よかったのですが、実際によくある社会問題を題材にしてるゆえに「そんな綺麗ごとで納まるわけねえだろ」と感じられた方もおられるようで。まあでも、是枝さん、この映画のガンホさんとその弟分のような優しさは忘れずにいたいと思います。

 

7月は頑張って10本くらい観ました。次回はその前半の『ロストシティ』『エルヴィス』『バズ・ライトイヤー』『モガディシュ』『ソー ラブ&サンダー』などについて書ければ

 

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July 17, 2022

2022年5月に観た映画

2ヶ月以上前の記憶を掘り起こして書きます。

☆『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』

いまやMCUにおいて中心人物の一人となってしまった感のあるストレンジ博士、単体としては5年ぶりの続編。元カノの結婚式に意気沈々として向かった彼のもとへ、「多元宇宙」から逃亡してきた少女が現れる。ストレンジはその手の問題に詳しいワンダの元を訪れるが…

恐らく今回はコミックの『アベンジャーズ ディスアッセンブルド』を底本にしているかと思われます。当時人気の低迷していたアベンジャーズを、編集部が「一度ぶっこわすか!」ということでワンダを闇落ちさせ、チームを壊滅にまでおいやったというひどい作品です。そんなわけでコミックファンには前知識があるからいいけれど、映画ファン&お子様たちにはかなりショックな内容。原作と同じくまたヒーローとして復帰することを願ってやみません。

ショックと言えば久しぶりに映画監督として復帰したサム・ライミ氏が、MCUの世界観を尊重しつつも彼独特のグロ描写を惜しげもなく発揮しまくったことでも話題になりました。この辺彼のファンからは長年忘れていた「おふくろの味」に再会できたようでたまらなかったみたいです。

面白かったのは、この作品には4バージョンのストレンジ先生が登場するのですが、本家以外はみんな闇落ちしてるのですね。それくらいついダークサイドにいってしまいそうな下地がある人なのです。しかしそれは「素質がある」というだけで絶対的なものではない。先の『スパイダーマン』で悔いながらもピーターを救えなかった先生が、今回は同じ思いを繰り返さないために一人の少女のために奮闘します。そして「このストレンジのいる世界に来てよかった」と彼女が笑顔で言うところにおじさんの鼻水が噴き出ました。

一点不満というか要望を言わせてもらうとシュマゴラスという名前だったガルガントスというキャラクター、大きなお目目がかわいかったのにあっさりやられてかわいそうでした。こちらも次回は善玉として復活させてあげてください

 

☆『スパークス・ブラザーズ』

実に50年以上活躍している米国の兄弟バンドを題材に、『ショーン・オブ・ザ・デッド』などで知られるエドガー・ライトが監督したドキュメンタリー。わたし彼らのことはなんも知らなかったのですが、監督の映画が好きなのと近くでやってたので観てきました。そんなに洋楽には詳しくないんですけど、彼らはそんなに第1級メジャーというわけではないようで。「なつかしのオールディーズベストヒット」みたいな選集でも名前見たことないし。しかしこんだけ長く続いてきたのには、やはり一過性ではない魅力と、マンネリに陥らないよう試行錯誤を続けてきたからということがなんとなくわかりました。一時は本当に仕事が無い時もあったようですが、「ドラッグなどで散財せず堅実に暮らしてために生活に困らなかった」というのには感心させられました。

驚いたのは池上遼一氏が少年サンデーで描いてたマイナーなSF漫画『舞』を彼らが映画化しようとしていたこと。これたまたま読んでてあまり話題に上がったこともない作品だったので「???」となりました。残念ながらその企画は頓挫。それ以前のジャック・タチとの企画も中断となった彼らですが、昨年3度目の正直的にカラックスの『アネット』で映画音楽を担当。夢をあきらめてはいかんですね。

 

☆『バブル』

ネットフリックス先行公開し、一週間後に劇場公開という珍しい形式で発表された長編アニメ。しかし先行の時点でなかなか評判が悪く、びくびくしながら観に行きましたが、これが映像もアクションもストーリーも大変ツボにはまり、「TVサイズで観ないと真価が伝わらないのかな」と思っておりました。しかし劇場で観た人たちの感想も総じてあまりよくなく… 自分、映画を見る目があまりないのかな、と改めて思ったりしました(笑)

好きな点は全体的にりんたろう版『メトロポリス』を思い起こさせてくれたところ。あと十代の恋愛ものであるのに「うわっ これは不可抗力で…」「いやー! エッチ!バカー!!」みたいなコテコテのラブコメ描写がなかったところです。

 

☆『犬王』

湯浅政明×野木亜紀子×松本大洋という超強力布陣で製作された伝奇SFアニメ。先行してTV放映・配信された『平家物語』とそこはかとなく関係あるようなないような、やっぱりあんまりないかな?という作品です。

大胆なのは全体のほぼ半分近くが演奏シーンというほぼライブみたいな構成であること。その無茶な作りを森山未來君と女王蜂アヴちゃんさんとか迫力ある歌声で強引に持っていきます。

ただ突飛なようで根底には親から捨てられたような犬王と親を失った友有(友魚だったり友一だったり)のガキ同士の友情物語があり、その無邪気さが微笑ましかったり胸に沁みたりしました。一方で彼らを翻弄する時の権力者・足利義満には強い怒りを感じます。『一休さん』の「のんびりした将軍様」だったイメージが一気に急降下いたしました。時を越えてよみがえった二人の絆を見届けることで、鑑賞後はさわやかな気持ちになれましたけど。

『どろろ』や湯浅監督の『デビルマン cry baby』を想起させるようなところもありました。

 

5月は他に『シン・ウルトラマン』を2回観たり『鋼の錬金術師 完結編』第1部を観てました。ハガレンに関しては次回『ククルス・ドアンの島』『トップガン マーヴェリック』『FLEE』『ベイビー・ブローカー』などと一緒に書きます

 

 

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July 03, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑥ 6月編

いつも『鎌倉殿』は地上波・BSと2回観ているのですが、先月はスケジュールの都合で1回ずつしか見られず。おぼろげな記憶をたどって頑張って書きます。

 

第22回「義時の生きる道」

突然の八重の死。義時は悲しみをこらえながら彼女が残した大量の子どもたちのワンオペ育児に励む。一方頼朝は都へ上洛。法皇と対面を果たし正式に征夷大将軍の位を授かる。

1190~1192年くらいの話。ずっと裏切り・暗殺・愛する人の死ときついイベントが続いてた『鎌倉殿』で、突然訪れたエアポケットのような癒し回。この回で生霊になったりピンポン玉で死を偽装したりしてた後白河法皇がとうとう本当にお亡くなりになります。「歴史をひっかきまわすだけひっかきまわして」というナレーションの落とし芸が冴えてました。

後半は義時が子供たちのケンカで頭を悩ませます。これとほぼ同じシチュエーションがモーニング不定期連載中の『ワンオペJOKER』であったばかりなんですが、偶然かぶっちゃったんでしょうね。弟が心配で屋敷をのぞきに来た政子さん。「むかし姉上によく首をしめられました」「そういえばよくしめてたわね」 まあ姉というのはそういうものです。

この回の重要でもないアイテム:保育業が大変ですっとんでった義時の烏帽子

 

第23回「狩りと獲物」

1193年、頼朝は御家人たちを集め富士で巻狩りを行う。それに乗じまたしても反乱を企む動きがあった。中心となったのはかつて父親を工藤祐常に殺された曾我兄弟。ここに後世に語り継がれる伝説の仇討が始まる…?

忠臣蔵、荒木又右エ門の鍵屋の辻、そしてこの曾我兄弟の仇討が日本3大敵討ちなんだそうですが、忠臣蔵がメジャーすぎて正直ほかの二つは「何?」という感じであります。で、美談とされてるこの仇討ちが、このドラマでは手違いの上に義時により脚色されたことになっていたり。

前半の巻狩りで印象的なのは鎌倉の時代を担う二人の若者。金剛=泰時は明らかに短期間で背丈が倍以上伸びてるのですが、「成長著しい金剛」のテロップで強引に納得させられました。いま一人の次期暴れん坊将軍・万寿=頼家は悪くない若者なんだけどいまひとつ頼りなさそう。鹿一匹狩らせるのに御家人たちも撮影スタッフも大変だったようです。

スケベ心が幸いしてまたしても難を逃れた頼朝公。しかし今回は「もうわたしのすべきことはないのかも」としょんぼり顔。いよいよ大物退場の序曲が流れ始めます。

この回の一応重要なアイテム:ダミー鹿。および義時と後妻の間を取り持つ鹿のウンコ(2回目)

 

第24回「変わらぬ人」

謀反は未然に防がれたが、その際不審な発言があったということで、範頼は半ば言いがかりのような形で修善寺へ流される。頼朝は自信の衰えを自覚してはいたが、それを認めず大姫を天皇と后とすべく運動を始める。彼女は未だ義高を忘れられずにいるというのに…

1193から98年初めくらいの内容。せっかく比較的ほのぼの回が続いてたのにまたどん底へ突き落される回。大姫に関しては自分も周囲(頼朝以外)もなんとか幸せな方向に導いてあげようとがんばるのに、結局初恋の人への思慕には勝てず…というのが辛すぎるお話でした。あと後白河法皇の未亡人の丹後局が怖かった。鈴木京香さんは『君の名は』(連ドラ)では姑からいびられる側だったのにいつも間にいびる方に…(いつの話だ)。全成殿のイタコ芸が数少ないギャグシーンでございました。

もう一人お気の毒だったのは源範頼公。ドラマでは大抵義経の引き立て役でしかありませんでしたが、『鎌倉殿』では不器用だけど実直で純粋な人柄に描かれてて大幅にイメージアップになったかと思われます。それだけにあの退場の仕方は残酷すぎる。このドラマを毎週見ている姪っ子(小6)のトラウマがまたひとつ増えたのではと心配です。

この回の悲しいアイテム:蒲殿が植える予定だった甜瓜

 

第25回「天が望んだ男」

さんざんナレーションで「最後最後」とあおられつづけた頼朝公。恐怖新聞に寿命を削られる鬼形君のように衰弱が著しくなっていく。それでも生きる望みをあきらめない鎌倉殿。数々の死亡フラグを乗り越えて、果たして生き延びることはできるか!?

…ま、歴史でこの時死ぬことになってるので、どうしようもないんですけどね。ただ上総之介や九郎の時と違い、さんざん笑いを振りまいて去っていくのが彼らしい。あんだけひどいこといっぱいやらかしてたくせに、この幕引きはずるいよ。演じてる大泉さんのキャラのせいで、いなくなったらやっぱり寂しくなるんでしょうね。

ちなみに今ニュース番組の司会もされてる三谷さん、その司会中堂々と脚本を書いてる姿がリークされてました。それを読むと頼朝が善児に必死に命乞いをしてるのですが、あれは完全なるフェイクでしたね。だまされました。

ひとりの英傑が去ろうとする時、彼に関わった者たちの耳に鳴り響く不思議な鈴の音。それが義時だけに聞こえなかったのはいかなる意味が…

あといつの間にか巴御前とだいぶ仲良くなってる和田殿は役得。

この回のまぎらわしいアイテム:頼朝の死をフライングさせかけた餅

 

というわけでなんとか半分までついていくことができました。残り半分もがんばります。たぶん

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