『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑤ 5月編
第17回「助命と宿命」
一の谷で平家を破り、勢いに乗る源氏の軍勢。だが鎌倉方には頭の痛い問題がひとつあった。それは今や賊軍の遺児となってしまった木曽義高の処遇。禍根を断とうとする頼朝に対し、義時らはなんとかして彼を救おうと奔る。
私は大体BSと地上波で二度この作品を観てるのですが、これまでで一番二度目を観るのが辛かった回。大体源平物では義経が義高を助けるべくいろいろがんばるのですけど、今回はその役割が義時に回ってきました。でも歴史的に見ても三谷さんの大河的にも助かるわけないんですよね…
義高君は恋というより大姫がなついてくれる妹のようでかわいくて仕方なかったんでしょうね(大姫の方はガチ恋)。泣けます。
この一件のせいで天下争いから脱落する武田信義。この先出番はありやなしや。
この回の重要なアイテム:義高の刀に絡んだ鞠の紐。鬼のような脚本だ…と思ったらこれは演出さんの発案だそうです。
第18回「壇ノ浦に舞った男」
明けて1985年。義経の快進撃が止まらない。屋島、そして壇ノ浦と平家を追い詰め、とうとう長きに渡る戦いに終止符が打たれる。戦無しでは生きられない彼を、この先待ちうける運命とは。
「義経転落編」前編。ぶつかればぶつかるほど息があっていく九郎と梶原景時にはついわくわくしてしまう少年漫画脳。漫画といえば20年以上愛読してる義経漫画『ますらお』はとうとうこの回で追い抜かれてしまいました。あとある方がツイッターで「今年は『平家物語』、『犬王』、本作と3回も平家の滅亡を見た」とおっしゃってました。ある意味グランドスラムですかね。お疲れ様でした。
後半はいわゆる「腰越状」のエピソード。専ら回想ではありましたが、源氏・平家・北条氏三つの兄弟の比較が見事でありました。死に際にあっても取り乱さない宗盛(小泉孝太郎)も印象に残ります。まあ彼の余計なアイデアのせいで頼朝義経はよけいこじれちゃうんですけど。
この回の重要なアイテム:草薙の剣とか腰越状とか里芋のにっころがしとか
この回のほっこりしたギャグ:八重さんのちょび髭
第19回「果たせぬ凱旋」
深まっていく頼朝と義経の対立。二人を和解させようとする義時・政子らの努力もむなしく、嫁の恨みも手伝って事態はどんどん悪化していく。
「義経転落編」中編。ことをこじれさせた原因の一人源義家殿はこの回でナレ死。「彼が味方につくと必ず負けた死神のような男」と痛烈に語る長澤まさみさん。まさみナレーションといえば法皇様の使った古典推理小説トリックに「まねをしてはいけない」と突っ込むところでも冴え渡っておられました。
あまりにも手のひらの返しっぷりがひどいゆえ、自分でも頼朝と義経がごっちゃになっていく法皇様。このドラマ海外の人にもぜひ見てほしいんですけど、ネックになりそうなのがこの「よ」で始まる人名が多すぎなところですね。向こうでは向こうで「ジョン多過ぎ」「アン多過ぎ」とかあるんでしょうけど。
この回の重要でもないアイテム:法皇の脈を止めてたピンポン球。この人いいとこひとつもなしだな
第20回「帰ってきた義経」
行方をくらませていた義経が、平泉に身を寄せているとの情報が鎌倉にもたらされる。最後の敵対勢力である奥州藤原氏を下すべく、頼朝と義時が企てた策とは。
1187年から1189年にかけてのストーリーで「義経転落編」の完結編。天才なんだけど人の心がわからぬ我儘坊やが色々経験して成長するも、その時もう彼の生涯は終わりに近づいていて…というあたりは『新選組!』の沖田総司を思い出させます。
帰ってきた首を前にして泣き崩れる鎌倉殿。どうしてもっと素直になれなかったのかねえ…と思いつつこのドラマで初めてもらい泣きさせられました。ちなみに他のドラマだと義経が死んだ時頼朝の反応は『義経』(中井貴一)では今回と大体一緒で、『武蔵坊弁慶』(菅原文太)ではのんきにあくびしてたり。
で、大抵の源平ものではここまでしかやらないんですよね。この後も描いたものというとそれこそ『草燃える』くらいかと。
義時はすっかり汚れ仕事を淡々とこなすようになり、『ゴッドファーザー』のマイケルぶりがだいぶ板についてきました。それもこれも愛する妻子のためなのですが…
この回の重要でもないアイテム:義経の畑を荒らしてたコオロギと弁慶の立ち往生アーマー
第21回「仏の眼差し」
義経が討たれるや否や奥州を平定する鎌倉軍。ここに頼朝は日本の覇者となった。戦も終わり久しぶりに人死にの出ない穏やかなエピソードになるかな…と思いきや幸せムードをまき散らせて死亡フラグを立てまくっていた方が約一名…
伝承ではもっぱら八重姫は子供を殺されて世をはかなみ、自らも湖に身を投げたという方が主流だったりするのですが、その話をこういう風にアレンジするか…と。キャスト発表で「義時の妻」役で他の女優さんが出てきた時、遠からず退場されるのだろうな、とは思ってましたが。ネットでは上総介、義経と同じくらい惜しむ声が大きかったです。『鎌倉殿』って個人的には「人の変化」を描くドラマだとも思ってるんですよね。八重さんも登場時のきつい感じからだいぶ変わられて、それこそ仏様のようになってしまわれました。文字通りの仏さまにもなってしまったのが辛くてなりません。
あとこの回でやっとこ13人最後の一人八田知家が登場。こんないかにもぽっと出みたいな人が、どうして合議制のメンバーになれたのか…
この回の重要でもないアイテム:天然ちゃんになってしまった大姫ちゃんが配ってたイワシの頭
先日ガイドブックpart2が出ました。32話まで粗筋が出てたんですけど、引き続き胃の痛くなる話が続きそうです。「亀の前事件」のあたりはあんなに楽しかったのにねー
Comments
まいどです。最近は『銀英伝』(平成のほう)
楽しんでます。
>景時
流石に三谷脚本は上手く伝承と
真実(だったであろうもの)の狭間を突いて
きますね。『逆櫓』の件は
実は2人が示し合わせた芝居とか・・・・
かなり気が付く男だが地は寡黙(だったであろう)な
平三。んで伝承と悪評がまわりまわって
讒言癖のある後世の評価という・・・・
三国志で言えば所謂「演義被害者」の
ようなもんでしょうね。
>武蔵坊
実はこのドラマリアルに見ており
文ちゃんが弁慶の名を呟くところが
何とも意外だった記憶が・・・・
>八重
大河では役処的にはフリーだから
どっかで退場させるとは思ってたけど・・・・
・・・・・義村テメー何やってんだよ!
しかも、「奴もよほど運が悪い」無んて言うし
・・・・・なんか・・無いわ(怒)。
この後は・・・いかに
頼朝がお亡くなりになるかが・・・・ネタかな
『遮那王』では・・・やってくれたからな(笑)。
Posted by: まさとし | June 04, 2022 11:02 PM
>まさとしさん
毎度遅れてすいません。新銀英伝、いろいろブラッシュアップされてるようですね
このドラマ、景時、義仲、先日の蒲殿など、イメージがいまひとつだったような人たちの復権的な趣がありますよね。イメージの良かった義経は問題児的な描かれ方でしたが
>>武蔵坊
実はこのドラマリアルに見ており
それはうれしい。ブンちゃんのセリフは「武蔵坊、一度会うておきたかった(あくび)」だったか
義村くんはなんというか素直に悪びられない、悪ぶっちゃうキャラなんだと思います。いまメフィラスで大人気ですね
さて、いよいよ物語のターニングポイントでございますね…
Posted by: SGA屋伍一 | June 20, 2022 09:24 PM