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May 31, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る⑤ 5月編

第17回「助命と宿命」

一の谷で平家を破り、勢いに乗る源氏の軍勢。だが鎌倉方には頭の痛い問題がひとつあった。それは今や賊軍の遺児となってしまった木曽義高の処遇。禍根を断とうとする頼朝に対し、義時らはなんとかして彼を救おうと奔る。

私は大体BSと地上波で二度この作品を観てるのですが、これまでで一番二度目を観るのが辛かった回。大体源平物では義経が義高を助けるべくいろいろがんばるのですけど、今回はその役割が義時に回ってきました。でも歴史的に見ても三谷さんの大河的にも助かるわけないんですよね…

義高君は恋というより大姫がなついてくれる妹のようでかわいくて仕方なかったんでしょうね(大姫の方はガチ恋)。泣けます。

この一件のせいで天下争いから脱落する武田信義。この先出番はありやなしや。

この回の重要なアイテム:義高の刀に絡んだ鞠の紐。鬼のような脚本だ…と思ったらこれは演出さんの発案だそうです。

 

第18回「壇ノ浦に舞った男」

明けて1985年。義経の快進撃が止まらない。屋島、そして壇ノ浦と平家を追い詰め、とうとう長きに渡る戦いに終止符が打たれる。戦無しでは生きられない彼を、この先待ちうける運命とは。

「義経転落編」前編。ぶつかればぶつかるほど息があっていく九郎と梶原景時にはついわくわくしてしまう少年漫画脳。漫画といえば20年以上愛読してる義経漫画『ますらお』はとうとうこの回で追い抜かれてしまいました。あとある方がツイッターで「今年は『平家物語』、『犬王』、本作と3回も平家の滅亡を見た」とおっしゃってました。ある意味グランドスラムですかね。お疲れ様でした。

後半はいわゆる「腰越状」のエピソード。専ら回想ではありましたが、源氏・平家・北条氏三つの兄弟の比較が見事でありました。死に際にあっても取り乱さない宗盛(小泉孝太郎)も印象に残ります。まあ彼の余計なアイデアのせいで頼朝義経はよけいこじれちゃうんですけど。

この回の重要なアイテム:草薙の剣とか腰越状とか里芋のにっころがしとか

この回のほっこりしたギャグ:八重さんのちょび髭

 

第19回「果たせぬ凱旋」

深まっていく頼朝と義経の対立。二人を和解させようとする義時・政子らの努力もむなしく、嫁の恨みも手伝って事態はどんどん悪化していく。

「義経転落編」中編。ことをこじれさせた原因の一人源義家殿はこの回でナレ死。「彼が味方につくと必ず負けた死神のような男」と痛烈に語る長澤まさみさん。まさみナレーションといえば法皇様の使った古典推理小説トリックに「まねをしてはいけない」と突っ込むところでも冴え渡っておられました。

あまりにも手のひらの返しっぷりがひどいゆえ、自分でも頼朝と義経がごっちゃになっていく法皇様。このドラマ海外の人にもぜひ見てほしいんですけど、ネックになりそうなのがこの「よ」で始まる人名が多すぎなところですね。向こうでは向こうで「ジョン多過ぎ」「アン多過ぎ」とかあるんでしょうけど。

この回の重要でもないアイテム:法皇の脈を止めてたピンポン球。この人いいとこひとつもなしだな

 

第20回「帰ってきた義経」

行方をくらませていた義経が、平泉に身を寄せているとの情報が鎌倉にもたらされる。最後の敵対勢力である奥州藤原氏を下すべく、頼朝と義時が企てた策とは。

1187年から1189年にかけてのストーリーで「義経転落編」の完結編。天才なんだけど人の心がわからぬ我儘坊やが色々経験して成長するも、その時もう彼の生涯は終わりに近づいていて…というあたりは『新選組!』の沖田総司を思い出させます。

帰ってきた首を前にして泣き崩れる鎌倉殿。どうしてもっと素直になれなかったのかねえ…と思いつつこのドラマで初めてもらい泣きさせられました。ちなみに他のドラマだと義経が死んだ時頼朝の反応は『義経』(中井貴一)では今回と大体一緒で、『武蔵坊弁慶』(菅原文太)ではのんきにあくびしてたり。

で、大抵の源平ものではここまでしかやらないんですよね。この後も描いたものというとそれこそ『草燃える』くらいかと。

義時はすっかり汚れ仕事を淡々とこなすようになり、『ゴッドファーザー』のマイケルぶりがだいぶ板についてきました。それもこれも愛する妻子のためなのですが…

この回の重要でもないアイテム:義経の畑を荒らしてたコオロギと弁慶の立ち往生アーマー

 

第21回「仏の眼差し」

義経が討たれるや否や奥州を平定する鎌倉軍。ここに頼朝は日本の覇者となった。戦も終わり久しぶりに人死にの出ない穏やかなエピソードになるかな…と思いきや幸せムードをまき散らせて死亡フラグを立てまくっていた方が約一名…

伝承ではもっぱら八重姫は子供を殺されて世をはかなみ、自らも湖に身を投げたという方が主流だったりするのですが、その話をこういう風にアレンジするか…と。キャスト発表で「義時の妻」役で他の女優さんが出てきた時、遠からず退場されるのだろうな、とは思ってましたが。ネットでは上総介、義経と同じくらい惜しむ声が大きかったです。『鎌倉殿』って個人的には「人の変化」を描くドラマだとも思ってるんですよね。八重さんも登場時のきつい感じからだいぶ変わられて、それこそ仏様のようになってしまわれました。文字通りの仏さまにもなってしまったのが辛くてなりません。

あとこの回でやっとこ13人最後の一人八田知家が登場。こんないかにもぽっと出みたいな人が、どうして合議制のメンバーになれたのか…

この回の重要でもないアイテム:天然ちゃんになってしまった大姫ちゃんが配ってたイワシの頭

 

先日ガイドブックpart2が出ました。32話まで粗筋が出てたんですけど、引き続き胃の痛くなる話が続きそうです。「亀の前事件」のあたりはあんなに楽しかったのにねー

 

 

 

 

 

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May 10, 2022

2022年4月の中頃に観た映画

ちょうど1ヶ月くらい前に観た作品群ですね。5本まとめてまいります。

 

☆『シャドウ・イン・クラウド』

クロエ・モレッツさんがグレムリンと戦うと聞いて「馬鹿かwww」と思いましたが、評判が良いうえに予告編見たら面白そうだったので行ってきました。

第二次大戦中の豪州の戦線。とある女性士官が密命を帯びて友軍の軍用機に乗り込むのだが、品も理解もないクルー、ゼロ戦の襲撃、さらに伝説の妖怪まで現れてクロエちゃんは大ピンチに。

前半は主に飛行機の下部銃座に萌えます。あの半球状のカプセルみたいな部分に機関砲がニョキッと突き出してるアレです。実際の戦争だったら狭い上に狙い撃ちされそうで、まず乗り込みたくない(というか戦争自体行きたくない)ポジションですが、映画で疑似体験してる分にはワクワクしてくるから不思議です。

そして本作品最大のウリであるグレムリン。正直「ストーリーにこれいるか!?」と思ってしまった自分がいます。ただこいつが出てこなけりゃ観に行かなかっただろうし、ぐっと地味な映画になってしまっただろうし、まあよしとしましょう。ギズモ君も出て来てくれたらもっとよかったです。

 

☆『ゴヤの名画と優しい泥棒』

一応本当にあったっぽいお話。1961年、ロンドンの美術館でゴヤの「ウェリントン公爵」が盗まれ、脅迫状が送られてくる。大胆不敵なその犯行に警察は国際的な犯罪組織によるものと推測するが、実際は田舎町に住む老人がNHK…じゃなくてBBCの料金徴収に腹を立てて行ったことだった…?

一応犯罪を題材にした作品ですけど、結末含めて誰も傷つかず、むしろほっこりとした気持ちにさせられる映画。なんというか良くも悪くもセキュリティや司法制度がガバガバだった時代だから成立する話だなあと。

で、事の真相に関して推理小説でいうところの「叙述トリック」みたいな技法が使われているのですが、映画でやるとあれはずるくないでしょうか。

先日の『ベルファスト』でも印象的な老夫婦が出てきましたが、あちらがベストカップルといっていいくらいアツアツだったのに対し、こちらの旦那さんは終始奥さんに怒られてて笑えました。

 

☆『アネット』

鬼才レオス・カラックス9年ぶりの新作にして初のミュージカル。コメディアン・ヘンリーとオペラ歌手のアンは熱烈な恋愛の末結ばれ、アネットという子供も授かるが、ヘンリーの人気が陰るに従い二人の間には暗い雲が立ち込めていく。

「アレックス三部作」や『ポーラX』など陰鬱で激しいロマンスで印象深いカラックスさん。こちらもまあ悲劇には悲劇なんですが主人公がコメディアンであったり、アネットちゃんがどう見ても人形だったり、次から次へ無茶な展開が続いたりとあまり悲しい気持ちにはなりません。最低な男がその行いにふさわしく転落していく話なので胸糞悪くもあるのですけど、エンディングでキャストたちが「気をつけて帰ってね~」と明るく見送ってくれるせいで、後味は妙にさわやかでした。

あとカラックスさんはやっぱり乗り物が大好きですね。今回も陸・海・空と色々乗りまくっておられました。

 

☆『コーダ あいのうた』

本年度アカデミー賞作品部門受賞作。ろうあ者の家族の中で、ただ一人耳が聞こえる娘の成長物語。おっさんなので女の子の青春ものとかあんましな~~~と食わず嫌い的にスルーしていたのですが、滅多に映画を褒めない友人が激賞していたので観ることにしました。

この映画の問題点?は予告編でほぼストーリーの8割を説明してしまっていて、そこまでは予想通りのことしか起きないこと。映画というより宣伝の問題でしょうか。ただいよいよクライマックスというところでこちらの想定を越える感動がやってきました。肝心要の歌唱シーンで無音になるという大胆な演出。「やっぱり聞こえないんだよね…」と悲しくなったところで、もう一度それを払拭するような歌の場面がありました。いや、よかったです。食わず嫌いはよくないですね。

あとお兄ちゃんが不器用ながらも妹に「家族の犠牲になっちゃいけない」と励ますくだり。ああいうの弱いのです。

これ、フランス映画『エール!』のリメイクで、こっちでは漁村だった舞台がオリジナルでは農村になってるとか。そちらの方も観たくなってきました(現金)。

 

☆『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード』

日本ではネットフリックスのみでスルーされた『ヒットマンズ・ボディガード』の続編。続編だけが劇場公開ってちょっと珍しいケースであります。

内容はカリスマ的だったライアン・レイノルズ演じるボディーガードが、自分をその地位から引きずり下ろしたヒットマン(サミュエル・L・ジャクソン)と渋々手を組んでいやいや巨悪と戦うという話…だよな? 前作はまだボディーガードとしての矜持とか二人の奇妙な友情とか真面目な要素が3割くらいあったのですが、監督が続投してるのにも関わらず2作目は100%アホに振り切れてました。

『デッドプール』や『フリーガイ』などで何度も死んでるような役がよく回ってるレイノルズさん。この度も色々体当たりのアクションでがんばっておられました。ただ今回の彼はミュータントでもゲーキャラでもないのでひしひしと痛々しさが伝わってきました。もっと体を大事にしていただきたい。

タイトルにもなってる「ヒットマンの妻」サルマ・ハエックがまたはっちゃけてて最高でした。『エターナルズ』のインタビューで「情熱的なメキシコ女の役ばっかりでイヤだった」みたいなことを語ってましたが、ごめんなさい、やっぱりあなたは雄たけびをあげながら悪党の首をかっきるようなキャラがすごくよく似合ってます。

 

次回は『オッド・タクシー』を単品で書くか、『ファンタビ3』『アンネ・フランクと旅する日記』『TITANE』『スパークス・ブラザーズ』あたりをまとめて書きます。

 

 

 

 

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