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April 25, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る④4月編

第13回「幼なじみの絆」

痴話げんかもひと段落ついた時、鎌倉に不穏な知らせが入る。いま一人の源氏の棟梁・木曾義仲が平家と手を組んだ疑いがあるというのだ。頼朝はその真意を探るべく、義仲のもとに範頼と義時を向かわせる。それと並行しながら義時は諦めずに八重のもとに通い、けったいな土産を送り続けていた。

前回「亀の前事件」が1182年末。この回より1183年に突入です。第一話ラストで顔を見せたきりの義仲公が満を持しての登場となりました。「野蛮な田舎侍」と描かれがちな彼ですが、このドラマでは義を重んじるひとかどの英傑となっております。演じるは『西郷どん』で島津久光公をやってらした青木崇高氏。この方、中島哲也作品に出てくる時はすごい怖いんですよね… 余談ですが『武蔵坊弁慶』では佐藤浩市氏が義仲を、『義経』では巴御前を小池栄子さんが演じてました。

迷惑がっていたのにいつのまにか一途な思いに打たれて、とうとう八重さんは義時の思いを受け入れます。ちと強引な気もしましたが13回続いた八重さんのツンがようやくデレに転じて感激もひとしおでした。

その他、文覚と全成の呪術合戦、二人の元愛人を尋ねて散々な目にあう頼朝公など、前回に続きお笑いにおいても傑出した回でありました。

この回の重要でもないアイテム:範頼公のお腹を一発でクラッシュさせた川魚

この回の重要なアイテム:八重さんの氷の心を打ち砕いた義時の旬の贈り物一式

 

第14回「都の義仲」

子供同士の婚約を交わし友好ムードとなった頼朝と義仲だが、義仲がいち早く都を制圧し、平家を追放したことにより両者の間には再び緊張が走る。また鎌倉の御家人たちの間でも、先の不倫騒動や身内の争いなどで評判が落ちた頼朝を見限ろうとする動きが出始めていた。この危機を治めるべく義時は頭を悩ませる。

鎌倉への人質である源義高を演じるは現松本染五郎君17歳。前松本染五郎氏のお子さんで前松本幸四郎氏のお孫さんです。真に絵物語から出てきたような美少年で、鬼の政子さんも一発でメロメロになってしまいました。お父さんの義仲公とこれっぽっちも似てないんですけど、お母さん似だったのでしょうか。非の打ちどころのない御曹司でありながら「セミの抜け殻を集めるのが趣味」というところだけがちょっとひきます。

怒涛の勢いで時の権力者となったものの、京での作法まで学ぶ暇がなかったため、義仲はあっという間に立場が危うくなっていきます。前回での潔さなどからすっかり義仲びいきとなってる視聴者としては、意地悪そうな都の公家さんたちがどうにも頭に来ます。そもそもその統領である後白河陛下、生霊とはいえ「お前(頼朝)だけが頼りなの」とか言ってませんでしたっけ。それなのにあっちを頼ったりこっちを頼ったり、二股はよくないと思います。

そして裏で動き始める御家人たちの陰謀。歴史ドラマでは平家滅亡まで一枚岩のように描かれてる頼朝&坂東武者ですが、そうでもなかったのね…と思ったらこの謀反のくだりは三谷さんの創作なんだそうで。でもいかにもこんな話あったように思えます。次回の大いなる悲劇に向けての伏線なのでありますね。

この回の重要でもないアイテム:義高君が集めた200個以上のセミの抜け殻(うわあ)

この回の使える都作法:牛車(馬車だっけ?)に乗るのは後ろから・降りるのは前から

 

第15回「足固めの儀式」

一触即発の事態となってしまった頼朝と御家人たち。仲間同士で血が流れるのを防ぐため、義時は御家人の間で最も力を持つ上総広常に助力を仰ぐ。ひと騒動こそあったもののそれが功を奏し、無事事件は解決と思われた。だがそれは頼朝の参謀・大江広元が描いた策略の第一幕にすぎなかった。

放映されるやネットを阿鼻叫喚の地獄に叩き落した、本ドラマ始まって以来の衝撃回。わたしは上総さんが登場してすぐ検索してしまったので彼がどういう末路をたどるのか知ってましたが、それだけにクライマックスのシーンは胃がキリキリしました。まるでこの回だけ『鎌倉殿』というより『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいでした…というか、これからそうなっていくのかな?

上総殿も「老けたな」と言われただけで説得するはずの相手を切り殺してしまう凶状持ちではありましたが、三谷さんの脚本力と佐藤浩市氏の演技力で、すっかり「コワモテだけどかわいいところもあって憎めないおっさん」として認知されてしまいました。だから最後のあの「信じられない」という表情が本当に気の毒で。せめてもの救いはこれでマイナー人物だった上総広常の知名度がグーンとあがったことでしょうか。

で、これが数回前の義時だったら身を挺しても彼をかばったかもしれないのですよね。でももう彼にはやっとのことで結ばれた妻と、その妻の間に授かった子供もいる。だから心を鬼にしてでも広常を見捨てなければいけない。「お前はもうわかっている」「だんだん頼朝に似てきた」という義村のセリフがグサグサと突き刺さります。

この回の重要なアイテム:すごろくのサイコロと死後出てきた上総殿の計画表

 

第16回「伝説の幕開け」

明けて1184年。先に都に到着していた義経は、援軍が来るや否や破竹の勢いで義仲軍を撃退。その勢いを駆って休む間もなく一の谷に逃れていた平家追討に向かう。誰もが不可能と考えていた断崖絶壁からの奇襲を決行する義経。現代まで語り継がれる武神の伝説が始まろうとしていた。

先回に続いてお葬式ムードとなってしまった前半。これほど木曾義仲を清廉な人物として描いたのはこのドラマが初めてでは。そんな健気な義仲を「タイプじゃないし」と一蹴する後白河陛下。そんで代わりに来た義経がはかりごとをもちかけると「もうこの子めっちゃタイプ♪」とウキウキしてしまう。本当に困った法皇様でございます…

義経が駆け下ったと言われる鵯越は傾斜30度ほどで、たしかに騎乗したままでも走れないことはないんです。ですがこのドラマではさらなる急斜面から「馬を先に駆け下らせた」としていました。なるほど、こういう解釈もありかと。そのあまりの才能を嫉妬3割、感動7割で見つめてしまう梶原景時。これには『アマデウス』におけるサリエリを連想した人も多かったようです。

戦と次なる悲劇で息つく間もない中、わずかにほっとさせられたのが諸将の書いた報告書。和田義盛さんはさすがにかわいさアピールがくどくなってきました。

この回のそれなりに重要なアイテム:鹿のウンコ

 

気が付けば『鎌倉殿』も1/3。三谷さんに言わせると「頼朝が生きてる間はプロローグにすぎない」とのこと。プロローグ長くない??

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April 21, 2022

2022年3月に観たその他の映画と4月頭に観た映画

これまたなんつーなげやりな記事タイトル… まあ、そんな感じです。

 

☆『名付けようの無い踊り』

俳優としても知られる…というか、私たちのほとんどはむしろそっちの方で知ってる舞踏家・田中泯さんのドキュメンタリー。

泯さんのダンスは「場踊り」と呼ばれる一風変わったもので、路上や広場で突然即興のように始まるスタイルであります。時にはその場でゴロゴロねっころがったりしてしまう。背中が汚れますよ…と言いたくもなりますが、泯さんは一切お構いなしです。

そんな泯さんの幼少期の思い出がアニメで、若かりし頃の挑戦が記録映像・写真などで語られたりもします。血気盛んだったころにはチ〇コを布にくるんだだけのかっこうで踊り狂ったこともあったとか。しかしそれが世界のアートシーンに衝撃を与え、彼の名を一躍有名なものにしたというから驚きです。

正直言うとちょっとうとうとしたところもあったんですが、そんな夢うつつの状態がかえって映画への埋没感を深めてくれたような気もします。あと泯さんはたくさん猫を飼ってらしたので、猫に囲まれて踊る映像もちょっとほしかったです。

 

☆『SING/シング:ネクストステージ』

イルミネーションスタジオによる音楽アニメの傑作『SING』の6年ぶりの待望の続編。街のスターになったバスター・ムーンとその仲間たちは、今度はさらにその名を広めるべく、大都会のビッグステージへの出演を目論む。

そんなわけで序盤は華やかな巨大都市へ出た時の、地方者にしかわからない高揚感が存分に味わえます。また、ムーンさんたちがどんどんサクセスしていくその様子は、知る人ぞ知る作家だったガース・ジェニングスが前作で一躍世界的成功を収めた姿と重なります。

今回作品のカギを握るのは、はるか前に隠遁してしまった伝説のミュージシャン、クレイ・キャロウェイ。彼を表舞台に引っ張り出そうとするムーンですけど、キャロウェイは心を閉ざしてしまっていて、これが一筋縄では参りません。そのキャロウェイ、言語ではU2のボノ氏が、吹替ではB’zの稲葉浩志さんが声をあてておられます。お二人とも声優は初挑戦だそうなので、こちらでもオファーに際しいろいろ苦労があったのでは…と思っていたら、両名あっさり快諾されたとのこと。懐がお広い。自分は吹替で観ましたが、稲葉さん、なかなか自然に気難しいライオンの役をこなされていて、会話の場面では彼の顔は浮かんできませんでした。歌唱シーンになった途端「あ、B’zだw」となりますがw

そんな稲葉さん…じゃなくてキャロウェイをやさしく気遣うハリネズミのアッシュちゃんに泣かされました。『SING』のキャラではこの子がとりわけお気に入りです。

 

☆『ボブという名の猫2 幸せのギフト』

本当にあった猫と青年の奇跡的な物語『ボブという名の猫』の続編…というか前作で語られなかった知られざるエピソード、というとこでしょうか。街角で会ったかつての自分と似た青年に、「5分だけ」と言って主人公がジェームズさんがえんえん1時間半語るという構成。ジェームズさん、なかなか強引な方であります。クリスマスムービーでもあるのですが、こちらでは遅れて公開されたこともあり完全に時季外れでありました。まあ細かいことです。

最近のハートウォーミングな洋画には「幸せの~」という邦題がつくことが多いですけど、この映画はボブさんがアップになる度に本当に幸せな気持ちになれます。主人公が立派になった状態から始まってるので、前作のようなどん底には落ちまい、という安心感もあります。その分ハラハラすることはありませんが、そういうのはこの映画に求めてないのでそれでいいのです。

前作に引き続きお話のモデルであるボブさんがご自身を演じておられます。が、悲しいことにこの映画を撮ってほどなくして、ボブさん亡くなられたのだとか。なんとも切ない… これ、世界的な損失だと思うのですよね… ともあれ、ボブさんに感謝の気持ちを捧げると共に、うちの猫を大切にしていこうと誓うのでした。

 

☆『モービウス』

ソニー独自のアメコミユニバース「SSU」の第3作。持病を治そうと禁断の療法を自分に試した天才医師が吸血鬼になってしまうというストーリー。そんなもんで最初はヒーローものなのかホラーものなのかわからない独特の緊張感が漂っていました。とりあえずアメコミキャラは自分の体で軽率に人体実験しがちだと思います。他人の体でやるよりかはいいと思いますが。

そんなモービウスと対決することになるのが、同じ病気を患い、彼と同じルートで超人化した無二の親友のマイロという男。力を抑えきれず暴走してしまうのですが、境遇がかわいそうなことを思うとついつい同情したくなってしまいます。また序盤の二人で仲良く苦労しながら散歩してたシーンを思い出すとまた悲しくなってしまったり。このコンビ、『AKIRA』の金田と鉄雄を彷彿とさせるところがあります。もしかしてSSUは「男同士の面倒くさい友情」をテーマにシリーズを続けていこうとしてるのでしょうか。

ビジュアル面ではなんでそうなるのかよくわからんのですが、高速移動の際生じるカラフルな墨流しのような効果がお洒落でよかったです。

SSUはこの後『クレイブン・ザ・ハンター』『マダム・ウェブ』といったマイナーなスパイダーマンキャラの映画化を進めていくとのことですが、なんでそんな企画を!? 本当に売れると思ってるの!?とプロデューサー連を問い詰めたい気持ちでいっぱいです。なんとかスパイダーマンを上手にひっぱってこれたらいいんですけどね。

 

☆『仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル』

決定的なネタバレはしませんが、これから観ようという方は以下はスルーしてください。

 

 

 

TVシリーズ終了から10年。オリジナルキャストも全員集結した待望の続編… だったはずがどうしてこんなことに… まあ、なかなかに衝撃的な結末でした。そっちの方は観てないのですが『ゼロワン』といい『セイバー』といい、「ライダーの後日談は悲劇にしなければいけない」という呪いにでもかかっているのでしょうか。東Aさんは。こんなこと言いたくはないのですが、これならばTVシリーズの希望が持てる結末の方がずっとよかった。少なくとも映画をずっと覆ってる暗いムードは、オリジナルの『オーズ』のサンバのような明るいイメージとはだいぶかけ離れたものでした。

ただ、主演・渡部秀君のコメントなどを読むと、どうもこの結末は彼が望んでこうなったようなところがうかがえるのですよね。もしそうならば、私には何も言えません。彼の願いが果たされたことに「良かったね…」と思うのみです。

受け入れるのに少々苦労しましたが、自分としてはこの作品、「幾つかある世界線のひとつ」とすることで認めることにしました。大体日本が壊滅状態になってるのに歴代ライダーが誰も助けに来ないのはどう考えてもおかしい。だからこの作品は「オーズとバース以外ライダーのいない」パラレルな時空のお話なのですよ、きっと。

 

 

次回は『シャドウ・イン・クラウド』『ゴヤの名画と優しい泥棒』『アネット』『コーダ あいのうた』『ヒットマンズ・ワイフズ・ボディーガード』などについて書きます。

 

 

 

 

 

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April 05, 2022

2022年3月に観た第94回アカデミー賞関連の作品

あの狂騒からはや一週間。先月はアカデミー賞作品部門にノミネートされた映画を5本観てたので、今回はそれらについて書きます。肝心の受賞作品『コーダ』を観てないわけですが… あと昨年公開された『ドライブ・マイ・カー』についてはこちらを、『DUNE』についてはこちらをごらんください。全然たいしたこと書いてませんが。

 

☆『ドリーム・プラン』

今年度の「実話を基にした」作品枠で主演男優部門受賞作。前人未到の業績を残したテニスのウィリアムズ姉妹を育てたお父さんの話です。

前半の舞台は『ストレイト・アウタ・コンプトン』で有名なコンプトン。ギャングとドラッグが溢れためちゃくちゃガラの悪い町です(とりあえず当時は)。そんな環境でヤンキーにからまれながら一生懸命娘をコーチするお父さんの姿には少々涙を誘われました。星一徹と違って子供たちをかわいがるときはめちゃくちゃかわいがりますし。よかったのはそんなお父さんの「我慢パート」があまり長くなかったことですね。サクセスの糸口をつかむと階段を軽快に駆け上がっていくように、一家の暮らしぶりもよくなっていきます。あと小さな女の子が弾丸のようなサーブをバチコーン!バチコーン!と放つアクションが小気味よかったです。

で、お父さん役のウィル・スミスはご存知の通り受賞の直前に司会のクリス・ロックに平手打ちを食らわせてしまい、現在苦境に立たされているようです。いまなお論議は絶えず、結局これが今年のアカデミー賞で最も印象に残った出来事になってしまったのはなんとも。

 

☆『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

今年度のネットフリックス枠その1にして、作品部門の最有力候補。ほかにも10部門にノミネートされてたのに結局監督部門のみの受賞に終わりました。しかしまあ、それを取ったのが久方ぶりにカムバックを果たしたジェーン・カンピオンというのはめでたいです。

一応西部劇の枠になるのかもしれませんが、銃撃戦とかは全くありません。だのに約二時間、なにかよくないことが起きるのでは…というヒリヒリした空気が漂い続けています。

いかにもカウボーイ然とした粗野な男・フィルが、自分のうちにある女性的な部分と葛藤するような話なのかな…と予想していたのですが、ちょっと違いました。中盤からは彼よりも、義妹の息子であるピーターの方が存在感を増していきます。このピーター君、線も細いしお花が好きだしとても強そうには見えないのですが、それがかえって異様な凄みというか迫力をかもし出すようなキャラクターでした。

シンプルながら雄大な山々の風景が美しく、やっぱりこれ配信よりスクリーン向けの映画では…と思いました。

 

☆『ナイトメア・アリー』

今年度のにぎやかし枠その1。我らがギレルモ・デル・トロ作品でいかにも異形のモンスターが出て来るような予告でありながら、今回は超自然的要素はにおわせ程度しかありません。善良な主人公が多いデルトロ作品にあって、ピカレスクな題材であったことも新機軸でありました。

前半のじめじめした南部っぽい風土はR・R・マキャモンの『少年時代』『遥か南へ』といった作品群を思い出させますが、後半では一転、雪の降る欲望にまみれた町でのノワール的な物語が展開されます。

ちょっと前だと『パッセンジャー』なんかもそうでしたが、「あー、この嘘絶対ばれるよな」というお話があります。こちらもその類の作品。ですので嘘がばれるその瞬間までひたすら悶々としながら画面を見続けることになります。

今年の作品部門にノミネートされたタイトルは、なんでか「親」が重要な要素となっているものが多かったですね。『ナイトメア・アリー』はそれが呪いっぽく描かれていたのが強烈でした。

 

☆『ベルファスト』

今年のモノクロ枠。7部門にノミネートされましたが脚本部門のみの受賞となりました。実は自分はこれが作品部門もっていくんじゃないかと予想してたのですが…

ケネス・ブラナー監督の自伝的作品。彼のキャリアって古典や名作のアレンジが目立つので、こういう一からオリジナルの映画はなんだか不思議な味わいでございました。1960年代、宗教・政治の問題が激化して暴動が茶飯事だったベルファストを舞台に、子供の目を通して当時の様子や悩む両親の姿が描かれます。

笑ったりひやひやしたり、はたまたしんみりさせられたりいい映画ではあるのですが、時間のコンパクトさと白黒画面のせいかちょっとインパクトに欠けるきらいはあります。ただブラナー少年が親しんだサブカル要素…恐竜百万年、チキチキバンバン、サンダーバードなどを目で追っていくのはオタク人として楽しゅうございました。あとシェイクスピアの第一人者であるブラナー氏も、別段上流階級の出ではなく、ごくごく普通の家庭で育ったというのは興味深いです。おばあちゃんと観にいってた『クリスマス・キャロル』が舞台へ感心を持つきっかけになったのかな…と想像したり。

 

☆『ドント・ルック・アップ』

にぎやかし枠にしてネットフリックス枠。ある天文学者が地球に向かって飛来する小惑星を発見。人類滅亡の危機を回避すべく主人公らは奔走するが、事態は『アルマゲドン』のようにはいかず…

せっかくネトフリ入ってるんだから授賞式の前に見とくか、くらいのモチベーションだったのですが、この馬鹿馬鹿しいムードが意外とツボにはまりました。世界が破滅にむかっていく話なのにねw でもこれうちで一応月額料のみで観たから楽しみましたが、映画館で観てたら虚無るか激怒してたかもしれません。

名だたる名優が(こんなアホらしい映画に)参加している中、とりわけ目を引いたのはいかにもスティーブ・ジョブズな社長を演じていたマーク・ライランスさん。この人も重厚な雰囲気あるのに役を全然選んでなくて素敵です。あとアリアナ・グランデが熱唱するコンサートのシーンが無駄に豪華でした。

 

観た作品を好きな順にあげると

①DUNE ②ドライブ・マイ・カー ③ドント・ルック・アップ ④ドリーム・プラン ⑤ナイトメア・アリー ⑥ベルファスト ⑦パワー・オブ・ザ・ドッグ

という感じでしょうか。次回は3月他に観た『名付けようのない踊り』『仮面ライダー000劇場版』『SING ネクストステージ』と、先週末観てきたばかりの『モービウス』『ボブという名の猫2』について書きます(予定) 

 

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April 02, 2022

『鎌倉殿の13人』を雑に振り返る③3月編

第9回「決戦前夜」

味方を増やし、石橋山の雪辱を晴らそうと盛り上がる頼朝軍。負けじと西からは清盛の孫・維盛を総大将に平家の軍が攻め上る。両者は駿河にて相対し、ここに世に名高い「富士川の戦い」が始まろうとしていた。

「決戦前夜」というタイトルでしたが、普通に戦の後までやり切った第9回。前半は頼朝を出し抜こうとする武田信義のこすからい策略が色々描かれてました。演じるは『新選組!』で武田観柳斎を演じた八島智仁人氏。今回もなかなかのうさん臭さです(失礼)。一説によるとこの戦い、頼朝が到着する前にほぼほぼ武田勢がカタをつけてしまった、なんて話もあるそうで。もしそうだとしたら武勲が現代にこれっぽっちも伝わってないのがいささか気の毒であります。

クライマックスにおける水鳥のはばたきの原因は、北条と三浦のおっさん同士のしょうもないケンカとアレンジされてました。このアホらしさに呆れた人が半分、大うけした人が半分というとこでしょうか。『修羅の刻』では陸奥鬼一が謎の拳法でもって驚かせた、ということになっています。

戦いに勝ったけど周りがついて来ず、落ち込む頼朝の前にやっとこ義経が到着。すぐさま感動の対面といかないのが三谷節。「顔そっくり!」のくだりは全国のお茶の間でツッコミの嵐が吹き荒れたことと思います。

この回の重要アイテム:平家を敗走に追いやった北条時政渾身のパンチと、安眠を妨げられた水鳥の皆さん

 

第10回「根拠なき自信」

平家の本軍を打ち破った鎌倉軍の前に、さらに多くの人材が集まってくる。切れ者、そうでもない者、うさん臭い者… そんな中義時は晴れてフリーとなった八重に果敢にアタックを試みるのだが。

ここにきてこの時点で生きていた頼朝の弟たちが勢ぞろい。少年漫画ならもうちょっとかっこいい絵面になるんでしょうけど、なんか当惑してる義経・怪しげな法力僧の全成・迷子でおろおろしてた範頼…といまひとつ締まりがありません。範頼さんはよく義経の話で引き立て役にさせられてますね。さらにいつに間にかいて勝手に場を取り仕切ってる足立遠元も登場。「一番得体が知れない」とか言われてましたが、一応十三人の一人で、平治の乱の頃からの歴戦の武将なんだそうです。

後半の山場は上総広常がメインとなった金砂城の戦い。直前に義経を「一人の勝手な振る舞いが」と諫めていたのにカっとなって話し合いを台無しにしちゃったのはわかりやすい特大ブーメランでした。このピンチを義経が解決する…のかと思いきやあっさり内通とかで勝ってしまう(笑) この辺の意表の突き具合というか予想を裏切るあたりが見事でした。

この回で激動の1180年が終了。第3回から8回もかけて扱ってたのですね。この次からもう少しまいていくペースとなります。

この回の重要でもないアイテム:三浦義村の腹をクラッシュさせた草餅と、和田義盛が捕まえてきた小鳥。なんつったっけアレ

 

第11回「許されざる嘘」

頼朝の今一人の弟である義円が鎌倉に到着。利発そうな義円がちはやほやされるのを見て、義経はどうも面白くない。一方京では巨星・平清盛が熱病により突然この世を去る。政子も再び懐妊し、いいことずくめの源さんご一家。しかしその裏で恐怖のアサシン・善児の影が再びちらつき始めていた。

『鎌倉殿』が始まって以来最もブラックな回。前半では義経が義円をだまくらかし、後半では頼朝がいったん許した伊東祐親親子を秘密裏に葬り去るという… このドラマの義経は天が二物(軍才・顔)を与えてしまったがゆえに、他が歪みまくりという大変困ったキャラになっております。ただ義円に関しては実際に頼朝と再会したという記録がなく、たぶん鎌倉には来てないんじゃないか…という説の方が有力のようです。それを思えばドラマに出られただけよかったのかもしれません。それくらい史劇で見かけない人物ですから。

そしてまたしても現れた『鎌倉殿』の死神・善児。彼が出てくる回は決まって誰かが血祭りにあげられるゆえ、オープニングでその名前が出てくるとTwitter上で悲鳴が沸き起こるようになってしまいました。鬼の監査役・梶原景時に拾われてしまったので、これからもいっぱい出番がありそうです(怖いなあ)。演じる梶原(笑)善さんは三谷さんの劇団時代からの盟友。『王様のレストラン』のひねたパティシエとか良かったんですが。

伊東の爺様が亡くなったのが1982年の初めとのこと。というわけで1981年はこの回だけで終わりとなりました。

この回のそこそこ重要なアイテム:梶原さんがセロテープで張り合わせた義円の別れのお手紙。

 

第12回「亀の前事件」

頼朝に待望の男児が誕生。政子がそちらにかかりきりなのをいいことに、鎌倉殿は愛妾・亀の前とますます懇ろになってしまう。このことを知った時政の妻・牧の方は、最近政子ばかりが目立っていることにいら立ちを覚えていたため、ストレス解消のため亀の前の「後妻打ち(うわなりうち=前妻が後妻の家を壊してもいいという京都の風習)」を決行しようとする。事態を収拾しようとするも右往左往するだけの義時は各方面にひたすら頭を下げ続ける。

ギャグ回(笑) 史実には確かに残ってる話ですが、要は頼朝の浮気がばれて政子が激怒した、という内容なので。その史実の合間を縫ってテンポのいい素っ頓狂なセリフの応酬が続きます。まさに三谷さんの脚本家としての真骨頂。これがあまりにも楽しかったせいか、ネット上では現時点の「ファンが選ぶベストエピソード」なんではないかという疑いすらあります。

で、台風の目たる亀さんが実にひょうひょうとしていて、自分を中心に周りがこじれまくっているのに、どこ吹く風とばかりにマイペースを貫く姿が痛快でした。家を燃やされて憔悴しちゃうのかと思いきや、意外と元気そうに上総殿の屋敷をふらついてたのでなんか安心いたしました。なんのかんの言いながら人死にの出ない回は平和でいいものです。

京都からさらにアドバイザーとして中原親能と大江広元が着任。苗字が違いますがこの二人はご兄弟で後の13人のメンバーであります。この回では大江さんが割と目立ってたのに対し、お兄さんの方は「いたの?」という感じでした。

この回のそこそこ重要なアイテム

見事に切断された牧宗親のモトドリ。この時代の社会人にとって髪を結ってる部分を切られるのは、公衆の面前でパンツを脱がされるようなものだったらしいですが… ホントか!?

 

次回からは木曾義仲が本格登場。いよいよ群雄割拠時代的に入り、平家との戦いも激化して参ります。がんばれ鎌倉殿とその一党。

 

 

 

 

 

 

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