2021年12月後半に観た映画
年も改まりまして、ようやく今年最初の更新であります。内容はまだ昨年をひきずっておりますが… そんなわけで昨年どん詰まりに観賞してた5本の感想をさらっと。
☆『マトリックス:レザレクションズ』
これまでも度々噂されてた『マトリックス』シリーズの続編が、18年の歳月を経てついに実現。人類の都市「ザイオン」を守るため、宿敵とも言える「マトリックス」に自らを捧げたネオ。それから月日は経ち、別人としてある世界で暮らしていた彼は、最愛のパートナー・トリニティと再会を果たす。だが彼女は以前の記憶を持っていなかった…
今回の新作のためにがんばって前3作を復習いたしました。いやあ、小難しかった。それはさておき前までは「生きるか死ぬか・やるかやられるか」的な、殺伐としたムードに包まれていた本シリーズ。監督の心境の変化でもあったのか、今回はずいぶんと和やかなタッチになっておりました。不倶戴天の敵とも言えたエージェント・スミスとネオがジャンプの漫画のように共闘しちゃってるし、そもそも黒幕とも言えるマトリックスのプログラムが「ネオに死なれると困る」なんて言ったりしてます。
わたくしマトリックスというのは倒さなきゃいけないファシスト政権だとばかり思い込んでいたのですが、そうじゃなかったんですね。我々に夢を与えながらエネルギーを吸い取るような存在…娯楽産業のほうがよりその実態に近い。この二十年でネットとゲームが発達したことにより、ほとんど動かないで様々なエンターテインメントが楽しめるようになってしまいました。それにどっぷりつかりすぎると危険ですが、日々を生きていくための潤いでもあるわけです。というわけで今回も人類とマトリックスの関係は煮え切らない感じで終わってしまいましたが、不思議とそれが心地よかったです。
これをもって新たなシリーズが開始するとか、そういうことはなさそうです。シリーズを愛してきた人たちへの、二十年後のサプライズ・プレゼントのような作品でした。
☆『皮膚を売った男]
事情で故国シリアから欧州へ亡命してきた男が、恋人に会うために国境を越えようとするも金と法に阻まれてしまう。そこで彼はある芸術家の提案にのり、自らの背にタトゥーを彫らせ「美術作品」となって「展示」されることで願いをかなえようとする。
まるで現代のおとぎ話のような映画ですが、これ実話からインスパイアされたお話なんだそうです。アーティストって「芸術のためなら」と、時々えらく傲慢になることがありますよね。そんな傲慢さがよく現れた作品。そして被害者である彼も、その恋人も、芸術家の秘書もみんな自分のことばかり考えていて微妙に好きになれません。ところが最後の方になってくると、なぜかそれらの登場人物に愛着がわいてきてしまったりして。
ラスト数分は削った方が衝撃的だし政治的メッセージもよく伝わると思うのですが、さわやかな気持ちで映画館を出られるようにしてくれた監督に感謝です。
☆『キングスマン/ファーストエージェント』
当初の予定から2年も遅れて公開された悲劇の作品。マシュー・ボーンが生み出したトンでもスパイ組織「キングスマン」の成り立ちを描いた内容。当然いつものようなオチャラケバトルがえんえんと展開されるのかと思いきや、第一次大戦の前線のパートで突然笑うに笑えない沈うつなエピソードが入ってきます。まるで木多康昭先生の漫画みたいでした。
そんな風に戸惑うところもございましたが、この時代の実在の怪人たちがレトロな背景&アナログなガジェットで縦横無尽に暴れまわるのはやはり楽しい。特にリス・エヴァンス演じる怪僧ラスプーチンは本物そっくりでした(本物見たことないけど)。正編の第3作と同時に、この前日談の第二部も構想されてるとのこと。今度は第二次大戦が舞台となるのでしょうか。実現するといいですね…
☆『モスラ』(1961)
『ゴジラ』『ラドン』と並び称される伝説の怪獣映画。「午前10時の映画祭」のおかげで4K修復版をスクリーンで拝むことが出来ました。モスラが出てくるまでがなかなかに長いのですが、そこは秘境探検物として楽しむことが出来ました。
主演をつとめるフランキー堺氏が行動力抜群で、記者なのに悪漢を相手に引けをとらなかったりなかなかにかっこいい役回り。とはいえやっぱりその風貌のせいか、ユーモラスな空気を漂わせております。
ゴジラと違うのはモスラはアイドルであり愛でるべき存在ということですね。自衛隊の砲火が浴びせられたりするととても痛々しい気持ちにさせられます。ゴジラだったらあれくらい屁でもないのでしょうけど。一方でその機動力でもってアメリカ(劇中ではロシリカ)まで飛んでいって大暴れするあたりはさすがに大怪獣でした。
☆『劇場版 呪術廻戦0』
人気コミック『呪術廻戦』の前日談を劇場アニメ化。超ド級の怨霊「折本里香」に取りつかれていることで、同級生に重傷を負わせてしまった高校生・乙骨憂太は、その力を人の役に立てるよう使うため、また里香の呪いを解くために呪術を学ぶ「呪術高専」の門を叩く。
原作は読んでたのですが、取り立ててそれほどのインパクトは受けませんでした。だのに迫力ある効果と声優さんの力強い演技が加わるとまるで別物のように興奮・感動してしまうから面白いですね。それともやはりそれだけのポテンシャルを秘めた原作だったということでしょうか。
邦画の定番ジャンルに純愛ものとホラーがありますが、食い合わせが悪いようで、上手に掛け合わせるとお互いを引き立てるようなアクセントになるんだな…という発見がありました。
自分が特にひきつけられたのは正ヒロイン?である里香ちゃん。いわば主人公のバディであり恋人とも言える存在ですが、エイリアンじみた外見といい玉藻の前がモブに見えてしまうほどのパワーといい、何から何までが規格外です。本当にこんなキャラよく考え付いたなあ… ちょっと前例が見当たりません。このカップルに比べたらエディとヴェノムは全然普通でしたね。こちらはこちらで微笑ましくて好きですが。
おじさんですけど乙骨君の「あいつを倒したいんだ。その後はもう何もいらない」や、夏油さんの「最後くらい…」には涙と鼻水を搾り取られました。我ながらちょろい。ただその辺にやられた人は多いようでぼちぼち興行収入が100億円に達しそうです。
やっとこ昨年の宿題が終わりました。次回は『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』で1本書くか、『レイジング・ファイア』『マークスマン』『クライ・マッチョ』と抱き合わせで書くか…というところです。
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