第18回SGA屋漫画文化賞
とうとう18回を迎えたSGA屋漫画文化賞(どこの誰も読んでないというのに)。1回目の時に生まれた世代がもう高校卒業なわけですよ。ふううう… 気を取り直してまいりましょう。例によって賞金も賞品もありません。むしろわたしがほしい。では去年に引き続いて私を今年支えてくれた3作くらいから。
☆スポーツ漫画部門 コージィ城倉(原案:ちばあきお)『プレイボール2』『キャプテン2』
今年完結を迎えた『プレイボール2』。甲子園への道が危うくなったクライマックスのあたりとか、読んでて具合が悪くなるくらいでした。で、これで谷口君ともまたお別れか…と感傷的になっていたら、なんと並行連載されてた『キャプテン2』に引き続き彼も登場するという超絶ギミック。アメコミとかならともかく、野球漫画では前例のないことでは。というわけで来年も期待してます。
☆格闘漫画部門 丸山恭右 『TSYYOSHI 誰も勝てない、アイツには』
「なめてたコンビニ店員が史上最強の男だった」を地で行くこの漫画も第4部に突入。そのあまりの強さ故とうとう国家権力を敵に回してしまった川畑強。一個人では無敵でも絶対的な社会のシステムに対しその強さはどこまで通用するのか…? 納得のいかないことが多いこの世の中に川畑さんの必殺拳が炸裂することを願ってやみません。
☆日常漫画部門:萩原天晴・上原求・新井和也 『1日外出録ハンチョウ』『上京生活録イチジョウ』
完結した『トネガワ』の後を受け新たに始まった『カイジ』スピンオフ新作が画像の『イチジョウ』。若いころなれない一人暮らしや都会での生活をした経験のある人なら「あるあるあるある」と言いたくなるネタが目白押しです。ただ楽しい反面おっさんが読むと、輝かしき青春時代を思い出してちょっぴり切なくなってしまうかも。それに対して『ハンチョウ』はひたすら癒ししかありません。ネタが尽きたらハンチョウの独特な視点で映画・マンガレビューなどしてほしいな…と思うわたくしでした。
続きまして今年に入って初めて読んだ4作品。
☆アメコミ関連部門:宮川サトシ/後藤慶介 『ワンオペJOKER』
『デッドプールSAMURAI』や『スーパーマンVS飯』などゆるいアメコミ関連ジャパコミが目立った2021年。その中で1作選ぶならこれを。事情で赤子になってしまったブルース・ウェイン。自分の生きる目的を失ってしまったジョーカーは「なら俺がバットマンに育てりゃいいじゃん!」という発想の大回転をかまします。そんなアホらしい話でありながら1話に1回はほっこりするハートウォーミングな作品。それでいいのかジョーカー(面白いからいいです)
☆人間ドラマ部門 和山やま『カラオケ行こ!』
『女の園の星』も人気の和山先生の1巻完結のコミック。そのコンパクトさがいいよね! 実はこれ『アメト―――ク』の「漫画芸人」特集でどなたかに7割方ストーリーをばらされてしまったのですが、そしたら結末が気になってしまい翌日書店で買ってきてしまいました。どう考えても接点のなさそうな二人のすれ違いドラマ、みたいなのが好きな人におすすめ。
☆ギャグマンガ部門 酒井大輔 『ゴリせん~パニックもので真っ先に死ぬタイプの体育教師~』
こういうタイトルになってますが本当にすぐ死んだら漫画は1話で終わってしまうわけで。普通なら瞬殺されてしまいそうな状況を異常な頑丈さで死亡フラグを叩き折っていく…という内容です。なぜか次々と怪物、宇宙人、殺し屋襲い来る学校で、己の教師人生を邁進しつづけるゴリせん(本名明らかになってたっけ?)。自分もこんな熱くてあったかい先生に教わりたかったな。
☆時代・歴史漫画部門 松井優征 『逃げ上手の若君』
時は室町黎明期。南朝により滅ぼされた鎌倉幕府執権の遺児である北条時行は、諏訪神社の助力を得て足利尊氏らに戦いを挑む… 言うても主人公の特技は「逃げる」ことなので、それを武器にどうやって逆転するのか…というのがこの漫画のキモのひとつです。
あと天下の少年ジャンプでこんなマイナーな時代のマイナーな人物を扱うとは、それだけでも応援したくなります。幸い現時点ではそこそこ人気ある模様。打ち切りにならずに無事ちゃんとした完結まで行けますよう。まあわたし検索して時行君の生涯読んでしまったのですが、歴史を踏襲するのか改変してしまうのか。
こちらはマンガじゃないのですが
☆漫画関連書籍部門 萩尾望都 『一度きりの大泉の話』
幻想コミックの大家萩尾望都先生が、若き頃交流してた竹宮恵子先生率いる「大泉サロン」を振り返った自伝。若き二人の天才の意気投合、切磋琢磨、そしてすれ違いは本当にドラマチックでございました。萩尾先生はこの本を「大泉での話を封印するために著した」とのことですが、これはかえってあのサロンの伝説性を高めてしまうのでは。駆け出しのころの萩尾先生のエピソードもひとつひとつが興味深かったです。
そして大賞です。
☆大賞 みなもと太郎 『風雲児たち』『風雲児たち 幕末編』
今年は終盤に来てさいとう・たかを先生、白土三平先生、平田弘史先生といった巨星が次々とこの世を去られましたが、このロングシリーズ『風雲児たち』を描き続けておられたみなもと太郎先生もお亡くなりになってしまいました。
多くのピンチを乗り越えて明治維新の数年前までた来ていたこの作品、きっとまた先生と共に復活するであろうことを心待ちにしていたのですが… この緻密な歴史模様をギャグで表現するという手法、継承できる人を見つけるのは至難の業ではあると思います。しかし誰か先生の遺志を継いで、たどり着いたであろう結末までひっぱってくれることを切望いたします。そして微力ながら先生が残した多くの遺産を次世代に向けて語り継いでいきたいとおもっています。
少ししんみりしてしまいました。明日はこれまた恒例の映画ベストをまとめます。
Comments
SGAさんこんばんわ♪
2021年も良い漫画作品が多かったですけど、同時にさいとう先生やみなもと太郎先生といった長寿作品を連載している有名漫画家がお亡くなりになる報をSNSなどを介して知ることが多かったような年だったようにも思えますね。自分にとっては『ベルセルク』の三浦健太郎先生が正にそうで、急逝を聞いた時は思ってた以上に喪失感大きく、数日は本当に空虚な毎日過ごしていました。
漫画家さんに限らず来年はせめてそういった訃報をなるべく聞かない年でもあってほしいものですね。・・・三浦先生の事を思い出したら自分もなんかしんみりしてしまいました^^;
Posted by: メビウス | December 31, 2021 12:08 AM
>メビウスさん
大晦日にコメントくださったのにおくれてすいません…
確かに三浦先生の逝去も大きな損失でした。ベルセルクがようやく終盤に向けて動き出していたと聞いていましたし
先日最新刊が出たときには世界各国で報じられて改めてその大きさを知りました。漫画家のみなさん、体を大事にして末永く活動していってほしいですね
Posted by: SGA屋伍一 | January 11, 2022 09:35 PM