2021年11月に観た映画。
今年の感想、今年のうちに… というわけで11月に観た映画の感想です。
☆『エターナルズ』
劇場でのMCU最新作。伝説で語られていた神々が、実は太古地球にやってきた宇宙人だったら…というストーリー。
わたしこういう話好きなんですよね。はるかとおい昔と現代のつながりを綺麗に描いている物語。あくまでフィクションではありますが、想像するだけで気が遠くなるような太古の時代がぐっと身近に感じられる気がして。
悠久の時を生きてる神々たちがやけに人間くさく、お互いくっついたり離れたりを繰り返してるのが違和感ある人もいるようですが、それはたぶん本ネタのギリシャ神話の神々が欠点含め人間に近い存在…というかやらかしばかりだからですね。まだエターナルズの皆さんの方が元ネタの神々よりちゃんとしてると思います。
監督は春にアカデミー作品賞・監督賞をゲットしたクロエ・ジャオ氏。『ノマドランド』と同じく俳優の素の性格に合わせてキャラを形作っていったとのことですが、そんな三谷幸喜的な「あて書き」でアメコミ映画を撮ったというのがなんとも面白いじゃないですか。
無理にMCUに組みこまずとも一本の作品として成立できたのでは…とも思いますが、そうでなければ企画が成立しなかっただろうし、ここまで注目もされなかっただろうし。そもそも原作マーベルですし。むずかしいところであります。
☆『アイの歌声を聴かせて』
こういうタイトルですが歌うのはアイちゃんじゃなくてシオンという名のAI。そして主人公は彼女じゃなくサトミさんという普通の高校生…というところがちょっとややこしいです。
このアニメはスルー予定だったのですが、ネットの評判があまりによかったので半ば流される形で鑑賞しました。あと共同脚本が『コードギアス』『プラネテス』の大河内一楼氏だったから、という理由もあります。彼は本当に気落ちしてる時に自分の大切な人に暴言を吐いて傷つけてしまう…というシチュエーションが好きですね… それはともかく私が気に入ったのはイケメン優等生の「ごっちゃん」に関するくだり。なんでもそれなりに出来ちゃうために物事に対する情熱が抱けない、『桐島、部活やめるってよ』の東出君みたいなキャラ。「親友がいない」と寂しげに語る彼がシオン、サトミらと事件に巻きこまれていくうちに、本当の友達を得ていくのがなんとも微笑ましく。それは主人公のサトミちゃんもそうなんですけど。
少し前の『竜とそばかすの姫』と共通する要素も幾つかありましたが、あちらのテーマがネットであるのに対し、こちらはAIであるのが監督の嗜好を表わしてる気がします。
☆『アイス・ロード』
ついつい観てしまうリーアム・ニーソン主演のアクション映画。今回はカナダの氷上で『恐怖の報酬』じみたミッションに挑みます。といってもトラックにニトロを積んでるわけでもなく、いつ割れるかわからない凍った湖の上をひたすらぶっ飛ばすお話です。カナダには実際に冬季限定のそういう道があり、暖かくなると当然通行禁止になるんですけど、タイミングよく?ギリギリ封鎖の時に人命救助のため走らなければならなくなるという。そういう面白い設定を見つけてきたところをまず評価します。
これ、海外の評論サイトではなかなかきびしい点がついていますが、たぶんむこうでは配信限定だったからでは…と思います。巨大なトラックの爆走音も、分厚い氷がバキバキ割れていく迫力も、テレビサイズではどうしても半減しますからね。スクリーンで観てこそ映える作品です。
ただ氷の上を走るだけだと100分もたないので、もたせるための工夫が幾つかあります。その辺を「よく考えた」と取るか「よけいな要素」と取るかで意見が分かれそう。自分はもちろん前者です。
☆『マリグナント 凶暴な悪夢』
『ワイルドスピード/スカイミッション』『アクアマン』のジェームズ・ワン監督が制作費をぐっとおさえて(前2本の1/4くらい)、それでも赤字になってしまった作品。だのにホラーファンからは大絶賛という… ホラー苦手なんですけど、こちらもネットでの評判に押されて観ました。つくづく流されやすい人間です。
そんなわけでビクビクもので臨みましたが、やたらとにぎやかだったせいか、あまりびびらずに楽しめました。いざブツが出て来る時にはBGMで心の準備をさせてくれたり、息抜きのコメディパートがあったのもチキンにはありがたかったです。そして怪物の正体がとうとう明らかになるシーンでは失礼ながらちょっと笑ってしまったり。その一発ネタを明かすまでの話の運び方がなかなか上手だったと思います。
感心したのは主人公を一生懸命支えようとする妹さん。本人は悪くないとはいえ、あんな明らかに尋常じゃないお姉さんの秘密を目の当たりにしたらドンびきしそうなものですが、それでも彼女への愛に一点の曇りもないという。一昔前だったらこういう役回り、イケメンの恋人が担ったんでしょうね。というかつい一昨日観て来たホラーはそうでした。
☆『カオス・ウォーキング』
厳密にいうとこれは12/1に観た作品。監督にダグ・リーマン、キャストにトム・ホランド、マッツ・ミケルソン、デイジー・リドリー…といった布陣でいかにも鉄板そうだったのにこれまた大赤字となってしまい、日本では遅れた上にやや小規模公開となってしまいました。
思考が周囲に駄々漏れになってしまう惑星の、男だらけの開拓村に、久方ぶりに母星からの女性がやってきて…という話。発想はユニークだしストーリーも誠実なんですけど、「宇宙SFなのにほぼ背景が森林と農村」だったのが敗因のひとつかと。原作が真面目なジュブナイルSFだと時々起こる現象です。なぜかひたすら地味になってしまう。『ギヴァー』とか… あれ、ほかにもっとなんかあったような。
それでもトム・ホランド演じる純朴な少年が傷つき、それをヒロインのデイジーさんが慰めるシーン等は少々鼻水を搾り取られました。そのホランド君が傷ついた原因については大激怒でしたが。えー、トータル的にはこれも鑑賞料金くらいには楽しめました。
11月に観た作品は『エターナルズ』以外はそんなに楽しみにしてたわけでもなく、ちょっと消化作業に近いモチベーションではありましたが、そのせいかどれも期待以上に楽しかったので良かったです。次は『本当のピノッキオ』『ヴェノム レット・ゼアー・ビー・カーネイジ』『アンテベラム』『ラストナイト・イン・ソーホー』について書きます。
Comments
> それはたぶん本ネタのギリシャ神話の神々が欠点含め人間に近い存在…というかやらかしばかりだからですね。
神様ではないんですが、派遣された大地で1万年寝過ごしてしまったサンダー・マスクの方が人間的だと思います。「エターナルズ」で一万年寝過ごしたら全部、終わってるでしょ。
Posted by: ふじき78 | December 14, 2021 10:14 PM
「アイの歌声を聞かせて」
AIがスカイネットの影響で人間に刃向かいだしたら、もっとも無敵なのが柔道ロボット三太夫かもしれない。
Posted by: ふじき78 | December 14, 2021 10:19 PM
「アイス・ロード」
リーアムさん中々隠居させてもらえない。
あの、しつこい悪玉の人はこんなところにいないで、もっと稼げる都市圏に行った方がいいと思う。普通に有能だから。
Posted by: ふじき78 | December 14, 2021 10:23 PM
「マリグナント」
赤字なんですか?
これはあれ、ドニーさんの映画がどんなに興行振るわなくてもファンはみな大喜びに近い構造ですね。うんまあ、マリグナントの人の動きを無視した動きは凄く面白くて好き。
一度にドバっとコメントしてごめん。
Posted by: ふじき78 | December 14, 2021 10:26 PM
>ふじき78さん
いっぱいありがとうございます~
>エターナルズ
サンダーマスクはあれですね。手塚先生の原作と全然違うやつ。一万年待ってたのにバッドエンドだと聞きました
>アイの歌声を聴かせて
スカイネットもそうなんですけど、日本だと人工知能は大体お友達なのに大体叛逆しますよね
>アイスロード
あの人吸血鬼と戦ってたリンカーンだったそうで。強いわけだ
>マリグナント
あの脳みそは範馬勇次郎の鬼の背中を思い出しました
Posted by: SGA屋伍一 | December 15, 2021 10:31 PM