2021年10月に見た映画②
奇跡の2日連続更新… というわけで今日は主に10月後半に観た4本についてばばばっと書きます。
☆『ジュゼップ 戦場の画家』
第二次大戦時、スペインの内乱からフランスへ逃れてきた画家ジュゼップは、そこで同郷の人々と共に収容所に放りこまれ、過酷な扱いを受ける。しかしどれほどどん底な状況にあっても、彼は描くことをやめなかった。
架空の人物の話かと思ったら一応実在のアーティストの物語でした。あのフリーダ・カーロと恋仲だったこともあったようで、途中そのカーロさんもがっつり出てきます。
「戦場の画家」というタイトルですが、ほぼ7割くらいは収容所のお話。人間の残酷姓があぶりだされるえぐいエピソードも幾つか出てきますが、タンタンのようなシンプルな絵柄がきつさを弱めています。また、語り手である心やさしい看守との友情が映画全体に温かみをそえておりました。
☆『最後の決闘裁判』
今年一番感想を書くのに慎重になってしまう映画。少し前某監督が頓珍漢なレビューをして軽く燃えたりしてたもので…
中世実際に行われていた、戦って神の保護を得た=勝利した者が正しいとする「決闘裁判」。それを題材に権威を持つ者の傲慢と尊厳を汚された者の苦闘を描いた物語…でいいのかな? 3幕構成でそれぞれ違う者の視点からストーリーが進行していきますが、同じ場面を写しているのに微妙に登場人物の反応が違っていたり。そういう手法を取ることで人…特に権力者は自分の都合のいい方に真理をねじまげてしまうということが巧みに描かれております。
わたしはこのリドリー・スコット監督の『グラディエイター』が結構好きなんですけど、あちらがヒロイズムを高らかにうたいあげた映画なのに対し、こちらではヒロイズムに酔うことの滑稽さ・醜さが強調されております。ただ『グラディエイター』も奴隷というマイノリティに落とされた主人公が自分の尊厳のために必死に戦うお話なので、根底のテーマは共通してるんじゃないかなあと。
わたしなんか何の権力もないし、人一倍人に迷惑をかけることを恐れてる小心者ですけど、自分に都合のいいように考えて自分より弱い人を傷つけてしまうことが絶対にないとは言い切れません。ひきつづきその辺気をつけていきたいと思いました。
で、その頓珍漢な感想を書いてしまった監督の最新作が↓
☆『燃えよ剣』
数ある新撰組を扱った物語の中でも王道中の王道とも言える司馬遼太郎の小説を映画化。原作は上下二冊ながらもぎゅっと内容が濃縮された作品なので、そいつを2時間30分で描ききるのは不可能やろーと思っていたのですが、これが意外や意外。駆け足ではありましたが大事なところはきっちり押さえて一本の映画に収めきったのは見事でした。
見事といえば新撰組や幕末の群像のキャスティングが、これまたぴたっとはまっていました。特に印象に残ったのはどう見ても近藤さんだった鈴木亮平氏、爆弾のようにワイルドなのに沖田だけにはめっちゃやさしい芹沢鴨=伊藤英明氏、そして童子のような純真さと酷薄さを併せ持つ沖田総司=山田涼介君。その山田沖田君が血を吐いて伏しているところを舞妓さんがやさしく介抱するシーンは、それこそ一級の絵画のような美しさがありました。新撰組のダーティな面もきっちりしっかり描写してたことも高ポイントです。
原○監督の映画票は総じて辛口な割りに的外れなものが多いのですが(たぶん人に読まれることを考えてない)、さすがベテランだけあって本業はちゃんとしたものをこしらえてきますね。そんなところに人間の不思議さを感じます。
☆『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』
これまで2本が作られたオモチャ原作映画『G.I.ジョー』のリブート第1作(ただ2作目があるかどうかはかなり雲行きがあやしい)
人気の忍者キャラ「スネークアイズ」にスポットをあて、彼がどういう生い立ちで、なぜ漆黒のエージェントになったのか…ということが明かされていきます。
全体の8割ほどが日本で進んでいきますが、そこにあるのはありそうでなさそうな海外映画によくある珍妙な日本。日光江戸村あたりが一番近いかもしれません。でもこういうカリフォルニア巻きみたいな映画、時々観たくなることありません? わたしはあります。
春にやっていた『モータル・コンバット』に近いところもあります。あちらの方が随分現実離れした内容ではありますが、トンチキ具合は負けていません。富三郎だからトミーとかその辺がもう… ただこれは原作の時点で既にそうだったのかも。
日本でも米国でも大コケに終わってしまったのは残念。忍者といえば世界共通で人気の題材だと思っていたのにそうでもなくなってしまったのかなあ。またそのうち気合の入ったトンチキな忍者映画が作られることを望んでやみません。
次は11月に観た『エターナルズ』『アイの歌声を聞かせて』『アイス・ロード』『マリグナント』について書きます。
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