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November 30, 2021

2021年10月に見た映画②

奇跡の2日連続更新… というわけで今日は主に10月後半に観た4本についてばばばっと書きます。

 

☆『ジュゼップ 戦場の画家』

第二次大戦時、スペインの内乱からフランスへ逃れてきた画家ジュゼップは、そこで同郷の人々と共に収容所に放りこまれ、過酷な扱いを受ける。しかしどれほどどん底な状況にあっても、彼は描くことをやめなかった。

架空の人物の話かと思ったら一応実在のアーティストの物語でした。あのフリーダ・カーロと恋仲だったこともあったようで、途中そのカーロさんもがっつり出てきます。

「戦場の画家」というタイトルですが、ほぼ7割くらいは収容所のお話。人間の残酷姓があぶりだされるえぐいエピソードも幾つか出てきますが、タンタンのようなシンプルな絵柄がきつさを弱めています。また、語り手である心やさしい看守との友情が映画全体に温かみをそえておりました。

 

☆『最後の決闘裁判』

今年一番感想を書くのに慎重になってしまう映画。少し前某監督が頓珍漢なレビューをして軽く燃えたりしてたもので…

中世実際に行われていた、戦って神の保護を得た=勝利した者が正しいとする「決闘裁判」。それを題材に権威を持つ者の傲慢と尊厳を汚された者の苦闘を描いた物語…でいいのかな? 3幕構成でそれぞれ違う者の視点からストーリーが進行していきますが、同じ場面を写しているのに微妙に登場人物の反応が違っていたり。そういう手法を取ることで人…特に権力者は自分の都合のいい方に真理をねじまげてしまうということが巧みに描かれております。

わたしはこのリドリー・スコット監督の『グラディエイター』が結構好きなんですけど、あちらがヒロイズムを高らかにうたいあげた映画なのに対し、こちらではヒロイズムに酔うことの滑稽さ・醜さが強調されております。ただ『グラディエイター』も奴隷というマイノリティに落とされた主人公が自分の尊厳のために必死に戦うお話なので、根底のテーマは共通してるんじゃないかなあと。

わたしなんか何の権力もないし、人一倍人に迷惑をかけることを恐れてる小心者ですけど、自分に都合のいいように考えて自分より弱い人を傷つけてしまうことが絶対にないとは言い切れません。ひきつづきその辺気をつけていきたいと思いました。

で、その頓珍漢な感想を書いてしまった監督の最新作が↓

 

☆『燃えよ剣』

数ある新撰組を扱った物語の中でも王道中の王道とも言える司馬遼太郎の小説を映画化。原作は上下二冊ながらもぎゅっと内容が濃縮された作品なので、そいつを2時間30分で描ききるのは不可能やろーと思っていたのですが、これが意外や意外。駆け足ではありましたが大事なところはきっちり押さえて一本の映画に収めきったのは見事でした。

見事といえば新撰組や幕末の群像のキャスティングが、これまたぴたっとはまっていました。特に印象に残ったのはどう見ても近藤さんだった鈴木亮平氏、爆弾のようにワイルドなのに沖田だけにはめっちゃやさしい芹沢鴨=伊藤英明氏、そして童子のような純真さと酷薄さを併せ持つ沖田総司=山田涼介君。その山田沖田君が血を吐いて伏しているところを舞妓さんがやさしく介抱するシーンは、それこそ一級の絵画のような美しさがありました。新撰組のダーティな面もきっちりしっかり描写してたことも高ポイントです。

原○監督の映画票は総じて辛口な割りに的外れなものが多いのですが(たぶん人に読まれることを考えてない)、さすがベテランだけあって本業はちゃんとしたものをこしらえてきますね。そんなところに人間の不思議さを感じます。

 

☆『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』

これまで2本が作られたオモチャ原作映画『G.I.ジョー』のリブート第1作(ただ2作目があるかどうかはかなり雲行きがあやしい)

人気の忍者キャラ「スネークアイズ」にスポットをあて、彼がどういう生い立ちで、なぜ漆黒のエージェントになったのか…ということが明かされていきます。

全体の8割ほどが日本で進んでいきますが、そこにあるのはありそうでなさそうな海外映画によくある珍妙な日本。日光江戸村あたりが一番近いかもしれません。でもこういうカリフォルニア巻きみたいな映画、時々観たくなることありません? わたしはあります。

春にやっていた『モータル・コンバット』に近いところもあります。あちらの方が随分現実離れした内容ではありますが、トンチキ具合は負けていません。富三郎だからトミーとかその辺がもう… ただこれは原作の時点で既にそうだったのかも。

日本でも米国でも大コケに終わってしまったのは残念。忍者といえば世界共通で人気の題材だと思っていたのにそうでもなくなってしまったのかなあ。またそのうち気合の入ったトンチキな忍者映画が作られることを望んでやみません。

 

次は11月に観た『エターナルズ』『アイの歌声を聞かせて』『アイス・ロード』『マリグナント』について書きます。

 

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November 29, 2021

2021年10月に観た映画①

気がつけば今年もあと一ヶ月ちょい。年々歳月が過ぎる速さが増してる気がする小生です。それはともかく本日は10月前半に観た映画についていまさらまとめてみます。

 

☆『アナザーラウンド』

つい『アンダーグラウンド』と間違えてしまう1本。さえない高校教師マーティンは、一杯飲んだ方が授業が盛り上がる!ということに気づき、仲間たちと能力の向上を図るため仕事中ガンガンアルコールを摂取し始めるが… 普通すぐバレるだろ。

そんな無茶な着想のお話ではございましたが、デンマークの素朴な人々の等身大のドラマにほっこりと胸があったかくなりました。トリアーとかレフンとか、デンマークの映画ってなんかえぐい印象が強かったのでその意外性も手伝って。

しかしほっこりするだけでなく、人生の秋を迎えた者たちが遭遇する様々な切なさ寂しさも描かれており、飲酒が全てを解決するわけではない(当たり前か)こともよくわかるようになっています。かつてはハンニバルとして不可能なことなど何一つなかったマッツさんが、家族との意思の疎通さえ満足にできないで涙する様子には胸が痛みました(『ファーザー』の時も同じこと書いてたわ)

デンマークでは15歳からお酒を飲んでいいというのは驚きでした。ポスターがさわやかで弾けてて印象的なんですが、いつこの絵が出て来るのかと待ってたらラストシーンだったのは減点です。

 

☆『キャッシュトラック』

春の『ジェントルメン』がまだ記憶にあたらしいガイ・リッチー監督の最新作。とある現金輸送会社の運転手にふらっと応募してきた男。試験では射撃の腕は平凡だったのに、いざ事件に見舞われたら無双とも言える戦いぶりを見せ… そんな「なめてたステイサムがいつものステイサムだった」とでも言うべき映画。時系列を行きつ戻りつしながら、主人公の動機と謎が少しずつ明らかになっていきます。

ガイ・リッチーといえばアクションの合間に軽妙なお笑いをまぶした作風で知られていますが、今回はそのコメディ部分を封印。主人公の怒りと不気味さを執拗に強調し、どのキャラにも感情移入が出来ないような作りとなっています。そしてバタバタと死体があふれた果てに迎えるENDの虚無感。こういうのも悪かないけど、やはりリッチーには普通にお笑いがほしいなあ。まあそれでもマイ・リッチー・ワーストの『リボルバー』よりは遥かに面白かったです。

 

☆『DUNE/デューン 砂の惑星』

ホドロフスキーが頓挫し、デビッド・リンチが大コケした伝説のSF小説の映画化を、少し前『ブレードランナー2049』で大赤字を出したばかりのドゥニ・ヴィルヌーヴがチャレンジ。正気か。ちなみに製作はかつて「客の観たいものより俺たちが見たいものを作る」と言い切ったレジェンダリー・ピクチャーズでした。

しかし今回は不思議なことにこういうSF叙事詩にみんな飢えていたのか、パート2の製作が決まるくらいにはヒットしました。そう、これシリーズ第1作の前半部分だけしか描かれてないのですね… ですからそこそこキリのよいところでバサッと終わっちゃいます。二時間半もあるのに。

ただ自分は秋に連発された長尺映画の中ではこれが一番好きです。なぜかというと怪獣が出てくるから(低偏差値)。あとタイムボカンに出てきそうなトンボ型飛行機がこれまたよかったです。

そしてこれの後にリンチ版を見ると、30年の技術の差がよくわかってとても面白いんですよね。パート2より先に結末がわかっちゃいますけど、ぜひ2バージョン合わせての鑑賞をおすすめします。

この作品は湘南のIMAXで観ました。映画の前に同じ施設のガーリック料理専門店でたらふく食べたら半端ないニンニク臭を放っていたようで、周りのお客さんたちに多大なる迷惑をかけてしまいました。反省してます。

 

☆『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』

結末に思いっきり触れてるので未鑑賞の方はご了承ください…

 

 

今回主演も試写会組も「終わり終わり」と未だかつてないくらい完結を強調してた007。「いくら終わり言うてもまさか死ぬこたないだろー」と思ってたのですが、普通に亡くなられましたね… これじゃタイトルに偽りアリじゃないですか!! 絶対ラストで『怪傑ズバット』みたく「実は生きてた!?」ことを匂わせて幕だと予想してたのですが。

ダニエル・クレイグ氏の007は当ブログを始めて間もないころからずーーーっとつきあって来たので、さすがに感慨深いものがあります。前作『スペクター』よりは確かに感動したけど、あそこで終わっておけばボンちゃんも幸せなままフェードアウト出来たのになあ。

そんなわけで無理を承知で次作もダニエル・クレイグ続投でお願いします。エンドロールの最後にも「ジェームズ・ボンドは帰ってくる」って書いてあったし。リブートととか仕切り直しとかそういうのは認めません。自分は頭がかたいので。

 

 

なんとか年末ベストをまとめる前には少しずつでも前作の感想を書いておきたいものです。次は主に10月後半に観た『ジュゼップ 戦場の画家』『最後の決闘裁判』『燃えよ剣』『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』について書きます。

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November 15, 2021

2021年9月に観た映画

あっとまた一ヶ月放置してた… このごろ講習やら接待やら色々ありまして。そんなわけでようやく先々月に観た映画のまとめです。

 

☆『モンタナの目撃者』

『最後の追跡』、『ボーダーライン』2部作、『ウィンド・リバー』に続くテイラー・シェリダンのアメリカ辺境シリーズ第5弾。今回は社会風刺的要素は見当たらず、純粋に追跡劇とモンタナの大自然がメインとなっております。

悪者コンビが腕利きらしいのに度々ドジを踏んだり、本格的にアクションが始まるまでに時間がかかったり…とあえて娯楽作品の定型を崩してるようなところがあるんですが、それも彼の持ち味でしょうか。

シェリダン関連では3回目の当番となるジョン・バーンサル氏はこれまで最も出番が長く、しかもいい役でした。よかったですね! ただ幸せかというと(略)

 

☆『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

本格的にエンジンがかかってきたマーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ4第2作。わたしマーベルのキャラはそれなりに知ってるつもりでしたが彼に関しては映画化が決まるまで聞いたことがなく。だのにそれなりに歴史の古いヒーローだと知って驚きました。本当に底が知れない世界です。予告編を観ると単に腕っ節の強い兄ちゃんが都会で大暴れする、くらいのストーリーに見えます。ところがどっこい後半からはこちらの想像を越えて中国神話のファンタジックな世界が展開されていきます。ですからはここはあえて後半を全く写さなかった予告編をほめたい。

そしてわたしがなによりツボだったのがこのモーリスという生き物(画像参照)

Hundun 頭がケツみたいな実に奇怪な生き物ですが、これがまたなんとも愛らしい。ポケモンからインスパイアされたと思いきや、これ古の史書にちゃんと書かれてる「混沌」という由緒正しき神獣なんだとか。このモーリスだけで1億点差し上げたいと思います。あとシャン・チーの輪っかをスプリングや玉すだれみたいにして操る武術も独特で楽しゅうございました。

 

☆『ドライブ・マイ・カー』

村上春樹の幾つかの短編を1本の映画に再構成・アレンジしたもの。村上さんは正直よくわからんのですが、この映画は面白かったです。

序盤はとてもインモラルというか他人の秘密を覗き見してるようなイケナイ気分にさせられます。しかし中盤過ぎからは地方の演劇祭の話になり、これが実にまったりと癒されるムードで、傷ついた主人公・家福と同様心がだんだんあたためられるような気持ちになっていきます。そんなムードに水を刺すのが不穏を具現化したような岡田春生君。彼が家福の再生をまたぶち壊しにしてしまうのでは、とハラハラしながら観てました。

印象的だったのが、極力感情をこめずに行うセリフの練習や、幾つかの言語が入り混じった状態で行われる演劇の様子。そうした要素はすぐ目の前で普通に会話していて、お互い意思が通ってるように思えても、実は全然わかりあえてないかもしれないコミュニケーションの難しさを表わしていたのかな…と。

あともう一つ重要なモチーフにドライブ・車があります。運転というのは免許と車があれば自分ひとりでもできるものですが、時には誰かに乗せてもらって周囲の景色を眺めるのもよいもので。たまにはそんなドライブもしてみたくなりました。運転手募集中。

 

 

☆『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』
1995年に公開されその後映像作品に多大な影響を与えたマイルストーン的なアニメ映画。この度のリバイバにより初めて「ああ、こういう話だったのか」と。

この少し前に大都市を舞台にしたSFアクションとしては『AKIRA』があるわけですが、そちら…大友作品が肉体にこだわるのに対し、こちらの押井作品は肉体と実存の不確かさがひたすら強調されてた気がします。

主人公が警察の特殊部隊で、正体不明のテロリストを追うとなれば当然最後は両者の激しい対決が待っている…と思いますが、予想を裏切り両者が同調してどこかへ旅立ってしまうというのはなかなか驚愕の展開でございました。

それにしてもWindows95くらいしかなかった時代に既にネット社会の発達をここまで予期していた押井・士郎両先生の炯眼には恐れ入ります。

 

 

☆『レミニセンス』

これまた近未来サイバーSFか…と思いきや科学的なガジェットは「記憶再現装置」くらいで、全体的には古めかしいハードボイルドかフィルムノワールのような雰囲気が濃厚に立ち込めております。半ばを世を捨てているような主人公のもとに突然訪れるファム・ファタール。運命にたぐりよせられるように彼女を巡る陰謀に巻き込まれていく探偵。実にコテコテのパルプフィクションでありました。

あと印象に残るのはやはり記憶再生装置。自分の思い出を3D映像に再現してくれるという優れもの。劇中の警察では予算が無いため2D版しかない、というくだりがあって笑いました。それはさておき年齢が上であればあるほど、この装置使いたくなるのでは。自分はこれで亡くなった先代の猫2匹に会いたくなりましたねえ…

町が水に沈みかかってるアフター『天気の子』みたいなビジュアルもよかったです。

 

 

☆『クーリエ:最高機密の運び屋』

米ソの対立が激化しつつあった1960年代。東側からの情報をえるためCIAとMI6がかの国に送り込んだのは一人の平凡なセールスマンだった。

これはすごい話でした。『クレヨンしんちゃん』のヒロシさんみたいなお父さんが、世界の命運を賭けた重要任務を任されてしまう。しかも実話。任せるやつらも任せるやつらだと思いますが、実話なんだからしょうがありません。

実話ゆえにつらいのはフィクションだったら全てめでたし、よかったね…で終わるところがそうはならないところですね… 少々ネタバレになりますがずっとビクビクしてたヒロシさんが、異国の地での友人を救うために勇気を振り絞るシーンは本当に胸が熱くなります。しかしいつでもその必死の勇気が報われるとは限らないのです。泣けます。

『シャーロック』では完全無欠の超人を演じていたベネディクト・カンバーバッチさんがこちらでは肝の小さい小市民を好演。本作品では製作総指揮も努めておられるのでこの題材に並々ならぬ思い入れがあったようです。

 

 

なんとか9月の分まとめ終わりました。次回は10月前半に観た『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『アナザーラウンド』『キャッシュトラック』『DUNE』などについて書きます。

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