4月前半に観た映画の振り返り 『AKIRA』『新喜劇王』『レ・ミゼラブル(2019)』『ピーナッツバター・ファルコン』
それではコロナでバタバタ映画館が休業していった4月前半に観た映画を振り返ってみます。
☆『AKIRA』
21世紀の預言書とまで噂されている大友克洋氏の超名作アニメ(コミック)。映画も漫画も断片的にしか観てなかったので、この度ようやくきちんとした形で鑑賞いたしました。ネットなどでみんなの印象に残っているのはどちらかというとこの映画版のような気がします。
舞台や設定はやたらスケールがでかいですが、核となっているのは金田と鉄雄の関係なんだろうなあと。危険を冒して鉄雄を助けにきたのに、「お前なんかいらない」と言われた途端躊躇なく彼を殺そうとする金やん。かと思えばパニックに陥った友達が頼ってきたらすぐにまたお助けモードに切り替わるという… そんな金田君の割り切りの良さがかえって小気味良かったです。
ムードが全然異なる『天空の城ラピュタ』『天気の子』『羅小黒戦記』にも重なるところが色々あって楽しかったです。オタクはそういうリンクを見つけると勝手にウヒウヒ喜ぶのです。
☆『新喜劇王』
『少林サッカー』のチャウ・シンチーが自身の作品『喜劇王』をリメイクした映画。エキストラでさんざんな扱いを受けながらもいつかは大女優に…と夢見るヒロインの奮闘が描かれます。まあとにかく主人公の忍耐するパートというか我慢タイムがとっても長い。その中でシンチーお得意のギャグも色々盛り込まれるんですが、とにかく彼女がかわいそうで笑えない。シンチー作品なのでかわいそうなまま終わらないであろうことは予想つくのですが… 主演女優さんが本当に無名に近かったのにこの映画で一躍脚光を浴びたというエピソードには心温まりましたけど。
☆『レ・ミゼラブル(2019)』
このタイトルなのですが、ビクトル・ユーゴーの名作とは全然違うお話。では完全に無関係かというと微妙にオマージュを捧げているという… ああ! まぎわらしい! アフリカ系の住民が多く住む現代フランスの団地を舞台に、そこに赴任した刑事が「悲惨な人々」との関わりの中でキリキリ舞いするというストーリー。フランス・団地・犯罪社会という三要素は少し前の『ディーパンの戦い』を彷彿とさせます。
ネタバレになっちゃうかもしれませんが
まるでこちらに真の結末を放りつけてくるような、それでいて弾丸さながらに心を打ちぬいてくる実に衝撃的な幕切れでありました。精一杯の善意も、人種間の軋轢や皮肉な運命の前には何の力もないのだなあ…と深く打ちのめされます。それだけにズシンと心に残る映画。
☆『ピーナッツバター・ファルコン』
レスラーを夢見る障害者の青年と、おいたをやらかして故郷を飛び出してきたおっさんが、二人で南部アメリカを旅していくロードムービー。『レインマン』やマキャモンの小説『遥か南へ』なども思い出させますが、わたしが特にツボだったのは(たぶん)ミシシッピ川をゆるゆると川下りしていくというマーク・トウェイン的な世界。実際はいろいろ大変なこともあるでしょうけど、毎日ちまちまと世知辛い仕事をしている身としては二人の「冒険」がとってもまぶしく見えまして。
先の「レ・ミゼ」じゃない『レ・ミゼ』とは対照的に「嘘とも思えるような夢も、願い続ければもしかしたら…」というファンタジックなお話がコロナ疲れでまいっているハートに沁みました。
次回は映画館再開後に観た『スピリッツ・オブ・ジ・エア』『シュヴァㇽの理想宮』『盲目のメロディ』『デッド・ドント・ダイ』について書く予定です。
Comments
最後にこちらにも
「AKIRA」を映画も漫画も断片的にしか見てなかったと?
信じられない~~
とにかく30年前にこの映画があったんだから、凄くない??
今見てもちゃんと近未来感が出ているのもビックリするよね☆
映画は案外駆け足だけど、漫画を見ると金田が鉄雄に銃を向けるのも納得できちゃうんですよー
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 28, 2020 11:50 PM
>ノルウェーまだ~むさん
漫画はあの分厚いやつを6冊も持ち帰るのが大変そうでつい… あ、アマゾンで買えばいいのか
漫画を読むともう少し二人の関係がていねいに描かれているというのは知り合いも言ってました。それそうと東京オリンピックどうなるんでしょうねえ
Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2020 05:39 PM