3月前半に観た映画 『音楽』『ミッドサマー』『地獄の黙示録』『初恋』
今年もぼちぼち半分が消化されようとしています。そんな中三ヶ月前の記憶をたどりながら例によって雑な感想を書いてみるといたします。
☆『音楽』
このタイトルで映画でいうと、三島由紀夫原作のエッチなやつがありますが、それとはもちろん関係ありません。とある町のゆるい不良(でもそれなりに強い)が突然バンドに目覚め、また突然飽きるという画風(上画像参照)もストーリーもゆる~いアニメーション。ただそんなゆるさとは裏腹に、ごくごく少数のスタッフが7年かけて4万枚の動画を描いたという、恐ろしいほどの情熱がこめられた作品でもあります。
その甲斐あってか第43回オタワ国際アニメーション映画祭では長編コンペティション部門グランプリを見事受賞。おめでとうございます。演奏されるナンバーも「それ、曲なのか?」と初めこそ当惑させられますが、聞いているうちに原始人が太古に奏でたであろうサウンド・リズムを彷彿とさせて心地よくなってきました。あと彼らの盟友となるフォークソングバンド「古美術」のリーダー、森田君もハラハラさせられるいいキャラでありました。
☆『ミッドサマー』
『ヘレディタリー』で世界の映画ファンを恐怖のどん底に叩き落したアリ・アスター監督の最新作。心に傷を持つ女子大生が、恋人とともにフィールドワークに向かった北欧の村であんな目やこんな目にあうというお話。ポスターでは緑豊かな農村をバックに、花冠をかぶったヒロインが号泣しております。いったいどんな責め苦にあわされるんだろう…と超おっかなびっくりで臨みましたが、意外とそこそこ笑えました。よかった! とはいえやっぱりエグめのお話が苦手という方にはおすすめできません。
平和な田舎のお祭りになんとなく参加したら、どんどんのっぴきならぬ状況に…という流れは筒井康隆氏のブラックユーモア作品とちょっと似ておりました。みなさんの感想読むと、悲惨な結末を迎える某キャラが「当然の報い」というものが多くいですね。自分はどっちかというと気の毒になってしまった方なのですが人間が甘いのでしょうか。
☆『地獄の黙示録』(ファイナルカット)
言わずと知れたのフランシス・フォード・コッポラの名作。昨秋沼津にできたIMAXでリバイバルされていたのでこの機会に…と思って観て来ました。元ネタとされる『闇の奥』については以前こんな恥ずかしい感想 を書いてました。この小説、シュールで難解なのですが、映画の方はそれなりにメッセージが伝わったような。つまりいかに大義名分があろうと戦争というのは巨大な狂気であり、そこに参加するものは皆狂気に侵されていく…ということでしょうか。問題は一番インパクトがあるのが前半に出てくるキルゴア大佐だということですね。その後もいろいろあるんですけど結局彼が一番印象に残ってしまうので。ともあれ噂に名高い『アポカリプス・ナウ』を初めてちゃんと観賞できてようございました。子供のころにTVでオヤジの脇からプレイメイトのシーンだけ観たことはあったんですが
☆『初恋』
リリカルなタイトルとは想像もつかないくらいぶっ飛ばした、三池崇史監督のクライム・サスペンス(なのか?)。そりゃまあ初恋の話なのかもしれないけれど、なぜそれを題にしたのかが謎です。余命わずかと診断されたボクサーが、麻薬中毒の少女を守るためにヤクザやチャイニーズマフィアを敵に回して暴れ周り、逃げ回るというストーリー。朝ドラの顔である窪田正孝君と大河のキーマンである染谷将介君が、公共放送では見せられないようなギラギラした姿で圧倒してくれます。あと風格ありすぎて最初誰だかわからなかったのが内田聖陽氏。どう見てもモノホンの武闘派ヤクザでした。さらに徹頭徹尾かっこ悪い悪徳刑事の大森南朋氏や、ネットで鬼気迫る表情が話題になったベッキー嬢など、出演者全員キャラ立ちまくりでした。いわゆる「余命もの」であり人がバタバタ死んでいく話なのに、全編がほどよいユーモアに包まれてるのも好みでした。
次回は『ハーレクインの華麗なる覚醒』『サーホー』『彼らは生きていた』『スウィング・キッズ』などについて書く予定です。
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Comments
ここしばらく公開された映画を片っ端から見逃していて、『初恋』も絶対観ようと思っていたのに、気がつけば上映館がありません。トホホ。
ところで、わざわざコメントするのは恐縮なのですが、『地獄の黙示録』を撮ったのはキューブリックではありませんね……。
Posted by: ナドレック | June 16, 2020 01:30 AM
>ナドレックさん
うおっとやらかしたあ! 教えてくださってありがとうございます。修正いたしました。素で間違えてました。フルメタルジャケットとごっちゃになってたんだろうか…
『初恋』は出来と裏腹に売り上げはいまひとつでしたね… ソフト化されたらぜひ
Posted by: SGA屋伍一 | June 18, 2020 09:19 PM
伍一くん☆
「ミッドサマー」
立場でいけば女性なら主人公に、男性なら彼氏に共感するのかもしれないですね。
「それなりの報い」にしてはキツイですが、若い人たちは是非デートで見て欲しいデス(爆)
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 28, 2020 11:42 PM
>ノルウェーまだ~むさん
ここだけのお話。お友達の女性と一緒に観ました。終わった後満面の笑みで「面白かった!」と言ってて背筋を走るものがありました…
Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2020 05:36 PM