2020年2月後半に観た映画 『この世界の(さらに幾つもの)片隅に』『エクストリーム・ジョブ』『1917』『野性の呼び声』『ドン・キホーテ』
いやはやお恥ずかしい… かれこれ二ヵ月半ぶりのブログ更新でございます。このままフェイドアウトかな?とも思ったのですが。
ともかくまだ書いてなかった二月後半の鑑賞作品について雑な印象を。このころはまだコロナとか対岸の火事でしたな…
☆『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』
四年前クラウドファンディングによって製作され、大好評をもって迎えられたアニメ映画 の長尺版。今回主に付加えられたのはオリジナルで脇役の一人に過ぎなかったリンさんのパート。わたし原作も2,3度読み込んでるんですが、この度の長尺番で初めてすずさん、周作さん、そしてりんさんの複雑ながらも優しい相関図を ようやく理解できた気がします(オマエハイッタイナニヲヨンデタノダ)。
そこがどういう場所なのか、どこまでわかってるのか不明なんですけど、廓のお嬢さんたちにわけへだてなく親切に接するすずさんに、またしても鼻水を搾り取られました。長い時間をかけてこの作品に取り組み続けた片渕監督に心から感謝です。そろそろ次の作品が観たいですねえ
☆『エクストリーム・ジョブ』
ドジばかり踏んでる韓国警察のお荷物チームが、潜入捜査のためにチキン屋さんを開きます。ところがこれが予想外に繁盛してしまい… こう言っては失礼ですが、歯車がうまく回ったときの三谷幸喜みたいな快作。『パラサイト』みたいな文芸作品を世界に送り出す一方で、こんなアホアホしい映画が国内トップを取ったとは韓国映画まことに恐るべしです。自分はどっちかというとこういう映画の方が好み。
それにしても韓国=焼肉みたいなイメージありましたけど、貧しい庶民はチキンが主流になってしまったとか、なにやら悲しいものがあります。ちなみに劇中で大変おいしそうだった「カルビ風チキン」はスタッフが実際に作ったら「味が濃かった」とのこと。
☆『1917 命をかけた伝令』
今年のアカデミー作品部門大本命! …とにらんでいたら見事にはずしてしまいました。あはは。120分ひたすらワンカット(風)で撮影された第一次大戦の観客なりきりムービーであります。冒頭では2名で出発するのですが、予告では一人で突っ走ってる場面が多く、「ああ、きっと途中で…」というのが察せられてつろうございました。
腐っても戦場なのでそりゃおっかないのは当たり前なのですが、基本的に塹壕越しにドンパチやってるWW1は後の戦争に比べるとまだ少しのどかなイメージがあったりして。ドキュメンタリーである『彼らは生きていた』を観るとなおさらそう感じるのですが、この映画についてはまた次回。
☆『野性の呼び声』
個人的に2月一番楽しみだった映画。十年以上前にこんな原作の感想 を書いたこともありましたなあ…
ウド鈴木みたいだった大型犬が、極寒のシベリアで鍛え上げられて、ドウェイン・ジョンソンになるまでのストーリー。基本的に原作は「生きるか死ぬか、食うか食われるか」的なサバイバル要素が強いお話なのですが、映画版はディズニーに食われたFOXが製作してたため、子供でも楽しめるようなソフト風味が濃い仕上がりとなってました。あとキャラの一人をハリソン・フォードが演じたために、そのキャラの設定やら出番がだいぶ増えたり。が、これはこれでアリです。自分、ゴールドラッシュに沸く西部劇的世界のヴィジュアルがとても好きなので。このころプレイしてたゲーム『レッド・デッド・リデンプションⅡ』といろいろシンクロしてしまったのも印象を深めました。
☆『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
「欧州絶賛、米国激怒」というコピーがふるってます。巨匠ギリアムが19年の間に9回実現を試み、その都度失敗したという伝説の企画がとうとう成就。その割りにあんまり盛り上がらなかったのがちょっとつろうございますね…
セルバンテスの『ドン・キホーテ』そのままの映画化ではなく、現代においてドン・キホーテ役に選ばれたおじいちゃんが自分をドン・キホーテだと思い込んでしまって…というちょっとややこしいコンセプトです。そして彼をそんな風にしてしまった青年監督との珍道中が描かれます。
わたしあんまりギリアムと相性いいほうではなくて。例外的に『バロン』が大好きなくらいです。それでも今作は若き日への感傷とか、お馬鹿な老人への優しい視線が心地よくて好印象でした。
やはり20年頓挫し続けたと言われる『ウォッチメン』もだいぶ前に映画化が実現しましたし、スコセッシの『沈黙』も少し前に成就しちゃいましたし、これであと残っている「見果てぬ企画」はデルトロの『狂気の山脈にて』くらいですかね。夢は信じればいつかかなうのです。
次回がまたあれば『音楽』『ミッドサマー』『地獄の黙示録』『初恋』などについて語ろうかと思います。では。
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Comments
ご無沙汰です。
どうやらお互い生きていたようで・・・・・。
今は何よりもこのレビュー見れることが
・・・・・・・・・・有難いですね。
>さらにいくつもの
ちょうど大都市の上映終了辺りから今回の騒動が
被ってきたので・・・・・・些か不本意であったのですが
同じ映画を3回も観れた事と、大手シネコンよりも
比較的こじんまりとしたいい映画館(宣伝上映がしつこくなくていい)を幾つか知ることが出来たのは
収穫でした。
ホントはムビチケ3枚目、
広島八丁座で使う気でいてたんですけどね・・・・・・・・。
>そろそろ次の作品
『ぼおるぺん古事記』やってみたいと
対談集で語ってた(笑)。
Posted by: まさとし | June 12, 2020 11:29 PM
SGAさんこんばんわ♪
自分の地域もようやく規制が緩和されて映画館にもなんとか行けるようになりました。コロナ前のようにもう気軽に行くことこそ難しくはなってしまったけど、それでもあの劇場内の雰囲気はやっぱりステイホームでは出来ない体験ですね^^
自分は再開鑑賞でエクストリーム・ジョブを鑑賞しましたが、自粛も長かった分、久しぶりに映画館で大笑いできました。そうそう、韓国はチキンもソウルフードなんだって自分も本作で初めて知りましたw
Posted by: メビウス | June 14, 2020 08:19 PM
>まさとしさん
今回ははやめに(笑) そちらもお元気かな? そうでしたらなによりです
たくさん見られたようでよかったですね。この騒ぎがなければロングラン記録続いてただろうに… おしい
次はまたこうの作品なのかな。「夕凪の国~」アニメ化もちょっと語ってたような
Posted by: SGA屋伍一「 | June 14, 2020 09:19 PM
>メビウスさん
こんばんは。映画館再開おめでとうございます。うちは結局一ヶ月くらいおやすみだったかな。こちらもまた通い始めて3週くらい経ちます
エクストリーム・ジョブはコンセッションであのチキンを発売したらバカ売れするんじゃないかと思いました。ちなみに自分は「から好し」の油淋鶏定食が好きです
Posted by: SGA屋伍一 | June 14, 2020 09:23 PM
伍一くん☆
もうブログ辞めたのかと思いました。
長い自粛期間は有意義に過ごせましたか~?
「1917~」は戦争なのにどこかのどかな感じがしますが、実質生身の人間が走って行って戦うので怪我の痛さがより伝わりました。
Posted by: ノルウェーまだ~む | June 28, 2020 11:38 PM
「この世界のさらに幾つもの片隅に」
> 長い時間をかけてこの作品に取り組み続けた片渕監督に心から感謝です。そろそろ次の作品が観たいですねえ
それを考えると庵野監督とか「エヴァンゲリオン」を作らなかったら、もしくは、最初のが誰でもわかる「エヴァンゲリオン」だったら人生が随分、違ってただろうなと思う。片淵監督と庵野監督、寡作具合が同じくらいじゃないですかね?
Posted by: ふじき78 | August 02, 2020 11:32 AM
「エクストリーム・ジョブ」
キャップの家の描写はあったけど、他のメンバーが家に帰ったら半地下だったりしたら泣ける。
Posted by: ふじき78 | August 02, 2020 11:35 AM
>ノルウェーまだ~むさん
実に2か月ぶりの返信で本当にもうお詫びの仕様も御座いません…
自粛期間の間なにしてだだろう… 近所の山に登ったりとかTVゲームしてたりですかね
『1917』もちょっと懐かしい映画になっちゃいました。傷病者テントの惨状は戦争の残酷さが表れていて忘れがたいシーンです
Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2020 05:28 PM
>ふじき78さん
これまたすんごい遅い返信でもうしわけございません…
エヴァに関しては「終わった映画なんでもう興味ありません」とまで言ってたんですがねえ。エヴァがなかったらもっと能天気なオタク向け作品をずっと作ってたのかな
>エクストリーム・ジョブ
それは悲しい… でも儲けたみたいだしもうちょっといいアパートに住めるのでは
Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2020 05:32 PM