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June 24, 2020

4月前半に観た映画の振り返り 『AKIRA』『新喜劇王』『レ・ミゼラブル(2019)』『ピーナッツバター・ファルコン』

それではコロナでバタバタ映画館が休業していった4月前半に観た映画を振り返ってみます。

 

☆『AKIRA』

21世紀の預言書とまで噂されている大友克洋氏の超名作アニメ(コミック)。映画も漫画も断片的にしか観てなかったので、この度ようやくきちんとした形で鑑賞いたしました。ネットなどでみんなの印象に残っているのはどちらかというとこの映画版のような気がします。

舞台や設定はやたらスケールがでかいですが、核となっているのは金田と鉄雄の関係なんだろうなあと。危険を冒して鉄雄を助けにきたのに、「お前なんかいらない」と言われた途端躊躇なく彼を殺そうとする金やん。かと思えばパニックに陥った友達が頼ってきたらすぐにまたお助けモードに切り替わるという… そんな金田君の割り切りの良さがかえって小気味良かったです。

ムードが全然異なる『天空の城ラピュタ』『天気の子』『羅小黒戦記』にも重なるところが色々あって楽しかったです。オタクはそういうリンクを見つけると勝手にウヒウヒ喜ぶのです。

 

☆『新喜劇王』

『少林サッカー』のチャウ・シンチーが自身の作品『喜劇王』をリメイクした映画。エキストラでさんざんな扱いを受けながらもいつかは大女優に…と夢見るヒロインの奮闘が描かれます。まあとにかく主人公の忍耐するパートというか我慢タイムがとっても長い。その中でシンチーお得意のギャグも色々盛り込まれるんですが、とにかく彼女がかわいそうで笑えない。シンチー作品なのでかわいそうなまま終わらないであろうことは予想つくのですが… 主演女優さんが本当に無名に近かったのにこの映画で一躍脚光を浴びたというエピソードには心温まりましたけど。

 

☆『レ・ミゼラブル(2019)』

このタイトルなのですが、ビクトル・ユーゴーの名作とは全然違うお話。では完全に無関係かというと微妙にオマージュを捧げているという… ああ! まぎわらしい! アフリカ系の住民が多く住む現代フランスの団地を舞台に、そこに赴任した刑事が「悲惨な人々」との関わりの中でキリキリ舞いするというストーリー。フランス・団地・犯罪社会という三要素は少し前の『ディーパンの戦い』を彷彿とさせます。

ネタバレになっちゃうかもしれませんが

 

 

 

 

まるでこちらに真の結末を放りつけてくるような、それでいて弾丸さながらに心を打ちぬいてくる実に衝撃的な幕切れでありました。精一杯の善意も、人種間の軋轢や皮肉な運命の前には何の力もないのだなあ…と深く打ちのめされます。それだけにズシンと心に残る映画。

 

 

☆『ピーナッツバター・ファルコン』

レスラーを夢見る障害者の青年と、おいたをやらかして故郷を飛び出してきたおっさんが、二人で南部アメリカを旅していくロードムービー。『レインマン』やマキャモンの小説『遥か南へ』なども思い出させますが、わたしが特にツボだったのは(たぶん)ミシシッピ川をゆるゆると川下りしていくというマーク・トウェイン的な世界。実際はいろいろ大変なこともあるでしょうけど、毎日ちまちまと世知辛い仕事をしている身としては二人の「冒険」がとってもまぶしく見えまして。

先の「レ・ミゼ」じゃない『レ・ミゼ』とは対照的に「嘘とも思えるような夢も、願い続ければもしかしたら…」というファンタジックなお話がコロナ疲れでまいっているハートに沁みました。

 

 

次回は映画館再開後に観た『スピリッツ・オブ・ジ・エア』『シュヴァㇽの理想宮』『盲目のメロディ』『デッド・ドント・ダイ』について書く予定です。

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June 18, 2020

3月後半に観た映画を振り返る 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』『サーホー』『彼らは生きていた』『スウィング・キッズ』

いよいよコロナ禍が迫ってきた3月後半に観た映画についてダラダラと書きます

 

☆『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

あれこれまだ上映してるんじゃないの… コロナが押し寄せる前に公開された最後の洋画大作。DCユニバースで近年人気が急上昇してるヴィラン「ハーレイ・クイン」(ずっと俺、「ハーレクイン」だと思ってたよ…)を中心に、ゴッサムシティの女傑たちが事件に巻き込まれた少女を守って戦うストーリー。バーズ・オブ・プレイというのは確かバットガールとブラック・キャナリーが中心のヒーロー色の濃いチームだと思ったのですが、この度はハーレイを目立たせるためかバットガールは不在で、どっちかというとアウトロー寄りのグループとして描かれてます。

ので、ハーレイは基本的に正義の味方ではなく、自分の欲望の赴くままに行動してるだけなのですが、「ま、子供くらいは守ってあげないと」というなけなしの倫理観でもってさらに悪どいやつらと対決することになります。この子悪党と悪ガキのコンビの奇妙なパートナーシップがなんだかツボにはまりました。

ポリコレ的な観点で絶賛される本作ですが、それを抜きにしても「ひねりまくった構成」「立ち位置の違うメンバーたち」「決戦の舞台」などなど十分面白い映画だと思いました。あと死んだと思ってたアレが生きていたのが大変高ポイントです。

 

☆『サーホー』

『バーフバリ』でインドの映画記録を塗り替えたプラバースが、今度は現代の暗黒街で大暴れするお話。

得体の知れない風来坊が実は…という遠山の金さん的なキャラは今回も健在であります。まあこの無邪気で親しみやすい青年と、周囲を圧倒するカリスマの両方を自然に表現できるところがプラバースさんのスターたるゆえんなのでしょう。

わたしがこの映画を観ようと思った動機のひとつは、プラさんがジェットパックでビル街をギュイーンと飛んでく姿を予告で観てテンションが上がったからです。その辺は決して長くはありませんでしたが期待通りの映像でした。

あとインド映画で度々みられるように、この映画もお父さんを慕うお話なんですね。日本ではいい年こいた男が「やっと離れ離れのおとうさんと一緒に住める」とかあまりないと思うのですが(母親だったらありそう)、インドではそういう父孝行がむしろ普通なようですね。

 

☆『彼らは生きていた』

『ロード・オブ・ザ・リング』などで知られるピーター・ジャクソンが第一次世界大戦の記録映像をカラー化し編集したもの。約100年前の実際に存在していた人々が色彩を伴って蘇ってくるというだけでも価値ある作品。戦争なんでもちろん色々シビアだし人もいっぱい死んでるんですけど、現代のそれと比べると少々のんきな部分もあり。逆にたった100年で殺し合いはここまで進化してしまったのか…と考えると空恐ろしいものがあります。

とりわけきついな~と思ったのが衛生面に関することですね。しょっちゅう涌くシラミに悩まされたとか、紙がないから手で拭いた、とかね。あとなんか面白かったのが捕虜にした兵士が虐待されることもなく、すぐ仲良くなっちゃったとか。これも第一次大戦のちょっと独特なとこだと思いました。

 

☆『スウィングキッズ』

朝鮮戦争終結後の韓国側の捕虜収容所という変わったところが舞台の作品。北の思想に心酔し反抗を繰り返す青年ロ・ギスが、米軍の兵士から教わったタップダンスにひかれていき、チームを組んで公演するまでになるのですが

まず主人公たちの躍動する姿がまことに力強く、美しく、こぎみよい。加えてダンスチームのメンバーが最初こそ珍妙に見えるのですが、彼らの事情を知るにつれどんどん愛おしくなっていきます。

ただねー 楽しいのは本当に前半までなのですよ。後半はダンスを楽しみたい思いと、北側の仲間の圧力とで板挟みになるギスが見ていてつろうてつろうてつろうて… こんだけ前半と後半のトーンが切り替わる映画は『ライフ・イズ・ビューティフル』以来のような気がします。

最強の人間兵器みたいに噂されてたギスの兄が、どんなモンスターかと思いきやいざ登場したら… この辺も微笑ましい反面なんとも痛切なエピソードでした。やっぱイデオロギーが全部悪いね…

 

 

次回は『AKIRA』、『新・喜劇王』、『レ・ミゼラブル』(2019)、『ピーナッツバター・ファルコン』について書く予定。

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June 15, 2020

3月前半に観た映画 『音楽』『ミッドサマー』『地獄の黙示録』『初恋』

今年もぼちぼち半分が消化されようとしています。そんな中三ヶ月前の記憶をたどりながら例によって雑な感想を書いてみるといたします。

 

☆『音楽』

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このタイトルで映画でいうと、三島由紀夫原作のエッチなやつがありますが、それとはもちろん関係ありません。とある町のゆるい不良(でもそれなりに強い)が突然バンドに目覚め、また突然飽きるという画風(上画像参照)もストーリーもゆる~いアニメーション。ただそんなゆるさとは裏腹に、ごくごく少数のスタッフが7年かけて4万枚の動画を描いたという、恐ろしいほどの情熱がこめられた作品でもあります。

その甲斐あってか第43回オタワ国際アニメーション映画祭では長編コンペティション部門グランプリを見事受賞。おめでとうございます。演奏されるナンバーも「それ、曲なのか?」と初めこそ当惑させられますが、聞いているうちに原始人が太古に奏でたであろうサウンド・リズムを彷彿とさせて心地よくなってきました。あと彼らの盟友となるフォークソングバンド「古美術」のリーダー、森田君もハラハラさせられるいいキャラでありました。

 

☆『ミッドサマー』

『ヘレディタリー』で世界の映画ファンを恐怖のどん底に叩き落したアリ・アスター監督の最新作。心に傷を持つ女子大生が、恋人とともにフィールドワークに向かった北欧の村であんな目やこんな目にあうというお話。ポスターでは緑豊かな農村をバックに、花冠をかぶったヒロインが号泣しております。いったいどんな責め苦にあわされるんだろう…と超おっかなびっくりで臨みましたが、意外とそこそこ笑えました。よかった! とはいえやっぱりエグめのお話が苦手という方にはおすすめできません。

平和な田舎のお祭りになんとなく参加したら、どんどんのっぴきならぬ状況に…という流れは筒井康隆氏のブラックユーモア作品とちょっと似ておりました。みなさんの感想読むと、悲惨な結末を迎える某キャラが「当然の報い」というものが多くいですね。自分はどっちかというと気の毒になってしまった方なのですが人間が甘いのでしょうか。

 

☆『地獄の黙示録』(ファイナルカット)

言わずと知れたのフランシス・フォード・コッポラの名作。昨秋沼津にできたIMAXでリバイバルされていたのでこの機会に…と思って観て来ました。元ネタとされる『闇の奥』については以前こんな恥ずかしい感想  を書いてました。この小説、シュールで難解なのですが、映画の方はそれなりにメッセージが伝わったような。つまりいかに大義名分があろうと戦争というのは巨大な狂気であり、そこに参加するものは皆狂気に侵されていく…ということでしょうか。問題は一番インパクトがあるのが前半に出てくるキルゴア大佐だということですね。その後もいろいろあるんですけど結局彼が一番印象に残ってしまうので。ともあれ噂に名高い『アポカリプス・ナウ』を初めてちゃんと観賞できてようございました。子供のころにTVでオヤジの脇からプレイメイトのシーンだけ観たことはあったんですが

 

☆『初恋』

リリカルなタイトルとは想像もつかないくらいぶっ飛ばした、三池崇史監督のクライム・サスペンス(なのか?)。そりゃまあ初恋の話なのかもしれないけれど、なぜそれを題にしたのかが謎です。余命わずかと診断されたボクサーが、麻薬中毒の少女を守るためにヤクザやチャイニーズマフィアを敵に回して暴れ周り、逃げ回るというストーリー。朝ドラの顔である窪田正孝君と大河のキーマンである染谷将介君が、公共放送では見せられないようなギラギラした姿で圧倒してくれます。あと風格ありすぎて最初誰だかわからなかったのが内田聖陽氏。どう見てもモノホンの武闘派ヤクザでした。さらに徹頭徹尾かっこ悪い悪徳刑事の大森南朋氏や、ネットで鬼気迫る表情が話題になったベッキー嬢など、出演者全員キャラ立ちまくりでした。いわゆる「余命もの」であり人がバタバタ死んでいく話なのに、全編がほどよいユーモアに包まれてるのも好みでした。

 

次回は『ハーレクインの華麗なる覚醒』『サーホー』『彼らは生きていた』『スウィング・キッズ』などについて書く予定です。

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June 09, 2020

2020年2月後半に観た映画 『この世界の(さらに幾つもの)片隅に』『エクストリーム・ジョブ』『1917』『野性の呼び声』『ドン・キホーテ』

いやはやお恥ずかしい… かれこれ二ヵ月半ぶりのブログ更新でございます。このままフェイドアウトかな?とも思ったのですが。

ともかくまだ書いてなかった二月後半の鑑賞作品について雑な印象を。このころはまだコロナとか対岸の火事でしたな…

 

☆『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

四年前クラウドファンディングによって製作され、大好評をもって迎えられたアニメ映画 の長尺版。今回主に付加えられたのはオリジナルで脇役の一人に過ぎなかったリンさんのパート。わたし原作も2,3度読み込んでるんですが、この度の長尺番で初めてすずさん、周作さん、そしてりんさんの複雑ながらも優しい相関図を ようやく理解できた気がします(オマエハイッタイナニヲヨンデタノダ)。

そこがどういう場所なのか、どこまでわかってるのか不明なんですけど、廓のお嬢さんたちにわけへだてなく親切に接するすずさんに、またしても鼻水を搾り取られました。長い時間をかけてこの作品に取り組み続けた片渕監督に心から感謝です。そろそろ次の作品が観たいですねえ

 

☆『エクストリーム・ジョブ』

ドジばかり踏んでる韓国警察のお荷物チームが、潜入捜査のためにチキン屋さんを開きます。ところがこれが予想外に繁盛してしまい… こう言っては失礼ですが、歯車がうまく回ったときの三谷幸喜みたいな快作。『パラサイト』みたいな文芸作品を世界に送り出す一方で、こんなアホアホしい映画が国内トップを取ったとは韓国映画まことに恐るべしです。自分はどっちかというとこういう映画の方が好み。

それにしても韓国=焼肉みたいなイメージありましたけど、貧しい庶民はチキンが主流になってしまったとか、なにやら悲しいものがあります。ちなみに劇中で大変おいしそうだった「カルビ風チキン」はスタッフが実際に作ったら「味が濃かった」とのこと。

 

☆『1917 命をかけた伝令』

今年のアカデミー作品部門大本命! …とにらんでいたら見事にはずしてしまいました。あはは。120分ひたすらワンカット(風)で撮影された第一次大戦の観客なりきりムービーであります。冒頭では2名で出発するのですが、予告では一人で突っ走ってる場面が多く、「ああ、きっと途中で…」というのが察せられてつろうございました。

腐っても戦場なのでそりゃおっかないのは当たり前なのですが、基本的に塹壕越しにドンパチやってるWW1は後の戦争に比べるとまだ少しのどかなイメージがあったりして。ドキュメンタリーである『彼らは生きていた』を観るとなおさらそう感じるのですが、この映画についてはまた次回。

 

☆『野性の呼び声』

個人的に2月一番楽しみだった映画。十年以上前にこんな原作の感想 を書いたこともありましたなあ…

ウド鈴木みたいだった大型犬が、極寒のシベリアで鍛え上げられて、ドウェイン・ジョンソンになるまでのストーリー。基本的に原作は「生きるか死ぬか、食うか食われるか」的なサバイバル要素が強いお話なのですが、映画版はディズニーに食われたFOXが製作してたため、子供でも楽しめるようなソフト風味が濃い仕上がりとなってました。あとキャラの一人をハリソン・フォードが演じたために、そのキャラの設定やら出番がだいぶ増えたり。が、これはこれでアリです。自分、ゴールドラッシュに沸く西部劇的世界のヴィジュアルがとても好きなので。このころプレイしてたゲーム『レッド・デッド・リデンプションⅡ』といろいろシンクロしてしまったのも印象を深めました。

 

☆『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』

「欧州絶賛、米国激怒」というコピーがふるってます。巨匠ギリアムが19年の間に9回実現を試み、その都度失敗したという伝説の企画がとうとう成就。その割りにあんまり盛り上がらなかったのがちょっとつろうございますね…

セルバンテスの『ドン・キホーテ』そのままの映画化ではなく、現代においてドン・キホーテ役に選ばれたおじいちゃんが自分をドン・キホーテだと思い込んでしまって…というちょっとややこしいコンセプトです。そして彼をそんな風にしてしまった青年監督との珍道中が描かれます。

わたしあんまりギリアムと相性いいほうではなくて。例外的に『バロン』が大好きなくらいです。それでも今作は若き日への感傷とか、お馬鹿な老人への優しい視線が心地よくて好印象でした。

やはり20年頓挫し続けたと言われる『ウォッチメン』もだいぶ前に映画化が実現しましたし、スコセッシの『沈黙』も少し前に成就しちゃいましたし、これであと残っている「見果てぬ企画」はデルトロの『狂気の山脈にて』くらいですかね。夢は信じればいつかかなうのです。

 

次回がまたあれば『音楽』『ミッドサマー』『地獄の黙示録』『初恋』などについて語ろうかと思います。では。

 

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