2020年1月後半に観た映画 『人間失格(アニメ版)』『フォードvSフェラーリ』『ジョジョ・ラビット』『ゴッホが見た未来』『キャッツ』
☆『HUMAN LOST 人間失格』
『蒼穹のファフナー』や『天地明察』で知られる冲方丁氏が、太宰治の名作を大胆に翻案したSFアニメ映画。どのくらい原典が活かされてるのか気になって鑑賞して来ました。まあぶっちゃけちゃうとやっぱり『人間失格』というより原作版『デビルマン』に近い作品でありました。
とりあえず主人公の大場葉蔵氏は「ダメ人間なのに女性に好かれる」「関わる女性がみな不幸になる」という点は共通しておりましたが、まだ大宰版に比べれば倫理的にまともな青年でありました。
ポリゴン・ピクチュアズ製作で、宮野真守が櫻井孝宏に操られ、ヒロインが花澤香菜。そんで人智を越えた怪物が文明を破壊しようとする…といった流れはアニメ版『GODZILLA』三部作の別ヴァージョンのようにも思えます。近未来のお話なのにやたら昭和的ムード、要素を大切にする世界観が独特で面白うございました。
☆『フォードvsフェラーリ』
「フェラーリ」と付いてるのでF1の話かと思い込んでいたら、1960年代のル・マン24時間耐久レースに材を取ったお話でした。あとフォードとフェラーリが激突するというより、フォード内部でマット・デイモン演じるエンジニアとクリスチャン・ベール演じるレーサーが、己の道を貫くために奮闘する話だったり
で、この武骨な男二人の絆が深く胸を打つ映画でした。今どきの洋画でどつきあった果てに「やるじゃねえか、お前」みたいな感じでお互いを認め合う番長漫画的なアレが見られたりします。あとからこのくだりを思い出すとなんとも微笑ましかったり、切なくなったりします。
レーサーのケン・マイルズという人はあちらではさぞ知られてるのかと思いきや、そんなにメジャーでもないみたいで。テスト走行で火だるまになりかけた直後に、また平然とマシンをかっ飛ばしてる肝っ玉の太さには唖然とさせられます。あと主人公よりと見せかけて色々足を引っ張ってくれるフォード会長が小憎らしゅうございました。
☆『ジョジョ・ラビット』
『フォード~』と同じく本年度アカデミー賞作品部門有力候補だった映画。第二次大戦末期のドイツ。気弱な少年ジョジョはイマジナリーフレンドのヒトラーに励まされて、第三帝国の繁栄のため自分にできることをしようと頑張るのですが…
ナチス・ドイツを題材にしてるわりに全体的に陽気なムード。その辺が不謹慎というか手ぬるく感じる人もおられるかもしれませんが、突き刺すところはグサッと突き刺してきます。あと残酷シーンが少ないおかげで年少者たちに戦争の悲惨さを伝える入門編としても使えると思います。
こちらも主人公ジョジョと親友ヨーキーの素朴な友情にほっこりさせられました。途中ジョジョがロボット状のコスチュームをまとうシーンがあるのですが、スカーレット・ヨハンソンとサム・ロックウェルが出てることからして、『アイアンマン2』へのオマージュだったのかもしれません。もしくはただの偶然です。
あの後ジョジョとヒロインが『火垂るの墓』のようになってしまわないか少し心配ですが、作品の雰囲気からしてたぶん大丈夫でしょう。
☆『永遠の門 ゴッホが見た未来』
『潜水服は町の夢を見る』などで知られるジュリアン・シュナーベル監督が「炎の画家」ゴッホを題材とした作品。序盤は南仏の美しい自然に心和むのですが、中盤あたりから多くの人に異常者扱いされるゴッホがどんどん気の毒になってきます。こういうのもよくある話しですが、時代に早すぎたゆえに作品の真価が理解されないという。今では美術史で燦然と輝いてるゴッホの絵も、当事は「醜い」「ヘンテコ」とさんざんな言われようでした。
フランス映画でフランスが舞台なのにみん英語しゃべってたのは気になりましたが、主演のウィレム・デフォーは本物のゴッホと見まがうばかりの熱演でした。さらにオスカー・アイザックにマッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリックの脇を固めるイケオジたちも豪華メンバーでした。
☆『キャッツ』
ミュージカルの鉄板とでも言うべき名作を『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』のトム・フーパーが映画化。キャストには名だたる名優がそろい、どう考えても間違いない布陣なのに、欧米の批評家からはホラーだのポルノだの近年まれに見る大酷評w いやー、映画ってこういうことがあるから面白いですよね。
ただ実際に観てみると箸にも棒にもひっかからない駄作ということはなかったです。例の猫人間のビジュアルも予告でさんざん見せられたせいか慣れちゃってましたし。一言で表わすなら「珍作」という言葉が最もふさわしい。まあ珍作としても平凡というかあんまり印象に残らないのがつらいところです。
それでもさすが人気の舞台だけあって歌曲にはいいものが色々ありました。特にメイン曲とも言える「メモリー」や手品猫をみんなで励ます歌は気に入りました。
次回は『ナイブズ・アウト』『カイジ ファイナルゲーム』『9人の翻訳家』『バッドボーイズ:フォーライフ』などを取り上げる予定。
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Comments
「ジョジョ」スタンド使いのウサギの話ではないのが難点。
「キャッツ」顔がヒトなのが難点。
「フォード」フォンダ(ホンダ)が出ないのがナンダ。
Posted by: ボー | March 07, 2020 09:31 AM
ご無沙汰です。体の加減はどうですか?
当方は製薬会社社員なので
某ウィルス如きに屈するわけにはいかんのぢゃ。
>キャッツ
観たのか。
これ、劇場で予告観たけど
どっちかというと「今更映画にする?」
という疑問が・・・・・・・・・・・・
たまたま予告観たのは
地元のユナイテッドだったけど
上映前の宣伝しつこかったのでその影響か
印象良くなかった気が・・・・・・・・
とりあえずこの2か月の劇場通いで
勉強になったのは・・・・・・・・・・
本気で見たい映画は「配給系の劇場」か小さな劇場
というところ。呉ポポロとかテアトル梅田なんか
それぞれスクリーン2室しかないけど
その分、関わってる人の誠意を感じたなぁ。
その気になれば3時間鑑賞可能だという事もな(笑)。
あ、「このセカ さらにいくつもの」
気長に待ってるネ・・・・・・・・・。
Posted by: まさとし | March 07, 2020 10:55 AM
伍一くん☆こちらにも
「フォード~」のケン・マイルズってそれほど有名じゃなかったのね?
てっきり日本人だから知らないのかと思ってました。
やっと日の目が当たって良かった♪
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 09, 2020 06:07 PM
>ボーさん
強引にまとめにきましたね… ジョジョはあの時代の話なのでシュトロハイム大佐に出てきてほしかったです。
1月は名作ぞろいでしたが、キャッツがオチをつけてくれた印象
Posted by: SGA屋伍一 | March 11, 2020 11:11 AM
>まさとしさん
どもども。コロナは大丈夫ですがなんやかやと忙しくなってしまいました。新しい猫が来たり… そちらもどうぞお気を付けください。大変なご時世になってしまいましたね
キャッツはそれなりに楽しみましたが、人には勧められないかな(笑)
映画館はまだ開いてるようなので行けるうちは通い続けたいものです。このセカ感想、気長にお待ちください~
Posted by: SGA屋伍一 | March 11, 2020 11:15 AM
>ノルウェーまだ~むさん
ケンって日本人には親しみやすい名前ですよねw
そもそもルマン24時間ってアメリカでどのくらい人気あるんだろう。マックイーンが映画にしてたりしましたが
Posted by: SGA屋伍一 | March 11, 2020 11:17 AM