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January 21, 2020

元祖モンスター・ホテルへの帰還 『ドクタースリープ』

映画秘宝がとうとう休刊してしまいましたね。さびしいなあ… それとはまったく関係ありませんが本日は『ドクター・スリープ』についていまさら書きます。スティーブン・キング原作でスタンリー・キューブリック監督が映画化したあの伝説的名作『シャイニング』の続編。というわけで『シャイニング』の説明をまずしなきゃいけないですね。

『シャイニング』は1977年に書かれて1980年に映画化。冬の間だけホテルの番をすることになった作家が、次第にそこに巣食う悪霊に乗っ取られていき、息子のダニーや妻のウェンディを襲うようになるというストーリー。この辺は映画も小説を踏襲してるのですが、キングはその劇場版にめっちゃ怒ったというのは有名な話です。なんでも割りとほめまくるキングさんにしてはこれは珍しい話。原作『シャイニング』はお父さんが子供への愛と自分の弱さについてかなり葛藤するのですが、映画版ではその辺はほぼ省略されてお父さんの狂気に全く迷いが見られません。主演がジャック・ニコルソンだから余計にそう見えます。

ですがキングにとってはそのカットされたところが大事だったんですよね。彼の父親はキングが幼いころ「煙草を買いにいってくる」と言ってふらっと出てったきり、消息不明なのだとか。ですからキングにとってパパンとは憎らしく不可解な存在であり、同時に「本当は自分のことを愛をしていた」と信じたい人間なわけです。だからかキング作品には「毒親」が非常に多く登場します(まともな親もおりますが)。

余談ですがわたしは一昨年くらいにようやく映画版を観ました。びくびくしながらの鑑賞でしたが、これまで色んなところでパロディにされまくったせいで意外と楽しく観られたことをご報告いたします。

さて、ようやく映画『ドクター・スリープ』について。『シャイニング』から30年後。ダニーはすっかり酒びたりのダメ中年になっていましたが、一念発起してなんとか立ち直り、とある医療施設で働くようになります。そんな折、ダニーは遠く離れた町で暮らす強大なパワーを秘めた少女、アブラからSOSのメッセージを受け取り、悪の超能力者軍団と戦うことに。

さっき書き忘れてましたが、『シャイニング』原作は実は超能力ものでもあるのですよね。そもそもタイトルの「輝き」というのはダニーが持つ超能力のことをさしております。この度の映画『ドクター・スリープ』ではその「輝き」が前面に押し出されております。全米(全世界?)にその「輝き」を持つものが点在していて、ある者は良いことにそれを使い、ある者は私利私欲のために用います。また善良な「輝き」人は能力をもてあまして悩んでいる後輩を、時には霊体になってまで助けようとします。主演がユアン・マクレガーというせいもあってまるでフォースとジェダイの騎士のようでありました。ユアン・マクレガーといえばかつてはやんちゃな青年なイメージでしたが、近頃は『プーと大人になった僕』『T2 トレイン・スポッティング』などすっかり中年の危機に直面して奮闘する役が多くなって来ました。彼ほどかっこよくはないですが小生もおっさんゆえ大いに共感しております。

ともあれ、あらすじを読んで「『エイリアン』に対する『エイリアン2』のような内容なのかな?」と予想していたのですが、どっちかというと『エイリアンVSプレデター』のような続編でした。変なたとえでわけがわからないと思いますが、観て頂けたらわかると思います。実は原作では木っ端ミジンコに吹っ飛んだシャイニングホテルが、映画では予告編からバーンと映ります。一体超能力バトルからどうやって前作の舞台につながっていくのか興味津々で鑑賞しておりましたが、なるほど~ そういう持って来方だったのか~ と感心したりテンションぶちあがることしきりでございました。

ここのところ読書量が落ち込み、『ドクター・スリープ』は原作未読で臨みました。で、この記事を書くにあたり小説版のネタバレを読んでみたのですが、映画とはけっこう違いますね… 結末も異なるし、大体ホテルは正編で消失してしおります。ラストシーンがどんなだったかまで読んじゃいましたが、急速に原作の方も手を伸ばしてみたくなってきました。

昨年からキングラッシュが続く映画界。今度は一度映画化されてる『ペット・セメタリー』が公開されております。これまた親子愛にからめたイヤ~な話でして。こちらはスルーさせていただきますw

 

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Comments

どうも。いろいろとスベっているドクター・スリップです。
これは面白かったですね。すべりも眠りもせずに見ました。
少年血祭りシーンが残酷でしたが。

Posted by: ボー | January 24, 2020 07:45 AM

伍一くん☆
ペットセメタリーも是非見て欲しい~
とはいえ、新しいペットセメタリーより前作のほうが好きでしたが。
切ない良いお話なのですよ~~
ちなみに「ドクタースリープ」原作は私も未読ですが、とーっても面白いそうです!

Posted by: ノルウェーまだ~む | January 25, 2020 03:25 PM

確かに、超能力対決でしたね。光と闇というか、悪の異能者集団も、その成り立ちといいますか、昔からこうした悪事を繰り広げて来たのでしょうけど、その際に、生贄にする子供と、仲間にする相手をどうやって選んでいたのか。謎ですが、最初は、ユアンたちを仲間にしたかったのでしょうかね。

恐いというよりは、どこかファンタジックで、幻想世界のようでしたね。抵抗を選んだ少女にしてみれば、物を言わざる事によって、失うものがあるというもので、そうした子供のピュアさや良心への実直さというのは、ユアンをも育てられるものであったと思います。

少女が最大の「輝き」の持ち主だったのでしょうが、それをどう活かすか、ユアンにそうしたように、仲間探しをして、自分達の互いが慈しむ揺籃を求めて、リーダーのように為って行くのでしょうかね。年齢や経験も人を図る指標だとは思いますが、ユアンと少女の二人には年の差なんてと、対等にある特別さを感じました。

Posted by: | January 25, 2020 07:57 PM

SGAさんこんばんわ♪

エイリアンvsプレデターは言い得て妙ですねw自分は原作小説こそ未読ですが、映画版の方はやっぱり印象に残ってるシーンも多いので、その前作と比べると雰囲気といいますか、作風がガラリと変わってる印象も受けました。
ただ本作の善と悪に分かれた超能力バトルみたいな展開は個人的には好みな方で、ヒロインのアブラちゃんの熱い正義感みたいなものも非常に頼もしかったですね。能力も強すぎるので、彼女よりむしろダニーの方を心配してしまいました(笑

Posted by: メビウス | January 27, 2020 08:39 PM

>ボーさん

ども。初すべりですか。スノボのシーズンですよねー
かわいそうな少年のシーンは本人はけろりとしてたそうですが、周りの役者たちは相当気がめいったとのこと

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2020 06:30 PM

>ノルウェーまだ~むさん

うーん、どうしようかな。ペット霊園
前の映画観終わった後わりと欝になったんですよね。一箇所だけあったギャグは好きでしたが
キングもいつのまにやら未読作品ばかりになってしまった。もっと読書にはげまないと

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2020 06:33 PM

>隆さん

超能力対決という点ではX-MENのようでもあり、その力で闇落ちしそうになるあたりは指輪物語もちょっと思い出させました
やはりユアンと少女の関係がよかったですね。このさわやかさはキューブリックの『シャイニング』にはなかったものです

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2020 06:39 PM

>メビウスさん

今日も新たに「シャイニング」のパロディ動画を見つけてしまった(マウンテンデューのCM)、本当にこの作品は愛されているというかお笑いのネタと化しているというか。おかげで「ドクタースリープ」でもなんだか吹き出しかけました
アブラちゃんはもうかなうもののないチート的存在になってしまいましたね。これからも大変でしょうけどジェダイマスターがついてるから大丈夫でしょう

Posted by: SGA屋伍一 | January 29, 2020 06:43 PM

アブラがスベルと(油だけに)ダニーがアレを使ってツッコム。だから「ドクター・スリッパ」なのですね。

閑話休題。
今回の話の方がB級で好き。キューブリックが生きてて、この脚本のままで続編映画撮ったらどうなったかが見たいなあ。脚本このままって事はないんだろうな。

Posted by: ふじき78 | August 02, 2020 11:19 AM

>ふじき78さん

キューブリックは続編そのものがあまり好きじゃなさそうですよねえ
本作も「ぬるい」とか言いそう

Posted by: SGA屋伍一 | August 30, 2020 05:41 PM

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