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January 16, 2020

冗談のないジョーダン・ピール 『アス』

本日は『ゲットアウト』 にて一躍脚光を浴びたジョーダン・ピール監督の最新作『アス』について書きます。「新作」といっても公開 とっくに終わっちゃってますけどね… 裕福で幸せそうな黒人一家がバカンス先で、自分たちとそっくり同じ顔を持つもう一組の家族に襲われるという話。いわゆるひとつの「ドッペルゲンガーもの」ってやつですかね。説明するまでもありませんが、ドッペルゲンガーというのは自分と全く変わらぬ姿をした悪魔的な存在(と思いました)。民話等によるとそれを見てしまうと数日後に頓死してしまうということになっております。この得体の知れない不気味さに惹かれてか、ポーやドストエフスキー、芥川龍之介などが作品のモチーフとして使っております。

ただ『アス』の分身さんたちは魔力で殺すとかそういうまだるっこしいことはしません。直接刃物でブッ刺しに来ます。怖いですね。しかもなぜか刺しにくそうなハサミでもって… ナイフでもアイスピックでもなくなぜハサミなのかについては、最後まで明らかになりませんでした。何らかのメタファーだったのでしょうか。

そんな風に不条理の連発でもってお話は進んで行き、分身の正体とか、彼らが襲いに来る理由とかも不明なまま終わるんだろうな…と予測していたら一応無理矢理説明をつけてました。ただその「真相」というのがかなり苦しいものだったので、「これだったら下手に理屈づけとかしなくて、一切不可解なまま終わった方がよかったのでは?」と思ってしまいました。あと監督の前作『ゲットアウト』は不気味ながらも爆笑してしまうシーンもあり、その辺にけっこう期待していたのですが、今回は本当にただ怖いだけっだったのも逆に肩透かしでございました。

…とわたしはついくさしてしまいましたけど、これが評論家たちの間ではけっこう高得点(批評家支持率は94%、平均点は10点満点で7.94点)なのですね。独特なムードと絵作り、そして単なるホラーにとどまらず、アメリカの社会問題が反映されている点がうるさ方たちのハートをとらえたのでしょうか。

わたくしそこそこのビビりなので、なるべく怖そうな映画は観たくないのですが、昨年末は恐怖に興味が打ち勝ってしまうような映画が多くて、何本かホラーに属する作品をプルプル震えながら鑑賞いたしました。『IT』完結編に『ブライトバーン』に『ドクタースリープ』に、一昨日書いた『ゾンビランド/ダブルタップ』…はあんまり怖くないか。ともかくそうした一連の映画では『アス』が一番怖かったです。『IT』のペニーワイズさんには親しみすら感じましたし、『ブライトバーン』の坊ちゃんも見てくれはその辺の子供でしたし。『ドクタースリープ』(近日レビュー予定)は怖いというかなんかテンション上がる映画でした。しかし『アス』の偽一家の皆さんは迫力の顔芸と、モンスターじみたハスキーボイスと、何をしだすかわからない恐ろしさでほか作品の怪物たちより頭ひとつ抜けていたと思います。危うくちびるところだったじゃないですか! どうしてくれるんですか!!

次に観ようかどうか迷ってるホラーはやはり新鋭のアリ・アスター監督による『ミッドサマー』。あれ、でもこれ予告見ると美しい田園風景でカップルたちがとても楽しそうにしているな。もしかしてホラーじゃないのかな? なら安心して観られそう。ふふふ… ふふふ… うふふふふふふふふふふふ

 

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January 14, 2020

死者の国VS遊戯の世界 『ゾンビランド/ダブルタップ』『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

前回も書きましたが、色々たまってるので今年はさくさく飛ばして行きます。

今回は『ゾンビランド/ダブルタップ』と『ジュマンジ/ネクスト・レベル』について紹介します。2作品とも昨年末のクソ忙しい時上映されてたSF?コメディの続編ものですね。

前者はゾンビが跋扈する世界で、自分なりのルールを支えに生きる青年と仲間たちのお話。正編の感想はこちら 。特にとりえもなさそうななよなよしたボンクラが、非現実的な状況の中で三角関係に悩んでいる様子はちょっと前の少年サンデーによくあるパターンでした。

後者は名作エンターテインメントを新生させた『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』のさらなる続編。前作の感想はこちら 。魔法にかけられたTVゲームの世界に迷い込んだ若者たちが、喧嘩しながらも団結力でピンチを脱して行くストーリー。こちらは色恋よりも友情がメインだったり、世界設定がゲームだけにやけに法則的だったりするあたりは少年ジャンプっぽかったです。

で、この2本新要素もちょこちょこ加えてはあるんですが、全体的には「前とやってること大体一緒だよな…」という印象を残します。『ゾンビランド~』の方は9年くらい経ってるのでそれがすごく懐かしく、心地よい感情に包まれるのですが、『ジュマンジ~』は1年しか経ってないので「こないだ観たばっかだなあ」とやや冷めた思いをぬぐえませんでした。1年だって決して短いスパンではないはずなのですが、映画的にはなんか「ついこの前」と感じられるのはなぜなんでしょう。最近よく言われる「スターウォーズ疲れ」もその辺から来てる気がします。

両者とも前作と全くキャストをほぼそろえてきてるのは偉いところ。ただそれもやっぱり9年経ってみんな演技派として大成してる『ゾンビ~』の方が、「そろいもそろってよくこんなくだらない映画にまた出たなあ」という感動があります。

うーん… 『ゾンビ~』ばかり持ち上げてしまったのでなんか不公平な気がしてきたな… 『ジュマンジ~』の方にもなんかいいところがなかったかな… そうそう、動物好きとしてはダチョウとマンドリルがいっぱい出てきたのがよかったです! あと馬もよかった! そんなもんか… あと久しぶりにダニー・デビートとダニー・グローバーにスクリーンで会えたのもプラスポイント。デビートさんはしばらく見ぬうちにすっかり老けましたね…

2020年の注目続編としてはやはり昔懐かしの『トップガン』でしょうか。共演者がすっかりじいちゃんばあちゃんになったのに一人だけ変わらず主演も続投するトム・クルーズ。恐るべし、です。

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January 09, 2020

もしもビートルズが弾けたなら 『イエスタデイ』

新年も9日になってようやく再開です。だいぶ未レビューの映画をためこんでしまったので、今年はさくさくコンパクトに参ります。

で、今日紹介するのは『イエスタデイ』。『トレインスポッティング』や『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイルの最新作であります。突然ビートルズ(その他にも少々)が存在しなくなった平行世界に迷い込んだ低迷ミュージシャンが、彼らのナンバーで世界的スターになるというお話。

少し前の日本だと男子が憧れる・なりたがるのは坂本龍馬だと思うんですけど、世界標準だとザ・ビートルズになるんですかね。そういえばチャゲアスのある曲にも「生まれ変わるときはビートルズだな」なんて曲がありました。

これがこずるい主人公だと「何の苦労もしなくてセレブになれてラッキー!!」とはしゃぎまくるわけですが、こちらの場合は生真面目な青年なので「パクリでこんなに大成功していいのだろうか…」と悩んじゃったりします。そこにどう決着をつけるかがお話のヤマ場の一つだったり。

ダニー・ ボイルの映画というのはお笑い交じりでもけっこう胸をキリキリ突き刺してくるところがあるのですが、恐らく彼のキャリアの中で最も優しい作品。普通なら悪役に回りそうなキャラでもどなたもこなたも目茶いい人ばっかり(悪徳プロデューサーのケイト・マッキノン除く)。最近疲れることの多い身としてはこの優しさが骨身に沁みました。

まあビートルズのシンプルなナンバーが果たして21世紀の現在に突然発表されて大うけするのかな?という疑問もあるわけですが、大画面で久しぶりにリヴァプール・サウンドの数々を浴びせられるとそんなことはどうでもよくなりますね。あと改めて和訳を見るとビートルズの歌詞ってけっこうわけわからんやつも多いな、と苦笑させられました。

わたしが好きな曲はもちろん超定番のレット・イット・ビー、ロング・アンド・ワインディング・ロード、ヘイ,ジュードなどなど。少し渋いあたりではハロー・グッバイ、涙の乗車券、プリーズ・ミスター・ポストマン、ひとりぼっちのあいつ、ストロベリー・フィールズ・フォーエバー、サムシング、ヒア・カムズ・ザ・サンなどもよいですね。

英国が舞台でインド系の青年が主人公というのも意欲的でありました。

最後に一番お気に入りの曲の動画リンクを張っておきますので、気が向いた人は聞いてみてください。Here There and Everywhere

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