ラスト・オブ・シャイアン スコット・クーパー 荒野の誓い
非常にどうでもいい話ですが、今から一ヶ月ほど前、当地域は台風の影響で5日ほど断水になりまして。これはそんなヘロヘロな状況の中、銭湯ついでに観にいった思い出深い作品。クリスチャン・ベール主演の地味残酷西部劇『荒野の誓い』、ご紹介します。
1892年、未だ無法の地域の多いアメリカ。かつてシャイア族と激しく戦ったブロッカー大尉は、その長イエロー・ホークを故郷まで護送する任務を与えられる。友を多く彼らに殺されたブロッカーは、当然苛立ちを抑えきれずにいた。そんな旅の途中、一向は野蛮なコマンチ族に家族を殺されたロザリーという女性を行きがかり上同行させることになる。多くの危険が潜む行程の果てに、ブロッカー、ホーク、ロザリーを待ち受けるものとは…
原題は『Hostiles(敵意たち)』。ただこれだと抽象的なので、とりあえず「荒野の」とつけときゃ西部劇っぽくてわかりやすかろ~という配給さんの気持ちもわかります。
わたしの子供のころ、ネイティブ・アメリカンの方たちはもっぱら「インディアン」と呼ばれておりました。ですがそれが差別的呼び方だということになり、いつのころからか「ネイティブ~」という呼称の方が一般的に。ただそれもベストではないらしく、本当は部族ごとの名前で呼ぶのが一番いいらしいです。その流れをくむかのように、かつては西部劇で野蛮な悪役だった彼らも、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』あたりからはむしろ被害者的な描かれ方に。現代劇ですが少し前の『ウィンド・リバー』でも窮状が切なく語られておりました。
で、『荒野の誓い』でも基本的には「白人に土地を奪われ仕方なく戦った」という立ち位置なのですが、同時に女子供でも容赦なく殺す悪鬼のような原住民も出てきます。確かにどの人種でも全ていい人、もしくはすべて悪い人…ということはなく、いい人もいれば悪い人もいるのが現実。そういう点では大変公平な視点でした。
凶暴なコマンチ族との激闘がずっと続くかと思いきや、この問題はわりとあっさり解決します。その代わりブロッカーやロザリーたちにはまた別の難儀が次から次へと押し寄せませす。その度に旅のメンバーも一人、また一人と減って行く。公平であると同時に意地の悪い話だなあ、とも思いました。でもがんばって最後まで見たら、とてもさわやかな気持ちにさせられました。もう大概ネタバレですけどこのラストシーンがとても素晴らしい。もうちょっと語りたくなるところをがんばってよくそこで止めました!と監督を激励したくなりました。
ちなみにこの映画2017年に本国でかかってるんですけど、興行的にあれだったのか日本では2年くらい遅れての公開となりました。不遇かもしれませんけどやはり西部劇の『ビリー・ザ・キッド』が劇場スルーされたことを考えるとまだいい方かもしれません。なんちゃって西部劇ファンとしてはもう少しわが国でも新しいファンが増えてくれればなあ…と願うしだいです。
主演でますます脂がのってるクリスチャン・ベール氏は来年早々に『フォードVSフェラーリ』にも出演。またしてものアカデミー賞ノミネートも噂されていて、こちらも期待しています。
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