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September 17, 2019

カメを落とすな! 上田慎一郎・浅沼直也・中泉裕矢 『イソップの思うツボ』

昨年邦画界に一大ブームを巻き起こした『カメラを止めるな!』。その立役者である上田慎一郎監督が、二人のクリエイターと共に「三人監督体制」で挑んだのが本作品。『イソップの思うツボ』、ご紹介いたします。

平凡な家庭の地味な女子大生、亀田美羽。タレント一家の一人娘で自身もアイドルの兎草早織。父親を手伝って「復讐代行業」を生業としている戌井小袖。性格も環境もバラバラの三人の少女の運命は、ある「事件」をきっかけに複雑にからみあっていく。

落ちてくる動物、徐々に明かされる相関関係。とりあえず観終わって最初に抱いた感想は「P・T・アンダーソンの『マグノリア』みたいなものがやりたかったのかな?」というものでした。

よかった点から申しますと、まず主演の女の子たちがみなそれぞれに魅力的でありました。またとにかく「意外性」を重視して作られているので、幾つかの場面ではけっこうビックリさせられました。問題はその意外性を優先するあまりか、「それ、さすがにおかしくないか?」という点もちょこちょこあるところですね… 傍でいうのは簡単ですけど、その辺の不自然さをカバーするためにもっと脚本を練り練りする必要があったのでは。ただ公式サイトを見ますと「構想3年」とあるのでこれが限界だったのか… 『カメラを止めるな!』があまりに自然で見事な脚本だったので、いかんと思いつつ、ついつい比べてしまうのでした。あと自分がわりとがっかりしたのは、ポスターでうなだれてる三人の着ぐるみがどんな風に活躍するのかな…と期待していたら全く出てこなかったことですねw

まあブレイク作の直後の作品というのは厳しいですよね。どうしたって前作と比べられてしまう(お前が言うか)。でも『アンブレイカブル』でがっかりされたシャマランや、『ゲーム』でぼろくそに言われたフィンチャーがその後リベンジを果たしたように、上田監督も捲土重来をいつか果たしてほしいものです。というか本来の彼の正念場となるのは単独作『スペシャルアクターズ』(来月公開)の方でしょうか。そちらももちろん拝見します~

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September 12, 2019

ジャングル大帝ブック ジョン・ファブロー 『ライオン・キング』

 

ここのところ矢継ぎ早に過去の名作の実写化を連発してくるディズニースタジオ。この度はその最新作で劇団四季のミュージカルでも名高い『ライオン・キング』をご紹介します。

雄大な自然に恵まれたアフリカの大地。サバンナを治めるライオン・ムファサの息子として生まれたシンバは、両親の暖かい愛情のもとすくすくと育ち、自分もいつか父親のような立派な王になることを志す。だがその影で、王位継承に敗れたムファサの弟スカーは、権力を奪うべく姑息な策略を巡らしていた。

1990年代、「ディズニールネサンス」と言われた時代がありました。低迷していたディズニースタジオが『リトル・マーメイド』を皮切りにヒット作を連発し、手描きアニメの黄金時代を築いた期間のことです。特に『美女と野獣』と『アラジン』は日本でも一大ブームを巻き起こしました。『ライオン・キング』もそれに大いに貢献した1本です。

ただこの作品、わが国では「『ジャ○グル大帝』のパクリでは?」ということもよく言われています。でも『ジャン○ル~』の方は人間もバンバン出てきますし、王族争いとかもないので、仮にインスパイアを受けてるとしたらキャラクター造形などでしょう(マントヒヒは長老でハイエナは悪党だとか)。代わりに監督が原作としてあげたのがあの『ハムレット』。なるほど、『ハムレット』から暗い要素を大体抜き去ったらこんな風になる…かな?(それはもう『ハムレット』じゃない気もしますが…)。少し前おじさんと甥っ子が王位をめぐって激突する映画が何本かありましたが、あれらは『ライオン・キング』を経由した『ハムレット』の子孫なのかもしれません。

さて、この度の新作、ある一場面を除いては動物も背景もすべてCGで作られております。こうなるともはや「実写」というよりCGアニメに近い気がします。でも見た目は全然実写だしなあ… 公式でもそれを逆手にとって「超実写」なんて言っております。本当にCGの進化もいくところまでいってしまった感がありますね。

一方でかつての名作を次々と「実写化」していく流れには批判もあるようです。すでに完成されてるものをそのままそっくりリメイクするのに何の意味があるのか?という意見ですね。ただ自分は正直むかしのディズニーの画風がそんなに好きではなかったので、アニメの方は劇場ではスルーしちゃってたんですよね。今回は実写と見まがうほどにモフモフ感満載だったので張り切って映画館にいきました。そしたら自分だけかもしれませんが、はしゃいだりいきったりするシンバ君が十代くらいの男の子と重なって見えてきたりしたのでした。擬人化したイメージが下の落書きです(友人にみせたら「80年代感ただよう」と言われました)。

あと他のキャラクターではシンバの友人となるイボイノシシとミーアキャットの痛快なコンビや、悪役のスカーさんもおきにいりです。スカーさん、二年前に亡くなった飼い猫のモンさんとよれよれ具合が非常にそっくりだったもんですから… 好きな曲である「ライオンは寝ている」がけっこう長々とかかっていたのも高ポイントでした。

それにしても90年代手描きアニメでブイブイいわしていたディズニーが、00年代に入ってCGでしかアニメを作らなくなり、10年代ではかつての名作アニメをどんどん「実写化」していく流れにはあまりの移り変わりのはやさに呆然といたします。「あまり好きじゃなかった」身で言うのもなんですが、たまにでいいから手描きアニメの方も伝統をひきつぐために復活してほしいものです。欧州ではぽつぽつと個性豊かな手描きアニメが色々生まれておりますけど。

「あんまり日本ではあたらないだろう」というわたしの予想を覆して、『ライオン・キング』は現在50億越えのヒットを達成。まだ伸びそうです。劇団四季のミュージカルが浸透していたせいでしょうか。そんなわけで公開もまだ続きそうなので、モフモフや猫が好きな人はぜひごらんください。 

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September 10, 2019

ベストマッチじゃないやつら デビッド・リーチ 『ワイルドスピード/スーパーコンボ』

もうじき公開終わりそうな映画紹介第二弾です。世界的人気シリーズ初のスピンオフにして、スーパー筋肉スター二人の共演作。『ワイルドスピード/スーパーコンボ』紹介します。

凄腕のドライバー・ドミニクと関わったことで、知り合うことになったホブスとショウ。だが熱血漢の捜査官とクールなアウトローでは当然ソリがあうこともなく、お互いを蛇蝎のごとく忌み嫌っていた。そんな折MI6に属していたショウの妹が、任務の途中細菌兵器を奪って逃走したという知らせが入る。彼女を確保するよう協力してことにあたってほしいとCIAに依頼されたホブスとショウだったが、二人の返事は「誰がこんなやつと!!」だった…

元はと言えばヴィン・ディーゼルとポール・ウォ―カ―のバディものとしてスタートした本シリーズ。しかし一通り迷走したのちは、コンビというよりどんどん「ファミリーもの」としての要素が強まっていきます。本作はスピンオフとなってはおりますが、そういう意味ではシリーズの原点に立ち返ったと言えるでしょう。というかどっちかといえば2作目や3作目の方が番外編っぽいような… まあ細かいことを言うのはやめましょう。

番外編っぽいといえば監督が『デッドプール2』の人のせいか、本家よりかなりお笑いムードが濃かったです。特にお互いをあげつらうロック様とステイサムの悪口合戦には腹を抱えて笑わかされました。あとやたらアメリカのサブカルに関してのネタが多かったですね。わたしまだゲーム・オブ・スローンズ半分しか見てないのに思いっきりネタバレを食らわされたような… まあ「誰それが死ぬ」というバレではなかったので許容範囲です。

筋肉スター2人に立ち向かうのは、最近だと『ダークタワー』(…)の活躍が記憶に新しいイドリス・エルバさん。彼も十分にかっこいい上に仮面ライダーなみの改造手術を受けてるという設定なんですけど、やっぱりホブス&ショウに本気で勝とうと思うならパシリムのイェーガ―くらい持ってこなきゃいかんと思います。それはさすがにワイスピから逸脱しすぎでは…という気もしますが、どんどん枠からはみ出していくのがこのシリーズのウリなのでアリです。

ホブスの故郷のサモアの風景も心やわらぐ本作品。というかサモアってなんか服装とか建築が沖縄に似てますね。そこのおばあちゃんがだんだん平良とみさんに見えてきたりしました。

正直一番ツボにはまったのは序盤のコンビの対比平行映像だったのですが、その後も普通に面白かったです。クライマックスではちゃんとワイスピ特有の無茶カーアクションもありましたし。キャラは減りましたけどシリーズの名に恥じないトンデモ映画でありました。

『ワイルドスピード/スーパーコンボ』はしっかり世界で製作費の3.5倍を稼ぎ、彼らだけの続編もすでに決まっているとか。本家の方も来年春に新作の公開が予定されています。ヴィン・ディーゼル派とロック様派での不仲の噂も伝えられてますが、ファミリー映画なんだから仲良くやってほしいものですね!

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September 04, 2019

苦衷戦艦ヤマト 三田紀房・山崎貴 『アルキメデスの大戦』

当初はスルー予定だったのですが、ネットでの好評を見ているうちに「そういやオレ山崎監督好きだったっけ…」ということを思い出しました。『アルキメデスの大戦』、ご紹介します。

日本が世界から孤立しつつあった昭和初期。海軍では空母建造を推し進める山本五十六派と、巨大戦艦にこだわる平山派が対立していた。平山派の意見が通っては諸外国にますます警戒心を抱かせると考えた山本は、戦艦の建造費があまりに安いことに目をつけ、数学の天才である若者・櫂直(かい ただし)にその不備を見つけるよう依頼する。軍を嫌う櫂は最初それを断るが、日本が戦火に巻き込まれることを憂い、結局は協力を受け入れることに…

この映画はいきなり壮絶な「大和」の沈没シーンから始まります。『スペース・バトルシップ ヤマト』(これも好きでしたがー)とは打って変わった迫真のリアリティに息を呑みました。これ、言ってみれば一番派手なシーンを一番最初に持って来るという大博打をやらかしているわけです。しかし普通なら尻すぼみにになるところを、キャラクターの魅力と巧みなストーリーテーリングで乗り切っておりました。

やはりまず惹きつけられるのは菅田正暉君演じる櫂直の変人ぶり(笑) 眉目秀麗で頭も切れるのに、世渡り下手で「美しいものは計測しないと気が済まないののだ~」と目を付けたモノに片っ端からメジャーを当てる。そして周りがそれをいぶかしんでるとそっちの方を変人扱いする。またクールを装いながら実のところ情を捨てきれなかったり… ちょっとべネディクト・カンバーバッチが演じていた「シャーロック」を彷彿とさせます。ただ彼が気に入ったものをなんでも測りたがるのは、人が「美しい」と思う形の比率やパターンを知りたいからでは…と考えます。

で、この映画で「美しいもの」の代表として出てくるのがご存知戦艦大和。わたしあんまり大和って好きでもなかったんですけど、『アルキメデスの大戦』を見たらなんかあまりのかっこよさに見入ってしまいました。アホな将校が模型を見て「これこれ、こういうのが欲しかったんだよ~!」と目をキラキラさせていましたが、いい年こいてロボットが好きなものとしては非常に共感してしまいました。ただ現実にある兵器にそういう気持ちを抱いてしまうことにうしろめたさも少々感じます。海洋堂の名物専務が言っていた「戦車をこころおきなく楽しむために世界から戦争をなくしたい」という言葉が思い出されました。

で、ここから先は後半もネタバレで…

櫂たちの奮闘を見ていると彼らの努力が実を結んで、大和は作られず、戦争も避けられたら…と思わずにはいられません。しかし現実はそうならなかったことは言うまでもありません。櫂たちは一度は大和の建造を阻止しますが、軍艦のコンペくらいで世界の大きなうねりは変えられない…というオチがなんとも説得力があり、皮肉が利いていました。

平山は「負け方を知らない(最後の1人まで戦い続けそうな)日本人に、諦めるふんぎりをつけさせるため」大和を造りたいと主張します(本人の趣味もありそうですが…)。偶然とはいえ国が誕生して以降、一度も他国から徹底的な打撃を被ったことがなかったことが日本をそういう状況に追い込んでしまいました。ですがわたしたちは先の大戦で日本がいかに悲惨に負けたかを知っています。時代の流れというのはそう簡単にせきとめらるものではないでしょうけど、少しでもこの国が戦争に向かっているとしたらなんとかそれをおしとどめたいです。

いつになくかしこまってしまいましたが、山崎監督のいつになく(失礼)理にかなったメッセージ性の強いお仕事に感嘆いたしました。そして高まった評判を続く『ドラゴン・クエスト ユア・ストーリー』でまた地に落としてしまう山崎さん。素敵だ! 年末にはCG版『ルパン三世』もひかえておりますが、ちょっと働き過ぎではないでしょうか。

あと書き忘れましたが、この映画はヤングマガジンにて連載のコミックが原作です。映画はきっぱり一本で終わりましたが、漫画の方は17巻を数えた今もまだまだ終わらなそう。櫂君のその後が気になるのでいずれ読んでみようかなー

 

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September 03, 2019

新・てつぞら ティモ・ヴオレンソラ 『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』

重い扉をこじあけたら 暗い宇宙が続いてて めげずに歩いたその先に 知らなかったスカイ

…7年前クラウドファインディングで作られ、好評を博したフィンランドの珍作が忘れたころに帰ってやがりました。『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』、ご紹介します。ちなみに前作の感想はこちら。

月面にナチス残党の基地が発見され、すったもんだの末に人類がほぼ全滅した未来。月で生き延びた人々は少ない物資をわけあい細々と生活していた。そんな折、地球の内部に秘密帝国が建造されていて、無尽蔵のエネルギーを有する「聖杯」がそこにあることが明らかになる。血気盛んな若者オビと仲間たちは月のエネルギー問題を解決すべく地下帝国へ乗り込んでいくが…

あらすじだけで見事なアホアホしさです。世界で最も教育水準が高いと言われるフィンランドですが、「アホネン」というスキー選手がいたくらいなのでアホなのかもしれません。まあこういうアホらしさ、嫌いじゃないですけどねw

特に感銘したアホ設定は月にスティーブ・ジョブズを教祖とした宗教組織が出来てること。眺めてるだけで笑いがこみあげてくるのですが、不思議なリアリティがありまして、近い将来現実に結成されそうな気がしてなりません。

そしてジョブズ本人も登場します。彼のみならず古今東西の選ばれた歴史上の有名人がナチスの地下帝国に大集結。FateGOなみのきらびやかさです。その中心にいるのはもちろんナチス創始者のあの方。あと恐竜も出てきます。なんでも出せばいいってもんじゃないと思いますが、まあ面白かったのでよしとします。とりあえずお話のテンポは前作よりも良かったですし。あとなにげなく出てきたものが重要な伏線になるとこなどもよく考えられてました。アホアホ言ってしまいましたがこういうところは頭のいい設定でした。すいませんフィンランド。

盛大に笑わせてもらったシーンをもうひとつ。それは冒頭のロゴ。いきなり「アイアン・スカイ・ユニバース」とドーンと出てくるのでふるってます。これから先どうやってユニバース展開に持ち込んでいくのかお手並み拝見といきましょう。

わたしは『モンスターズ』『スカイライン』と本作を勝手に「21世紀の3大低予算SF映画」と位置付けているのですが、前二作は1本ずつ続編が出来たところでそのまま収束しそうです。『アイアン・スカイ』はさらなる飛躍を見せることができるでしょうか。がんばれ! わたしは映画代しか払ってないけど!

 

 

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