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August 21, 2019

魔法中年ウィル☆スミス ガイ・リッチー 『アラジン』

ここんとこ過去の名作の実写化に力を注いでいるディズニーさん。本日はそのうちで最も成功した1本である『アラジン』を紹介いたします。

むかしむかし、アラビアのとある国で。街でコソ泥としてきままに暮らしていた青年アラジンは、ある日お忍びで市場に来ていた王女ジャスミンと出会う。ジャスミンと再会するため城に潜入したアラジンだったが、運悪く王位を狙う大臣ジャファーに捕まってしまう。ジャファーはアラジンを捨て駒として使うことを思いつき、罠の張り巡らされた洞窟に、魔法のランプを取ってくるよう命じる。苦労の末ランプを手に入れたアラジンが何の気に無しにそれをこすると、たちまち中から青い陽気な魔神が現れる。魔神はアラジンを主人と呼び、三つの願いをかなえると申し出るが。

原作はもちろんアラビアン・ナイト…ですが、それよりは92年に作られたアニメ版の忠実なリメイクになっているようです。ようです…というのは、自分は未だにアニメ版を観ていないから。今回も大体知ってる話ですし、容易に結末も予想できたのでそんなに鑑賞意欲もわかなかったのですが、家族が一緒に観ようというので付き合いで行ってきました。そしたらめっぽう楽しかったので、やっぱり名作を甘く見ちゃいかんと思いましたね…

まずとにかく虎やオウムや猿、絨毯といった人間以外の連中が滅法面白い。特に猿。役に立つ反面足もひっぱるプラマイゼロ的なマスコットでございましたが、見ているだけでとにかく愉快。わたしのベスト猿映画である『キートンのカメラマン』に肉薄するほどの名演技でした(CGだけど)。ちなみに姉と母はブロードウェイで舞台版を見ているのですが、猿はどう再現したのかと聞いたら完全にオミットされていたそうです…

ついでひかれたのが魔法の絨毯。布なのにドクターストレンジのマントのように表情が豊かでした。特に魔神がノリノリでしゃべっているうしろで全く話を聞いておらず、砂のお城をこしらえて喜んでるシーンには萌え萌えズキューンでした。

人間の役者でいうと一際輝いていたのは魔神(ジーニー)演じるウィル・スミス。それこそ90年代後半は出る映画全部ヒットさせていた彼ですが、ここのところそんなに目立った活躍はなかったような。アニメ版では変幻自在のジーニーをどうやって…と心配しておりましたが、CGの力を借りてめっちゃファンキーに暴れておりました。ぶっちゃけ最近のベストアクトだったのでは。色のついた不定形の怪人が山寺さんの声でしゃべるとジム・キャリーの『マスク』の姿がちらつきはしましたが。

最近ぱっとしないといえば監督のガイ・リッチーさんもそう。『キングアーサー』も『コードネーム・アンクル』も激しくたのしいんですけど売上的には赤字だったりして。ですが今回『アラジン』で逆転一発ホームランをかましてくれたのでなんだか安心しました。本当にあの支離滅裂だった『リボルバー』のガイさんが世界中の老若男女を笑わせる百点満点のエンターテイメントをこしらえるようになるとはねえ… というかいい加減『リボルバー』のことは忘れてあげないと。

まあこれは元のアニメ版がよくできているから、というのもあるんでしょうね。クライマックスで絶体絶命のピンチをアラジンが切り抜ける方法には大変感心しました。また生身の人間が暑そうなところで華やかな衣装で歌ったり踊ったりしてると、中東の話なのにインド映画のように見えたりもして。貧しいアラジンが機転と勇気でなりあがっていくストーリーもマサラ・ムービーっぽかったですね。

『アラジン』は現在『トイストーリー4』『天気の子』に肉薄されてはいますが、2019年の日本公開作品で初めての100億円代を突破しました。たいしたもんです。続けざまにディズニーが放つ超実写『ライオン・キング』も先日観て来たので近いうちレビューします。

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Comments

アラジン青年もそうだと思うのですが、ジーニーも、ランプの持ち主次第では、善にも悪にもなるという事ですね。そんな真実を曇らせない形で、欲も愛もある人間アラジンや、自然体のジーニーの人格はしっくり来るものがありました。

道徳的ではないし、生意気な子供の共感を得るに足る、老舗ディズニーの創造力があると思います。欲や愛に自然体って、アラジンが中東を舞台にしながら、アメリカンなキャラクター観を提唱しているように思います。その意味で、後進国に対するアメリカの先進性というのは、人間への許容やキャラクターの豊富さにあるんじゃないでしょうか。

動物は可愛いというか、心の友、癒される相棒ですね。

Posted by: | August 21, 2019 10:55 PM

>隆さん

そうですね。ジーニーはその辺鉄人28号にちかいものがありましたね。いいも悪いも主人次第というか。ジャファーに命じられている時はえらくしょんぼりしてましたが(笑)

現代アメリカ的といえばヒロインが国のトップを目指すあたりは原典にもアニメ版でもないアレンジでしたね

Posted by: SGA屋伍一 | August 22, 2019 09:05 PM

こんにちは。
言い方は悪いですが、ガイ・リッチー「なのに」正統派だったというか。
素敵な娯楽作品に仕上がっていました。
とにかくきらびやかで、楽しい作品でした。ウィル・スミスがめちゃめちゃしっかりしていた!!

Posted by: ここなつ | August 23, 2019 05:22 PM

伍一くん☆
ねー?やっぱりちょっとインド映画みたいになっていたよね?
これが気になっちゃって…

絨毯くんはとっても可愛かったです!!砂のお城、上手にできていましたねぇ。
ウィルのジーニーも最高!でした。私は字幕で観たのですが、アニメと同じ山ちゃんの声でも見たかったなぁ。
そう言う意味でも映像的にはもっとマスク並みにめちゃくちゃやってもよかったような?

Posted by: ノルウェーまだ~む | August 23, 2019 11:44 PM

「阿羅陣」なんて言うから「阿羅漢」の二作目かと思ったよ(嘘)。

Posted by: ふじき78 | August 29, 2019 11:37 AM

>ここなつさん

ガイ・リッチーもここまでできるんですね~ でも舌先三寸でピンチを切り抜けるアラジンはガイ作品のキャラクターに近いところがあるような。
ウィル・スミスは早くもアン・リーのアクション映画が待機してますがこちらはどうなるかな?

Posted by: SGA屋伍一 | August 29, 2019 09:59 PM

>ノルウェーまだ~むさん

インド映画っぽかったですよね。アラジンのルックスがそんなにくどくなかったですけど
絨毯君がオリジナルではどんな風だったか気になって来ました。今度アニメ版も観てみようかな
ウィルはMIBを蹴ってこっちに出て正解でしたね~

Posted by: SGA屋伍一 | August 29, 2019 10:04 PM

>ふじき78さん

ぼく若いから少林寺シリーズ第3作のことなんて知らない…

Posted by: SGA屋伍一 | August 29, 2019 10:05 PM

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