恋はミステリオ ジョン・ワッツ 『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』
『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感動も冷めやらぬ中、行きつく間もなく新作を送り出して来るマーベル・シネマティック・ユニバース。フェイズ3の幕を締めくくるのは次世代のヒーローの中心となるであろうあの少年。『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』、ご紹介します。
サノスによる大攻勢を生き残ったスパイダーマンことピーター・パーカー。師を失った悲しみが癒えない彼は、それをまぎらわすかのようにクラスメイトと共にヨーロッパ旅行に出かける。あわよくばその機会に思いを寄せるミシェルに告白しようと意気込んでいたピーターだったが、シールド長官フューリーの勧誘や異次元からの脅威「エレメンタルズ」の来襲でバカンスは大混乱に…
スパイダーマンのテーマといえば「大いなる力には大いなる責任が伴う」。ですが今回のピーターはどうにも目の前のミッションに消極的。それもそのはず。彼の「力」というのは本来クモ能力くらいなものなのに、MCUでは「アイアンマンの後継者」「次世代アベンジャーズのリーダー」「地球規模の衛星兵器の管理者」と高校生にドデカすぎる責任を負わせ過ぎなんですよ。もっと他にキャパシティの広い大人のヒーローはいないのか…とも思いますが、キャップもアイアンマンもいない中、MCUで最も人気のあるヒーローは彼しかいないので、興行的にそういう流れになってしまうのは仕方のないことやも。
原作では普通にアイアンマンもキャプテンアメリカもバリバリ活躍中なので、約60年の歴史を誇っていてもスパイダーマンは未だにヒーロー仲間では傍流的存在だったりします。また某メディア(笑)のバッシングのせいで世間からは「ちょっと胡散臭い奴」と思われてもおります。そんなコミックとの差異が面白くもあるのですが、もしかするとこれからは映画のスパイダーマンもそういう風になっていくかも…と予想するのは気が早いでしょうか。
今回のキーマンとなるのは「敵か味方か」というフレーズがよく似合う新キャラクター「ミステリオ」。コミックファンならばそんなん敵に決まってんだろ―ツ!と言いたいところですが、先の『キャプテン・マーベル』におけるスクラルの例もあるので「もしかしたらいいやつかも?」という可能性も捨てきれない。では実際どうだったかというと… あ、以降は9割方ネタバレで
順当に悪役でございました。演じてるジェイク・ギレンホールの魅力もあり自分もうっかりだまされるところでありました。そういえばジェイクさんの映画で『ナイトクロウラー』という作品がありましたが、あれも扇情的・作為的な映像で野望を実現しようとする男の話でした。今回のジェイク氏となんか重なります。あと最近ジェイクさんが小動物をかわいがってたり、小児科を慰問にいってたりと「このひと、いいひとだなあ」という画像がよく出回ってるんですが、「映画と本人は別」とわかってはいても、どうしても「もしかしたらだまされてるのか? それは君の見せかけの姿なのでは?」という思いがぬぐえないのでした。いやだわ… いつのまにぼくはこんな疑い深い大人になってしまったのかしら…
さて、偉そうに語っておりましたが、実はわたくしこの「ミステリオ」というキャラクター、邦訳本では見かけたことがございません。これまた歴史の長いヴィランではあるのですが、そんなにトップ人気な悪役でもないのですね。映画7作目にしてようやく登場したというのもそれを裏付けております。わたしがミステリオで特に思い出深いのは池上遼一氏が手掛けられた「ぼくらマガジン版」にて描かれた「にせスパイダーマン」というエピソード。「暗い・しんどい」と評判の?池上版の転換点となる痛切なストーリー。気になる方はぜひ手に取って…と言いたいところですが、現在中古版しかないのがこれまたつらいところです。
話を元に戻しまして。先日待望のMCUフェイズ4(2020-2021)のラインナップが発表されましたが、そこにスパイダーマンのタイトルはなく。今年3本もスクリーンに登場した反動か、少なくとも二年は姿が見られないわけで。『ファー・フロム・ホーム』が非常に気になる幕切れだったので、はやいとこ次の情報がほしいところです。
また、本作品で「嘘だった」とされた平行世界=マルチバースについては『ドクター・ストレンジ』続編で扱われることが確定いたしました。あるのかないのか、どっちなんじゃーい!!とツッコミたくもなりますが、今度こそ本当でありますように。そしてマーベル・シネマティック・ユニバースがさらなる拡大を続けていきますように。
『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』は世界で10億$、日本で『ホーム・カミング』にならぶ28億円の売上を達成したと本日のニュースで知りました。アメイジング二部作と並ぶ31億には届くでしょうか。がんばれ!
Comments
SGAさんこんばんわ♪
自分もマルチバースの信憑性なんかも含めて、今回出て来たミステリオには上手いこと騙されてしまった感じがしましたね。ミステリオは本作が初見だったので、冒頭から正義の味方のように戦ったり、ピーターにはスターク恩師とはまた違う接し方もして優しかったりと健全なイメージも持ってしまっただけに、イーディスを渡した直後のゲスい笑みを見た瞬間『あっちゃ~っ』と頭抱えそうになってしまいましたw
ただミステリオの最先端科学を用いたり人間心理を的確に突いたりするフェイク戦法の数々は、これまでのヴィランとは異なるやり方でスパイダーマンを終始苦しめていたのも凄かったですし(エンドロールが特に)、時に歪んだ情報に惑わされもする現代社会を皮肉っているような存在にも見えてしまったので、個人的にはとても印象に残るヴィランの一人にはなりましたね。
Posted by: メビウス | July 30, 2019 03:58 AM
スパイダーマン、良く頑張っていましたし、ヒーローが彼一人でしたのですが、人間に魅力的なキャラが多く、異才の人物が活躍出来るのはそうした足許がしっかりしているからですね。スタークのようにそれが会社ではなく、学校での出逢いだったのでしょう。
スタークの事なのでオープンな会社だとは思いますが、会社は基本縦社会で、アイアンマンを生産する高い技術力を持った人材に恵まれたヒーローで、対するスパイダーマンは横社会ですね。スタークの後継者を自負するならば、事業を継がないといけないと思いますが、自分で精一杯。それが若さとも思います。
必死で継ぐスパイダーマンに対するミステリオはスタークの会社のレガシーを利用しただけですが、同じ兵器を扱うにも、平和利用出来る人とそうでない人が居るという事でしょうね。
あと、キングダムでの失言すいませんでした…。
Posted by: 隆 | July 31, 2019 12:16 AM
>メビウスさん
ジェイクというかミステリオ、かっこいいですもんね~ ピーターならずともだまされるでしょう。ただあのヘルメット、息ですぐに表面が曇ってしまいそうではありますが
ミステリオのあの映像攻撃、PS4版のスコーピオンとの対決のあたりで良く似たシーンがありましたよね。思い出してにやにやしてしまいました
Posted by: SGA屋伍一 | July 31, 2019 08:57 PM
>隆さん
いえいえ、ひきつづきよろしくお願いします
おっしゃるとおりピーターはトラブルつづきではありますが、人間関係にはめぐまれていますね。ネッド、MJ、メイおばさん、ハッピー…
対照的に周囲の人間がイエスマンしかいなかったのがミステリオの限界だったのかも。それ以前に人間性の問題もありますが…
Posted by: SGA屋伍一 | July 31, 2019 09:03 PM
しかし、ああ見えてエレメンタルズも強いじゃんと思うのっすよ。あれ、設定的に四体か五体いるって話だから、戦隊にすれば無敵っぽい。動かす方が大変か。そう言えばアニメ版のデビルマンに火と氷のエレメンタルが合体したみたいな妖獣が出てたなあ。
Posted by: ふじき78 | August 01, 2019 02:52 AM
伍一くん☆
私も騙されかけましたとも。
それにしても、いくら頭がいいからと言っても、アベンジャーズをスパイダーマンが束ねるとは考えにくいですよねぇ?
リーダーシップの取れる大人って他に居ないのでしょうか??
っていうか、ピーター・パーカーってそんなに天才なキャラでしたっけ?
Posted by: ノルウェーまだ~む | August 05, 2019 12:47 AM
>ふじきさん
なんか4大元素系は少年漫画やRPG系で使い尽くされちゃった感がありますね。あの中の1人はやっぱりサンドマンが元ネタなんだろうか
Posted by: SGA屋伍一 | August 08, 2019 10:52 PM
>ノルウェーまだ~むさん
そうですよねえ。ジャニーズのグループをたばねるのも大体笑いの取れる年長者ですし… ということは適任はアントマンあたり?w
Posted by: SGA屋伍一 | August 08, 2019 10:54 PM