火の鳥アメコミ編 サイモン・キンバーグ 『X-MEN ダークフェニックス』
アメコミムービー隆盛のきっかけとなった映画X-MENシリーズ。約20年に渡ったその歴史が、昨年のディズニーによる20世紀FOXの買収でひとつの区切りを迎えることになりました。その最終作となる『X-MEN ダークフェニックス』紹介します。
80年代にアポカリプスを倒して以降、X-MENは正義のヒーローチームとして認められ、ミュータントの地位も向上していた。だがスペースシャトルが謎のエネルギー体に襲われる事件が起き、その救出に際しメンバーのジーン・グレイはエネルギー体に翻弄され危うく死にかける。なんとか生還したジーンだったがそれ以来ただでさえ不安定だったパワーの制御がますます困難に。そして信頼していたリーダー、プロフェッサーXの欺瞞に気付き始める。
2006年の『ファイナル・ディシジョン』までは現実の時間軸と並行して作られていた(ように思える)X-MENシリーズ。しかしそこで一旦行き詰ってしまったため、60年代、70年代、80年代それぞれの前日談が作られました。ここで1作目に追い付くのかな?と思ったら今度は律儀に90年代のエピソードを用意してきました。それはいいんですけど結局このシリーズは13年前からほとんど前に進まなかったという… まあスターウォーズもそういう時期があったし、こないだの猿の惑星・エイリアンもそうだったし、20世紀FOXのお家芸なのかもしれません。
ただ前日談に終始しても完成度が高ければ…というか、前後と整合性が取れていればよいのです。過去作をちゃんと復習して、忘れられたような要素とか心憎い形で拾ってくれたり、感動的に再アレンジしてくれたらオタクはもう大喜びなのです。先の『アベンジャーズ/エンドゲーム』がそのもっとも成功した例ですし、『ワイルドスピード/スカイミッション』『ミッション・インポッシブル/フォールアウト』なども同様です。しかるにこの『ダークフェニックス』はどうだったかというと…これがつながるはずの『フューチャー&パスト』の結末とどう考えてもつながらそうな結末と相成りました。もう1作作ってそれで軌道修正するはずだったのか? それとも色々上から指示が入って迷走してしまったのか… その辺は憶測を巡らすしかありません。考えてみれば最近のX-MEN映画って『ローガン』といい『デッドプール』といい本家とつながってるのか微妙そうなものばかりでしたしね。頭を柔らかくして「それぞれ時間軸が別なんだろな」と考えてあげるべきなのかも。
なんだか愚痴っぽくなってしまいましたが、コミックファンとして興味深かったのはプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアの裏面ぽいものが描かれていたということ。エグゼビア教授は原作では90年代中ごろまで一片の汚れもない清廉潔白な指導者だったのですが、新世紀に入る前後あたりからダークサイドが暴発したり過去の悪行がばらされたりして株が急暴落し始めます。『ダークフェニックス』はそこまでひどくはありませんでしたが、名誉を追い求めたり、人の記憶を勝手に操作してしまう教授をどこまで信じてよいのか?と観てるものをハラハラさせてくれます。ダークサイドといえば今回メインであるジーン・グレイもそうです。『ファイナル・ディシジョン』の例もありますし、コピーも「最強の敵」だし、闇落ちはもう確定的。マーベルのヒーローには後ろ暗い面も持ってる者も多いですけど、ことX-MENは世間から迫害されているという背景ゆえか善悪の境界をぶらぶらしている者ばかり。そういうハードなところが魅力でもあったがゆえにマーベルコミックでトップの人気作となったわけですが、映画では「暗い」「地味」という印象が先に立ってしまったのか、アベンジャーズにどうにも差を着けられてしまったのが辛いところです。
とにもかくにも、離れ離れだったX-MENやファンタスティック・フォーも、以降はマーベル・シネマティック・ユニバースに統合されることになります。今度こそキャラ多すぎで収拾つくのかと不安になる一方、剛腕ケビン・ファイギならきっと上手にまとめあげてくれるだろうという期待もあります。というか期待の方が全然大きい。彼らが真に合流するのはまだまだ4、5年先、というのが大方の予想ですが、夏に発表されるMCUフェイズ4のラインナップでそれは明らかにされるでしょう。本当にマーベル・ディズニーはじらすのがお得意ですよね。いい加減教えてくださいよおおおおおお(身もだえ)
Comments
もしかしたら、ハゲはダークサイド暴発してもやむなし、ってそういう世界観が根底にあるのかしら?
Posted by: ふじき78 | July 08, 2019 11:15 PM
ジーンにパワーが乗り移り、それが、彼女を変えたわけですが、色々なものに「選ばれ過ぎたヒーロー」だと思います。人間よりもタフで頑丈なんでしょうが、期待度が強すぎて、そして、実際に戦闘力が強くなりすぎて、その命運が決まってしまったように思います。
敵方の強い女性も畏怖されるべき人でしたが、如何に強いとはいえ、ヒーロー界を破壊しつくす危惧のあるジーンに対して、その勇者達のチームは、アベンジャー然り、大切だと思いますし、リーダーとしてもスタークとの対比は、全く土俵が違い、色々な事が出来るスタークに対して、力に特化した人だと思いました。
力が正義って、チームプレイに通用するんですかね。
Posted by: 隆 | July 10, 2019 09:25 PM
>ふじき78さん
どっちかつうとスキンヘッドは修行者のイメージですが。我慢しすぎて暴走してしまうこともあるってことかな
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2019 10:11 PM
>隆さん
ジーンもそうですが、力をより「呪い」に近いものとしてとらえてるのがX-MENシリーズの特色ですね。映画のアベンジャーズではいまのところダークサイドが暴走した例はありませんが、X-MENの合流でそういう話も描かれるようになるかな?
Posted by: SGA屋伍一 | July 10, 2019 10:16 PM