オレゴンから哀 アンドリュー・ヘイ 『荒野にて』
ここんとこ殺伐としたブロックバスター的な映画ばかり紹介してましたが、今回は久しぶりにしっとりした叙情性溢れる作品を紹介します。現代アメリカを舞台に馬と少年の旅を描いた『荒野にて』、紹介します。
父と二人でオレゴンに住む少年チャーリーは、競馬の施設をうろついていたことがきっかけで、競走馬の世話をするバイトを始める。そのうちの一頭、リーン・オン・ピートと仲良くなったチャーリーは甲斐甲斐しく面倒を見るが、ある時雇い主がピートを屠殺場へ売ろうとしていることを知ってしまう。チャーリーはピートを救うためにトレーラーを盗み、果てしない荒野を旅することになるのだが…
この映画を観ようと思ったきっかけのひとつは、単に自分が「荒野系」の話が好きだからです。ジャック・ロンドンの諸作とか、映画『イントゥ・ザ・ワイルド』『私に出会うまでの6000キロ(原題 Wild)』とか。こちらは意外と荒野の場面少なかったですけど… あるいは誰も頼れないチャーリー少年の境遇を表しての邦題だったのか。ちなみに原題は単に劇中に登場するお馬さんの名前(Lean on Pete )であります。
もうひとつの鑑賞動機は普通にかわいそうな少年とお馬さんがどうなるか気になったから。一人と一匹で貧しいながらも生き抜いていこうとする姿は、まるで『フランダースの犬』そのもの。チャーリーとピートがネロとパトラッシュのようになりはしないかとハラハラしながら見守っておりました。
役名と同じ主演のチャーリー・プラマー君は本作の演技で高い評価を得ております。最初はぽややや~んとした年相応の顔をしているのですが、状況が苛酷になるにつれ引き締まった「男」の風貌へと変わっていきます。それがなんとも切のうございました。ただ可哀想ながらも作り手の優しさがちょこちょこ見え隠れするところもあり、後味は決して悪くはなかったです。
それにしても馬というのは一部の人たちを本当にひきつけるようで。『戦火の馬』の主人公も自分の命が危ないのに「うまーうまー」言うてたし。わたしが「馬好き」で思い出すのは『動物のお医者さん』の菅原教授。個人的にはあんまり魅力がわからない方でありましたが、『レッドデッドリデンプション2』というゲームでこまめに馬の面倒を見てるうちにちょっとかわいく思えてきたところです。ゲームと実際では労苦が全然違うでしょうけど…
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