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June 28, 2019

必殺仕事ニーソン除雪編 ハンス・ぺテル・モランド 『スノーロワイヤル』

わたしはあんまり役者さん目的で映画を観に行ったりしないんですが、例外的なのがリーアム・ニーソン主演のアクション映画。なんか他の筋肉俳優にない味があって面白いんですよね。というわけでそのリーアム・アクションの最新作『スノーロワイヤル』ご紹介します。

コックスマンはロッキー山脈のふもとにある雪深い都市デンバーで、長年地道に除雪にいそしんできた男。ある日そのコックスマンの元に息子がドラッグの過剰摂取で死んだという悲報が届く。息子が麻薬カルテルの取引に巻き込まれて殺されたことを突き止めたコックスマンは、組織のメンバーを一人一人血祭りにあげていく。だがその犯人がわからないカルテルは、対抗組織が宣戦布告してきたと勘違いして…

主演作ではだいたいいつもかわいそうなリーアムさん。今回もいきなり息子に死なれるわ奥さんに責められるわ観ていて胸がしくしくと痛みます。さぞかし壮絶で鬼気迫る復讐劇が展開されるのでは…と思いきや、確かにそうなんですが全体的に人を食ったようなシュールなユーモアが全体に満ちています。どう考えても端役にすぎないようなマフィアの一員にも、亡くなる度に珍妙なあだ名と共に追悼?の画面が用意されてたり。二つの組織が一人の怪人物に翻弄されていく流れは黒澤明の名作『用心棒』とも似ております。

監督はノルウェーの新鋭ハンス・ぺテル・モランド。この映画はもともと彼が本国で撮った『ファイティング・ダディ 怒りの除雪車』という作品のセルフリメイクなんだそうです。こちらでは白人とネイティブ・アメリカンの争いでしたが、元ネタではノルウェー人とセルビア系の抗争になっています。舞台は変わってもこのポカーンとしちゃうユーモアセンスはやっぱり北米ではなく北欧のそれでした。

北欧と言えば雄大な雪山を背景に古風な街並みが広がっているデンバーの景色は、なじみのないものからすると「アルプスの街」と言われたら普通にそう見えてしまいそう。ヨーロッパの雪景色と違うのは行きかう人々の中にちらほらネイティブ・アメリカンの方がおられることですね。雪山にネイティブの方たちと言えば昨年の『ウィンド・リバー』を思い出します。実際デンバーのコロラド州とワイオミングは隣同士でわりと近所のようです。ただどん詰まりで生活が苦しそうだった『ウィンド・リバー』に比べると、デンバーは観光が盛んなせいか雪深いながらも都市部はかなり華やかそうでした。

話をリーアムさんに戻しますと、悪人どもには全く容赦しない反面、大ボスの幼い子供にはとても優しいあたりほのぼのとさせられました。児童にベッドで除雪車のカタログを読み聞かせてあげるシーンがあるんですけど、めちゃくちゃ似合いすぎでした。この点、やはり息子を殺されたネイティブのボスが「子供には子供を」と対等のものを求めるところとまことに対照的でした。あほらしいながらもそんな三組の親子の対比がなかなか興味深かったです。

時期的にまったく正反対なんですが、むしむし暑い今日この頃、冷房の効いた映画館で観るとむしろ納涼にちょうどよくて気持ちいいかもしれません。あともう1週くらいは上映してるんじゃないでしょうか。

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