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June 18, 2019

4大怪獣 地球最大の混戦 マイケル・ドハティ 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

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2014年のレジェンダリー1作目 から5年。ちょいと間が空きましたが、ようやく洋画のゴジラさんが帰って参りました。しかも東宝怪獣のあんなやつこんなやつを引き連れて…! 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』紹介いたします。

ゴジラとムートーの激闘から数年。ゴジラはそれ以来姿を消していたが、秘密機関モナークは世界各地で休眠中の怪獣を発見。極秘に観察を続けていた。だがある時そのモナークの施設が連続して襲撃を受ける。犯人は「地球を太古の自然に戻すべき」と考える環境テロリストの一団だった。やがてその手は魔王に等しき怪獣「ギドラ」が眠る南極にも及ぶ。ギドラの復活に呼応するように再び現れるゴジラ。同じように目覚めた怪獣ラドンやモスラも交え、地球は巨大怪獣たちの戦場と化していく。

今回の特色は番外編的な『キングコング 髑髏島の巨神』 ラストでも明かされてましたが、ラドン、モスラ、キングギドラといった名怪獣の登場。彼ら?が最新のCG技術でどんな風に表現されるのか胸ワクワクで待ち望んでおりました。反面不安を感じたのがこの面子が『三大怪獣 地球最大の決戦』とまったく一緒だということ。そうです。一部界隈で有名な、通訳を介してとはいえゴジラやラドンが「勝手にしやがれ!」「そうだそうだ!」とくっちゃべるあの作品です。子供の目で見ると大変楽しいんですが、前作の重厚な雰囲気とマッチするのかどうか… しかしその点は杞憂でした。まず怪獣が喋りませんでしたw そして次から次へと襲い来る怪獣たちのパニック描写が怖すぎて、『三大怪獣』にあったのんびりしたムードは全く見当たりませんでした。火山から現れて街を根こそぎ爆風で引きはがしていくラドン。無数の稲妻と三つ首の咆哮で劇場を震わすギドラ。ちょっと小さなお子さんたちはトラウマになるのでは…という迫力でした。

ただこの度メガホンを撮ったマイケル・ドハティ氏は前作ギャレス・エドワーズとはまたちょっと資質が違う気がします。ギャレスさんもギレルモ・デル・トロさんもそりゃあ怪獣が大好きだとは思うのですけど、ドハティさんの怪獣愛…それも東宝怪獣への愛はちょっと度が外れているというか、狂気にも近いものを感じます。まあでもその並はずれた狂気と愛情があるからこそ、こんだけ突き抜けた映像が作れるのかも。

そして各怪獣の個性の描き分けがまた上手なんですよね。不動の精神を持つ、戦国の英雄のようなゴジラ。禍々しい妖気を放つ悪魔の化身(キング)ギドラ。華やかな色彩で見る者を魅了する妖精モスラ。で…、この並びだとラドンがちょっと弱い印象があったんですが、意外な行動でもって思い切りキャラ立ちしておりましたw すでにネットでは「ゴマすりクソバード」なる不名誉なあだ名を頂戴しちゃっております。このお追従が得意な描写も、ドハティなりの「そうだそうだ」のオマージュだったのかもしれません。それは置いといて、この度の4大怪獣が過去作と比べて際立っているのはどなたもピカピカキラキラ輝いていること。そのひかりっぷりはモンスターで4あると同時にスターでもありました。モブっぽい怪獣も何匹か出てきますが、文字通り光ってないあたりランク的に下なんだろうな…ということがうかがえます。

他に強く感じたのはますます東宝怪獣がクトゥルーっぽい設定になってきたなあということ。オリジナルのゴジラはあくまで元は自然生物で、人間の悪行のゆえに怪獣となってしまったという立ち位置ですが、『KOM』においてはあからさまに生物を越えた神に近い存在であり、元々地球は彼らが支配していたということになっております。一方で前作からのレギュラー芹沢教授はゴジラに向かって「友よ…」と呼びかけます。この辺からもドハティ監督にとって怪獣は神であると共に大好きなお友達だったんだなあ…とほのぼのさせられました。

あと公開前に「人間ドラマが少ない」との評が流れてましたが、それなりにありましたね。人間ドラマ。しかしこの人間ドラマが「怪獣怪獣!」とのめり込んでるいかれた人たちばっかり出てくるもんで、怪獣大好きな人たちでないと共感できないんでないかと思います。わたしはめっちゃシンパシー感じましたけどね! そんな普通でないドラマの中にも無理やり親子の絆とかねじ込んでくるあたり、前作の名残が漂っておりました。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は現在『アラジン』に押されつつ大ヒット公開中。来年にはアメリカが誇る大怪獣「キングコング」との対戦が予定されています。果たして「モンスターバース」はそこで打ち止めとなるのか。できれば『怪獣総進撃』までリメイクしてほしいところですが…

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Comments

SGAさんこんにちは♪コメント有難うございました♪

自分はゴジラデヴューは84年度版からなのでそれ以前の作品はまだ未鑑賞のものも多くて、三大怪獣もその一つですね。怪獣語を話すゴジラ達と言うのをツイッターとかで見て笑ってもいましたが、本作では話すことはなくてもなんか怪獣たちの所作で態度や性格を見て取る事が出来て、最後のラドンなんて正にそんな感じでした^^;お前この野郎・・と思った人いっぱいいたんじゃないでしょうか(笑)怪獣達が神のように崇拝されていたとしたならば、ラドンはさしずめロキのような立ち位置ですね。

Posted by: メビウス | June 19, 2019 03:04 PM

街を壊しても、怪獣のやった事だから許される、という、無責任なキャラ達ですね。異種族というのは、無責任であって、破壊と創造の先にあるドラマを作る事こそが、人のドラマではないのかなあ、と思いました。

本作では、ドラマ不足と言われてますが、それなりに良かったです。謙さんの命を継いだから、ゴジラが強くなったわけではないでしょうし、瀕死で知ったこっちゃないと思いますので、それも人が語り継ぐ事だと思います。人と怪獣で、分担はしていると思いました。

Posted by: | June 19, 2019 04:37 PM

>メビウスさん

自分はドラえもん第1作の同時上映の『モスラ対ゴジラ』がゴジラデビューでした… 子供だったのでそこそこ怖かった記憶があります。三大怪獣だったらもっと楽しめたのかも

ラドン=ロキはまさにその通りだと思います! ロキのように世界中で人気が出るといいですね!

Posted by: SGA屋伍一 | June 24, 2019 08:40 PM

>隆さん

エピローグでは怪獣の破壊が自然の復活をうながした…みたいな流れになってましたね。この辺は『もののけ姫』の影響だと思います。謙さんの決断は過去作のオマージュでもあり、また違ったアレンジにもなっていて印象深かったです

Posted by: SGA屋伍一 | June 24, 2019 08:44 PM

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