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June 14, 2019

燃やしていいのは体脂肪だけ 今石洋之・中島かずき 『プロメア』

Pma2一ヶ月後の健康診断を控えひそかにジョギングを続けているわたくしですが、それとはまったく関係なく、本日は『天元突破グレンラガン』『キルラキル』のコンビが贈る劇場アニメ『プロメア』を紹介いたします。

精神により発火できる能力を持つ新人類「バーニッシュ」が誕生した近未来。世界ではバーニッシュによる被害を食い止めるため各地で特殊消防隊「バーニングレスキュー」が活躍していた。その一員である血気盛んな青年・ガロは、テロ集団マッドバーニッシュとの戦いの中で、彼らのリーダーである若者リオと出会う。激しくぶつかり合う二人だったが、やがてガロはバーニッシュたちの哀しい運命や自分が所属する都市プロメポリスの裏面を知り、葛藤するようになる。

まあやっぱり最初に思うのは「これ、『グレンラガン』の二時間版別バージョンじゃん」ということですね。そもそも主人公のガロが『グレンラガン』の主要キャラであるカミナによく似ている。他にも『グレン~』を思わせる要素があちこちに散りばめられておりファンとしては「たまんねえぜグへへ」という感じでした(品のない表現だなあ)。

ただこれまでの中島・今石作品と違うのはこれが1本に映画であるということと、恐らく実在の役者さんを想定して、それからキャラを膨らませていということ。三谷幸喜さんが好んで用いている「あて書き」というやつですね。メインの3人である松山ケンイチ氏、早乙女太一氏、堺雅人氏はそれぞれ中島かずき先生の舞台に出ておられたとのことなので、恐らくその時彼らの演技を見ながら先生は「こういうキャラが活躍するアニメを作ったら面白かろうな」と思われたのかもしれません。とりわけそれが爆発していたのが主役二人の前に立ちふさがる執政官クレイを演じていた堺さん。普段はニコニコ穏やかな表情を浮かべているのに、尻尾をつかまれた途端別人のようにブチ切れる様子が最高でした。普通悪者が居直るところってイライラしそうなものなのに、なんでかすごい爽快だったんですよね… そういえばドラマ『新選組!』の時に聞いた堺さんのエピソードで「最初は山南さんのようにソフトな笑みを浮かべながら飲んでいたのに、酔いが回ってきたらボロボロ毒を吐き出してきた」というのがありました。まさにこのクレイは堺さんにうってつけのキャラだったと言えるでしょう。

あと同じことを繰り返してるようで、少しずつ色を変えてるのが中島・今石コンビ。彼らの作品には少なからずダイナミックプロの影響があると思うのですが、その線で行くと『グレンラガン』は『ゲッターロボ』の、『キルラキル』は『キューティーハニー』のオマージュっぽいところがありました。そして『プロメア』は原作の『デビルマン』が根底にあったんじゃないか…という気がします。まあ途中あからさまに絵柄を意識してるシーンがありましたし。「怪物」と異分子を排除している政府が、実は怪物以上の怪物だったというあたりはまさに『デビルマン』でありました。威勢がよくワイルドなガロは不動明を、中性的でクールなリオは飛鳥涼をイメージしているようにも思えます。でもまあ『プロメア』はとにかく元気で世界の破滅も気合で吹っ飛ばすようなノリなので、その辺は『デビルマン』とは全然違いますね。

絵柄の特色はと申しますと、とにかく三角と四角が目立ちます。無数の角ばった図形が画面いっぱいを縦横無尽に駆け巡る映像暴力と申しましょうか。ここんとこのアニメ映画は美術的にも恐ろしく力の入ったものが続いていますが、『プロメア』はそんな痛快なキュビズムでもって炎と氷の戦いをこれでもかという感じで描き切って、観る者を翻弄します。

そしてロボです。予告を見た時、「今回はロボはどの程度出るのだろう。おまけ程度かな」と感じていたのですが、ドカーンとやってくれやがりました。今の日本で出来る最高峰のロボアニメでございました。先日の映画秘宝のインタビューで中島先生は「レオパルドンを出していたら『スパイダーバース』はアカデミー賞を取れなかっただろう」とおっしゃっていましたが、『プロメア』からは「賞なんかどうだっていいわ! わしゃ巨大ロボが好きなんじゃあああ!」という魂の叫びが聞こえてきました。信じてたぜ… かずき…(敬称略)。わたくしそろそろ中島先生には本腰入れてゲッターロボのリメイクをやってほしいと思ってるのですが、この願いどこかのお金持ってる会社に届きませんでしょうか。

『プロメア』は残念ながら日本全体ではそんなにヒットしてないのですが、都内近郊の良い設備の劇場では満席続出という局所的なフィーバーを巻き起こしております。この映画はたぶん伝説になる… ので観られるところにいる人は今のうちに観ておいたほうがいいぜ?

2019のアニメ映画フィーバーは現在公開中の『海獣の子供』、近日封切り予定の『きみと、波に乗れたら』『天気の子』と続きます。『プロメア』と違ってオミズ系の話が多いようで。

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June 12, 2019

ロンドンVS万里の長城 フィリップ・リーブ クリスチャン・リヴァース 『移動都市/モータル・エンジン』

本日は「あのピーター・ジャクソンが(製作で)贈る!」という触れ込みで鳴り物入りで公開されたものの、あまり盛り上がらなかった(泣)『移動都市/モータル・エンジン』、ご紹介します。

人類の文明が一度崩壊した未来。世界は「移動する都市」で生活する人々と、巨大な壁の内側で定住する人々の二派に分かれていた。移動都市の中でもとりわけ強大な「ロンドン」に潜入した顔に傷のある少女へスターは、そこの技師であるヴァレンタインを復讐のためにつけねらう。ロンドンの一市民の青年トムはそれを止めようとしたことから世界を巡る大きな陰謀に巻き込まれることになる。

原作は2001年にフィリップ・リーブが発表したSF小説。この度はその1作目が映像化されていますが、全部で4作からなるシリーズだそうです。

まず感心するのは都市に巨大な車輪がついていて動き回るという発想。バンパイアハンターDの1作にもそんな話があったような。ただこちらがもっとぶっ飛んでるのは、大きな都市がまるで捕食するように小さな都市を取り込んで資源を吸収していく描写。そんな生き物のっぽい機能や西洋ファンタジーとスチームパンクが合わさったような都市のデザインは、「タイムボカンシリーズ」のユーモラスなメカたちを思い出させます。

前半はそういった芸達者なヘンテコメカの活躍が面白かったのですが、後半に入ってからはお話がシリアスになっていくせいか、だんだん奇天烈さが薄くなってしまうのがちと残念でした。本当にちっとばかりの物足りなさではありますけど。

夢を追う若者と謎のあるヒロインが冒険を繰り広げるあたりは『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』とも似ています。違うのは宮崎アニメよりも少し年齢が上なことと、少女が主で少年が従ということなどでしょうか。

監督はクリスチャン・リヴァース氏。長年ピーター・ジャクソンにぴったりと寄り添い、その映画作りを手伝ってきた方ですが、今回晴れて初メガホンとなりました。師匠譲りの才能ゆえかしっかり楽しめる安定したエンターテインメントをこしらえてくれたのですけど、残念ながらこの『モータル・エンジン』は2018年で最も赤字(184億円)を出した映画となってしまいました。実際に観てみると何がそんなにいけなかったのかよくわからないのですんよね… やっぱり「都市が動く」というアイデアにひきつけられた人がそんなにいなかった…ということなのでしょうか。あと大本のネタがイカれてるわりには、キャラクターたちが総じて真面目な人たちばかりというのもよくなかったのかも。一人くらい子供に人気の、笑いを取れる著名な俳優を混ぜたらもう少しいい結果になったのか???

ともかく、ピーター・ジャクソン&弟子の捲土重来を期待しております。ちなみにピージャク氏の次回作はビートルズの『LET IT BE』を題材にした作品とのこと。ビートルズ版『ボヘミアン・ラプソディ』のような映画になるのでしょうか。はてさて。

 

 

 

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June 05, 2019

ポケットモンスター/ハード&ボイルド ロブ・レターマン 『名探偵ピカチュウ』

これまた1ヶ月前に公開されてる映画ですが、いまだに上位10作に並んでいるツワモノ的作品。ポケットモンスターの世界に新たな風を送り込んだ映画版『名探偵ピカチュウ』、ご紹介します。

人とポケモンが仲良く暮らす街、ライムシティで一人の探偵が事件に巻き込まれ姿を消す。その探偵の息子・ティムは、父の消息を確かめにライムシティの事務所を訪れる。そこにいたのは父のパートナーであった1匹のピカチュウであった。驚くべきごとにそのピカチュウは人語を話し、ティムに一緒に事件を解決しようと持ちかける。

原作は3年前にダウンロード用として発売されたTVゲーム。ポケモンに関しては「ポケットモンスターGO」をちょっとかじったくらいなんですけど(それでも今回そのおかげでけっこう助かりました)、コンセプトを聞いた時「なぜピカチュウが探偵なんだ!? あれに推理とかできんのか???」と困惑を隠せませんでした。正直今に至ってもその必然性とか理解しきれてないんですが、まあ面白かったしかわいかったんでよしとします。ピカチュウといえば今や国民的キャラクターでさんざん見慣れた感がありましたが(実際最近までジバニャンに押されてたし)、今回多くの人がやられてしまったのが予告編で見せた皺の寄った表情。普通しわがよったらどっちかというと醜悪なデザインになりそうなものなんですけど、これがなんとも言えないかわいらしさがありまして。ココアに少量入れる塩のような効果がありました。某『ゴールデンカムイ』のヒロイン、アシリパさんの変顔にも似ておりました。

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ピカチュウの声をあてているのは『デッドプール』での怪演で有名なライアン・レイノルズ(吹替え版では西島秀俊氏)。これもどうせ受け狙いでキャスティングしたんだろうな~~~と冷ややかな印象を抱いておりましたが、最後まで観てみたらそれなりにちゃんと理由があったことがわかりました。あとネットの感想を見ると「真相が簡単にわかった」みたいな声がけっこうあがっておりましたが、自分は普通にだまされました(笑)。ですから「探偵」とついてるだけあって一応ミステリー映画としても鑑賞できます。ちなみに映画はきちんと事件が解決されますけど、ゲームの方はこれから完結編が発売され、映画とはまた違った結末を迎えるとのこと。

探偵ものといえば監督はこの映画を作るに当たり『ブレードランナー』を参考にしたとのこと。これまた予想斜め上のタイトルでございます。たぶんブレランの闇の深い街の背景とか、大きな陰謀に一人立ち向かうヒーローの姿とかを意識したんだと思います。そういえば作品に出てくるポケモンは普通にアンドロイドに置き換えても普通にお話が成立しそう。まあポケモンの方がかわいいしカラフルだし観ていて楽しいですけどね。

監督のロブ・レターマン氏は他にも『モンスターVSエイリアン』など撮っていて、怪獣にも並々ならぬ思い入れがあるようです。本作品におけるドダイトスやミュウツー、リザードンの描写には怪獣映画顔負けの迫力がありました。その辺はさすがモンスターバースやジュラシックワールドのレジェンダリーピクチャーズでございます。

ちょうどいまレジェンダリーの新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が上映中ですけど、両方ともモンスターを愛するおじさんとして渡辺謙氏が出演していたり、モンスターと人間の共存がテーマのひとつだったり、共通するところも幾つかあって観くらべてみると一層面白いかと思われます。また夏には恒例のポケモン映画に第1作のCGリメイク『ミュウツーの逆襲』が公開予定。かわいいのから怖いのまでモンスター花盛りでよろこばしいことでございます。

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