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May 13, 2019

北欧テレホンショッキング グスタフ・モーラー 『THE GUILTY/ギルティ』

アンデルセンとデニッシュの国、デンマークよりえらくとがったサスペンス映画がやってまいりました。本日はロッテントマトにおいて99%をたたき出したその『THE GUILTY/ギルティ』をご紹介します。

深夜の警察の緊急コールセンター。とある事情でそこにいやいやながら勤めているアスガーは、任期も終わりに近づいた時一人の女性から助けを求める電話を受ける。何者かに誘拐されているらしい彼女を助けるため、アスガーは知恵を絞って各方面に連絡するのだが…

この映画の特色はなんといっても主人公が「建物のその階から1歩も外に出ない」というところにあります。他の登場人物はコールセンターの同僚らと、電話で声しか聞こえない人たちだけです。そんなわけでストーリーはもっぱら電話のやり取りだけですすんでいきます。

こういうスタイル、ほぼパソコンの画面だけで進行していた昨年の『search/サーチ』 を思い出させます。しかし時間が飛ばされたり主人公がしょっちゅう外に出ていたそちらと比べると、 『ギルティ』の方はさらに限定的です。普通なら我慢できず現場に急行するんじゃないか?というところでもアスガーは持ち場を離れません。理由のひとつはやはり感情的になって外に飛び出すよりも、そこで電話を受けたりかけたりしたほうが対象を助けられる可能性が高いから…ということがあげられます。そしてもうひとつは監督の「おれは意地でもこのスタイルを貫くから!」というこだわりゆえでしょう(推測ですが)。

そうしたコンセプトから連想したのはミステリーの「叙述トリック」という型式。文章だけなのを逆手に取って読者をひっかけるタイプの小説です。目で色々背景がわかってしまう映画では不可能な方式だろう…と思っていましたが、「声しか聞こえない」という状況を用意することで限りなく「叙述トリックの映像化」に近いものを作り上げていたと思います。

あと舞台がほぼ固定されていて二三の部屋を出入りするだけ…という設定は非常に演劇にもむいてそうです。演劇と違うのは頻繁に主役の顔が大写しになってその焦燥や苦悩が伝わりやすいことですね。で、この主演の方、まあまあ整った顔立ちをしてるんですが「美しすぎる」というほどでもない、長時間の大画面アップにちょうどいい顔面力でございました。くどすぎず、ずっと落ち着いて見られるルックスというか。日本で言うなら誰にあたるか… うーん、おもいつかない。

そんな風に映画の作りは大変面白いのですが、ストーリーの内容はけっこう重苦しかったりして。「国民の幸福度」が世界ランキングでかなり上の方のデンマークですが、抱える悩みの量や重さ、種類は日本の我々とさほど変わらないのでは?と思ったり。出身監督で有名な人と言えばほかにラース・フォン・トリアーやニコラス・ウィンディング・レフンといったダークな方たちでありますし… お隣のスウェーデンでも『ミレニアム』とか『ぼくのエリ』とかありましたしね…

もうおおむね公開終了してしまった『ギルティ』ですが、世界での好評を受けて早くもハリウッドでのリメイクが決まっているとのこと。主演はジェイク・ギレンホールだそうで。ちょっとオリジナルと比べると顔が濃いように感じられますが、評判がよかったらそっちも観てみるつもりです。

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Comments

伍一くん☆
あ、今そちらで公開なのですね??
面白い手法の映画だったです。
ちなみに彼が部屋を飛び出していかないのは、緊急電話を受けるのが仕事で、飛び出していくよう指示を飛ばしたり救急を手配する立場だからじゃないかしら?

北欧は幸福度が高いので有名だけど、彼らの「幸福」と感じる『何もないを楽しめる・何もしないのが楽しい』ができるか否かにかかっているのよね。
なので、一日中暗い冬の極夜を過ごす彼らの抱える悩みは、社会保障の点以外では日本と変わらないのでした。

Posted by: ノルウェーまだ~む | May 18, 2019 10:38 PM

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