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April 01, 2019

シャーリーに首っ引き ピーター・ファレリー 『グリーンブック』

かつて『メリーに首ったけ』『愛しのローズマリー』などのおバカ下ネタ映画で好評を博したものの、近年すっかり話題を聞かなくなってしまったファレリー兄弟。久しぶりにその兄貴の方のニュースが入ってきたと思ったらなんとアカデミー作品賞にノミネートされ、見事受賞したというからぶったまげです。そんな『グリーン・ブック』、ご紹介いたします。

1962年、ナイトクラブで用心棒をしていたトニーは金が必要になり、あるつてから高額の仕事を引き受ける。それは著名な黒人ピアニスト、ドン・シャーリーを差別問題の激しい南部のツアーに運転手として連れて行くことだった。元々黒人に偏見もあった上にシャーリーが友好的ではなかったため、トニーは渋々仕事をこなしていたが、それでも旅を続けていくうちに二人の間には奇妙な絆が芽生えていく。

ロードムービーでバディムービー。それをベテラン監督と実力派俳優が扱うわけですから、これはもうつまらなくする方がむずかしい。それでもダメになってしまう時はダメになってしまうのが映画の怖いところですが、この作品はさすがオスカーをもってっただけあっておかしくて、ほっこりして、でもホロリとさせる憎らしいくらいうまい作品になっていました。

ただ違和感を感じないでもありませんでした。かつてあれほど下ネタを巻き散らかしたファレリー兄と、何かとオール・ヌードが多いヴィゴ・モーテンセンが組むとなったらこれはもう確実にチンコ丸出しシーンがあるだろうと。ところがお笑いはお笑いでも、かつての監督に比べるとずいぶん上品な感じに仕上がってたりして。音信が途絶えている間自身公の場でモロだしして怒られたり、弟の家族に不幸があったりでファレリー兄さんも色々心境の変化があったようです。

あと物議を醸してるのが白人監督の作品ゆえに黒人側から多少なりとも反発があるということ。どちらとも縁遠いわたしたちからすれば「人種を越えた微笑ましい友情物語」と感じられるわけですが、被害者側の黒人さんたちからすれば色々納得がいかんところがあるようで。ことにやはり作品賞に『ブラック・クランズマン』でノミネートされてたスパイク・リーは結局『グリーンブック』がオスカーを受賞した時、憤っていたという話もあります。後ほど『ブラック・クランズマン』も観たのでいずれ感想を書きますけど、確かに毛色が違うところもあるものの、どちらにも一人二役というかシラノ・ド・ベルジュラック的な要素があったりしていろいろ共通する部分もあったような。

以下は結末までネタバレしてるのでご了承ください。

わたしがとりわけ嬉しかったのはラストシーン。クリスマスを一緒に過ごそうと言うトニーの誘いをドンは一度断ります。しかし寂しさに耐えかねて思い直し、彼の家を訪ねると温かく迎えられます。多少違うところもありますけどこのくだりが大好きな『メリーに首ったけ』のオチを彷彿とさせて、どばっと鼻水が吹き出てしまいました。チンコこそ出さなくなりましたが、「人はみなさびしい」ことを温かく描いてる点でファレリー兄はかつてと変わってないんだな…と。

近年アカデミー作品賞受賞作は日本ではあまり客が入らないことが多いですが、『グリーンブック』はそこそこ好評をもって迎えられ、ゴールデンウィークには追加で作られた字幕版も公開されるということです。これを機にまたファレリー兄弟の作品が普通にこちらでもかかるようになるとよいですね。

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Comments

伍一くん☆おひさしぶりです。
エイプリールフールで元号発表の日ですね。
それでなのでしょうか?こちらの作品は作品賞受賞作品ですよ☆
監督の過去作品は実はどれも観たことないのですが、本当に上品にキレイに作られていましたね。

Posted by: ノルウェーまだ~む | April 01, 2019 11:35 PM

>ノルウェーまだ~むさん

そう書いたつもりだったんですがまぎらわしい言い方だったかな~ で、修正しました。
とりあえず自分も『メリー』と『ローズマリー』くらいしか観てませんがこの二本おすすめです。したコメ映画祭で作品招待されたこともあったような
令和でもよろしくおねがいしますー

Posted by: SGA屋伍一 | April 02, 2019 10:22 PM

シャーリー「メリー・クリスマス」
家の中のみんな「メリー・クリスマス、さあ、どうぞ中に入って。寒いからドアを閉めてください。しまった。じゃあ、本当の主賓も来たのでこれからがパーティーだぜ」
白く尖ったマスクをみんなで付ける。

みたいなラストじゃなくって良かった。

Posted by: ふじき78 | April 23, 2019 09:55 PM

>ふじき78さん

ジョーダン・ピールだったらそんな結末にしそう。こわこわい

Posted by: SGA屋伍一 | April 23, 2019 10:27 PM

こんにちは。

独身男性の孤高さというか、シャーリーの方が、むしろ普通で、かつての古き良き家庭を持っているトニーも、普通の域を出ないのですが、世界一の幸せ者、のような顔をしていると。

そこで争っても仕方ないし、衣食足りて礼節を知る、余裕があるからシャーリーを受け入れられたのでしょう。

幸せを分け合っている、素敵な二人でした。

Posted by: | April 24, 2019 01:18 PM

>隆さん

冒頭の二人のウマが合わない様子にはハラハラさせられましたが、少しずつ相手にいい影響を及ぼしていく流れに心あたたまりました。確かに前半はトニーの方が浮世離れしたシャーリーより大人のように見えましたね
「事実と違う」という意見もあるようですが、ひとつのファンタジーとして幸せな気分にひたりたいと思います

Posted by: SGA屋伍一 | April 24, 2019 09:59 PM

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