コミュニストのコミュニケーション エルネスト・ダラナス・セラーノ 『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』
はやぶさ2号が活躍したり『ファースト・マン』が公開されたり、ちょっとだけ盛り上がっている気がする宇宙開発の話題。昨年末にはこんな映画も公開されておりました。2か月遅れでこちらにもやってきた『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』ご紹介します。
1991年、ソ連崩壊の年。おなじ共産圏であるキューバもまた混乱の最中にあった。そんな中でも大学でひたむきにマルキシズムを教えていた教師セルジオは、ある日アマチュア無線でソ連の宇宙飛行士セルゲイと交信することに成功。二人は国境を越えて友情を深めていくが、その行動を怪しんだ当局によりセルジオは危険人物としてマークされてしまう。
「実話に基づいた映画」はよくあります。しかし一口にそういっても、かなり真実に迫ったものからほとんど創作みたいなものまで作品によって本当に様々です。ちなみにこの『セルジオ&セルゲイ』は冒頭で「真実を元にしたフィクション」と自ら告白しております。確かに一部物理法則を越えた現実では絶対ありえないような描写もあったし… セルゲイが時折命の危機にも直面する場面もありますが、基本的にはそんなゆる~~~いところがこの映画の特色です。とりあえずセルゲイという宇宙飛行士が政治混乱によりかなりの間宇宙ステーションに滞在を余儀なくされた…というのは事実のようです。というかかすかながらそんな話を聞いた記憶がありました。
おっさん同士の『君の名は。』みたいな着想や冷戦末期の宇宙開発描写も面白いのですが、自分が最も印象に残ったのは約30年前のキューバののどかな雰囲気です。国中こぞって貧乏だったようで、二言目には「金がない」とぐちってる感じなんですが、ぬけるように明るい風土のゆえかあまり「暗い」というムードがありません。セルジオの家族も将来の不安や貧しさを抱えてはいますが、よく笑うし日々の楽しみをきちんと見つけている。いまは昔の物語ということもあって、ちょっと『ALWAYS』シリーズと共通しているところもあります。
そんなほっこりした奇妙なこの映画をなぜか『ヘルボーイ」で有名なコワモテ俳優ロン・パールマンが製作しております。重要な役で自ら出演してたりもして。自分がこれまで観た中では一番普通というか穏やかな役でありました。誰も殴ってなかったし…たしか。
ひとつ文句をいわせてもらえるなら、序盤からずっと当時を懐かしむセルジオの娘さんのモノローグが入るのですね。これがなんだかもう「今はもうお父さんはいない」という感じで、悲劇をバリバリに予感させるものでした。で、実際にどうだったかというと… もちろん内緒です。
それにしても少し前の『怪盗グルー』3作目もそうでしたし、これから公開される『キャプテン・マーベル』『X-MEN ダークフェニックス』などだんだん90年代にスポットをあてた映画が増えてまいりました。それくらいもうノスタルジーの領域に入りつつあるということなのでしょう。90年代なんてついこないだのことなんて思ってたおっさんは、己の年を痛感し、静かに首をうなだれるのでした。ははははは…
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