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March 12, 2019

ムエタイ地獄変 ビリー・ムーア ジャン=ステファーヌ・ソヴェール 『暁に祈れ』

あまり予算がかかってなさそうだけど、個性的で力強い作品を多く世に送り出しているA24スタジオ。本日はそのA24が英米仏中の4カ国共同で製作したタイのお話『暁に祈れ』をご紹介します。

イギリス人のムエタイ選手ビリーは戦績が振るわないことから麻薬に溺れ、ついには刑務所送りとなってしまう。そこでも薬から抜け出せないビリーは自分に嫌気がさし、なんとか立ち直ろうと所内のムエタイジムで自分を鍛えようとする。

刑務所内で格闘技に励む話というと『あしたのジョー』とか『軍鶏』などを思い出しますが、こちらは漫画と違い「実話に基づく作品」。実際にビリー・ムーア氏がタイ刑務所で過ごした経験を本にしたものが原作となっております。
麻薬で身を持ち崩したという罪状からわかるように、ビリーさんという方はアスリートだったわりに根性のない方であります。ただまあわたしも薬には手を出してませんけどその点ではどっこいどっこいなので、かえっていやなところで共感できてしまいました。
予告編では「地獄のタイ刑務所」とうたっております。入所早々リンチされたり・・・されたりしてしまうのでは…とドキドキしてましたが、幸いビリーさんは大丈夫でした。ただ別の囚人はそんな目にあったり、ひそかに殺されてしまうこともあったりで、予告編のコピーはあながちウソではありませんでした。
他に印象に残ったのは刑務所映画ということでやけに男の尻やブリーフ姿が多かったり。その辺は少し胸焼けがいたしました。あとタイならではだなあと思ったのが、ヒロインが所内で割と優遇されてるレディボーイであったこと。ちなみにその語で検索したら「タイのレディボーイが美人すぎる」という記事が一番にヒットしました。この映画のヒロインも確かに言われないとわからないくらいのレベルでありました。さすがはタイ…と言うべきでしょうか。

ビリー氏が囚人となってからムエタイにいそしむのは別にチャンピオンになりたいからではないのですよね。ダメダメな自分とさよならしたいという動機からです。しかし薬と酒のダメージに苛酷なトレーニングが加わったため、ビリー氏は命の危機に瀕するところまで行ってしまいます。それでもどん底から這い上がろうとリングにむかう彼の姿には痛々しいながらも胸を打たれるものがありました。そこまでして再起して本も売れたのに、昨年末の時点でまた窃盗でム所暮らしをしているというのが悲しい。「出所したらまた真面目にがんばる」とか言ってたと記事には書いてありましたが…

そういえばやっぱり英国の青年が薬に溺れたものの立ち直ってベストセラーを書いたという実話、『ボブという名の猫』も同じでした。あちらの著者さまはいまもしっかり更生されてるようなので、ムエタイより猫の方が人を立ち直らせる力が強いということか… いや、一概には言えないか。ただまあ、猫中毒はドラッグよりかははるかに健全です。

遠い日本からビリーさんが今度こそ更生されることを祈っております。そしてどんだけダメダメも薬だけは手を出すまいと誓う自分でございました。

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