モモアと伝説の海 ジェームズ・ワン 『アクアマン』
むかしむかし…(じゃないんだけど)、あるところに灯台守と海の国の王女様の間に生まれた子供がおりました。王女様は彼がまだ幼いうちに実家の事情で国に帰ってしまいましたが、王子様はすくすくと成長し、やがて筋肉ムキムキで毛むくじゃらの超人「アクアマン」として知られるようになります。それなりにヒーロー活動にいそしんでいた彼でしたが、同じように大きくなった弟オームが陸地の人間たちに宣戦布告。そのために海底のお家騒動に巻き込まれることになってしまうのでした…
矢継ぎ早にどんどこ公開されるアメコミ映画。この度の『アクアマン』は映画ではマーベルに一歩後れを取っているDCが送り出したヒーローで、一昨年の『ジャスティス・リーグ』でも活躍しております。ただその『ジャスティス・リーグ』、世間的には「ぱっとしない」という評価で商売的にも赤字となってしまいました。(わたしはそこそこ好きですけどね…) だのに今度はその中のサブ的なキャラを主役に据えて映画化するという。正直無謀だ…と思いました。ところがそれが今度は世界的な大ヒットとなり、いまや単体ヒーロー映画の記録更新までなしとげているから驚きです。本当に世の中何が売れるのかわかりません。
そもそもアクアマンとはどういうキャラなのか。実はアメコミファンを名乗っておきながらわたしもほとんど知りませんでしたw スーパーマン・バットマンと同じほどのキャリアを誇りながら、海底が主な縄張りという特化した背景のゆえか、二重の意味で日が当たらないヒーローだったのです。そしてようやくスクリーンにお目見えしたらコミック版(下画像参照)
とは似ても似つかぬ姿での映像化となりました。それでも原作ファンが怒ったという話はほとんど聞かないので、それくらい人気のないキャラだったのでしょうね… うう… ただまあこの改変で一躍ヒーロー界のトップスターになったことを考えれば大正解と言っていいんじゃないでしょうか。
で、映画の方ですが「もっともマーベルらしいDC映画」とか評されておりました(…)。どの辺がそうだったのかはよくわかりませんが、自分はむしろかつてないほどにディズニーっぽいアメコミ映画だと感じました。きらびやかな背景に神話っぽい設定、王家のいざこざに快活な主人公、狡猾な悪役、多くの試練に胸躍る冒険… そういったあたりが。主役がプリンセスじゃなくてマッチョのおっさんという違いこそありますが。『マイテ○・ソー』もそーでしたが、キラキラ具合ではこちらのほうが上だと思います。
そんなメルヘン世界を見事に映像化したのはホラー界の第一人者ジェームズ・ワン。もしかしたらこの映画にも怖い要素があったりして…とびくびくもので鑑賞に臨みましたが、幸いにも霊とか臓物とかは出てきませんでした。ホラー要素があるとすれば静かなシーンで必ずといっていいほどドッキリさせる爆発があることです。おそらく何分静寂が続いたら必ず爆発しなきゃいけない、そういうルールがある世界です。
で、ホラーの名匠だけあってどうしたら観客を喜ばせることができるか、その辺のサービスに特に心を砕いている様子がラッセンを十枚くらい重ね描きした画風から伝わってきました。『ジャスティス・リーグ』もそれなりに盛っておりましたが、あちらが大盛りだとするとこちらはメガ盛りくらいのボリュームです。でも不思議と盛り付けがきれいで器からもはみ出てない、そういうまとまりの良さも感じられました。
怪獣や様々な海の生き物、スタイリッシュなガジェットなどもいちいち心つかまれましたが、実は自分が一番心惹かれたのはアクアマン父の純情だったりします。消えた妻を思って毎日桟橋に出てるとか、そういう話に弱いんです。「こ、こんなバカ映画で…!」と思いつつたらたらと鼻水が流れてしまいました。そこへダメ出しのように『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』のようなしっとりした曲が流れてきて完全にやられてしまいました。憎いぜ、ジェームズ・ワン…!
ちなみにこの『アクアマン』、アメリカ本国よりその他の国々での収益の方が多いそうです。おそらく中国か南米あたりでうけているのか。同じ王族モノの『ブラックパンサー』が米国中心のヒットだったのと対照的であります。
この作品によってだいぶマーベルにおいついてきたDC。さらにさを縮められるかは再来月公開の『シャザム!』にかかっています。どっちもがんばってください!
Comments
伍一くん☆
どうやらパート2も決定したようですね。
そんなにヒットしてるとは!?
父の純情、私も好きです。だから結局20年も独り暮らしの女王なら、灯台に戻ってあげたら良かったのに…と思いました。
Posted by: ノルウェーまだ~む | March 03, 2019 12:19 AM
>ノルウェーまだ~むさん
「アメコミ飽きた」と言いながらまた観てくれてありがとうありがとう!!
次は2022年だそうです。ちょっとその時幾つになってるか考えると、また暗くなりますね…
>結局20年も独り暮らしの女王なら、灯台に戻ってあげたら良かったのに…と思いました
もう! 野暮はいいっこなし!
Posted by: SGA屋伍一 | March 04, 2019 10:38 PM
ニコールの子なんだから、もう、どんなに髪モジャでも応援します。
Posted by: ボー | March 09, 2019 11:28 PM
>ボーさん
ボーさんは自分がお父さんになりたかったのでは
Posted by: SGA屋伍一 | March 12, 2019 09:26 PM
それにしてもモモアは毛モジャだよなー。モモアくらい毛モジャになると「ワイルド・スピード」出れそうにないなあ、とか、つい要らん事を考えてしまいます。
Posted by: ふじき78 | May 02, 2019 12:38 AM
>ふじき78さん
あっちのチームにスキンヘッドが多いのは、たぶん走行の際空気抵抗を減らすため。モモアさんは向かなそう
Posted by: SGA屋伍一 | May 07, 2019 09:35 PM