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February 27, 2019

はじめ人間アームストロング デミアン・チャゼル 『ファースト・マン』

はじめにんげんむむんむーん アポロで飛び立つむむむんむーん
…海の男の次は最初に月に降り立った男の映画です。『ファースト・マン』ご紹介します。

あらすじはあらためて書くまでもないですね。アポロ11号の船長ルイ・アームストロングの半生を描いた作品です。お話はいきなりルイさんが試験飛行中に大ピンチになってるところから始まります。角度の調整が狂ったために飛行機がそのまま大気圏外にすっとんでしまうかもしれないという。しかし持ち前の冷静さと判断力でなんとか危機を回避するルイさん。さすがアメコミヒーローでもないのに「~マン」と呼ばれているだけのことはあります。
こんな風に割と人類の偉業をたたえるというよりかは、宇宙が死と隣り合わせの世界であることが強調された本作品。はっきり言って怖いです。宇宙が危険な場所であることはそれなりに知ってるつもりでしたが、『オデッセイ』にせよ『ドリーム』にせよ『スペースカウボーイズ』にせよ『アポロ13』にせよ基本ムードが明るいじゃないですか。だから宇宙開発ものってなんとなく陽気なイメージがあるんですけど、『ファースト・マン』ではそういう空気はなりをひそめ、『セッション』よりのヒリヒリした緊迫感がみなぎっておりました。

そんなおそがい挑戦をルイさんはなぜ続けられるのか。それには序盤で幼くしてなくなってしまう彼の娘の存在が大きいように感じられました。
伊坂幸太郎氏の小説に「親にとって最も恐ろしいのは自分の死よりもわが子の死である」という一文がありました(最近はそれを否定するような悲しい事件もありますが…)。そんな最大の恐怖というかどん底を味わってしまった彼は、もう並大抵のプレッシャーには動じなくなってしまったのでは。そしてひたむきに月へいくことを目指すのは、自分が偉業を成し遂げれば娘の存在に意味をもたらせると考えたからか、あるいは神に近い領域にいくことで理不尽な死への答えを得られると思ったのか(実際宇宙飛行士には引退後牧師になってしまう人も多いとか)…なんてことを勝手に想像しておりました。
実物のルイさんは寡黙な人だったのでよくわからないことも多いようです。でもまあデミアン・チャゼル氏はそんな風に人類最初の男も、ごくごく普通の父親にすぎなかった…という解釈でこの映画を作られたようです。

それにしても『セッション』『ラ・ラ・ランド』、そして本作品と自分の色も出しつつ1作ごとに違う顔を見せてくれるデミアンさん、言うまでもありませんが相当な才人ですね。特に「音楽」をテーマにした前2作に対し、今回は宇宙という「無音」の世界に挑んでいるあたり大したチャレンジャーであります。次はまたどんな映画を撮るのか、わくわくさせてくれますね。

一昨日行われたアカデミー賞において、『ファースト・マン』は視覚効果部門を受賞。CG全盛のこの時代にアナログとのハイブリッドでリアルな映像を作り上げたことが評価されたようです。特に月面での臨場感は半端ありませんので、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンと思われた方は公開が続いているうちに映画館にいってください。

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