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February 05, 2019

 硝子の執念 ナイト・M・シャマラン 『ミスター・ガラス』

かつてそのジャンルが絶滅しかけていたころ、『アンブレイカブル』でアメコミ映画に挑んだシャマラン。19年の時を経ていま再び彼がアメコミに帰って来ました。シャマランの集大成とも言える『ミスター・ガラス』、紹介いたします。前作というか第二部にあたる『スプリット』の感想はこちら。

決して壊れない体を持ち、ひそかに自警団を続けていたデイビッド・ダン。ガラスのようにもろい体と天才的な頭脳を持つ犯罪者ミスター・ガラス。深い因縁で結ばれた二人は恐るべき身体能力を秘めた怪人「ビースト」の誕生をきっかけに再会。ビースト共々三つ巴の激しい戦いを繰り広げる。

…と書くといかにもコテコテのアメコミ映画という感じですけど、序章部分が終わるとどんどん奇妙な方向へ話が進んでいきます。『アンブレイカブル』がちょっとひねったヒーロー物語だとすれば、本作品は同じジャンルでありながらねじりん棒くらいにぐるぐると螺旋を描いているイメージ。それを特に印象付けているのが第4のキャラクターであるいけすかない女医さん。彼女は3人を向こうに回して「あなたたちは自分が特別な存在だと思い込んでるけどそれは錯覚だから」ととうとうと高説を垂れます。というわけで三人の怪人はお互いがぶつかる前にまず自分のアイデンティティを問われることになります。そんなやり取りを観ていてわたしはUFO研究家の矢追純一氏とオカルトハンター大槻義彦教授の激しいバトルを思い出しました。まあシャマランファン(シャマラニスト)が肩入れしたくなるのは当然矢追さんの方ですよね。
そう、これはアメコミファンとと同時に『ムー』誌とかそういうのが大好きな人々への応援歌でもあります。UFOとかネッシーとか超能力の話とかすると大抵の人は鼻で笑いますけど、全部存在するんですよ! …というかいたら楽しいですよね。
思えば初期シャマラン作品も幽霊や宇宙人などその手のものの存在を疑わせつつ、最後は「実は本当にいるんです!」というものが多かった。「実はやっぱり偽物でした」という・・・・・・のような例外もありますが。ともかく以前のシャマランがちょっと戻ってきたような気がしてうれしゅうございました。

そしてこの映画がすごいのはやはり19年前の作品の続編であり、後付か当初からの予定なのかはわかりませんが、19年時間を置いて寝かした意味がちゃんとあるということですね… こんな気の長い映画マジックはお目にかかったことがありません。
で、このマジックを堪能するにはだいぶ前に作られてそれほどメジャーでもない『アンブレイカブル』を観ておかなくちゃいけないわけですよ。わたしのようなオタクやシャマラニストならともかく、今の若い人には厳しいはずです。ところが自宅を抵当にまで入れてシャマランが挑んだこの博打は大当たり。全米で3週連続第1位というヒットぶりです。もしかしてアメリカの学校ではシャマラン作品が義務教育なのか、金ローのジブリ並に定番の存在なのか… もはや彼の国はシャマラニストたちに占領されてるのかもしれません。おそるべし。

さて、これを機にMCUのようにシャマラン不思議ユニバースでも展開されるのかと思いましたが、この三部作はきっちりこれで終わりだそうで。なんでもシャマランは自作の権利をほとんど自分で有していて、その理由は「続編を作らせないため」なんだとか。そこまで続編嫌いのシャーミンが自分にとって禁じ手とも言えるトリロジーに挑んだのはなぜなのでしょう。うん、きっと自分の中のルールより「こんなアイデア思いついたんだけどやってみたい!」欲が勝ったということなのでしょうね。
しかしやっぱりせっかく広がりを見せ始めたシャマラン・ユニバース、が「あ」という間に収束してしまうのはさびしい。主要キャラたちもあんなことになってしまいました。ですがこれだけは言っておきたい。「アメコミにおい人気キャラは軽率に復活するもの」 この思い、どうかシャマランに届きますように…
『ミスター・ガラス』はまだ全国の映画館で上映中。あと1週が山場かな~

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Comments

伍一くん☆
存在を疑わせておいて、実は居た!というのがシャマランだったのですね?知らなかった~~
私は巷を席巻しているヒーローものに警鐘を鳴らしている作品なのかと思っちゃいました。

Posted by: ノルウェーまだ~む | February 06, 2019 at 01:07 PM

>ノルウェーまだ~むさん

それがシャマランなのです。絶対『ムー』を愛読していますね。まちがいない
 
>巷を席巻しているヒーローものに警鐘をならしている

な、なるほど… たしかに大手の作るヒーローものとは一味もふた味もちがってましたね。でもシャマランはやっぱりアメコミヒーローを愛してると思いますよー

Posted by: SGA屋伍一 | February 08, 2019 at 10:08 PM

なななんと、自宅を銭湯にして!?
あ、抵当に入れてですか。
女医さんの心配を一瞬でもした私が大馬鹿だったよ、ええ、もう。ジョジョイのジョイと。

Posted by: ボー | February 11, 2019 at 08:46 PM

「ダンボ」にこの女医さんが出てきて、小象に向かって「あなたは自分が特別な存在だと思い込んでるけどそれは錯覚だから」と言い切ってもらいたい。

Posted by: ふじき78 | February 13, 2019 at 04:57 PM

>ボーさん

今回はかなり苦しいのでは…
女医は好きです(あっ)

Posted by: SGA屋伍一 | February 13, 2019 at 11:16 PM

>ふじき78さん

オリジナルのダンボでは幻覚シーンが怖いという評判ですが、そんなドラッグ描写に期待したいですね

Posted by: SGA屋伍一 | February 13, 2019 at 11:17 PM

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