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February 27, 2019

はじめ人間アームストロング デミアン・チャゼル 『ファースト・マン』

はじめにんげんむむんむーん アポロで飛び立つむむむんむーん
…海の男の次は最初に月に降り立った男の映画です。『ファースト・マン』ご紹介します。

あらすじはあらためて書くまでもないですね。アポロ11号の船長ルイ・アームストロングの半生を描いた作品です。お話はいきなりルイさんが試験飛行中に大ピンチになってるところから始まります。角度の調整が狂ったために飛行機がそのまま大気圏外にすっとんでしまうかもしれないという。しかし持ち前の冷静さと判断力でなんとか危機を回避するルイさん。さすがアメコミヒーローでもないのに「~マン」と呼ばれているだけのことはあります。
こんな風に割と人類の偉業をたたえるというよりかは、宇宙が死と隣り合わせの世界であることが強調された本作品。はっきり言って怖いです。宇宙が危険な場所であることはそれなりに知ってるつもりでしたが、『オデッセイ』にせよ『ドリーム』にせよ『スペースカウボーイズ』にせよ『アポロ13』にせよ基本ムードが明るいじゃないですか。だから宇宙開発ものってなんとなく陽気なイメージがあるんですけど、『ファースト・マン』ではそういう空気はなりをひそめ、『セッション』よりのヒリヒリした緊迫感がみなぎっておりました。

そんなおそがい挑戦をルイさんはなぜ続けられるのか。それには序盤で幼くしてなくなってしまう彼の娘の存在が大きいように感じられました。
伊坂幸太郎氏の小説に「親にとって最も恐ろしいのは自分の死よりもわが子の死である」という一文がありました(最近はそれを否定するような悲しい事件もありますが…)。そんな最大の恐怖というかどん底を味わってしまった彼は、もう並大抵のプレッシャーには動じなくなってしまったのでは。そしてひたむきに月へいくことを目指すのは、自分が偉業を成し遂げれば娘の存在に意味をもたらせると考えたからか、あるいは神に近い領域にいくことで理不尽な死への答えを得られると思ったのか(実際宇宙飛行士には引退後牧師になってしまう人も多いとか)…なんてことを勝手に想像しておりました。
実物のルイさんは寡黙な人だったのでよくわからないことも多いようです。でもまあデミアン・チャゼル氏はそんな風に人類最初の男も、ごくごく普通の父親にすぎなかった…という解釈でこの映画を作られたようです。

それにしても『セッション』『ラ・ラ・ランド』、そして本作品と自分の色も出しつつ1作ごとに違う顔を見せてくれるデミアンさん、言うまでもありませんが相当な才人ですね。特に「音楽」をテーマにした前2作に対し、今回は宇宙という「無音」の世界に挑んでいるあたり大したチャレンジャーであります。次はまたどんな映画を撮るのか、わくわくさせてくれますね。

一昨日行われたアカデミー賞において、『ファースト・マン』は視覚効果部門を受賞。CG全盛のこの時代にアナログとのハイブリッドでリアルな映像を作り上げたことが評価されたようです。特に月面での臨場感は半端ありませんので、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンと思われた方は公開が続いているうちに映画館にいってください。

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February 26, 2019

モモアと伝説の海 ジェームズ・ワン 『アクアマン』

Jlam2むかしむかし…(じゃないんだけど)、あるところに灯台守と海の国の王女様の間に生まれた子供がおりました。王女様は彼がまだ幼いうちに実家の事情で国に帰ってしまいましたが、王子様はすくすくと成長し、やがて筋肉ムキムキで毛むくじゃらの超人「アクアマン」として知られるようになります。それなりにヒーロー活動にいそしんでいた彼でしたが、同じように大きくなった弟オームが陸地の人間たちに宣戦布告。そのために海底のお家騒動に巻き込まれることになってしまうのでした…

矢継ぎ早にどんどこ公開されるアメコミ映画。この度の『アクアマン』は映画ではマーベルに一歩後れを取っているDCが送り出したヒーローで、一昨年の『ジャスティス・リーグ』でも活躍しております。ただその『ジャスティス・リーグ』、世間的には「ぱっとしない」という評価で商売的にも赤字となってしまいました。(わたしはそこそこ好きですけどね…) だのに今度はその中のサブ的なキャラを主役に据えて映画化するという。正直無謀だ…と思いました。ところがそれが今度は世界的な大ヒットとなり、いまや単体ヒーロー映画の記録更新までなしとげているから驚きです。本当に世の中何が売れるのかわかりません。

そもそもアクアマンとはどういうキャラなのか。実はアメコミファンを名乗っておきながらわたしもほとんど知りませんでしたw スーパーマン・バットマンと同じほどのキャリアを誇りながら、海底が主な縄張りという特化した背景のゆえか、二重の意味で日が当たらないヒーローだったのです。そしてようやくスクリーンにお目見えしたらコミック版(下画像参照)
Jlam1とは似ても似つかぬ姿での映像化となりました。それでも原作ファンが怒ったという話はほとんど聞かないので、それくらい人気のないキャラだったのでしょうね… うう… ただまあこの改変で一躍ヒーロー界のトップスターになったことを考えれば大正解と言っていいんじゃないでしょうか。

で、映画の方ですが「もっともマーベルらしいDC映画」とか評されておりました(…)。どの辺がそうだったのかはよくわかりませんが、自分はむしろかつてないほどにディズニーっぽいアメコミ映画だと感じました。きらびやかな背景に神話っぽい設定、王家のいざこざに快活な主人公、狡猾な悪役、多くの試練に胸躍る冒険… そういったあたりが。主役がプリンセスじゃなくてマッチョのおっさんという違いこそありますが。『マイテ○・ソー』もそーでしたが、キラキラ具合ではこちらのほうが上だと思います。

そんなメルヘン世界を見事に映像化したのはホラー界の第一人者ジェームズ・ワン。もしかしたらこの映画にも怖い要素があったりして…とびくびくもので鑑賞に臨みましたが、幸いにも霊とか臓物とかは出てきませんでした。ホラー要素があるとすれば静かなシーンで必ずといっていいほどドッキリさせる爆発があることです。おそらく何分静寂が続いたら必ず爆発しなきゃいけない、そういうルールがある世界です。
で、ホラーの名匠だけあってどうしたら観客を喜ばせることができるか、その辺のサービスに特に心を砕いている様子がラッセンを十枚くらい重ね描きした画風から伝わってきました。『ジャスティス・リーグ』もそれなりに盛っておりましたが、あちらが大盛りだとするとこちらはメガ盛りくらいのボリュームです。でも不思議と盛り付けがきれいで器からもはみ出てない、そういうまとまりの良さも感じられました。

怪獣や様々な海の生き物、スタイリッシュなガジェットなどもいちいち心つかまれましたが、実は自分が一番心惹かれたのはアクアマン父の純情だったりします。消えた妻を思って毎日桟橋に出てるとか、そういう話に弱いんです。「こ、こんなバカ映画で…!」と思いつつたらたらと鼻水が流れてしまいました。そこへダメ出しのように『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』のようなしっとりした曲が流れてきて完全にやられてしまいました。憎いぜ、ジェームズ・ワン…!

ちなみにこの『アクアマン』、アメリカ本国よりその他の国々での収益の方が多いそうです。おそらく中国か南米あたりでうけているのか。同じ王族モノの『ブラックパンサー』が米国中心のヒットだったのと対照的であります。
この作品によってだいぶマーベルにおいついてきたDC。さらにさを縮められるかは再来月公開の『シャザム!』にかかっています。どっちもがんばってください!


Aqam1


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February 19, 2019

帰ってきたウルトラウーマン ロブ・マーシャル 『メリー・ポピンズ・リターンズ』

昨年からパディントン、ピーターラビット、プーさんと英国の名作童話の映画化か続いてますが、あのご夫人も55年ぶりに映像の世界に帰ってこられました。『メリー・ポピンズ・リターンズ』、ご紹介します。

困っている子供たちのもとにやってきて救いの手を差し伸べる魔法の子守メリー・ポピンズ。かつて彼女の世話になったバンクス家の長男マイケルは今では自身が三児の父となり、家庭のことで悩みの絶えない日々を送っていた。そんなマイケル一家のもとに時空を超えて再びあの不思議なレディが天から舞い降りてくる。

さきほど「プーさん」をあげましたが、なんでかこないだの『プーと大人になった僕』といろいろ重なってしまった本作。前作の主人公がいいおっさんになってたり、そのおっさんが仕事のことできりきり舞いしてて子供とうまくいかなくなってたり。そしてそんな彼の元に幼いころの懐かしい知人が訪ねてきたり、不思議な世界を思い出したり…というあたり。ディズニーさんももう少し企画をずらせなかったものかとは思いますが、なんか偶然重なっちゃったんでしょうね。

プーさんと違うのはメリーさんは一応人間であり、クールでかっこいいということです。結局わたくし前作は未鑑賞で臨んだのですが、メリー・ポピンズさんというのはもっとふんわかした癒し系のおばさんだろうと勝手に想像してました。ところがどすこい、メリーさんは子供たちにも厳しいところは厳しく、滅多に表情を崩しません。それでも時折ちらりと優しさをのぞかせ、事件が解決すると別れのあいさつもなくまた新たな任地へと旅立っていく… まるでハードボイルドのヒーローみたいです。そんなメリーさんを『オール・ユー・ニード・イズ・キル』や『ボーダーライン』で銃をガンガンぶっ放してたエミリー・ブラントさんが好演しておられました。

わたしがこの映画を観ようと思った動機のひとつは、いまどきのディズニー映画にしては珍しく非CGのアニメと実写を組み合わせたビジュアルが面白そうだったから。少し前に『ポピンズ』原作者を題材にした『ウォルト・ディズニーの約束』という映画があったんですが、それによりますと原作者トラバース夫人はアニメが嫌いなのに『メリー・ポピンズ』の1シーンにアニメのペンギンが出てきた時にたいそうお怒りになられたとかw さすがに当時の撮影技術で「踊るペンギン」を出すのは不可能だったと思うので、致し方なきことだったんでしょうが…
で、それから50年。いまではCG技術の発達により不可能な「実写映像」というのはほぼなくなりました。だのにあえて絵アニメをふんだんに入れまくるという皮肉w 原作者様がご覧になったらまたしても青筋を立てられたと思いますが、あの画風というか画質、最近見なかったのでとても懐かしい気分になりました。

バンクス家のかつては長男、いまではお父さんのマイケルを演じるのはベン・ウィショー。わたしはどうしても『パフューム』の異常殺人犯を思い出してしまうのですが、子供の前で強がりながら陰で泣いてる優しいお父さんもなかなか似合ってました。彼は「パディントン」の声もあててましたし徐々にハートウォーミング系への転身を図っているのかもしれません。

ディズニー実写化の波はとどまることなくこれからま『ダンボ』『アラジン』『ライオン・キング』などが控えております。結局全部つきあってしまいそうな気がします…

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February 18, 2019

決定! 第8回人間以外アカデミー賞(2018年度公開作品から)

なぜ、アカデミー賞は人間にしか与えられないのか。そんな発想から生まれた「人間以外アカデミー賞」。限りなく自己満足に近い企画ではございますが、今年でもう8回目を迎えます。例によって賞金も賞品もありませんが、はりきってまいりましょう! それではゲノムの少なそうな連中から。

☆細菌・微生物部門 『ヴェノム』よりシンビオート
これは厳密には菌でもウィルスでもない気がしますが、ほかにそれっぽい候補もないので無理やり受賞といたします。しょっぱなから厳しいです

☆植物部門 『アベンジャーズ/インフィニティウォー』『シュガーラッシュ/オンライン』よりグルート
すっかり反抗木に突入してしまったグルートくん。果たして『エンドゲーム』での出番はあるか?

☆昆虫その他の無脊椎動物部門 『ムタフカズ』よりゴキブリの群れ
ゴキブリが受賞するのは初めてかな? 他候補に『アントマン&ワスプ』のアリさんたちや『カニとタマゴと透明人間』のカニさんたち

☆魚類および海生哺乳類部門 『MEG ザ・モンスター』よりMEG
サカナだなんて思ったら 大間違いよ モンスター

☆両生類・爬虫類部門 『ランペイジ』よりワニ怪獣
これまたこれくらいしか思いつかなかった… あ、ファンタビのナギニさんもいたか

☆鳥類部門 『ペンギン・ハイウェイ』『皇帝ペンギン ただいま』よりアデリーペンギン
他候補にピーターラビットでふっとばされてた小鳥たち

☆犬猫小動物部門 『ピーターラビット』よりピーターラビット
今年も激戦区でした… 『犬ヶ島』のみなさん、『未来のミライ』のユッコ、『ボヘミアン・ラプソディ』の猫さんたちなど忘れがたい面々がいっぱい

☆草食・牧畜系動物部門 『スリー・ビルボード』二出てきた鹿
これくらいしか思いつきませんでしたw 何か忘れているような…

☆肉食・野獣系部門 『パディントン2』よりパディントン
ほかにも『プーと大人になった僕』『ブリグズビーベア』など、近年まれに見る熊大活躍の年でありました。クマ以外ではブラックパンサーさんなど

☆類人猿部門 『ランペイジ』より白ゴリラ
他候補に『ニンジャバットマン』の猿軍団、ゴリラグロットなど。ウキー!

☆恐竜・絶滅した動物部門 『ジュラシック・ワールド 炎の王国』よりT-REX
こちらはジュラシックさんちの独壇場です。個人的にはパキケファロサウルスさんの頭突きに大興奮でした

☆妖精・伝説の生き物部門 『リメンバー・ミー』よりケツアルコアトルっぽかったなんか 『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』より騶虞
W受賞。ファンタビには河童も出てましたね

☆怪獣部門 『GODZILLA 決戦機動増殖都市』『GODZILLA 星を喰う者』よりアースゴジラさん
賛否両論激しいアニメゴジラでしたが、一年に渡る激闘をねぎらって

☆人でなし部門 『シェイプ・オブ・ウォーター』のマイケル・シャノンさん
今年は心に残る殺人鬼とかマッドサイエンティストがいなかった… (あくまで映像の中で)がんばってください

☆ゾンビ・吸血鬼・妖怪部門 『シェイプ・オブ・ウォーター』の半魚人さんと『カメラを止めるな!』のゾンビさん
これまたW受賞。後者は正確にはゾンビではありませんが何か賞をあげたかったので

☆神様部門 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』よりサノス
宇宙猿人からもはや全能の存在となった佐野さんが見事に受賞。他候補にガンダムフェネクス

☆悪魔部門 『へレディタリー』のなんかと『来る』のなんか
『へレディタリー』はこわすぎてわたし観てないんですが

☆ロボット部門 『レディプレイヤー1』よりアイアンジャイアント 『パシフィック・リム アップライジング』よりジプシー・アベンジャー
前者は完全にわたしのひいきです。他にマジンガ―Z、『ハン・ソロ』のオネエぽかったあいつ

☆宇宙人部門 ここはやっぱり『ザ・プレデター』のプレデターさんで
『スカイライン 奪還』の掃除機宇宙人さんや『ヴァレリアン』の皆さんも素敵でした

☆正体不明部門 『グリンチ』よりグリンチ 
でしょうか。ほかに『ルイスと不思議な時計』の椅子や『来る』のなんか

そして栄えある大賞は
『レディ・プレイヤー1』の皆さんです
Rp_poster「俺はガンダムでいく!」 この言葉に胸躍らないオタクがいましょうや。年末には同じ趣向の『シュガーラッシュ/オンライン』もありましたが、サービス的にはこちらの方が上だったと思います。


途中でも書きましたが、2018年は特に熊が強かった印象。今年はこれからダンボやアラジンの精、バンブルビーなどの活躍が楽しみです。年号が変わっても動物・怪物のみなさん、元気でまいりましょう! 人間以外アカデミー賞でした


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February 13, 2019

幽霊はひとりぼっち デヴィッド・ロウリー 『ア・ゴースト・ストーリー』

Ags1風変わりな傑作をおおく送り出している製作会社「A24」。その中でも数々の映画祭で賞に輝いた鳴り物入りの作品を、ようやく拝むことができました。『ア・ゴースト・ストーリー』、ご紹介します。

すこし擦れ違いこそあるものの、仲睦まじい一組の夫婦。だが夫はある日自動車事故であっけなくこの世を去ってしまう。しかしの霊はこの世にとどまり、妻を静かに見守り続ける。

と書くとどうしても思い出すのは名作『ゴースト NYの幻』。ただベタベタな恋愛ものだったあちらに比べ、こちらはかなりシュールなタッチです。まず幽霊のデザインがなんともシンプル。丸目のついたシーツをすっぽり羽織っているだけで、「オバケのQ太郎」を彷彿とさせます。そういえば子供の絵本に出てくるオバケってこういうシルエットのものが定番だったような。お化けと幽霊は厳密には違うものかもしれませんが。

そんな風にビジュアルこそ滑稽ではありますけど、「ストーリー」の方はギャグもほとんどなく淡々と進行していきます。幽霊さんの孤独をひたひたと共感させるような作り。この辺は『ゴースト』というより手塚治虫の『火の鳥 未来編』に近いものがありました。悠久の時をただ一人で生きていかねばならない主人公の悲劇。漫画と映画の違いこそあれ時間の無情さと無限さを強く感じさせてくれる二作品です。

「時間」と書きましたがこの配分がまた独特でした。おくさんが黙々とパイを食べてるシーンを5分くらいかけて撮ったかと思えば、あるくだりでは時間が数十年ジャンプしたりする。そんな風にすることで時間に対する感覚の不確かさを表現したかったのか…というのは考えすぎか。

途中ある面倒くさいやつが、パーティーの席上で「ぼくらはみんないずれ消滅してしまうんだから存在に意味なんてない」みたいなことを言います。この映画はそれを否定してないと思うのですが、なぜか作品からは不思議なあたたかみや優しい視線を感じます。愛情豊かな人が弱弱しく咲いている小さな花に抱くようなそんな感情がこめられているような。
そんなひとりぼっちの幽霊を、ほとんどシーツをかぶったまま『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が記憶に新しいケイシ―・アフレックが好演しております。この2作ですっかり「幸薄い寡黙な男」というイメージが自分の中で定着してしまいました。つい先日監督作『Light of My Life』が海外で公開されたようですが、どんなものを撮ったのか気になります。

どういうわけかタイトルのよく似た(でもまったく関係ない)『シシリアン・ゴースト・ストーリー』という映画も近々遅れてこちらにやってきます。こちらはマフィアがらみのシビアな話のようで。でも雰囲気良さげなのでたぶん観ると思います。

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February 08, 2019

モイといえばモイと答える マリヤッタ・クレンニエミ/サーラ・カンテル 『オンネリとアンネリのふゆ』

サンタクロースとムーミンの国、フィンランドで書かれた名作童話の映画化。ふたりの少女の日常と冒険を描いた『オンネリとアンネリのふゆ』、ご紹介します。

それぞれの家庭で面白くない思いをしていた少女オンネリとアンネリは、あることがきっかけで建築家「バラの木夫人」からかわいらしい家を譲られ、そこで二人面白おかしく暮らしていた。
ある雪の晩、バラの木夫人を訪ねて小人の一家がやってくる。なにかとねらわれやすい小人一家を守るため、オンネリとアンネリは夫人が来るまでドールハウスにかくまうのだったが…

実はこの作品、シリーズ2作目にあたります。1作目は昨年6月に公開された『オンネリとアンネリのおうち』。こちらでは公開されなかったので『~のふゆ』を観る前に予習しておこうと思ったのですが結局バタバタしていて観られませんでした。というわけで、ネットであらすじを調べて想像で補いながら臨んだのですがまあなんとかなりました。

こういってはなんですが、オンネリもアンネリもとりわけ目立つところや変わったところがあるわけではなく、ごくごく普通の遊び好きで純真な性格の女の子。強いて言うならばこまめにクルクル変わる衣装がかわいらしい。ついでにふたりのお家の調度品や内装、隣近所の住人たちまでいちいちキュート。そんな風にかわいらしがかっつまった絵本のような映画でした。わたしがとりわけキュンとなったのは例の「モイ!」というあいさつ。うわさには聞いてましたが、お人形さんのような嬢ちゃんたちが「モイ!」「モイ!」と言うのを耳で聞くと萌えずにはいられませんでした。わたしはおっさんですけど実際にこのあいさつ使ってみたいなあ… モイ! モイモイ!! …失礼しました。

そんなかわいらしさにさらに花を添えるのがゲストキャラらしき小人さんたち。その物珍しさゆえ人間に狙われる…というあたりはジブリで映画化された『狩りぐらしのアリエッティ』をおもいださせます。ちなみに『アリエッティ』の原作が1950年代、『オンネリとアンネリ~』の原作が1960年代。『アリエッティ』の方がやや先んじてますが、たぶん偶然重なっちゃったんだろうと思われます。
この小人ら、アリエッティらとは違ってそこそこ文明的な生活をしているのが特徴。いっぱしに自動車まで所有しています。このおもちゃみたいな車がひょこひょこ走り回る様子がなかなかツボでございました。
その小人をねらういわゆる「悪役」となる女性もそんなに悪人ではなく、「もうすこしいい暮らしがしたいな~」と思願ってちょっと暴走してしまうくらいの人。ついでに無駄に美人。自分の過ちにきづくとすぐに反省してしまうあたりがまた心地よかったりします。

このシリーズは全4作を計画しているそうで、たしかちょうど今日から始まったノーザンライツフェスティバルという北欧作品を扱った映画祭で、3作目の『オンネリとアンネリのひみつのさくせん』が上映されてます。こちらは一般公開の予定はなくそちらでの限定上映とのこと(…)。スチールを見たら主演の嬢ちゃんたちがもうすっかり大きくなってました。だもんでいま製作中の完結編ではまたあらたな子役がキャスティングされてるとのことです。いずれこれらも配信かレンタルで観られるようになるのでしょうか。

ちなみに自分がこれまで観たフィンランド映画って何があったかと思って記事検索してみたら『ル・アーブルの靴磨き』『ビッグ・ゲーム』『アイアン・スカイ』くらいしかありませんでした。地方に住んでるとあまり北欧の作品って劇場で観る機会がないのでかかったら積極的に鑑賞していきたいものです。とりあえず次は電話だけで事件を解決するという『ギルティ』というデンマーク映画を楽しみにしております。

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February 05, 2019

 硝子の執念 ナイト・M・シャマラン 『ミスター・ガラス』

かつてそのジャンルが絶滅しかけていたころ、『アンブレイカブル』でアメコミ映画に挑んだシャマラン。19年の時を経ていま再び彼がアメコミに帰って来ました。シャマランの集大成とも言える『ミスター・ガラス』、紹介いたします。前作というか第二部にあたる『スプリット』の感想はこちら。

決して壊れない体を持ち、ひそかに自警団を続けていたデイビッド・ダン。ガラスのようにもろい体と天才的な頭脳を持つ犯罪者ミスター・ガラス。深い因縁で結ばれた二人は恐るべき身体能力を秘めた怪人「ビースト」の誕生をきっかけに再会。ビースト共々三つ巴の激しい戦いを繰り広げる。

…と書くといかにもコテコテのアメコミ映画という感じですけど、序章部分が終わるとどんどん奇妙な方向へ話が進んでいきます。『アンブレイカブル』がちょっとひねったヒーロー物語だとすれば、本作品は同じジャンルでありながらねじりん棒くらいにぐるぐると螺旋を描いているイメージ。それを特に印象付けているのが第4のキャラクターであるいけすかない女医さん。彼女は3人を向こうに回して「あなたたちは自分が特別な存在だと思い込んでるけどそれは錯覚だから」ととうとうと高説を垂れます。というわけで三人の怪人はお互いがぶつかる前にまず自分のアイデンティティを問われることになります。そんなやり取りを観ていてわたしはUFO研究家の矢追純一氏とオカルトハンター大槻義彦教授の激しいバトルを思い出しました。まあシャマランファン(シャマラニスト)が肩入れしたくなるのは当然矢追さんの方ですよね。
そう、これはアメコミファンとと同時に『ムー』誌とかそういうのが大好きな人々への応援歌でもあります。UFOとかネッシーとか超能力の話とかすると大抵の人は鼻で笑いますけど、全部存在するんですよ! …というかいたら楽しいですよね。
思えば初期シャマラン作品も幽霊や宇宙人などその手のものの存在を疑わせつつ、最後は「実は本当にいるんです!」というものが多かった。「実はやっぱり偽物でした」という・・・・・・のような例外もありますが。ともかく以前のシャマランがちょっと戻ってきたような気がしてうれしゅうございました。

そしてこの映画がすごいのはやはり19年前の作品の続編であり、後付か当初からの予定なのかはわかりませんが、19年時間を置いて寝かした意味がちゃんとあるということですね… こんな気の長い映画マジックはお目にかかったことがありません。
で、このマジックを堪能するにはだいぶ前に作られてそれほどメジャーでもない『アンブレイカブル』を観ておかなくちゃいけないわけですよ。わたしのようなオタクやシャマラニストならともかく、今の若い人には厳しいはずです。ところが自宅を抵当にまで入れてシャマランが挑んだこの博打は大当たり。全米で3週連続第1位というヒットぶりです。もしかしてアメリカの学校ではシャマラン作品が義務教育なのか、金ローのジブリ並に定番の存在なのか… もはや彼の国はシャマラニストたちに占領されてるのかもしれません。おそるべし。

さて、これを機にMCUのようにシャマラン不思議ユニバースでも展開されるのかと思いましたが、この三部作はきっちりこれで終わりだそうで。なんでもシャマランは自作の権利をほとんど自分で有していて、その理由は「続編を作らせないため」なんだとか。そこまで続編嫌いのシャーミンが自分にとって禁じ手とも言えるトリロジーに挑んだのはなぜなのでしょう。うん、きっと自分の中のルールより「こんなアイデア思いついたんだけどやってみたい!」欲が勝ったということなのでしょうね。
しかしやっぱりせっかく広がりを見せ始めたシャマラン・ユニバース、が「あ」という間に収束してしまうのはさびしい。主要キャラたちもあんなことになってしまいました。ですがこれだけは言っておきたい。「アメコミにおい人気キャラは軽率に復活するもの」 この思い、どうかシャマランに届きますように…
『ミスター・ガラス』はまだ全国の映画館で上映中。あと1週が山場かな~

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