すけすぎちゃって困るの~ ハリー・クレフェン 『エンジェル、見えない恋人』
ONE WAY! SO FAR AWAY! STAND BY ME ANGEL~♪ いきなり歳がばれそうな出だしですが、本日はベルギー発の風変わりな天使ちゃんの映画『エンジェル、見えない恋人』をご紹介いたします。
親がイリュージョニストだったゆえか、生まれた時から透明人間だった少年エンジェル。彼を感知できるのは療養中の母親だけなので、エンジェルにとって世界は長い間病院の一室のみだった。しかしある日窓から同い年の少女を見かけたエンジェルは吸い寄せられるように彼女に近づいていく。驚いたことに少女はエンジェルの存在を感じ取る。それは彼女が盲目ゆえに目に囚われない感覚を有していたからだった。
普通透明人間になるには怪しげな薬を飲むとか危ない実験をするとかそういったプロセスを踏むものですが、赤ちゃんのころから普通に透明だったという例は『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部くらいしか知りません。そんな出だしからわかるように、SFというよりかは童話風、アート系のお話であります。製作は『ミスター・ノーバディ』や『神様メール』などのジャコ・ヴァン・ドルマル。確かにこの風変わりな着想はジャコ氏のそれと通じるものがあります。一方で話がこんがらがらずシンプルにすすんでいくあたりは監督独自のカラーでしょうか。
上のポスターを見ますとかなりかわいらしいというかメルヘンチックなムードでございますけど、少年少女が大人になっていくとだいぶセクシャルなシーンも多くなってきます。ただエロシーンもこんだけ堂々とみずみずしく撮られるとあまりいやらしさを感じません。そんな風にエロとアートの境界線についても考えさせられたり。いずれにしてもそういった体当たり的なエロシーンを一人でえんえんと演じておられた主演女優さんには頭が下がります。
見えない体を持つ少年と、見えないゆえに「見る」ことができる少女。やはりテーマは「目に映るものだけがすべてではない」「純粋な愛は視覚に囚われない」といったあたりでしょうか。そんな文芸的な主題が少年漫画のラブコメのように主人公に都合のいい感じで進んでいきます。「人から見えない」ことはかわいそうではありますが、隣に気立てのよい美少女が引っ越してきて一途に自分を慕ってくれるというだけで1千兆円くらいお釣りがくるのでは。ずるいよなあああああ!! こういう皮肉でも悪魔的でもない、全体的に人の好さが感じられるストーリー、欧州アート系ではちょっと珍しいですね。
観ていてわたしが思い出したのはチェコのアニメ作家ポヤルがてがけた『ナイト・エンジェル』という作品。事故で視力を失った青年は暗闇の中手探りで周囲の状況を探っていきます。そして彼が触れると初めてその物体が明るく映し出されるというコンセプト。こちらに道がありますんで気になった方はください。約18分です。
「見えない恋人」という点では先ごろ『ア・ゴースト・ストーリー』という映画も話題を呼びました。こちらも観て来たので近々感想書きますです。
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