闇肉街で生きる ギョーム・“RUN”・ルナール/西見祥示郎 『ムタフカズ-MUTAFUKAZ-』
日本製アニメとしてはかなり異彩を放っていた『鉄コン筋クリート』。そのスタッフがまたなかなかヘンテコそうな作品をこしらえたので先日観てきました。『ムタフカズ』、ご紹介します。
掃き溜めのような街「ダーク・ミート・シティ」で親友ヴィンスと暮らす青年アンジェリーノ(リノ)は、不真面目ではないのだが不幸を呼ぶ体質らしく、どんな仕事もすぐ首になってしまう。ある日ピザの配達中女の子に見とれていたリノは車と激突。怪我は大したことなかったが、それ以来彼は人に化けて街に潜んでいる怪物たちを見分けられるようになってしまう。
と書くとそれほど珍しくもないSFジュブナイルのようですが、変わっているのはメインとなるリノとその二人の友人も外見的には人間でないところ。リノは多少かわいらしいヴェノムのようですし(上画像参照)、ヴィンスは燃える骸骨(中画像参照・ゴーストライダーかよ!)、ウィリーはどうやらコウモリっぽいのですが翼もないし謎の生き物としかいいようがありません(下画像参照)。ですが町の人々は彼らを見ても別段驚きません。ドラえもんやオバQが歩いていてもあの世界では普通に受け入れられてるような、そんな感覚なのかもしれません。ちなみに「ムタフカズ」とはヒスパニック系ギャングのスラングだそうで、人間ではないっぽいですが、ルチャ・リブレとナチョスを愛好してるのを見ると彼らも一応メキシコ系の若者のようです。
そんなゆるキャラのような3人が宇宙人の陰謀に巻き込まれ、ギャングたちの抗争にも関係し、ルチャ・リブレの神話にも関わったり、若者らしい恋や友情のドラマもあり…はっきり言ってかなり詰め込みすぎです。にもかかわらずあんまりそれがうっとおしく感じられなかったのは、ひとえにポップな美術背景とそのゴチャゴチャ感がマッチしてたからでしょうか。フランスの作家がメキシコ系アメリカ人を描き、日本人スタッフが映像化という多国籍な製作環境もいい感じのごった煮感に貢献しております。あと相当バカバカしい話でありながらリノやヴィンスの友を思う気持ちにはホロリとさせられました。
自分がなんとなく気にいってしまったのは謎の生き物のウィリー。うるさいし小ずるいしブサイクなデザインなんですが、どうしてかかわいそうな目にあってるともらい泣きしそうになってしまいました。声を演じるは『花筐』での好演が印象的だった満島真之介氏。あちらではにおい立つような男の色気を放ちまくっておりましたが、こちらではすっぱだかの珍獣を違和感なく演じた上にEDではラップまで披露していて芸達者だなあ…と感服いたしました。
あんまり話題にもならずにどんどん公開も終わりつつあるようですが、気になった方はこちらの予告編をご覧ください。陰謀に巻き込まれた貧乏青年の映画と言えば先日『アンダー・ザ・シルバーレイク』というのも観ました。こちらについても近々書きます。
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