スパイダーマン×スーパーマリオ デビッド・ロバート・ミッチェル 『アンダー・ザ・シルバーレイク』
2018年もあますところあと一週間… わたしが最後に映画館で観た実写洋画はこの作品になりそうです。『アンダー・ザ・シルバーレイク』ご紹介いたします。
ロサンゼルス市で一際おしゃれとされているシルバーレイク地区。そこで特に目的も仕事もなくダラダラと過ごしている青年サムは、ある日同じアパートに住むサラといい雰囲気になる。だがその翌日サラとそのルームメイトたちは忽然と姿を消してしまう。サムは彼女の消息をつかむためにあちこち動き回っているうちに、シルバーレイクの裏に潜む上流階級の企みに近づいてしまう。
ロサンゼルスといえばハリウッドがあって華やかでセレブ達が集う街…というイメージがあります。しかし本当のセレブ達は一部で、普通に貧しいひとたちもそこでは暮らしているようで。この映画に登場するサムの境遇は『ラ・ラ・ランド』より低く『フロリダ・プロジェクト』よりは多少マシ、といったところです。というかまず真面目に働こうとしないのがあまりよろしくないw
支配階級の陰謀に自分一人が気づいてしまった…というサスペンスはちょくちょくあります。日本でいうと代表的な例は『20世紀少年』などでしょうか。で、そういう話の主人公はそれなりにかっこよかったりカリスマ性があったりするものですが、この映画のサムは本当にだらしないしボンクラだし老人や子供にも容赦しないし、長所がほとんどありません。強いてひとつあげるなら多少見てくれがいいので女の子が自然と寄ってくることくらいでしょうか(腹立たしい)。あと一般の陰謀サスペンスと比べると組織側の追及もいまひとつゆるい。アパートの家賃の取り立ての方が厳しいように思えました。
いってみればとても中二的なストーリーであるわけですが、中二になりきってるというのではなく、かつての中二的な自分を冷ややかに温かく(どっちなんだ)見つめてるような姿勢を感じました。監督もかつてはロスの片隅で将来にめどが立たず悶々としてるような青年だったのかもしれません。
あとウンコとかオナニーと下ネタも出てくるのですが、あまり汚くかんじられず、全体的にオシャレ感の方が強く残ったのは監督のセンスゆえでしょうか。ダニー・ボイル監督の『トレインスポッティング』とその辺似ております。
そんなボンクラ―を演じるのは『アメイジング・スパイダーマン』や『沈黙』『ハクソー・リッジ』などで知られるアンドリュー・ガーフィールド。真面目で苦悩してひたむきにがんばる役が多かったですけど、そういうのに疲れたのか今回は180度違う極めてええかげんなキャラを好演してました。劇中ではコミックのスパイダーマンを手に取るシーンもあり皮肉が効いてました(笑)。
ちなみにわたしがこの映画を観ようと思ったのは、予告で主人公がスーパーマリオに興じていたから。流麗なCGが幅を利かしているこの時代に元祖ファミコンのスーパーマリオですよ。まるでこないだミニファミコンを購入した自分のようで、すごく親近感を覚えたのですね。いまでもあちらでは人気があるのか、それとも単に監督のひいきなのか。
いずれにせよそんなスーパーマリオの引用にもちゃんとした理由があって驚いたり嬉しかったり。それだけにとどまらずニンテンドーが物語のカギを握っていたりしてたまげました。この世界を裏から動かしているのは任天堂なのかもしれません。微妙に説得力あるような… 恐ろしいですね! 今年の正月はその某社の百人一首にでも興じながら日本を取り巻く陰謀について考えてみようと思います。それともやっぱりスーパーマリオの方が楽しいか…
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