ニュータイプの涅槃が見られるか 富野由悠季・福井晴敏・吉沢俊一 『機動戦士ガンダムNT』
そういえば『00』が終わってからめっきりガンダムについて書かなくなってしまいましたが、今でも自分は普通にガンダムが好きです。『UC』や『鉄血のオルフェンズ』もかなりはまって観てましたし… そのガンダムの映画が微妙な距離(車で1時間半)の劇場でかかると知り、年末の忙しい時期マイカーを飛ばして観に行ってまいりました。『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』ご紹介いたします。
地球の支配階級と宇宙に移民させられた人たちの対立がつづく近未来。度重なる戦火や極限状況はやがて一部の人間を新たなる種「ニュータイプ」へと進化させていく。そしてそのニュータイプの精神に感応して動くマシン「サイコフレーム」は超常の現象まで引き起こし、世界を震撼させる。奇跡を呼び起こした機体「ユニコーンガンダム3号機フェネクス」の力を手に入れるべく争奪戦を繰り広げる各勢力。その中にはフェネクスのパイロット・リタと幼少時を共に過ごしたヨナ・バシュタとミシェル・ルオもいた。
「ナラティブ(NARRATIVE)」とは「物語」「神話」という意味があるそうで。副題の「NT」はそれと、宇宙世紀ガンダムの重要なキーワード「ニュータイプ」をひっかけてるものと思われます。
で、この度の新作、やはり原作を福井晴敏氏が手掛けた『UC』の後日談的な意味合いが強く、補完能力の強い方ならいきなりこれを観ても大丈夫でしょうけど、できたら『UC』を先に観てから臨んだほうがよいかもしれませんん。他にも『Z』や『逆襲のシャア』などからの引用もいろいろあり、宇宙世紀ガンダムを知ってれば知ってるほど楽しめる作りになっております。
それほどまでにガンダムを愛している福井氏ですが、宇宙世紀の創始者富野由悠季監督とは違う独自の道を歩み始めている気もします。まず富野監督との大きな違いのひとつはセリフが普通によくつながってる(笑) 富野監督のセリフ回しって会話になってんだかなってないんだかよくわかんない感じですしね… それがひとつの味でもあるんですけど。もうひとつは大人たちが概ねちゃんとしているということ。『NT』では子供を人体実験するひどい大人も出てきますが、『UC』と同じく主人公を心配して健全な道を歩ませようとしている大人たちもちゃんといます。富野作品では若者と一緒にフラフラしてる大人が多かったからなあ。
そして富野監督が見切りをつけた「ニュータイプ」について蒸し返してる…じゃなくて、もう一度ちゃんと取り組もうとしてる点。御大は途中で「人類の進化が明るい未来をもたらす」というテーマに行き詰まりを感じてしまったのか、『F91』以降は前面に出さなくなってしまいました。しかし初代ガンダムから付き合ってる我々としては、やはり宇宙世紀ガンダムにはこの要素がないと物足りなく感じてしまいます。
ちなみにニュータイプの能力についてどんなだったか振り返ってみると、初代のころは「人一倍勘がいい」くらいのものだったと思います。それが『Z』『ZZ』になるとモビルスーツに半端ない出力を放出させたり、死者の精神を呼び寄せたりすることもできるようになりました(笑) そして『UC』に至るとサイコフレームの力もあって、神に近い存在にまでなり、周囲一帯の艦隊を無効化することさえ可能になりました。まさにニュータイプ能力のインフレ化が止まらないような状態になっております。
今回の『NT』では、「ニュータイプなら肉体が滅んでも精神だけ永遠に存在できるのでは」というところにスポットがあてられています。なんかかつて『銀河鉄道999』でも問われたような問題ですね(なつかしいなあ)。福井さんはその危険性と希望の両方を説き、結局「どっちやねん」という状態で幕を引きます。ずるいですね!
なんかいろいろdisってるような文章になってしまいましたが、主人公3人の哀れな境遇や強い絆にはけっこう鼻水垂らしてたりしてました。自分、なんだかんだ言って福井節にはかなり弱いもので… そういえば超能力を持つゆえに虐げられる子供たち、というモチーフは『終戦のローレライ』にもあったなあ。あれも『Zガンダム』の「強化人間」にインスパイアされたアイデアだったんですかね。
メカ戦においてもいっぱいサービスしていただきました。懐かしのディジェにはじまり、着たり脱いだりと忙しいナラティブガンダム、ラスボス感たっぷりのセカンドネジオングに、ユニコーンガンダム1号機にも増して神がかってるフェネクスとキャラ立ちまくりのモビルスーツ群がスクリーンを彩ります。
さて、このままニュータイプの影響力が強まると時代的に後に位置する『F91』とはつながらなくなりそうですが、サンライズ的にはその辺どう処理するのか? その答えは来年から始まる『閃光のハサウェイ』3部作で知ることが出来そうです。『Zガンダム』以上に暗いと言われるこの作品、果たして我々の胃は耐えられるのか… た、楽しみですね!
Comments
ご無沙汰です。ようやく契約社員に上がれました。
プラモにもなったあの金ピカユニコーンをネタとして
放置するはず無いと思っていました。
しかし、自分はガンプラからもだんだん遠ざかり
(ていうかプレバン限定商法にウンザリ。MGアサルト
バスター予約してもすぐキャンセルしちゃった・・)
「孤影再び」のキリコな心中です。
>OO
ハムさん死亡から一転、生還して
マイスターになると言う展開にややビックリだ(笑)
先生、グラハムガンダムのGNタチってなんすか?(爆)
>大人
UCではジンネマンとかブライトが感情移入
しやすい年代のはずなんだけど
行動派としては若い世代のほうにも
共感しやすい感じがあったな。
NTはこれを単体で見ると言うよりは
UCの知識持ってみるほうがいいと思う。
で、とりあえずUC後の主要面々の消息が気になっていましたが、とりあえず安心。
Posted by: まさとし | December 26, 2018 09:56 PM
>まさとしさん
契約社員おめでとうございます!
自分は最近ガンプラはHGのリーオーとか買いました。あと復活したゾイドをちまちま作っております。
『00』の新作は舞台なんでしたっけ…? あのハムさんならなんでもありな気がしますw
『UC』はたしかにバナージやミネバ様といったわかいキャラもまっすぐで好感持てました。リディ君は結果オーライ的な感じで…
『閃光のハサウェイ』にも登場するのかな?
Posted by: SGA屋伍一 | December 29, 2018 11:27 PM
セカンドネジオングと言うのか。ジオングの後継機らしいのが出てきたのに、ジオングに似てなくて、しかも足があるのに付いてるだけで、やっぱり足はいらなそう。
Posted by: ふじき78 | January 20, 2019 08:13 AM
>ふじき78さん
宇宙飛行士に言わせると宇宙空間では姿勢制御のために足はけっこう使うそうです(マジレス)
Posted by: SGA屋伍一 | January 27, 2019 08:17 PM