パパはなんでも知っているわけではない アニーシュ・チャガンティ 『search/サーチ』
本日はほぼ100分の間、ずっとパソコンの画面の中でお話が進行していくという奇抜な映画『search/サーチ』をご紹介します。
サラリーマンのデイビッドは妻に先立たれ、残された娘と二人支えあって暮らしていた。だがある日娘は学校に出かけたまま、突然連絡が取れなくなってしまう。失踪か誘拐か。警察に頼るだけでは安心できないデイビッドは、娘のPCやネットの中から手がかりを得ようと必死になるが…
最初この映画のアイデアを聞いたとき、「二時間ずっとPCのモニターを観てるなんて、仕事してるみたいでヤだ」と思いました。が、公開されてから数多くの絶賛評を目にして心変わり。最悪ただでオフィスワークしてきてもいいや、くらいの気持ちで観に行ってきました。幸いテンポがよかったのとエクセルもワードも出てこなかったので、仕事疲れを覚えることはありませんでした。というか、さすが褒められるだけあって、ミステリーとしてよくできてる。
ネットサーフィンをしてると本当に膨大な情報が視界に流れ込んできます。この作品はネットのそういう特性をいかして、我々を情報の渦で翻弄します。そして時にはわざとらしく、時にはさりげなく手がかりらしきものを画面に映し出します。そういうミスリードの仕方とか、憎たしいヒントの出し方がミステリーとして非常に上手でした。あと事態が目まぐるしく展開していくので客に考える時間をあまり与えてくれないところもうまい…というか、小ずるいと思いました。
そんな脳容量がオーバーしてしまいそうな状況において、デイビッドお父さんは時々パニックになりながらも、鋭く重要な情報を見つけ出しては少しずつ真相に近付いていきます。そこにいたるまでは何度か見当ちがいもあったり、娘のためだから必死にやってるということもありますけれど、その玄人はだしの推理力にはうならされます。まじめな話、リーマンなんかやめて探偵になった方がいいのでは…と思いました。
あとこの映画目をひくのは、アメリカ映画なのにメインキャストのほとんどが韓国系ということですね。予告時点では韓国映画かと思ったくらいです。非ハリウッドのインデペンデント系だからできたことかもしれませんが、先日アジア中心キャストの『クレイジー・リッチ』もヒットしてましたし、だんだんむこうの映画界ももっとアジアに目を向けようという風になってきているのかもしれません。
主人公のデイビッドパパを演じるのは『スタートレック』のヒカル役などでよく知られるジョン・チョー氏。映画では鬼気迫る怒りっぷり・嘆きっぷりでしたが、コメディにもよく出られてるそうです。
しかしあれですね。最近は単にPCいじってるだけで家から出なくてもいろんなことができちゃったり、わかっちゃったりするもんですね。そんな安楽椅子探偵というか、「座ってる人」気分も味わえる傑作でした。推理小説が好きな方につよくおすすめいたします。
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