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November 27, 2018

俺たちはガンダムじゃない ルーベン・フライシャー 『ヴェノム』

「マーベル史上最凶の悪」という触れ込みだったものの蓋をあけてみれば…? そんなわけで本日は現在ヒット中のアメコミ映画最新作『ヴェノム』を紹介します。

野心家のジャーナリスト、エディ・ブロックは大富豪にして科学者である(トニー・スタークみたい)カールトン・ドレイクのスキャンダルをつかもうとして失敗。職も恋人も失ってしまう。それからしばらく後。すっかり落ちぶれたエディはドレイクの下で働く研究者から、彼が非道な人体実験を繰り返しているという情報を得る。エディは迷った末にリベンジしようと研究所に忍びむが、そこには宇宙より飛来した寄生生命体「シンビオート」が保管されていて、アクシデントの末に彼はその内の一体に取りつかれてしまう。

「ヴェノム」が正式にアメリカン・コミックスに登場したのは1988年。元々はスパイダーマンに寄生していたコスチューム型エイリアンが、宿主から一方的に別れを告げられ、ピーター・パーカーに恨みを持つ新聞記者エディと合体して「ヴェノム」となったのでした。このキャラクターが面白いのは筋違いの復讐心に燃えるヴィランである一方、赤ん坊やホームレスといった弱者には滅法やさしいヒーローでもあるということ。凶悪でシンプルなデザインも手伝ってヴェノムは90年代のマーベルを牽引するほどの大大人気キャラになるのですが、その後徐々に失速。宿主をエディから何回か乗り換えてマーベル世界の片隅で細々と命を永らえておりました。

そんなヴェノムの映画を単体で、しかもMCUと関係なくスパイダーマン不在で作るという話を聞いた時にはいくらなんでも無理があるだろ…と思いました。言ってみれば鶏肉抜きの親子丼(子丼というべきか)のようなものです。アメコミ映画隆盛のこのご時世でも確実にこけると予想しておりました。実際公開前の批評は惨憺たるものでありましたし。

ところがどすこい、『ヴェノム』は公開されると北米で10月公開映画のオープニング記録を作り、それだけでなく中国・日本でも大ヒットを飛ばしております。本当に世の中何が売れるかわからないものですね… 予想を外した身でなんですが、自分なりに成功の要因を考えてみました。

アメコミ映画が乱立しているこの頃ですが、意外とこういうタイプのヒーローはスクリーンにいなかったような。どういうタイプかというとほとんどモンスターのようなやつということです。強いて言うならハルクが近いかもしれません。ただお世辞にもキュートとは言えないハル君に対してヴェノムはツルツルウネウネしててかわいげがありますし(そうか?)、軟体の性質を利用して色々器用な芸を披露してくれます。
あと日本にはこういう設定の伝奇もの多いですよね。人間とモンスターがバディを組んで怪物と戦うお話。『うしおととら』『寄生獣』『キルラキル』『仮面ライダー電王』『仮面ライダーオ―ズ』『ど根性ガエル』… そんなジャパニーズ・オタクの性癖にストライクだったのだと思います。
あと(トマトが)腐っても一応は「スパイダーマン関連映画だった」というのも大きいかと。

批評家ウケがよくないのもなんとなくわかります。特に深いテーマがあるわけでもないですし。ただオタクとしては観ていて本当に楽しい。自分がミギー…じゃなくてヴェノムに取りつかれちゃったらあんなことやこんなこともできちゃう!というのを十二分に体感させてくれます。MCUももちろん大好きですが、ややこしい設定もユニバースの関連も気にせず単純にはしゃげるこういうアメコミものは実に久しぶりです。
しかしいい加減アメコミ映画が飽和に達してる現状で、またしてもスクリーンで人気キャラを生み出してしまったマーベルの勢いにはほとほと恐ろしいものを感じます。

映画版のエディのキャラ造形もよかったです。自分のミスが元で落ちぶれてしまった記者…というところは原作も同じです.ただ逆ギレしてるコミック版と違い、トム・ハーディ演じるエディはそれなりに反省してるようですし、ピンチの時でもいちいち滑稽でどうにも憎めない男になっていました。これに決まったと聞いた時は「ハーディ、地雷に手を出してしまったか!」と心配になりましたが、結果的には世界規模の大当たりになったわけで、胸をなでおろしました。そういえばトムハさんは熱烈な愛犬家だそうですが、凶暴なヴェノムを苦労しながらも手なずけていく様子は猛犬をならしていくブリーダーのようでもありました(笑)

スパイダーマンをディズニーに取られてしまったソニー・ピクチャーズは、引き続き脇役のヴィランたちで映画を作っていくようで、とりあえずの次回作は吸血鬼の「モービウス」を主人公にしたものとなる模様。さすがに本当に今度の今度こそはずすんじゃないか…と思いますが、わたしの予想もよくはずれるからなあ~
あと来年3月には並行世界のスパイダーマンたちが一堂に会すアニメ映画『スパイダーバース』も公開。相乗効果でヒットするとよいですね。

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Comments

SGAさんこんばんわ♪

今のマーベル作品はMCUに連動する作品が殆どでもありますので、そこから外れて単品の、しかもアンチヒーロー風なヴェノムの活躍は、サム・ライミ版の方とはまた違った魅力があって自分も面白く観る事が出来ましたね^^
当初予告編とかチラシからイメージしたヴェノムは凄い極悪なんだろうなとも思ったんですが、フタを開けると意外に話の分かるタイプでしたし、エディとの憑依もツイッターで度々言われてたど根性ガエルというのも納得ですねw・・でも自分がピンと来たのは『仮面ライダーオーズ』のアンクだったり^^;

MCUに合流するのかは分かりませんが、せめてホムカミのスパイディとはコラボレーションして面白いドラマを生み出して欲しいものですね。

Posted by: メビウス | November 30, 2018 at 08:13 PM

>メビウスさん

こんばんは。なつかしいですよね、ライミ版ヴェノム。あちらはほとんどしゃべらなかったし取ってつけたような活躍で正直もったいなく感じました
ETやアイアンジャイアントなど宇宙人と地球人のお友達にはかなしい別れが待っているパターンが多いですが(宇宙人じゃないけど『オ―ズ』もか)、エディとヴェノムはど根性ガエルのようにいつまでも仲良く暮らしてほしいです。三部作くらいになってくるとその辺危ういかもしれませんけど
トム・ホランドとの共演は見たいですね。すぐに打ち解けそう(笑)

Posted by: SGA屋伍一 | December 03, 2018 at 09:49 PM

> 言ってみれば鶏肉抜きの親子丼(子丼というべきか)のようなものです。

それは玉子丼では?

Posted by: ふじき78 | December 07, 2018 at 10:04 PM

>ふじき78さん

コロンブスの玉子的に気づかなかった…

Posted by: SGA屋伍一 | December 11, 2018 at 09:38 PM

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