松岡よりも熱く ヤヌス・メッツ 『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』
大阪なおみ選手や錦織圭選手の快進撃が話題になっているこの頃。映画でもテニスの名選手を題材にした作品が公開されておりました。今日はそのうちの一本『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』、ご紹介します。
1980年。大会5連覇を控えたスウェーデンのチャンピオン、ビョルン・ボルグは苛立っていた。アメリカの新星マッケンローが彼の王座を奪うのではとしきりに噂されていたからだ。内ではともかく、外では優等生的な仮面を外さないボルグ。審判や観客に悪態をつき、「悪童」の名をほしいままにするマッケンロー。両雄はこれまでの歩みを振り返りながら、やがて激突の日を迎える。
コテコテのオタク人であるわたくしにとってテニスは縁遠いスポーツ。興味もありませんし、やったこともほとんどありません。だのにこの映画に惹かれたのは、予告などからF1の実話を描いた『ラッシュ プライドと友情』を思わせるものがあったから。対照的な二人のライバルが王座を巡って火花を散らす… そういう話、スポーツ漫画好きとしてはやっぱり燃えるものがあるので。
観てみて特に印象に残ったのは、ボルグさんのハングリー精神というか危うさみたいなものでしょうか。もう4回も優勝してるんだからもっとどっしり構えてても良さそうなものなのに、「負けたら俺はみんなから忘れ去られる」と異常までにビクビクしておられます。そういえばヒットメーカー浦沢直樹氏もある漫画で「どうせ俺なんかすぐに売れなくなるから、そうなったらロック喫茶でも開いて何曜日はトースト半額にして」とか不可解なほどに謙虚な発言をしておられました。常人にはわかりにくい思考回路ですが、第一人者というのはそういう風に抱えなくてもいい不安をがっつり抱え込んでいるがゆえに、勝利や練習に貪欲になのかもしれません。
実はわたしもマッケンローの名前は知ってましたがボルグのことは知りませんでしたw でもこうやって三十数年経って映画が作られるわけですから、偉業というのものはそれなりに語り継がれていくものですよね。
一方のマッケンローは若さゆえの怖いもの知らずなところが目を惹きます。判定を巡って審判とガンガンやりあっている様はこないだのウィリアムズさんのよう。そんな自分を抑えきれない爆弾のようなプレーヤーとして描かれています。ところが友達の忠告が効いたのか、理想のライバルに巡り合えたからか、ボルグとの決勝においては別人のようなストイックさで勝負に集中します。やっぱり優れた好敵手というのは相手を技術的にも人間的にも成長させるものなのか。もしそうだとしたらとても美しい話であります。ちなみに彼を演じてる俳優さんがシャイア・ラブーフに似てるなあ、と思いながら観てたら本当にシャイアでした。彼ももう30越えてるはずですけど初々しい青年の役をやるとはなかなかに図々しい。まあ好演でしたので許します。
スポーツ漫画では大抵の場合試合前にライバルが偶然鉢合わせしたりしてあわや一触即発…なんてエピソードがあるものですが、この2人は試合までほとんど接触がなかった模様。そういうところが現実的というか逆に面白かったりしました。
2人の激闘を見て、スポーツの秋ですし、わたしもテニスクラブに通ってみようかしら…なんて思いが1秒だけ頭をかすめました。本当はテニスでもなんでも運動して、この腹をひっこめなきゃいけないんですけんど。
Comments
テニスだったら『宇能鴻一朗の濡れて打つ』がいい映画でしたわ。
Posted by: ふじき78 | November 22, 2018 12:28 AM
>ふじき78さん
聞いたことある… 金子監督が『エースをねらえ!』をロマンポルノでパロッたやつですよね
Posted by: SGA屋伍一 | November 27, 2018 09:49 PM