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November 08, 2018

オッコちゃん 令状ヒロ子・高坂希太郎 劇場版『若女将は小学生!』

当初はまーーーーったく興味なかったんですが、ネットのあまりの評判の良さが気になって、先日見てきた(またかよ…)アニメ映画。児童小説を原作とした湯けむり人情アニメ『若おかみは小学生!』、ご紹介いたします。

小学六年生の関織子(おっこ)は交通事故で両親を失い、温泉街で旅館を営む祖母峰子のもとに引き取られる。だがその旅館には生前峰子の幼馴染だった少年の幽霊も住み着いていた。旅館「春の屋」に後継者がいないことを心配していたその幽霊・ウリ坊は、おっこに峰子のあとをつぐために若おかみになってくれと懇願する。

まず最初食指が動かなかった理由はアニメなのに舞台が温泉旅館でなんとも地味そう…と思ったからでした。しかしあらすじからもわかるようにいきなりショッキングなエピソードから始まり、次から次へと事件が起きたり珍妙なキャラが登場したりするので退屈するということはまったくありませんでした。

親が死んで孤児になってしまった女の子が老人に引き取られ、新しい環境で一生懸命がんばっていく… こういうの世界の名作児童文学によくあるパターンのような気がします。カルピス(ハウス)名作劇場を日本を舞台にしてやるとしたら、なるほどこういう風になるのかもしれません。

ハイジや赤毛のアンと違うところがあるとすれば、普通に妖怪やお化けが出てくるところでしょうか。しかしこの幽霊、デザインがかわいらしい上に真昼間にも普通に出てくるのでまったく怖くありません。お化けというより妖精に近い存在。ですからおっこも早々となじんでしまいます。

ただおっこがこういう人外と縁があるのは、事故に遭った彼女があの世に近い領域に片足つっこんでるからなのですね。両親が死んだことはわかってるはずなのに、どうしても実感がわかない。まだどこかで生きてるとしか思えない。気丈とはいえまだ不安定な年相応の子供の心情がそんな風に表現されていました。わたしゃ観てないのですが『ボネット』ってそんなお話だったのでしょうか。
またおっこちゃんは「いい子」ではあるのですが、少々抜けてたり時々すねたりもするあたり身近で親しみやすいキャラになっておりました。

以下ほぼ結末までネタバレで。

終盤とうとう両親の死を認めざるをえなくなるおっこちゃん。泣きながら「一人にしないで」と叫ぶシーンにもホロリと来ましたが、それ以上に鼻水を搾り取られたのはいってみれば加害者にあたる男に恨み言ひとつ笑顔で受け入れるくだり。まさに「小僧の神様」とでもいうべきでしょうか。わたくし、誰かが自分のことでわあわあ号泣してる場面より、辛さも悲しみも押し隠して笑顔を見せる話の方が弱いんで…
またラストシーンはしめっぽくなりそうなところを、少しのさびしさとともにさくっと爽やかに切り上げたあたりが好感が持てました。こういうのは先の『ペンギン・ハイウェイ』とも共通しています。

初週は不入りでコケ作品認定されそうだったのに、評判が評判を呼んで上映延長・再上映が続いている『若おかみは小学生!』。温泉がわりにふらっといやされてくるのもよいかもしれません。

ちなみに現在大ヒットを飛ばしている映画『ヴェノム』のツイッター公式アカウントが立った二つだけフォローしてるのが『スパイダーマン』と、なぜかこの『若おかみは小学生!』の公式だったりします。なつっこいお化けが出てくるつながりということなのでしょうか…

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Comments

名作劇場の主人公の少女は、人間ではない(動物の)友達に心情を吐露することが多いので、ウリ坊や美陽たちもそんな位置付けかもしれませんね。

Posted by: ナドレック | November 24, 2018 at 03:02 PM

>ナドレックさん

なるほど。普通なら一匹のマスコットが3人もいるあたり、おっこちゃんはなかなか恵まれている…

Posted by: SGA屋伍一 | November 27, 2018 at 09:50 PM

11月に若おかみを観に行って恐ろしいまでの作画の緻密さに感動したので、先週リバイバル上映に行ってきたものです。
ヴェノムと若おかみの繋がりについて少々聞きかじったのでお知らせします。
映画館の告知で若おかみとヴェノムが隣同士になり、告知文が切れて『若おかみは小学生! でも実は』『ヴェノム』と表示されていた画像のツイートが拡散し、「おっこちゃんの正体はヴェノム」と面白おかしい説がTwitterで局地的に流行したのにヴェノムの公式が反応した形です。
リンク先個人のTwitterです。https://twitter.com/YT__TY/status/1039611283157409792

他にも原作者が「ヴェノムもプレデターも親戚のような気持ちです」とツイートしたことにプレデターの公式がリプライしており、春の屋旅館に湯治に来るプレデターと言うネタも一部で流行していました。

Posted by: mikage | January 15, 2019 at 02:54 PM

>mikageさん

正しい情報をありがとうございます。偶然とはいえ面白いコラボでしたよね。いつか本当に共演してくれる日は…来ないだろうな…
たまたま今日日本アカデミー賞のノミネート一覧を見たのですが、「若おかみ」もアニメ部門でばっちり入ってました。強敵ぞろいですが、なんとか受賞してほしい!

Posted by: SGA屋伍一 | January 15, 2019 at 09:39 PM

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