落下の王様 クリストファー・マッカリー 『ミッション・インポッシブル フォールアウト』
まだやってるかわかりませんが、本日はすっかり定番シリーズとなったトム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル』最新作『フォールアウト』をご紹介いたします。
核弾頭の燃料となるプルトニウムがテロリストにより強奪される。イーサン・ハント率いるIMFはその奪取に臨むが失敗。やむなくCIAと協力しながらミッションに再挑戦する。やがてハントは敵の企みに前作でとらえたソロモン・レーンが深くかかわっていることを知る。レーンの世界をも滅ぼそうとするその計画をハントは阻止することができるか。
いつでもどれでもいきなり観ても楽しめるのがウリだった映画「ミッション・インポッシブル」シリーズですが、6作目の今回はかなり過去作と密接に関わりあっていて、「3~5くらいは観ておいて」という感じになっています。特に4と5。監督は前作「ローグ・ネイション」と同じクリストファー・マッカリーなのですが、ひたすらお洒落お洒落してた5作目と違い、「フォールアウト」では自分の過去や信条ゆえに苦しめられるような、ちょっと重苦しいムードになっておりました。
おもうにイーサンが007と違うのは、スパイである以前に正義の味方…「弱き者の守護者である」ということ。007は絶対にMI6を裏切ったりしないでしょうけど、イーサンはIMFが自分の正義に叛くことをしたら、きっぱりと組織を敵に回しそう。でもそういう頑固さってスパイにはむいてないと思うのですよね。今回そのイーサンの良心が試されるシーンがあってハラハラいたしました。
ハラハラしたといえばこの作品、トム・クルーズの「アクション生身でやりたい欲」が暴走して見ごたえあるんですけど、スタッフは生きた心地がしなかったとか。CGですむところを107回もスカイダイビングしたり、ビルからビルへ飛び移って骨折したり… もはや危険ジャンキーといってもいい領域にまで達してきました。若いころ(『レインマン』とか)はそんな人じゃなかったのに… 50歳を過ぎた今になってなんでそんなに無茶を繰り返すのでしょう。
そんなトムさんの「生身アクション最優先スタイル」のためか、撮影開始時はまだ脚本が完成してなかったとか。まずトムトムの「こういうアクションをやりたいから、それに合わせたストーリーを考えて」という指示があって、それにマッカリーさんが鼻血を出しながら書き進めていったのだそうです。トムさんの無茶ぶりも大したものですが、これだけ違和感のない脚本をつけたしていって十分に受け切ったマッカリーさんの才能も恐るべきものです。
昔の香港アクションも脚本というものは特に存在せず、その場その場のノリでストーリーが形作られていったそうですが、そうしたスタイルの映画で出世したスターの1人がご存知ジャッキー・チェン。そのジャッキーが師と仰ぐ俳優の1人にチャップリンと並び称されるバスター・キートンがおります。CGも特撮もない時代にキートンは生身ひとつで無茶なアクションをこれでもかというくらい撮り続けました。そのハードアクトと独特なカメラワークは『マッドマックス 怒りのデスロード』などにも多くの影響を与えています。トム・クルーズももしかしたらキートンを目標としているのかもしれません。ただキートンが死にかけながら映画を作っていたのはあくまでお笑いのためなので、そういう点では誰も同じ存在になることはできないでしょう。
話が横道にそれました。そんだけ体を張った甲斐があったのか、『フォールアウト』は北米でも世界でもシリーズ最高収益を達成してしまいました。これではまた次作でトムトムが張り切ってしまうのは目に見えております。痛ましい事故とか起こさないうちに、どうか誰か彼を止めてください…
Comments
SGAさんこんばんわ♪
MIシリーズの基本的な流れは悪巧みしているテロリストなんかをしばき倒す内容でもありますので過去作を覚えていなくともそれなりにすんなりと入り込める所も良かったんですが、今回は前作の女スパイのイルサなども出ていたので、イーサンとの関係性を理解する上では本作はやはり予習が必要な感じもしましたね。金ローもその辺りをちゃんと理解してくれたのが嬉しかったり(笑
そういえば今回もトムの生身アクションは凄いものばかりでしたが、そのリハーサル回数もやっぱり相当なものだったんですね。一歩間違えば本当に生死に関わる危ないものばかりでしたから、完璧なものにするための練習量も人一倍以上で流石といった所ですね^^
Posted by: メビウス | September 28, 2018 08:11 PM
トム・クルーズはもう56歳だというのに頑張りますね。
ジャッキー・チェンですから五十代後半にはアクションはやらないと云いはじめていたのに(その後もやってますが)。
このシリーズにはぜひ続いて欲しいですけど、次回作ではいよいよイーサン・ハント還暦ですかね……。
Posted by: ナドレック | September 28, 2018 09:19 PM
>メビウスさん
金ロー見逃して結局『ローグネイション』も一回しか見てないのですが、なんとかついていけました(笑) ジェレミー・レナーの彼はどうなったのかなー
本当に理想の映像のためにそこまで妥協しない姿勢には頭が下がりますが、もしかして「単に好きだからやってる」という疑念も…?
Posted by: SGA屋伍一 | September 28, 2018 09:51 PM
>ナドレックさん
50の坂を越えるとみんな「アクション引退」と言い始めるのに、一人だけさらにエスカレートしていくトムさんは異例中の異例の人ですね
ジェレミー・レナーに主役をバトンタッチ、見たいな噂もありましたが、そもそも彼今回出てないし、トムにひけをとらない代わりを見つけるのはとても難しそうです。還暦でも普通に続行しそう
Posted by: SGA屋伍一 | September 28, 2018 09:54 PM
次回も真狩-飛夢コンビか。
Posted by: ボー | October 19, 2018 09:09 AM
>ボーさん
それまでにトムさんが無茶アクションで死ななければ(縁起でもない)
Posted by: SGA屋伍一 | October 22, 2018 09:42 PM